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電池膨張でスマホが破壊された ~お前は既に死んでいる~

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by [2014年11月27日]

HTL21の側面クローズアップ
筐体の中央下部に内蔵されているリチウムイオン二次電池パックの電解液が経年変化で気化・膨張して上面のディスプレイパネルを押し上げて隙間を作ってしまっている。当然ながら、この状態では防水性能は全く発揮されない。

以前の記事でも少し触れましたが、現在スマートフォンやタブレット、あるいはノートパソコンなどのモバイル機器で一般に使用されているリチウムイオン二次電池(リチウムポリマー二次電池を含む)によるバッテリーでは長期間に渡って繰り返し充放電を行って使用した場合、経年変化で電極や電解液が化学変化を起こして電解液の主成分である有機溶媒が気化しバッテリーパックが膨張・変形する、俗に「妊娠」と呼ばれる現象が起こります。

この現象が起こり始めると次第にバッテリーの容量や端子電圧が低下して使用不能に陥り最終的には内蔵バッテリーパックの交換が必要となるわけですが、バッテリーパックの交換を自分で行えないタイプのスマートフォンやタブレットの場合、往々にしてユーザーが分解して内蔵バッテリーパックを取り出すことが一切想定も考慮もされていない構造(※注1)として設計されていたりします。

 ※注1:以前筆者が某社でAndroid搭載タブレットの修理の仕事を行っていた際には、筐体の厚みを最小に抑える目的でねじ止めなどを行わず強固に超音波溶着や接着されている機種が少なからずありました。そのため、内蔵バッテリーを修理センターレベルでも取り出して交換することができず、実質的に「バッテリー交換=製品そのものの代品交換」、あるいは「バッテリー交換=筐体の破壊」でメーカー工場で内蔵バッテリーパックのみならず筐体も新品交換せねばならないような状況に陥っていました。

もっとも、特にスマートフォンの場合、防水・防塵性能に必要となる水密性や気密性を確保する目的で、意図的に接着組み立てを多用して分解不能の構造としていると考えられるケースもあるため、こうしたユーザーによるバッテリー交換が不可の構造としてあることが全て悪いとも言えません。

しかし、この構造にはバッテリー交換が出来ないこと以外に一つ問題があります。

それは、そうした分解不能の密封構造を採用した機種で経年劣化に伴うバッテリーパックの膨張を吸収できるだけの十分なスペースが筐体内に確保されていない場合、逃げ場を失ったバッテリーパックの膨張による圧力が筐体の密封構造を破壊し、あるいは端末内部に収まっている基板などを変形・破壊してしまう恐れがあることです。

これは以前AppleのiPhoneで起きて大問題になったことがありましたが、何もiPhoneだけの問題という訳ではなく、Android搭載スマートフォンやタブレットでも十分起きうる問題です。

そこで今回はリチウムイオン二次電池の経年変化による膨張が内蔵バッテリーパック交換不可タイプのスマートフォンにどのような影響を及ぼすのか、約1年10ヶ月の使用でそのような状況に陥った筆者所有のHTC J butterfly(HTL21)を例に考えてみたいと思います。

※本稿では、リチウムイオン二次電池の「妊娠」でスマートフォンがどこまで壊れるのかを確かめるためにここまで症状の悪化を放置しましたが、本来ならばこれは爆発や発火事故を未然に防止する意味で、直ちにバッテリー交換を依頼するか機種変更して使用を停止すべき性質のものです。このことは特に強調しておきたいと思います。

何が起きたのか

筆者所有のHTC J butterfly(HTL21)の現状
液晶ディスプレイパネルが昔のトリニトロン管のごとく弓なりにしなって変形し、中央部からディスプレイパネルとバスタブ状に成型された筐体下部の接着が剥がれてバックライトの光が漏れている。むしろ、この状態でもなおディスプレイで正常に画面表示が行われている事の方を褒めるべき状況かもしれない。

始まりは9月初頭のある夜、電話がかかってきて暗い場所でHTL21本体を手に取ったときでした。

ディスプレイの画面はいつもの通りで何も問題なかったのですが、どこか変です。

よくよく観察すると、本体側面の接合部からディスプレイパネルのバックライトの光(※注2)がわずかずつですが漏れていました。

 ※注2:この光は通常使用の状態では筐体側面から漏れるようなものではありません。

普段明るいところで使っていたために気づかなかったのですが、ディスプレイパネルそのものがごくわずかに弓なりにしなるように変形し、中央部が浮き上がって接合部に隙間が出来て光が漏れるようになっていたのです。

通常ならばこういう場合、先にも触れたように経年変化を想定して設計段階から内蔵バッテリーパックの周囲にある程度空間の余裕を持たせておく、あるいはバスタブ状の本体下部をわざと柔らかい材料で作って変形しやすくしておき、その部分の変形によって受けた圧力を逃がす、などの対策によって膨張圧でディスプレイパネルなどの主要部品に悪影響が出るのを防いでいます。

しかし、そうした対策が不十分だったのか、そうしたメーカーが設計時に想定していた値を大幅に超えた膨張が発生したのか、それとも筆者が気づかない内に無意識に内蔵バッテリーパックの秘孔を突いてしまったのかは定かではありませんが、どうやら筆者のHTL21では内蔵バッテリーパックの内部でディスプレイ中央が目に見えて判るほど盛大に持ち上げるという、恐ろしい膨張が発生してしまったようです。

なお、ディスプレイパネル全体がバスタブ状の筐体下部から浮き上がるのではなく、中央だけが持ち上がって上下端が剥がれず弓状になったのは接着部分の面積が上下の部分だけ大きくしっかり接着されていることが原因のようです。

最近のスマートフォン全般に言える話ですが、このHTL21ではディスプレイの表示部をエッジぎりぎりまで大きくしてフレームを狭くするために、左右側部の接着面を可能な限り細く設計していたことが、この場合は裏目に出てしまったと言えそうです。

 ・・・これはやばいかもしれない。

そう思ってバッテリー残量やら何やらをチェックしてみたのですが、この時点では至って正常に動作しており、また前回の機種変更からそろそろ2年が近づいていることや、仕事が忙しくてとても携帯電話ショップなどに行っている暇が無かったことなどから、とりあえず念のために手持ちの大容量の外部バッテリーを一緒に携行することにして、しばらくこのまま様子見としました。

音量調節ボタンが戻らない

HTL21側面の音量調節ボタン周辺
左側の音量を小さくするボタン(赤丸内)が押されっぱなしの状態でロックされる現象が頻発し、これは筐体の隙間にマイナスドライバーを差し込んでボタン周りの筐体側面を手前側に広げると一発で解決した。つまり、奥の方からの圧力でこの症状が発生していることがわかる。

その後しばらくの間、HTL21にはそれ以上目立った不具合も生じず特に問題なく使用できていたのですが、その後2週間ほど経過したあたりから一つ困った問題が起き始めました。

HTL21を縦画面で使用する場合に右側面上部に配置されている音量調節ボタンの内で中央よりに位置する、音量を小さくする方のボタンを押したらその操作がそのままロックされてしまい、解除されなくなり始めたのです。

この時点では(そして記事執筆時点でも)HTL21のディスプレイパネルの接着を完全に剥がして内蔵バッテリーパックを露出するところまで分解していないので真相は定かではないのですが、ここで起きた現象から推測する限り、どうも膨張した内蔵バッテリーパックが音量調節ボタンの奥にあるスイッチ基板を圧迫・変形させ、それが原因でスイッチの接点が接触したままになりやすくなったようです。

実のところ筆者の場合、通常この端末はマナーモードにして使用しているため、音量を小さくする方のボタンがずっと押されたままになっていても特に致命的な実害はありません(※注3)。

 ※注3:強いて言えば画面のスクリーンショットを取る操作が非常にやりづらくなった程度です。

とはいえ、こんな症状が出るというのはいかにも不気味です。

このトラブルは、この音量調節ボタンが筐体側面に開口部を設けていて強度的に一番「弱い」ポジションにある基板であったために真っ先に影響が表面化したと考えられ、筐体内部では膨張した内蔵バッテリーパックの圧力をディスプレイパネルを持ち上げただけでは逃がしきれず、さらにディスプレイパネルが弾性変形で元に戻ろうとする際の復元力も加わるため、周辺の他の各部品にも相当に大きなストレスをかけ続けているであろうことは容易に推測できます。

本当のところを言えばこの時点で、いやそもそも問題が発生していることに気づいた時点で、問答無用でメーカー修理&バッテリー交換に出すべき状態でしょう。

しかし、あと2ヶ月程度で機種変更を予定している端末のためにわざわざバッテリー交換やら修理やらをメーカーに依頼するのは何とも不経済な気がしますし理不尽な気もします。

また、個人的にはこのまま症状が進むとどうなるのか、凄く気になります。

そこで、

 最悪の場合は機種変更のスケジュールを前倒しすれば良い。 

そう判断してあえて修理に出さず、このままHTL21の使用を続けることにしました。

進む剥離

HTC J butterfly(HTL21)
機種変更後1年10ヶ月経過の状態。液晶保護フィルムを貼ってあるが満身創痍である。赤丸内が「戻る」ボタンで、このボタンから反応の低下が徐々に広がっていった。

そうしてしばらく使用を続けていると、側面から漏れるバックライトの光の長さがどんどん伸びて、全高の7割から8割程度にまで広がってしまい、ぱっと見にもディスプレイが湾曲しているのが判るレベルまで変形が進みました。

つまり、側部の接着面がそれだけ剥離してしまった(※注4)訳です。

 ※注4:その一方で、それだけ常時高い圧力がかかり続けているにもかかわらず剥離していないことから、筐体上下端部の接着は非常に強固に行われていることがわかります。

この状態でディスプレイパネルを押し込んで正しい位置に戻してみても手を離すとすぐに元の状態に戻ってしまい、指先には異様な弾力が返ってきます。

このことから、内蔵バッテリーパックが設計時に意図して持たされた空き容積を大幅に超えて膨れ上がってしまっていることが推測できます。

しかも、この頃から画面下部に設けられたハードウェアによる「戻る」ボタンの反応も極端に悪くなり始め、タッチパネル全体の反応も徐々に悪化しはじめました。

どうやら、内蔵バッテリーパックが膨張して生じた圧力がここにも影響を及ぼし始めたようです。

内蔵バッテリーの性能低下

Wizardry 戦乱の魔塔 起動中ロード画面
このゲームに限らず、内蔵バッテリーのみで動作させているとこうしたダウンロードプロセスの進行中にいきなりシステムが落ちるようになった。

そんな状況下で11月に入り、所用で外出した際にうっかり外部バッテリーを携行するのを忘れたことがありました。

その時の内蔵バッテリーの充電率はAndroid 4.1の申告を信じるならば83パーセントで、それまでならば外部バッテリー無しでも何時間かは特に困らない程度の充電率の筈でした。

ところが、その状態でたまたまとあるゲームを起動しアップデートファイルのダウンロードが始まったところ、唐突に画面がブラックアウトしました。

その状態で電源ボタンを押すとhtcのロゴ画面とauのロゴ画面が続けて表示される、電源断の状態からの起動シーケンスが開始されました。

つまり、ダウンロード中に勝手に、しかも待機状態になるのではなく完全に電源が落ちてしまったことになります。

これは以下のメカニズムで起きたと推測できます。

 1:ファイルダウンロードに伴う通信と内蔵ストレージへのアクセス、それにダウンロードされたファイルの処理が重なって消費電力が増大
 2:内蔵バッテリーの端子電圧が1の消費電力増大で急降下し、閾値を割る
 3:入力電圧が閾値を割ったことで保護回路が働き、システムがシャットダウン

通常、リチウムイオン二次電池を使用する機器の場合、入力電圧は過放電による化学反応でバッテリー性能が低下するのを防ぐために保護回路により常に厳しく監視されているのですが、ここでは問答無用でその保護回路が電源を遮断してしまうほどの電圧降下が起きてしまったと考えられます。

こうした現象が起きる理由はただ一つ。

遂に、経年変化などによる内蔵バッテリーパックの容量低下、いやこの場合は症状から内蔵バッテリーパックに含まれるバッテリーセルの故障が表面化したのです。

これだけ内蔵バッテリーパックがぱんぱんに膨れ上がっていたのですから、よもやまさか元の電池の性能が維持できている筈が無いとは思って用心していたのですが、まさかこんな極端な形で表面化するとは思ってもみなかったことでした。

この時点で、筆者が早急な機種変更の実施を決意したのは言うまでもありません。

ガラケー時代と同じつもりでいては駄目だった

以上、筆者所有のHTL21で内蔵電池の妊娠が発覚して以降に起きた現象を記してきました。

電池パックが膨張する現象そのものはガラケー時代に使用済みバッテリーパックを交換用バッテリーパックと入れ替える際にそのあまりの変形ぶりに愕然としつつ思い知らされていたのですが、まさかスマートフォンで内蔵バッテリーパックがここまで激烈な膨張を起こすとは思ってもみませんでした。

もっとも、冷静に考えてみるとガラケー時代のバッテリーパック容量は900mAh前後といったところで、今回のHTL21の内蔵バッテリーパックの容量は公称2,100mAhもあって倍以上に増量されています。

つまり、同じように経年劣化で電解液の有機溶媒が気化したとするとガラケーの2倍以上の膨張・変形が内蔵バッテリーパックに起きうると考えられるわけです、

ソニーエリクソン W44S 電池室周辺部のクローズアップ
ご覧の通り、バッテリーパックは筐体内に枠構造で区切られた電池室を設けて、ここに取り付けて使用する。こうすることで経年変化によりバッテリーパックが多少膨張しても基板類に影響が及ばないようにしてある。

ガラケーの場合は一般にバッテリーパックそのものが交換可能で、しかも筐体構造そのものが電池室を他から強固に隔離した構造になっていましたから、多少バッテリーパックが膨張してもその電池室の構造が本体を守り、また電池室の空き容積を超えて膨張する場合でも電池室の蓋の部分が変形したり脱落したりしてその膨張圧を逃がしてくれていました。

そのため、ガラケーでは内蔵バッテリーパックが「妊娠」しても末期の電池容量の低下以外には致命的な問題には比較的なりにくかったのですが、バッテリーパック交換不可のスマートフォン、それも大容量バッテリーを搭載する機種をそんなガラケーと同じように扱っては駄目だったということなのです。

もっとも、そのことを踏まえて考えても、ディスプレイパネルの中央部が内蔵バッテリーパックの膨張圧でメリメリと持ち上げられ、昔のトリニトロン管のごとき円筒状の画面になってバックライトの光が隙間から漏洩するというのも、またその電池パックの膨張のせいで音量調節ボタンが誤動作するというのも、共に2年前にこの機種を購入した際には夢想だにしなかったことでありました。

今回の症状が一体何故起きたのか、その根本原因はまだ判っていない(※注5)のですが、内蔵電池の交換が不可で薄型、しかもこのHTL21の1.5倍の容量の電池を搭載したスマートフォンが珍しくない昨今の状況を考えると、今後この種の電池膨張による筐体破壊あるいは筐体接合面剥離はあちこちで多発しそうな気がします。

 ※注5:繰り返し充電回数が規定値を超過した可能性や衝撃で内蔵バッテリーパックに異常が発生した可能性がありますが、筆者自身にはそれほど頻繁に充電を行ったりどこかにこの端末をぶつけたりした記憶がありません。

電池交換&修理か機種変更か

実は今回筆者が内蔵バッテリーパックの交換&修理を躊躇した理由の一つに、このHTL21への機種変更前に使っていたガラケー(ソニーエリクソン S004)のバッテリーパックで今回と同様に機種変更直前の時期に寿命が来て、HTL21の発売時期の関係でやむなく交換用バッテリーを購入して交換したものの、結局短期間でHTL21への機種変更となってその電池をほとんど使わないままに終わってしまってもったいない思いをした、という経緯がありました。

ことに今回は発覚の時点で既に手遅れで、内蔵バッテリーパックの交換だけでは済まず他の部分にも色々悪影響が出ていますから本体各部の修理も必要な状況で、機種変更前のわずかな期間のために修理コストを投じる気にどうしてもなれなかったのです。

これがせめて機種変更の予定時期まで半年以上時間があったならば、ためらわずに本体の修理に踏み切っていたところだったのですが、さすがに機種変更の2ヶ月~3ヶ月前という微妙な時期だと、思い切って機種変更の前倒し実施にコストをかけた方が無駄な投資にならず安全面でも望ましいと言えるでしょう。

無論、2年間目立った膨張も起きないまま使えるのなら、それに越したことはないのですが。

▼参考リンク
携帯電話の電池パックに関するお知らせ | 個人のお客さまへのお知らせ | お知らせ | モバイル | ソフトバンク
安全で正しい使い方:リチウムイオン二次電池|一般社団法人 電池工業会
工業会からのお願い:リチウムイオン電池をご使用の際は次のことを必ず守ってください|一般社団法人 電池工業会
「リチウムイオン電池に係る危険物施設の安全対策のあり方に関す
る検討報告書」

リチウムイオン電池 – Maxell

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