kii_suzuki

アプリ開発に必須なMVPとは?「アプリ市場のグローバルトレンドと MBaaS の有効性」

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

by [2014年11月21日]

 生活者と企業とのオムニチャネル・コミュニケーションをデザインする大日本印刷の「次世代コミュニケーション展」では、未来の“お買い物”を体験できる展示や、多彩なセミナーが開かれた。

Kii 株式会社 社長 鈴木尚志氏

 その中からここでは、日本発グローバル MBaaS 『 Kii Cloud 』を展開する Kii の鈴木氏による「アプリ市場のグローバルトレンドと MBaaS の有効性」をお届けする。MBaaS とは、mobile Backend as a Service の略で、モバイルアプリが必要とするサーバ側の機能を提供するクラウドサービスのことだ。MBaaS を使えば、開発者はサーバ側のコードを書かずとも簡単に モバイルアプリを実装できる。講演では、サーバー連携するスマホアプリを効率よく開発できるクラウドサービスを手がけている同社ならではの視点で、現在のアプリ市場やアプリの開発、運用の手法についてのお話しを聞くことができた。

中国のスマホ市場への影響力

 2014年、スマートフォンは世界で12億台程出荷されています。中でも中国は、自国内市場向けに4億台程出荷し、ユーザー数、出荷台数共に1位になっています。
 最近日本のマスコミでも多く取り上げられるようになりましたが、Android の端末を作っている「 Xiaomi 」という中国の会社があります。ここのビジネスモデルが非常におもしろい。端末をほぼ原価で出荷する代わりに、Android をベースにした MIUI という独自インターフェースの有料オプションに課金するモデルを採っています。定期的にリリースされる MIUI から得られた月額課金の ARPU(= 加入者一人あたりの月間売上高)は、端末分の儲けを含まないにも関わらず、LINE やカカオトークと同じくらいだそうです。端末メーカーでありながら、フリーミアムモデルの月額課金で成功しているのは、実は非常に稀な例です。このモデルはフィーチャーフォン時代から中国にはありましたが、スマートフォンに移行したことで一度破綻しました。Xiaomi は、そのモデルを再びスマートフォンでうまく構築しています。
 今後、より中国の影響力は海外へと進出し、Xiaomi のような新しいビジネスモデルが世界に出て行くと思うので、中国の市場には注意を向けるべきです。

アプリ開発に必須な「MVP」とは?

 組織の規模に関係なく、アプリを開発する上で絶対に必要な手法が MVP と呼ばれる思考です。MVP とは、まずサービスをリリースし、その後ユーザーの使用状況を分析・把握、それからまた新しいアイデアをサービスに実装する、ということをぐるぐる回していく手法のことです。

MVP は、スタートアップの話だから自分たちの会社には関係ないと考える人も多いですが、実際には、ある製品・サービスをコンシューマーに使ってもらうためのプロモーションアプリ等においては、このサイクルをできるだけ早く回すことが重要です。ただ、MVP の手法はコンテンツ系のアプリにおいては、あまり重要ではありません。

 MBaaS である Kii を様々な企業に提供しているので、色々なアプリの開発会社を見てきましたが、その中でよく見る開発の流れを追ってみましょう。まず仕様書を作成して、色々な企業でレビューして書き換え、バージョン1の仕様が固まります。そこから予算申請、承認を経て、見積もりを取って発注して、やっと開発が始まる、というのがよく見られる流れです。この過程では盛りだくさんの仕様に添って、半年~1年をかけて開発してようやくアプリが完成することになります。
 一方で、MVPが目指しているのはなるべく短いサイクルをたくさん回す、ということなので、現場と経営陣の間で方針と年間予算だけ合意しておきます。そして、その後は現場に権限を渡してこの MVP のサイクルをひたすら繰り返します。


上が、一般的な開発の流れ。下は、MVP 開発の流れ。
 

 前者の場合、自分たちが目指しているものがユーザーにどう受け入れられるのか、半年~1年後まで全くわからないんです。かたや MVP では、少しずつ仕様を足しながらリリースのサイクルを繰り返しています。そうなると、例えば3サイクル目の途中で方針を変えて、pivot(方向転換)することもできます。結果が分からないで闇雲にそのまま走り続けるか、結果を見ながら少しずつ方向を修正するか…私は、方向を修正できるタイミングがあるという点で、MVP サイクルが非常に重要だと思います。

 このサイクルを早く回すためには、やはり「Doing one thing very very well」に尽きます。なので、早く実装・解析ができるよう機能を絞ることが重要です。機能を絞ることで、実装量も少なくなり、早く回しやすくなりますし、バグ修正も早くできます。ユーザー側から見ても理解しやすいため、AppStore や Google Play などの SEO もやりやすくなります。

アイデアに「 No 」と言う勇気

 ただ実際に、機能を絞るのはとても難しいです。何故なら、色々な人からレビューやコメントをもらうと、どうしても助言を反映したくなってしまうからです。アイデアも良いものがきっとたくさん出てきます。『集中するということは、何に集中するかということを議論して「 Yes 」というのではなく、出てくるアイデアにひたすら「 No 」と言い続けることだ』というスティーブ・ジョブズの言葉がありますが、全くその通りです。
 ジョブズのこの言葉を象徴する例としては、例えば iPhone と GALAXY のカメラアプリの違いが挙げられます。GALAXY は、メニューや設定が何種類もすぐに出てくるのに対して、iPhone は3つか4つくらいの設定しか出てこない。このように、インターフェースを単純にしたり、色々なオプションを見切ることは非常に重要です。一部の人には飽きられるかもしれませんが、長い目でユーザーのことを考えれば、使い勝手の面で大いに意味がある行為です。ただ、実際に機能を絞るのは簡単ではなく、現場のリーダーが周りに嫌われながらも、持ってくるアイデアに「No」を言い続ける必要があります。
 現場への権限委譲も非常に重要です。セキュリティや UI などを他部署がレビューすると、それぞれの観点から良さそうな意見を言いますが、あくまでも全体を見て判断するのは現場なので、なるべく他部署にレビューさせないことが大切です。

ユーザーの声を聞くタイミング

 ユーザーの声を聞くというのは当たり前に思えることですが、実はタイミングが非常に難しいです。例えば、これはジョブズも同じことを言っていましたが、最初にパラダイムシフトを起こす製品・サービスをリリースする際には、市場調査は絶対にしてはいけません。何故なら、ユーザーは普段からそのような製品を考えているわけがないからです。ただ、一旦リリースしたら、ユーザーの声を聞く必要があります。ユーザーの声を聞く際は、なるべく第三者に任せずに、問題を報告してきたユーザーとひたすら仲良くなるようにしたり、また、例えば、検討中の有償オプションや新しい UI のアイデアに対する意見を聞いてみたり、発案してもらったりすることは非常に効果があります。実際にうまくいったアプリは結構同じことをしています。

 次に、分析です。ピーター・ドラッカーが言っていたように、計測できないものは管理できません。ちょっと工夫するだけで、新しくリリースした機能をユーザーがどう使っているか分かるようになるはずなので、なるべく数字で把握できるようにすることが大切だと思います。

A/B テスト活用法

 分析というと、A/B テストがよく Web 上で行われていますが、最近では A/B テストはアプリでも出来るようになっていて、ツールもいくつか出ています。また、自分で工夫して行うこともできるので、A/B テストは積極的に行うべきです。例えば、アプリ上でプロモーションをする時に、小さな文言でもユーザーの感じ方が意外と変わったりします。小さな文言の差でクリックレートが 10% 変わるなら、A/Bテストはやるべきだと思います。
 A/B テストというと、半数のユーザーに自信のないデザインを見せなくてはならない、と誤解している人も多いのですが、それは違います。A 案と B 案それぞれを全体のユーザーの半分ずつに見せる必要はなく、統計的な有意差が分かるだけの人数でテストして、それで A 案か B 案かを判断すればいいんです。統計的な有意差は、ユーザー全体の 1% に試しても分かることなので、そこまで大げさなことではありません。成功しているアプリは、リリースした後にこうした A/B テストを10個も20個も仕掛け、結果に合わせた対応をしています。
 また、誰かからレビューされた意見を葬るためにも A/B テストは有効です。例えば現場の人が、上層部から意見があったときに、現場の意見と上層部の意見を A 案と B 案にしてテストします。その結果によって、ユーザーの意見を盾にして上層部の意見を下げることができます。また、アウトソースで請け負っているところと発注元とで意見が対立した場合にも、A/B テストでユーザーの声を聞くというのはありだと思います。

 アメリカで本当にあった話で面白い事例もいくつかあります。月額オプションメニューの金額をいくらにするのかを迷っていて、$2.99 と $4.99 でA/B テストをすることになったのですが、事前の予想では当然 $2.99 の方が圧倒的に優位だと見ていたんです。ところが、実際に A/B テストを実施したところ、統計的な有意差は全くなかった。こういった結果が出ることもあるので、是非 A/B テストはやるべきだと思います。
 ちなみに、この A/B テストでは、ごく少数のユーザーに有償オプションのメニューを提示して、実際に申し込みがあると「ありがとうございます。現在実装が遅れていますが、1ヵ月後には用意ができるのでその際はまたよろしくお願いします」というメッセージを表示していたそうです。

API 公開やデータの共有

 最近、色々な機器と連携するアプリというものが出てきて、中国でもウェアラブルや家電との連携が活発に行われています。さらに中国では、以前は Apple との取引主体で経営していた「 Foxconn 」などが少量ロット生産も始めており、面白いアイデアであれば最初はお金を取らないで作るというほどに前のめりになって、面白いウェアラブル機器や生活家電などの発掘をしています。Foxconn 以外では、深圳の工場群もこの分野に積極的に乗り出していて、かなり盛り上がっています。アメリカにはそういった製造のプラットホームが無いんですが、最近はオバマケア(オバマ氏の医療保険制度改革)で話題になっているヘルスケア関係や、最近バズっているスマートホームに VC(ベンチャー・キャピタル)がかなり投資しています。

 このように、様々な機器との連携が進む中で、今求められているのは API の公開です。最初はアプリと機器やクラウドを連携させてエンドユーザーに使ってもらう環境を作るんですが、次にユーザーの利便性を提供するために 3rd Party のアプリにもこの環境を使ってもらおう、という風に必ずなります。3rd Party と連携するためには、API の公開が必要不可欠です。
 API にまつわる最近の面白い事例でいえば、Apple が6、7月頃に「 HealthKit 」を発表しました。これは、iPhone 上に API を作って、ヘルスケア系のアプリと Things が HealthKit を通して行うというもので、医療機関やSIerが協賛しました。ウェアラブルを作っている「 FitBit 」も協賛するはずだったのですが、最近これを取り下げました。というのも、FitBit が作っているウェアラブルは、デザインは良いんですが UI があまり無くて、これと連携しているアプリに UI があるんです。それが Apple のように間に入られて水平分業を強いられると、自分の機器を使っているユーザーに他のアプリを使う恐れが出てくるんです。こうなると User Royalty がどこに帰属するかというと、UIを持っている方に帰属するんではないかと考えたんですね。この事例は、こういったビジネスをやっている人にとっては、こうしたプラットホームが出てきたときにどうやって利用するかについて慎重に考える必要があることを示しています。

▼参考リンク
モバイルアプリビジネスのKii株式会社
次世代コミュニケーション展2014 – 大日本印刷

コメントは受け付けていません。

PageTopへ