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大学生クリエイターユニット超水道インタビューその3~ghostpia制作秘話・前編~

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by [2014年11月07日]

デンシ・グラフィックノベル『ghostpia』が大反響を呼んでいる大学生クリエイターユニット・超水道より、代表のミタヒツヒトさんとイラストレーターの山本すずめさんにお越しいただいた、ググっとロングなインタビュー。第3回にあたる本記事では、ついに『ghostpia』の謎に迫ります! 

話題の最新作『ghostpia』の第1話

▼目次
大学生クリエイターユニット超水道インタビューその1~超水道はこうして生まれた~
大学生クリエイターユニット超水道インタビューその2~iPhoneアプリ開発の道~
大学生クリエイターユニット超水道インタビューその3~ghostpia制作秘話・前編~
大学生クリエイターユニット超水道インタビューその4~ghostpia制作秘話・後編~
大学生クリエイターユニット超水道インタビューおまけ~超水道こぼれ話~
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連載形式でリリースしたのは「デンシ・ノベル」の先にある新しい形にチャレンジしたいから

──これまでのアプリは最大でも2分割(佐倉ユウナの上京・上/下)でしたが、『ghostpia』はどうして連載という形をとられたんでしょうか?
ミタ 超水道が「デンシ・ノベル」というものに満足してしまったという背景があります。『佐倉ユウナの上京』や『森川空のルール』を制作して、同じデンシ・ノベル形式でできることがだいたい見えてしまったので、次は全然違うことをやろうと考えました。具体的には、もうちょっと絵を増やそう、かといっていわゆる美少女ゲームみたいな方向は面白くないし、絶対にやめよう、と。それと、これまでは「ドン!」とアプリを出すと、プレイヤーの皆さんが読み終わってから多少のコミュニケーションが生まれるだとか、レビューを書いていただける……といったような反応があったわけなのですが、そういうものは一度やめて今までの逆のことをしようという考えでやっています。大きなものをドンと出して瞬間的な話題を狙うより、小さいものを出して小さい話題を継続的に狙う、というやり方を試してみよう、と。ノベルゲームには色々な提供のしかたがありますし、そもそもノベルゲームというフォーマットが今では既に儲からない上に、皆さんの関心を惹かないものになりつつあるので……。美少女ゲーム人口が減り続けているというお話も伺いますし、ちょっと新しいことをやらなきゃいけないんじゃないの? ということで連載形式にしました。

──かつて『ひぐらしの鳴く頃に』がヒットしたのも半年ごとのリリースが話題になった、という部分がありますよね。そういうものを参考にしたのかなと思っていました。
ミタ 実は超水道はあまり同人出身のノベルゲームとは関わりがないんです。もちろん『ひぐらし』も教養としては知っていますが……。

すずめ 知識としては知っています。

ミタ 『ひぐらし』はオタク的な文化圏にありますよね。『ghostpia』は違います。

すずめ 1クールごとにアニメを追いかけている人って多いですよね。今期はこれ、来期はこれだから、という風に。連載ではありますが、あれはむしろ僕らには馴染みが薄いものですね。『ghostpia』はそこまでせわしなくしたくなくて。

ミタ アニメが嫌いなわけではありませんし、見たいものは借りてきてでも見ますが、例えば、Twitterで毎期ごとにその期の旬アニメで盛り上がり、消費して、忘れて……みたいな感じはあまり好きじゃなくて。

──私もオタクですが、その感覚、よくわかります(笑)

より動的な物語作りを実現させたい──「デンシ・グラフィックノベル」

──『ghostpia』はリリース直後からTwitterでたくさんの方に言及されているのを見ておりまして、「コレはウェーブが来てるのでは!?」と私は思いました。皆さんは何か手ごたえのようなものは感じてらっしゃいますか?
ミタ そうですね……『ghostpia』は、ノベルゲームをよくプレイされている方ほど高評価な傾向にあるように思います。「ghostpia、いいね」と言ってくださっている方は、”手練”だなと内々で話していますね(笑)

──UI(ユーザーインターフェイス)周りが特徴的ですよね。『ghostpia』レビュー記事で言及したのですが、10年ほど前漫画のように進んでいくアダルトゲーム『白爪草話』や『Quartett!』が発売されたんです。

Quartett! デモムービー

ミタ ちょっと知らないですね……。

──すみません(笑)当時の最先端の技術が使われていたのですが、開発費が回収できずにブランド(Littlewitch)が無期限活動休止になってしまいました。当時のPCの限界に挑んでいた感じです。
2人 あー……。

ミタ とてもゼロ年代っぽいお話ですね(苦笑)

──そうですね(苦笑)それに近い動きで進んでいくノベルゲームがiPhoneで遊べるのはすごいな~と思ったのですが、特にご存じだったというわけではないんですね(笑)
ミタ 知らなかったのですが、単体では決して珍しい要素ではないので、どこかのゲームと被るだろうとは思っていました。

──動かそうと思ったきっかけはなんですか?
ミタ そうですね。まず「デンシ・ノベル」にもう1つ何かを加えたかったんです。デジタルノベルと電子書籍の2つを合体させたものが「デンシ・ノベル」なので、もう1属性足したかった。紙芝居的な美少女ゲームの演出は既に世に溢れていますし、方向性を変えてコミックも足したらどうだろうと思ったんです。

イラストレーター・山本すずめ、奮闘する!

──イラストの作業が大変だったのではありませんか?
すずめ ええ。多いですね(笑)

──企画が立ちあがってからシナリオが上がってきて、イラストが完成するまでどのくらいかかりましたか?
ミタ 今年の夏前だったので……『ghostpia』のために動けるようになったのが6月末で、そこから8月半ばの夏コミ(C86)まで企画をガーッとつめて、その間の数週間を音楽担当の高野さんと過ごしました。夏コミが終わった後本文制作開始、という形になりますね。

──超短期決戦ですね。
すずめ 超水道はいつもそんな感じです。

──ということは、すずめさんはイラストを描くのが速い方なんですね?
すずめ どちらかというと速い方だと思います。

──「こういう感じの絵があるといいよね」ということを言われた場合、その場でフィードバックされることもあるんですか?
すずめ 結構そういうのが多いですね。

ミタ それしかないよ(笑)

すずめ 『ghostpia』のときは本当に、ミタ君が上げてきたプロットだったりシナリオの本書きを見ながら、このシーンをこういう風にしようと、スケッチブックを開いて1つずつシーンを書きだしていって。書きだしたシーンを今度はA4くらいの紙に絵コンテみたいに下書きして、さらにそれをスキャンしてデジタルで着彩、加工……という感じです。段階を踏んで作っていきました。

──イラストの加工がかなり特殊ですよね。苦労されたんじゃないですか? どのようにノイズっぽさを出していったんでしょう?
すずめ 発想の元になったのは、手描きで作ったアニメの『ghostpia』PVなんです。思いつきであれを実際のアナログのVHSに1回ダビングして、その時に発生したノイズをそのままPCに戻してやった時にノイズ感がちょうど良かったというか心地良かったというか……ともあれ発想の元になっています。そこからひたすらアナログ的なノイズ感を出すためにはどうしたらいいだろうと(Photoshopの)バッチやアクションを組み続けました。

『ghostpia』PV

ミタ 秘伝のスパイスみたいな感じですね。

すずめ 2日ぐらい組み続けました。

──たった2日で組まれたんですか!?
すずめ いや、結構色々無茶をしました(笑)

ミタ すずめ君が2日かかるって相当ですよ。

──そうなんですね……。そもそもどうしてVHSを経由するという過程が発生したのでしょうか?
ミタ まず高野さんの音楽がノイズっぽいというのが先に決まっていたので、それを『ghostpia』のビジュアル的な雰囲気、絵と音楽を『ノイズ』という共通項でつなごうと考えたんです。ノイズっぽさにも”必然感”があったほうがいいだろうなと思いました。

──ちなみに、原画を見せていただくことは可能ですか?
ミタ すずめ君が原画を見せるのが嫌でなければ。

すずめ かまいませんよ。

──ありがとうございます! 是非お願いします!

本邦初公開! 『ghostpia』原画と加工後の比較!

というわけで『ghostpia』第1話で実際に使用されたイラストと原画を比較しちゃいます。

その1 小夜子とパシフィカさんの再開
加工前

加工後

実画面

その2 あくろふぉりびあ!
加工前

加工後

実画面

雰囲気が変わっていくのがよくわかりますね。

SAIで描画、Photoshopで加工

──この加工は相当手間がかかったんじゃないでしょうか?
すずめ 順序を間違えたりすることはありますね(笑)先にこの加工をやらなきゃいけないのに、別の加工先にやっちゃったから、質感が変わっちゃった、みたいな(笑)

──色鉛筆のような雰囲気に見えますが、テクスチャを使用されているんですか?
すずめ 実はあんまり使っていないんですよ。乗せているのはパステルのようなザラっとしたテクスチャだけで、後はほとんど加工で雰囲気を出しています。

──屑の山の部分は水彩色鉛筆なのかなと思ったのですが、デジタルで描かれたんですか?
すずめ キービジュアル(ページ最上部)についてはアナログが元になっています。アナログイラストをスキャンしてデジタルで加工した、というような感じです。

──それでは自作のテクスチャを使用されているんでしょうか?
すずめ 自作といえば自作なんですが……ブラシを作りました。自作ブラシで塗りつぶして作ったテクスチャのようなものはあるんですが、アナログから素材を取り込んで、というのはありません。

──ちなみに使用ソフトはなんですか?
すずめ いつもSAIを使っているのですが……今回もSAIを使いました(笑)本当はぺインターを使おうと思っていたんです。でも、ぺインターってレイヤーを透明なまま書き出せないんですね。何故か紙(背景)と合成されて白く書き出されてしまう。透過レイヤーが白くなってしまうので、ちょっとそれは良くないなということで候補から外しました。また、さすがに1人では裁ききれない量なので、イラストのお手伝いに斑(ぶち)君ともう1人、名古屋に住んでいる高校生の新生すずし眉毛(しんせいすずしまゆげ)君という人がいまして……。彼らに手伝って貰うにはやはりぺインターが使えないんですよね。流通していませんし、すずし眉毛君は高校生なのでお金がありません。透過ができないと作業もすすまないということで、SAIを採用することになりました。

──SAIとPhotoshopを併用されているんですね
すずめ そうですね。Photoshopは基本的に加工に使っています。

──イラストの加工もそうなのですが、フォントもかなり特殊ですよね。何かこだわりのようなものがあるんでしょうか?
ミタ 例えば雑誌などに印刷された作品だと、フォントというのは文章の「顔」だと思うんです。でもノベルゲームは基本的にWindows向けに流通している以上仕方が無いのですが、MSゴシックだったりメイリオだったりして、あれは不細工だなぁと思っていました。ですので、こだわりたいな、と。『森川空のルール』を作るときに初めてフォントを探したのですが、無料のものがかなり豊富にあると知りました。それ以降ずっと新しいフォントの情報をキャッチするようにしています。次の作品で使えるものはあるかな? と。

──『ghostpia』で使われているフォントを教えてください
すずめ 本文が刻明朝、UI周りはロゴタイプゴシックを使っています。

音楽制作は泊まり込みで

──音楽にもこだわっていらっしゃるとのことですが、高野大夢さんに外注したきっかけを教えていただけますか?
ミタ 高野さんは共通の友人から紹介していただきました。こういう音楽を作ってくれる人、ということではなく純粋に友達として知り合うことができました。

──ご縁があったんですね。ghostpiaの音楽はかなり特徴的ですが発注はかなり難しかったのではないでしょうか?
ミタ はい。大変難しかったのでその質問は答えがいがあります(笑)実は、色々な問題は高野さんのご自宅に泊まり込んで解決しました!

──すごいですね(笑)全体的にノイズが入っているような曲調ですが、どのようにディレクションをされたんですか?
ミタ 高野さんは電子音響にとても造詣の深い方で、それこそアカデミックなレベルで現代音楽やクラシックに精通されているので、ノイズなどについてはお任せしています。ただ曲にどのようなものを求めるのかとか、どういうリズムにしてほしいとか、そういったお話は実際に「ここはもうちょっとこうしてください」とお願いしました。あとはもっと漠然と「もうちょっと上がる感じがいいですね」と僕たちが言うと、高野さんが「じゃあこういう感じでどう?」とレスポンスを返してくれる。その場でディレクションしてその場で調整していただくという感じで、全19曲お願いしました。1ヶ月で書いてくださいました。

──1ヶ月! すごいですね。Menoさんの歌入れはどのような感じで行われたんですか?
すずめ 宅録です。高野さんの作業場をお借りして、ディレクションや歌入れをさせていただきました。

──Menoさんをボーカルに指名されたのはどういう経緯だったのでしょうか?
ミタ 高野さんはインディーズのCDにも楽曲を提供していらっしゃるんですが、Menoさんがボーカルを担当してるCDもあるんですね。『行方不明になる日』というアルバムをMenoさんが出されたときに、僕たちの心にものすごく響いたんです。高野さんとMenoさんのマッチングが素晴らしいということで、是非このコンビにお願いしたい、ということになりました。

──超水道アプリの音楽は無料素材を使わずに一貫して外注されていますが、それは雰囲気などにこだわりたいからなのでしょうか?
ミタ そうですね。外からフリーの楽曲を借りてくるという発想自体がそもそもありません。フリーの曲を借りてしまったら、それはもう超水道のアプリではないと思うんです。自分たちのゲームと、他の方が作ったゲームで同じ曲が流れるって許せる? 

すずめ いや、ゆるせない(即答)

──いいこだわりですね。ただ、やはり音楽を外注すると、結構お金がかかってしまうのではないでしょうか?
ミタ そのあたりは超水道の「熱さ」に免じていつもお願いしております。ありがたいことです。それに加えて、「超水道って面白いよね。参加したら楽しいと思うから俺も参加させてよ」と声をかけて下さることもあるんです。インタビュー1でもお話しましたが、inary(はやくP)さんもそういった形で携わってくれました。『佐倉ユウナの上京』の音楽を担当してくださった真島こころさんも同様の経緯でした。

──「ひぐらしの鳴くころに」の「YOU」もファンの方が作られたんですよね。そういう風に、外注の方が自分から参加させてほしいと申し出てくれるのは素晴らしいことだと思います。

Meno 3rd ALBUM「行方不明になる日」全曲クロスフェード視聴

※『ghostpia』のサウンドトラックがBOOTHで購入できるようになりました。

次回へ続きます
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