鈴木茂樹氏

第1回ウェアラブルEXPO:ウェアラブル時代の法整備とガイドライン策定

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by [2015年1月16日]

 2015年1月14日~16日にかけて東京ビッグサイトにて開催された「第1回ウェアラブルEXPO」。今回は1月15日(木) 13:40-15:10に行われたセッション「ウェアラブル時代の法整備とガイドライン策定」の内容をご紹介します。

ウェアラブル機器・サービスについて総務省の見解

鈴木茂樹氏
総務省
情報通信国際戦略局 局長
鈴木 茂樹氏

ウェアラブル端末の普及

 「NIKE+ FuelBand」「Smart Watch」「Google Glass」などのウェアラブル端末は2012、2013年頃から登場し始めた。形状はリストバンド型、腕時計型、メガネ型、ヘッドマウントディスプレイ型、コイン型など様々。今後は小型化と低価格化が進み、スマホなどを必要とせず単体で使用可能になることが予想できる。普及度については2020年度に日本で604万台、米国で1,517万台と予測されている。

ウェアラブル端末のメリット

 ウェアラブル端末のメリットは使用しながら両手が自由に使えることで、医療現場や工事現場など様々な職種での活用が期待できる。また、健康診断のような特別な環境ではなく、自然体での生体情報を取得可能なこともメリットの一つだ。

ウェアラブル端末の技術的・社会的課題

 一番の技術的課題はバッテリーだ。電池式なら時計のように1年持つこと、充電式なら充電時間の短縮が望まれる。また、ウェアラブル端末によって撮影された4K・8K映像のアップロードが盛んになることによる帯域の圧迫も課題だ。IoTがライフログに活用されることによりデータが増え、ビッグデータの処理も問題になる。また、端末の普及に欠かせない面白いアプリケーションの充実も待たれる。
 ウェアラブル端末による盗撮被害や、美術館・コンサート会場・映画館などでの著作権侵害など、法的課題もある。プライバシーの問題といった社会的課題もある。

 オープンな開発環境と競争がイノベーションを生むため、今後の進め方はこうなる。
1. まず、やってみる
2. 持続可能な経済モデルを作る
3. 端末・サービスを普及させ、市場を取る
4. 課題が具体化したら、速やかにそれを解決する
5. 必要に応じ標準化・正規化していく

日米におけるウェアラブル端末の市場展望――日米消費者調査の結果から – 株式会社 MM総研

ウェアラブル端末における法律問題

小林正啓氏
花水木法律事務所
所長/大阪弁護士会 弁護士
小林 正啓氏

プライバシーの概念 これまでの変化

 プライバシーの概念は、新聞というメディアが勃興し、有名人を追いかけるようになった1880年頃に提唱された。日本では1960年の「宴のあと」事件で「私生活の秘密を不当に暴露されない権利」が認められ、1998年の早稲田大学事件で氏名や学籍番号など「秘密ではない自己情報をコントロールする権利」が認められた。プライバシーの概念は、コンピューターとデータベースの発達により、マスコミに追いかけられずに放っておいてもらう権利から、データをコントロールする権利に広がった。
 技術の発展により変化したプライバシーの概念に合わせ、個人情報保護法の改正作業が行われている。それに伴い第三者機関の創設が検討されているが、第三者機関の権力や管轄は謎である。

非装着者(被撮影者)の権利

 着衣の女性に対する無許可撮影は既に問題になっている。27歳女性の後を約5分間・40m余りにわたって追跡し、ズボンを着用した女性の臀部を11回撮影した男性が北海道迷惑防止条例違反にあたるとして刑法に問われた。
 NICT(独立行政法人情報通信研究機構)がJR大阪駅に92台のカメラを設置し一般利用者を撮影、移動経路情報を作成しようとした件も「JR大阪駅問題」として知られている。第三者委員会が設立され、「撮影行為は著作権侵害にあたらない。特徴量情報や移動経路情報の生成はプライバシー権を侵害する。但し本件は、公益目的に基づく実験として行われたものだから、一定の条件の下で合法」という報告書を出している。特徴量情報とは、その人の顔と「平均顔」の差分を抽出した、その人固有の情報である。特徴量情報から撮影画像を完全に再現することは不可能だ。

装着者の権利

 装着者のプライバシー情報の扱いも重要な問題だ。位置情報・移動距離情報、健康管理情報(生体情報)、購買情報、会話、視線などの情報がこれにあたる。こうした情報の匿名化した上での流通はOKにしたいが、どの程度匿名化するのかがはっきりしていない。日立製作所がSuica乗降履歴を使った分析サービスを発表した際には、匿名化はされているが個々の乗降履歴を見れば個人が特定できる可能性があったため反発が起こり、Suica事件として知られるようになった。「カレログ」のように、恋人の端末に監視アプリケーションを勝手にインストールして監視するのは当然違法で、同意を取っていたとしても問題が無いとは言えない。
 従業員にウェアラブル端末を装着させて、声の大きさや、誰とどの程度喋ったのかなどを逐一記録するものもある。これは「職場監視」にあたり、法的な問題はあるが、需要があれば普及するのではないかと見られる。
 ウェアラブル端末による「視線の共有」は、混雑情報の共有・チーム活動・行動ターゲティングの役に立つ。視線の動きを解析した行動ターゲティング広告は便利かもしれないが、うるさいと感じる人も居る。ウェアラブル端末を普及させるため、オプトアウトの方法が示されていることが必要になる。
 ジャーナリストなど命が狙われる立場の人にとっては、ウェアラブル端末を装着していると殺される瞬間まで撮影されるため、殺されにくくなるというメリットがある。

【WEA-S2】ウェアラブル時代の法整備とガイドライン策定

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