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掌の上のパソコン(後編)Raspberry Piの利用法を考える

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by [2014年12月01日]

非常にコンパクトかつ廉価ながらそこそこの性能でLinuxが動作し、フルHD動画も扱えてしまう小さなボードコンピュータ「Raspberry Pi」。

前編では主にハードウェアやOSについてみてきましたが、後編ではその利用方法について考えてみたいと思います。

どのような利用法があるのか

前編でも触れたラズベリーパイ財団推奨のRaspbianをOSとして利用するのであれば、Debian Linux用に書かれたアプリケーションソフトならばソースコードがあればARM 11のオプション浮動小数点演算ユニットであるVFPを利用するようにコンパイルすることで、基本的に(メインメモリ容量やストレージ容量の許す範囲で)概ね利用可能ですし、標準でWebブラウザも搭載されているため、有線LAN環境があればそこに接続してインターネットブラウジングも可能です。

もっとも、搭載されているプロセッサのスペックからも明らかなように今時の一般的なパソコン並の性能が出るわけはなく、せいぜい1割も出れば上等、といった程度の貧弱な代物です。そのため、性能についてはある程度割り切って考え、過大な期待は抱かないようにする必要があります。

しかも、利用に当たってはOSとしてのLinuxに関する基本的な知識(※注8)が事実上必須で、重要な局面ではX-WindowなどのGUI環境ではなくコマンドシェルを用いたCUI環境を利用する機会がどうしても多くなるため、WindowsやMac OS X、iOS、あるいはAndroidといった近年のリッチなGUIシェルを搭載するOSしか知らない、今時のユーザーにはいささかハードルが高いという問題もあります。

 ※注8:特にshなどのコマンドシェルで一般的に利用されるコマンド各種と、シェルスクリプトの使い方を知らないと結構まごつくことになります。

逆に、そのハードルの高さが良く理解するユーザーには手軽に扱える原動力となっている面もあって、また製品開発上で低コスト化の代償となっている部分もあるため難しいところなのですが、こればかりは「そういうものなのだ」と納得して利用する他ありません。

もっとも、Linux利用を行う際に割と面倒なOSそのもののインストール作業は、OSインストール済みのシステムディスクのディスクイメージを入手し、専用ツールを用いてWindowsパソコン上などからSDメモリカードに書き込むだけ(※注9)でほとんど終わってしまいます。そのため、このあたりの作業手順と起動後のユーザー環境の初期設定の手順さえ知っておけば、初心者でも比較的容易にインストール作業を行えるよう配慮はなされています。

 ※注9:この作業のため、最低でも1台、母艦となりSDメモリカードの読み書きに対応する機能を備えたパソコンが必要となります。また、前編でも触れたとおりSDカードに対する相性問題があるため、インストール先となるSDメモリカードの選定にあたってはあらかじめ情報収集を行っておいた方が安全です。

NASとして使う

Samba公式サイト
Raspberry PiをNASやプリンタサーバ、あるいはActive Directoryのドメインコントローラなどとして使用する際には事実上必須のソフトウェア。

Raspberry Pi、中でもLAN付きのmodel B系の利用法として誰もが真っ先に思いつきそうなのがUSB接続のHDDをUSBポートに接続して、そのHDDをLAN接続のNAS(Network Attached Storage)にする方法です。

これはRaspbianにsambaをインストールし適当な設定を行うだけで利用できるため、手持ちのUSB HDDをNAS化したい場合、廉価に済ませる良い手段となるでしょう。

ただし、前編でも記したとおりRaspberry Piは搭載されているLANコントローラがSMSC(現・microchip)のLAN9512(model B)あるいはLAN9514(model B+)で対応する最高の通信規格が100 Base-TX、しかもLANコントローラ自体がHDDと同じUSBハブコントローラの下にUSBハブを介して接続されるため、最近の1000 Base-T対応のNASなどには絶対的な性能で確実に劣ります。

もっとも、sambaでは単なるNAS機能だけでなくWindowsのプリントサーバ機能、さらにsamba 4以降ではWindowsのActive Directory ドメインコントローラーとしての機能もサポートされているため、家庭内でActive Directoryを構築して使用したい場合などには、最も廉価なドメインコントローラとして利用できます(※注10)。

 ※注10:Active Directoryドメインコントローラには本来それなりに高価なWindows Serverをインストールされたサーバマシンが必要で、イニシャルコストもランニングコストもRaspberry Piをドメインコントローラにする場合とは比較にならないほど高くつきます。そのため、むしろNASとしてよりもこちらの方が利用価値が高いでしょう。

メディアセンターとして使う

Kodi(元XBMC)公式サイト
名称は変わったがRaspberryPiのサポートは変わらず継続している。

Raspberry Piをメディアセンターとして利用したいのであれば、OpenELECやRaspBMCといったメディアセンターアプリとしてXBMC(X-Box Media Center:現在はKodiに改名)(※注11)を搭載しDLNAクライアントとしても使用可能でコンパクトなLinuxディストリビューションも提供されています。

 ※注11;元来はマイクロソフトの家庭用ゲーム機であるXBOX上で動作するメディアセンターとして開発されたためこの名を与えられ、またその開発経緯からいわゆる10フィートUI(ディスプレイあるいはテレビから約3m離れて視聴する際に利用するのに適した画面構成のユーザーインターフェイス)を搭載するなどの特徴を備えており、DLNAクライアントとしてもDLNAサーバとしても利用可能な機能を搭載しています。

このため、単純にDLNA対応のネットワークストレージに保存されたコンテンツを適宜再生するメディアセンターとして利用するだけならば、(LAN搭載のmodel B系が事実上必須になりますが)それほど悩む必要も無いでしょう。

動画を見たり音楽を聴いたりするためだけにオーバースペックな性能のデスクトップパソコンを起動するのは消費電力的にあまり賢い選択とはいえません。そうしたニーズには(30フレーム/秒が上限となるものの)フルHDでの動画再生も可能なこのRaspberry Piは大いに役立つでしょう。

I2Cデバイスを使う

先にも触れたとおり、このRaspberry PiのGPIOヘッダーピンには組み込み機器で広く利用されているI2Cインターフェイスが含まれています。

そのため、このヘッダーピンから信号を引き出してI2C対応の機器と接続し、制御用ソフトを書けば対応機器がコントロールできるようになります。

もっとも、その「制御用ソフト」が世の中に存在していなければ、全部自分で書かねばならないというのが難点といえば難点(※注12)になります。

 ※注12:I2Cを利用する技術者の教育用としてならば、これは大きな利点になります。このあたりはあえてこのまま放置されていると言え、教材としてのこの機種の出自を物語る部分です。

とはいえ、大概の汎用I2Cデバイスのためのプログラムはソースコード込みで公開されているため、「制御用ソフト」が無い場合でも接続したい機器側のI2Cインターフェイスに用意されているコマンドさえわかれば、既存のソースコードを参考にして試行錯誤することで大概はなんとかできるでしょう。

どのモデルを買えば良いのか?

Raspberry Pi model B+

「Raspberry Piで遊ぶ」ならばこれが本命か。

都合4種類のモデルが提供されているRaspberry Piですが、ここまででも記してきたように、特定の目的での利用がはっきりしていて、しかもその利用形態でLANが不要、かつメモリ容量が256MBで事足りるのならば、安くて消費電力の小さなmodel Aかmodel A+を選択するのが良いでしょう。

一方、あれもこれも試してみたいという場合には、もうmodel Bかmodel B+、オンボード搭載のUSBポート数を考慮するとmodel B+以外に選択肢はありません。

なお、最初に発表されたmodel AとBは基板そのものが共通設計のためケースも共用可能で、新しいmodel A+とB+は機能拡張に伴うコネクタ配置変更や小型化などによりmodel A/B用とは異なる専用ケースが必須の設計となっているため、購入時にはその辺の手当も考慮する必要があります。

さらに、model A・Bとmodel A+・B+ではGPIOピンヘッダの配列が上位互換ですが物理的な配置の相違からmodel A・Bで利用できたGPIOピンヘッダ経由で接続される拡張基板がそのまま挿せない場合があります。

また、model B+では100Base-TX イーサネットコントローラ内蔵USBハブチップの型番が変更されてmodel Bのそれとは同系であるものの互換性が無いため、model A/B用として配布されていた古めのOSイメージファイルを利用するとこのUSBハブチップが正常認識されずうまく動作しない場合があります。

そのため特にmodel B+を使用する場合には、Raspbianをはじめとする各OSは最新版を確認の上入手する必要(※注13)があり、拡張基板を接続する際には物理的な干渉の有無を確認しておく必要があります。

 ※注13:現在各OSの公式サイトで配布されている最新版では当然にmodel B+への対応が行われています。

廉価に入手でき応用範囲も広いが、相応にハードルが高い

以上、最近話題のRaspberry Piについてみてきました。

日本国内では専用のプラスチックケースとセットで購入しても5,000円~7,000円程度と廉価(※注14)で、4GB以上32GB以下の適合するサイズのSDカードを用意すれば、あとはWindowsパソコンで使用しているUSBキーボードやマウス、それにディスプレイ、あるいはAndroid搭載スマートフォンのACアダプタを使い回せるなど非常に扱いやすく作られているコンピュータです。

 ※注14:ただし、輸送コストの問題があるためか。アメリカやイギリスで購入する場合と比較するとやや割高になっています。

もっとも、内蔵のCPUコアもGPUもプロセッサパワーが貧弱で、しかもOSがLinux前提となっているため、GUIシェルが利用できるとは言えWindowsパソコンユーザー、それもプログラムやLinuxにあまり興味のない人にはなかなかハードルの高い代物です。

ただし、電子工作で作った機器の制御を行いたい、といった場合にはシステム保護のためにI/O周りについて厳重な管理の行われているWindowsパソコン環境とは比較にならないほど扱いやすいのも確かで、Linux環境でのプログラミングや電子工作に十分な知識と技術のあるユーザーにとっては思考実験や訓練のための簡潔ですばらしい道具となるでしょう。

そのため、これは良くも悪くも「教育用」のコンピュータなのだと言えます。

▼参考リンク
Raspberry Pi
Samba – opening windows to a wider world
UM10204 I2C バス仕様およびユーザーマニュアル(PDFファイル)
Kodi | Open Source Home Theatre Software(Kodi(元XBMC)公式サイト)

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