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“起業家のアイデア×ドコモの資産”でスタートアップの場をつくる『39works』

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by [2014年12月01日]


 起業家をサポートするプログラム『ドコモ・イノベーションビレッジ』を展開している株式会社NTTドコモ・ベンチャーズ(以下ドコモ・ベンチャーズ)が、新たにスタートアップの場として『39Works』を立ちあげた。一見すると、39Worksとドコモ・イノベーションビレッジは似たようなサービスにも見える。そこで、39Worksの役割、さらにはドコモがやる意味について、ドコモ・ベンチャーズにお話を伺ってきた。取材にご対応頂いたのは、同社でスタートアップ支援を担当されているSenior Directorの井上拓也氏(右)とDirectorの金川暢宏氏(左)のお二人だ(以下敬称略)。

株式会社NTTドコモ・ベンチャーズ
 NTTグループの「スタートアップ・ベンチャーコミュニティの総合窓口」。情報通信関連分野において、今後成長が有望視される様々な技術・ノウハウを持つ国内外のベンチャー企業等への投資を行なう、NTTドコモが100%の出資をする会社。

事業内容

  1. ベンチャー企業等への出資を行うコーポレートベンチャーファンドの運営
  2. 起業支援プログラム「ドコモ・イノベーションビレッジ」の運営
  3. 投資活動及び起業支援活動と有機的に連携する積極的な事業開発の推進

アイデア段階から支援する「39works」

――39worksとはどのようなプログラムですか?
井上 2014年7月1日に新しくスタートした39worksの特徴は、アントレプレナー(起業家)と共同で事業を創るという点です。企画の段階から一緒にお話しさせて頂き、POC(Proof Of Concept=事業性の検証)に必要な事業費、マーケティング費、開発費は全てドコモが提供します。事業性が検証できれば、共同で事業展開をしていきます。ドコモ・ベンチャーズはこれまでやってきた投資やイノベーションビレッジは、既存のものへの支援でしたが、39worksはアイデア段階のものから支援し、資金を提供します。
 
―――ドコモが39worksを実施する狙いは?
井上 ドコモはR&D(研究開発部門)を持っているキャリアですが、これからの時代に必要なのはオープンイノベーションです。アントレプレナーが持つ“世の中の課題を捉えて迅速に対応していく”というセンスと、大企業のもっているアセット(資産)をうまく融合させていくことによって、新しい価値をよりスピーディに社会へ提供していきます。39worksは、ドコモの既存事業の強化や短期的な収益が目的ではなく、将来、ドコモの新しい事業の柱になるような新規事業を輩出したいと考えています。

―――アントレプレナーとの接点は?
金川 現在はVC(ベンチャー・キャピタル)との連携や、TechCrunch Tokyo(スタートアップのイベント)でのブースプレゼンなどが中心ですが、ホームページからの問い合わせも受け付けています。募集は随時なので門戸は広いといえるかもしれませんが、何でもありというのではく、我々のテーマと、アントレプレナーのテーマがどこで一致できるのかを最初の段階である程度詰めていくという戦略的なやり方をしています。
 
井上 事業アイデアに関しては、持ちこみもあれば、こちらから提供する場合もあります。我々は海外の現地法人もありますので、最新のトレンドを取り入れた技術と情報はかなり蓄積しており、アントレプレナーに対して、実際に事業をやっている立場から提供できます。

―――39worksの案件はどこが決裁を行ないますか?
井上 39worksは技術提供元であるドコモのR&Dのサポートを受けていますし、アセットの出し元もドコモです。最終的にはドコモ側のジャッジを踏まえたものになります。

―――例えばドコモの通話事業に影響のあるIP電話などへの出資の可能性はありますか?
井上 タブーは無いです。ドコモの事業強化が、ドコモ・ベンチャーズの最大のミッションなので、我々がやらなくても誰かにディストラプトされるということであれば議論します。ドコモの本業に関わるからダメとか、その分野は対象外ということはありません。

金川 短期的な影響をその先のグロースで埋められるビジネスであれば、ご一緒できると思います。今のものを守っているだけでは新しいものが生まれないので、そこが具体的な話として詰められる事業であればいいですね。

39worksが提供できるもの

―――ドコモが提供できるアセットについて教えてください。
井上 ドコモからは人・モノ・カネを出し、技術に関してはR&DがAPI等を提供します。音声認識や画像認識など、ネットワーク型に限定しないサービス系の技術もあります。知財、経理といったアドミン的な機能は、我々ドコモ・ベンチャーズがサポートします。POC期間中の開発・マーケティング費用は、こちらが負担します。また「39works」というセカンドブランドで事業性を検証するプログラムなので、dメニュー(ドコモのスマホ向けポータルサイト)での紹介や、ドコモショップでチラシを配るといったドコモブランドの提供はしません。

金川 新規事業を立ち上げるには、最低でもハスラー(ビジネスをドライブする人)、ハッカー(プログラムを書く人)、デザイナー(デザインをする人)という3人が必要です。例えば自分はプログラムを書けるけど、ビジネスに関してはあまり得意じゃないという人もいますよね。そういった場合は、我々のネットワークから人材を紹介し、チーム編成支援もします。

―――ネットワークの紹介もされるのですね。
井上 例えば、スタートアップが新技術を使った決済サービスやショッピングモールを構想しているような場合、ビジデブ(ビジネスデベロップメント)支援はかなりサポートできると思います。単に窓口を紹介するだけでなく、我々も一緒に共同で作業しているという話ができるからです。

金川 39worksは支援に留まらない共同事業です。われわれも責任を持ち、資金を出すだけではなく、新規事業を成功させるために必要なことは何でもやっていくというスタンスでいます。スタートアップの方と同じ目線に立ち、これまでの大企業とスタートアップのそれとは異なる対等な関係性を築いていきます。

―――39worksならではの取り組みはありますか?
井上 アイデアは持っているが会社はまだ立ち上げてないという方を対象に、我々が契約しているサービス運営会社に依頼し、アイデアの事業性検証を代行してもらうというスキームがあります。この取り組みによって、会社を辞めるなどのリスクを取らずに、働きながら事業性の検証ができるようになっています。かなり特徴的な取り組みで、立ち上げ当初にいろいろと探してみましたが、これに類似したプログラムは世界でも存在していませんでした。39works独自のものと言えるかもしれません。
 シリコンバレーなどであれば、雇用自体の流動性も高く、失敗を許容する文化もありますが、日本では事業が定まって無い段階で今の会社を辞めたり、会社を立ち上げたりというのはリスクが高いように思えます。我々のほうでプロジェクトチームを作り、サービス運営会社を利用することで、事業性を検証してから会社を作るという流れができます。会社を作った際にはドコモ・ベンチャーズで出資も検討できますし、本当の意味でスタートアップを支援するため、さまざまなアクセレーションも可能になっています。

金川 このほかにも、EIR(アントレプレナーインレジデンス)という制度を用意しています。これは、アントレプレナーの方に企業の中に入って頂き、ドコモが給料を支払いながら事業を進めるというものです。

―――39worksには起業していない個人も参加可能ということですが、ドコモの社員の方も対象でしょうか?
井上 社外の人材が中心ですが、ドコモの社員のケースもあります。社内外を問わず、良い人材であれば登用していこうという考え方です。実際、ここにいる金川が社内起業家として事業を立ち上げています。

金川 店舗における顔パス決済の実現を目指した『KAOTAS(カオタス)』を2014年6月にリリースし、2ヶ月ほど実際に運用しました。事業性を検証した結果、導入障壁やテクノロジーとしての課題が出たため、いったん終了というかたちになりました。日本ではビジネスとしてまだ存在しない取り組みでしたが、39worksには状況を見ながらどんどんトライできる環境があるということです。

井上 今、仕込んでいるのは外部のアントレプレナーが多いですが、社内の人材を登用して会社としての新規事業創造力を磨くカルチャーを作ることも非常に重要だと考えています。『KAOTAS』のように2か月でサービスを停止するのは、投資もしているため非常に難しい判断です。しかし、新しいものをスピーディーに出すには、スピーディーに止める必要があります。あるタイミングで事業性がなければすぐにに終了するということです。
 最初に決めたKPI※に対して事業性を検証する方式をとっており、非常に迅速な判断が可能です。すぐに止めるという判断は決してネガティヴな意味ではありません。そこで培ったリソースを早く次の事業に投下することが重要です。早く失敗することが次の成功に繋がる。これが39worksの考え方です。※Key Performance Indicator。ここでは業績を評価する指標。

成功する鍵は「情熱」

―――スタートアップを考えている方にメッセージをお願いします。
井上 最終的に誰に投資するのかというのは、最後はその人の情熱や思い次第です。結局、新しいものを作るので、成功するかどうかは誰もわからない。思考やスキルも大切ですが、世の中に対して貢献するんだという素直な思いが大切だと思います。精神論のように聞こえますが、1人で事業をするというのは本当に大変です。それを乗り越えて最後のビッグピクチャーを実現していく原動力は、モチベーションや情熱です。

金川 日本では、スタートアップや新規事業の立ち上げはリスクが高いと言われおり、優秀な方が企業にいるというケースは少なくない。企業の目標に対して1つのパーツとして動いていく中でも、問題意識やアイデアを持つ人たちがいると思うんです。39worksはそういう方々にとっても良い環境ですし、支援もしていきたい。開発の方がいないのであれば紹介も可能ですし、自分で会社を興す前にサービスが本当に価値があるかを一緒に検証できます。

―――将来のアントレプレナーたちにヒントを頂けますか?
井上 O2O(Online 2 Offline)やシェアリングエコノミーに注目しています。リアルの世界の課題をネットをうまく使って解決していくことがこれからどんどん増えていくでしょう。そういう観点で日々の生活を改めて見ると、課題はたくさんありますし、その1つ1つがビジネスチャンスだと思います。

金川 ネットを利用することで、個人の持つリソースの活用に対する考え方が変わるように思います。物流系などでも、大企業でないスタートアップだからこそできることもあるのではないでしょうか。VR(Virtual Reality)などは、現状は一部のテクノロジー好きな人に注目されていますが、近い将来導入コストが変わるタイミングが来ると感じています。
 ユーザーの課題にフォーカスすることが第一ですが、こういった解決手段になるんだというのを今のうちから仕込んでおくことが大切だと思います。

▼参考リンク
39works
株式会社NTTドコモ・ベンチャーズ

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