au Fx0 LGL25スケルトン構造の筐体を採用する。日本国内向けに発売された史上唯一のFirefox OS搭載スマートフォン

au、公約通りFirefox OS搭載スマホ“Fx0″を年内発売

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by [2014年12月25日]

au Fx0 LGL25スケルトン構造の筐体を採用する。

au Fx0 LGL25
スケルトン構造の筐体を採用する。

今更ですが、現在のスマートフォン用OSはAppleのiOSを別にすれば、事実上GoogleのAndroid一色と言ってよいような状況です。

今から1年半ほど前、こうしたAndroidの独占的市場支配体制を打破すべく、ノキアのMeeGoをはじめ複数のLinux系モバイルOS開発プロジェクトを糾合して誕生し、SamsungとNTTドコモが後押しして開発されたTizenを筆頭に、Android代替を標榜する新しいOSが幾つか名乗りを上げて「第3のOS」として話題になったことがありました。

もっとも、恐らくは最も注目を集めたTizenは途中で開発が停滞してSamsungのスマートウォッチに搭載されたのみで事実上フェードアウト、結局スマートフォン向けでは「なかったこと」にされてしまったような状況で、その他の新OSもUbuntu Phoneは搭載端末発売が2015年まで遅延し足踏み状態、Tizenと同様にMeeGoに由来するSailfish OSは搭載端末が発売されたものの、その操作体系の特殊さもあってかヨーロッパの一部で販売されている程度にとどまっています。

そうした中、iOSやAndroidとは異なる市場をターゲットとすることで一定の成功を収めつつある新OSがあります。

それは、HTML5対応ブラウザであるFirefoxをOSの中枢に据え、そのHTML5に従って書かれたWebアプリを動作させることに特化した構造をとる、MozillaのFirefox OSです。

Firefox OSというOS

このFirefox OSはAndroidやTizenなどの多くの競合OSと同様、ファイルシステムをはじめ基本的な機能・サービスはLinuxをその基礎としています。

しかし、このOSはアプリケーションやユーザーインターフェイスのレベルではネイティブアプリのためのAPIやJVMのような独自仮想マシンの実装を潔く切り捨ててシェルをWebブラウザであるFirefoxで代用することでOSそのものの持つ階層構造を大胆に整理・簡素化し、それによりAndroidとは比較にならないほど低スペック・低性能なマシンでもそこそこのパフォーマンスが得られるという特徴があります。

具体的に言えば、Androidだと4.x系最終バージョンであるバージョン4.4 “KitKat”でさえ「メモリ容量512メガバイトのマシンでも従来より快適に動作する」とGoogleの関係者が豪語したと伝えられていることが示すように、まともに動作する搭載メモリ容量の下限が512MBであるのに対し、このFirefox OSはメインメモリが512MBどころか256MB搭載の貧弱な性能の端末でさえ軽快に動作することが伝えられています。

そうして、スマートフォン普及のためには他の何にも優先して端末価格を引き下げることが至上命題となる、先進国以外を対象とした低スペックかつ低性能なスマートフォンに搭載・出荷されることで、このFirefox OSは成功の手がかりを掴みました。

そうした特性からいわゆる先進国では大々的に普及していないようですが、このOSを搭載した端末は既に多くの国の通信事業者に採用され市販が行われており、次第に普及しつつあります。

国内大手キャリアから一般販売される最初のFirefox OS端末

そんなFirefox OSですが、日本ではau(KDDI)がその発表後早い時期より導入に熱意を示していました。

そして同社は2013年7月のFirefox OSの正式ローンチ以来積極的にイベントにも参加し、遅くとも2014年中に搭載製品を発表することを公言していました。

そして今月23日、約束の2014年内ぎりぎりのタイミングとなりましたが、Firefox OS搭載スマートフォンとしては世界的に見ても最上位に位置づけられる機能を搭載したハイエンドモデルとして『Fx0 LGL25』を発表、auオンラインショップとKDDI直営店で12月25日より発売開始し、一般のauショップでも来年6日より予約受付を開始するとアナウンスしました。

今回はそんなFx0とFirefox OSについて考えてみたいと思います。

Fx0の主な仕様

記事執筆時点で公表されている『Fx0 LGL25』の主な仕様は以下のとおりです。

  • OS:Firefox OS 2.0
  • チップセット:Qualcomm MSM8926 Snapdragon 400(1.2GHzクアッドコア)
  • サイズ:約70×139×10.5mm
  • 重量:148g
  • メインスクリーン
    • 種類:IPS液晶
    • 解像度:720×1,280ピクセル(HD解像度)
    • 画面サイズ:4.7インチ(対角線長)
    • アスペクト比:9:16
  • 内蔵メモリ
    • RAM:1.5GB
    • フラッシュメモリ:16GB
    • 拡張スロット:microSD XC card(最大容量:64GB)
  • カメラ
    • メインカメラ解像度:8メガピクセル
    • フロントカメラ解像度:2.1メガピクセル
  • Wi-Fi:
    • 対応規格:IEEE 802.11 a/b/g/n
  • LTE:
    • 対応周波数帯:800MHz/2GHz
    • 転送速度:下り最大150Mbps/上り25Mbps
    • キャリアアグリゲーション・テザリング機能(最大8台)対応
  • テザリング:対応(最大8台)
  • Bluetooth:Ver.3.0
  • NFC:対応
  • 電池容量:2,370mAh
  • 防水:非対応
  • 防塵:非対応
  • 開発製造担当:LGエレクトロニクス

以上の通り、型番からも明らかなように韓国のLGエレクトロニクスが実際の開発と製造を担当していますが、そのスペックは搭載OSを除くと最近ご紹介してきたASUSTek ZenFone 5(A500KL)富士通 ARROWS M01、あるいは
ファーウェイ Ascend G620Sといった
Qualcomm Snapdragon 400搭載のMVNO事業者向け低価格スマートフォン群とほぼ同等です。

このクラスのハードウェアで「世界初のハイエンドなFirefox OS搭載スマートフォン」と公式サイトでauが豪語してしまえるあたり、また「世界初のクアッドコアCPU搭載Firefox OS端末」と謳えてしまっているあたりを見ると、Firefox OSの求めるハードウェア性能の低さと現在このOSを搭載する端末が導入されている主な国々の経済事情や国内市場購買力の低さが透けて見える感じなのですが、ともあれこのFx0は少なくともハードウェアレベルで見る限り、Snapdragon 400搭載スマートフォンのリファレンス設計に近いスペック・性能となっています。

それは言い換えれば、OSとしてAndroidを搭載しスペックの近似するSnapdragon 400搭載機と比較したときの体感性能差がAndroidとFirefox OSのOSとしての特性差をストレートに反映したものとなると考えられるということで、今後Firefox OSの評価を行ってゆく上で一つの指針あるいは基準となるでしょう。

なお、この機種はauが他の現行Android搭載スマートフォンと並べて販売することもあってか、当然のように下り最大150Mbpsでの通信に対応するLTEをサポートしています。

実はこれまで世界中で販売されてきたFirefox OS搭載スマートフォンでは、通信でLTEに対応するものは皆無であったとのことで、このFx0は結果的に「世界初のLTE対応Firefox OS搭載スマートフォン」という称号も手にしています。

Firefox OS搭載端末はそもそもどこで売られてきたのか

こうしてFx0の仕様と、それに与えられた称号、特に「世界初のLTE対応Firefox OS搭載スマートフォン」を見ると、一体今まで世界のどんな国々でこの新OSを搭載した端末が販売されてきたのか、筆者としては凄く気になります。

そこでMozillaのFirefox OS公式サイトに掲載されている市販Firefox OS搭載端末の発売国を確認すると、記事執筆時点で最新の発売国となった日本以外に、イギリス、イタリア、インド、ウルグアイ、エルサルバドル、オーストラリア、ギリシア、グアテマラ、コロンビア、スイス、セルビア、チリ、ドイツ、ニカラグア、パナマ、ハンガリー、フィリピン、ブラジル、フランス、ベネズエラ、ベルギー、ペルー、ポーランド、メキシコ、モンテネグロ、ルクセンブルグ、ロシアと27カ国が示されています。このことから、これまで搭載端末の販売エリアが主にEU圏と南米に大きく偏っていたことがわかります。

南米はFirefox OS開発の早い時期からターゲットとして公言されていたエリアで、そもそも大変失礼ながら国力的に決して豊かではない国や政情が安定しているとは言い難い国が大半を占めていますから、LTE対応端末がこれまでなかったというのも納得できる話ではあります。

筆者にとって意外だったのはイギリス・フランス・ドイツといった先進国と呼ばれるような国々でもこのOSを搭載する端末としてLTE非対応の機種が販売されていることと、Firefox OSのローンチイベントの行われたスペインが何故か発売国の中に見当たらなかったことです。

果たしてEU圏の先進国各国でFirefox OS搭載端末は一体どのような位置づけで、どういった客層に売られているのでしょうか? 少々気になるところではあります。

オープンソースを象徴する筐体デザイン

話が少々脱線しましたが、Fx0はその筐体をスケルトン構造、つまり透明なポリカーボネイト樹脂で筐体外装部を成型して中の部品を見せるという独特のデザインを採用しています。

これは「Firefox OSのオープンな精神を象徴する透明ボディ」とのことで、Firefox OSがオープンソース・ライセンスに基づきソースコードが公開され、そのソフトウェアを自由に再頒布できること(※注1)を象徴するものとして、プロダクトデザイナーの吉岡徳仁氏によってデザインされたものです。

 ※注1:もっとも、その一方で標準搭載されているいくつかのアプリはMozillaだけでなく、auとハードウェア開発元のLGエレクトロニクスによって開発されており、現時点ではそれらは完全には「オープン」となっていません。一応、au開発のアプリについては可能なものから順次ソースコード公開を実施しオープンソース化する方針のようですが、LGエレクトロニクス担当のアプリについてはこのあたりの方針が明らかになっていません。

まぁ、透明な筐体である以外は取り立てて目立った特徴のないデザインではあるのですが、実はその内部の部品配置も見せることを前提に計算の上で決められているとのことで、一見平凡ながら随分手の込んだデザインとなっています。

スケルトンということもあり、携行し使用すれば目立つこと間違いなしのスマートフォンということになりそうです。

iWnnが選ばれた日本語IME

さて、これまでFirefox OSは主な利用者が日本語話者ではない国々で発売されてきたわけですが、そうなると注目されるのはこのFx0でどのような日本語IMEを選択し搭載するかです。

この問題にauが出した回答は、オムロンソフトウェアとの共同開発による『iWnn IME for Firefox OS』の搭載でした。

iWnnは元々UNIX(およびUNIX互換OS)をOSとするワークステーションで使用される日本語IMEとして京都大学、慶應義塾大学、立石電機(現在のオムロン)、それにアステック(現在のアールワークス)の4者によって共同開発されたWnnを改良・機能向上したものです。

Android搭載スマートフォンでもHTCやシャープ、京セラなどの端末に採用されているので日常的に使用している方も多いことでしょう。

筆者個人としては、Android搭載スマートフォン向けではATOKよりもiWnnの方がまだしもおかしな文節解析や変換をしない、というのが正直な感想で、これはある意味無難な選択と言えるのではないでしょうか。

なお、この『iWnn IME for Firefox OS』がどうなのかはわかりませんが、母体となったiWnnはオープンソースソフトウェアではありません。

意外と高価な価格設定

今回のFx0の発表で筆者が驚いたのは、その価格設定です。

さすがにiPhone 6/iPhone 6 PlusやAndroid搭載の現行ハイエンドスマートフォンと比較すると安いのは間違いないのですが、いかにFirefox OS搭載スマートフォンとしてハイエンドに位置づけられるにしても、また良く作り込まれているにしても、Snapdragon 400搭載機で税込み49,680円という価格設定はいささか高すぎやしませんでしょうか?

プロセッサ性能が同等のASUSTekのZenFone 5が5インチディスプレイとメモリ2GB搭載でFx0と同じストレージ容量16GBモデルで28,944円となっているのと比較すると、初物OS搭載かつ日本市場限定であるためコスト的に不利であることを考慮してもなお、です。

MVNOによるSIMフリー端末が流行していなかった2年前の状況ならばこれは衝撃的な価格設定と受け止められたでしょうが、現在の国内キャリア事情を考慮するとFirefox OSの狙うべき市場とあわせて、このOSの搭載端末に無駄にプレミア感を演出するauの販売戦略には疑念を抱かざるを得ません。

このような売り方をしていたのではアプリ市場も満足に育たないでしょうから、過去に失敗した幾つかのOSと同様に「アプリがなくて使えないスマホ」という認知になりかねません。

もしauが本気でFirefox OS搭載スマートフォンの普及を望むのならば、先日よりサービスの始まった傘下のUQ mobileの格安通信サービス向けにより低価格でこの種のFirefox OS搭載端末を提供するなど、まず稼働端末台数を増やしアプリ市場のパイを大きくする努力をなすべきで、それができなければ少なくとも日本国内市場では、Firefox OSはWindows Phoneの二の舞になるのではないか、と筆者は危惧します。

大いに評価されるべきauの決断

以上、auの発売する国内初のFirefox OS搭載機である『Fx0 LGL25』を見てきました。

まさかオープンソースからの連想でスケスケ筐体になるとは予想もしていなかったのですが、それ以上にその価格設定は驚きでありました。

auとしてHTML5によるWebアプリ開発のためのプロプライエタリな統合環境をこの機種の購入者限定で提供するだとか、そういった開発方面の優遇措置があるならともかく、特にそういったものもなく(※注2)ほぼプレーンなソフトウェア環境でSnapdragon 400搭載機が約5万円では、ユーザーに購入を納得させるのは正直厳しい気がします。

  ※注2:一応、そうした用途向けにWebサーバー機能の搭載は行われていますが。プレスリリースなどで「つくる自由! ウェブ新世紀ハジマル」を謳い文句にしていることを考えると、開発者向けのより充実した手当もあってしかるべきではないでしょうか。

無論、auとしては『毎月割』の適用などの割引施策により、実質負担額をASUSTek ZenFone 5並の29,160円に低減できる、この機種ならばauの提供する各種サービスが利用できる、とその付加価値を主張したいところでしょうが、MVNO大流行の昨今の情勢ではそうした主張を納得させるのもかなり難しいと思います。

もっとも、この機種がauの公約通り2014年中に発売開始されたことは、そして多分にリスキーな新OS搭載機の発売を決断したauの勇気は、大いに評価されるべきことです。過去には、新OS搭載機発売のリスクに発売を決断できず、開発をかなりの段階まで進めていたにもかかわらずそのままお蔵入りさせてしまった会社もあったのですから、なおのことauの今回の決断は評価されるべきでしょう。

ともあれ、賽は投げられました。今後auがFirefox OS搭載スマートフォンをどのように製品展開してゆくのかが注目されます。

▼参考リンク
Fx0 LGL25 | Firefox OS | au
つくる自由! ウェブ新世紀ハジマル | 2014年 | KDDI株式会社

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