左:竹内雅樹氏 中央:川越康弘氏 右:蛭子一郎氏

ゲーム音楽制作会社が語る~消滅都市からみたモバイルサウンドの今後とゲームサウンドの歴史

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by [2014年11月11日]

2014年10月29日(水)『GREE Creators’ Meetup』が開催されました。企業や所属の垣根を越えてゲーム業界で働くクリエイターが勉強・交流できる場というコンセプトの、アート・クリエイティブ領域に特化した勉強会です。同時開催セッションTrackA『消滅都市からみたモバイルサウンドの今後とゲームサウンドの歴史』では、人気アプリ『消滅都市』で実際に使われた音源を聞きながら、ゲームサウンド制作のあり方が解説されました。モバイル(ハード)の発展にあわせて、アプリのサウンドの重要性は増しています。サウンド制作の裏側という滅多に聞くことができない貴重なお話が満載で、見逃せないセッションとなりました。

左:竹内雅樹氏 グリー株式会社Soundチームマネージャー。前職は株式会社コナミデジタルエンタティンメントにて、家庭用やモバイル、PCゲームのサウンド制作を担当。現在はグリー株式会社で、Web、ネイティヴ問わず、サウンドディレクションに従事している。直近では『消滅都市』や『てんめが』を担当。

中:川越康弘氏 株式会社ノイジークローク制作部プロデューサー/作曲家。高校卒業後、音楽専門学校でジャズ理論、ドラム演奏などを学ぶ。在学中、米バークリー音楽大学奨学金を受賞。卒業後は様々なジャンルの演奏・作曲活動を経てノイジークロークに所属。

右:蛭子一郎氏 株式会社ノイジークローク制作部チーフサウンドデザイナー。元KID所属のゲームプログラマー。独学でサウンド制作を学び、ノイジークロークへ入社。好きな食べ物はカレーで、趣味はUnityでのゲーム作り。父親は漫画家でタレントの蛭子能収氏。

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『消滅都市』でのそれぞれの役割

竹内 僕は『消滅都市』のサウンドディレクターとして全体の品質と進捗管理、それから実機への組み込み調整をさせていただきました。

川越 私はノイジークローク側のもろもろの窓口を担当しました。『消滅都市』は声優さんのボイスも聞きどころかと思いますが、収録の手配などをしつつ、一部曲も書かせていただいたという形です。

竹内 そして、蛭子さん。

川越 起きてます?(笑)

蛭子 はい、もちろん。(笑)自分は効果音制作です。自分と、草野という者の2名で制作しました。

竹内 いいんですか、それだけで?(笑)

蛭子 あの、そうですね、はい(笑)

川越 蛭子さんは、実際に竹内さんからのご指示を受けて、効果音のループ位置の調整など、そのような調整もやっていますね。ノイジークローク側のサウンドチームは、作曲の加藤、私、効果音の蛭子、草野の4名です。もちろん声優さんの収録をするとなれば、スタジオを使ってエンジニアさんも稼働したりと、色々な方が関わり、人数が多くなりますが、常に稼働しているのは楽曲が1人か2人、効果音制作が2人か3人。『消滅都市』のような規模のゲームですとこのような人数感ですね。

『消滅都市』BGMで見るゲームサウンドの歴史

川越 家庭用ゲームのサウンド面を、ザックリしていますが3つに纏めました。最初は「ファミコン」、次に「スーパーファミコン」、最後に「プレイステーション」です。それぞれ音源が違っていて、ファミコンがPSG音源で3和音ですね。スーパーファミコンですと、PCM音源で8和音です。プレイステーションはDA音源(デジタルオーディオ)。PSG音源(ファミコン)、PCM音源(スーパーファミコン)などは内蔵音源と呼ばれ、簡易なシンセサイザーが入っており、演奏情報を元に再生されます。サウンドに詳しくない方もいらっしゃると思いますし、せっかくなのでそれぞれの音を出してみたいと思います。


3種類の音源で作られた【消滅都市】BGM3で聴き比べが行われた

川越 モバイルの方も家庭用ゲーム機と同じように、音源の遷移を見ると3和音があり、64和音があり……という形ですね。本当に少ない和音から徐々に増えていって、DA音源と言われるデジタルオーディオを使えるようになって、進化してきているという感じです。技術が革新した分、当然、演出力が問われますし、調整にも時間がかかるようになっていきます。また、サウンドを制御するツールも重要になってになってきます。

楽曲の実装

竹内 『消滅都市』のサウンドの仕様についてお話しますね。ゲームエンジンはCocos2d-xを使用しているのですが、サウンドのミドルウェアは特に使用していません。あとは、イントロ、A、B、Cと続く曲で、Cが終わったらAに戻るというような途中ループは無しです。普通に頭(イントロ)に戻ってくる形にしています。個々の音量調整制御も無しということで、よくあるシンプルな仕様だと思います。プログラムの方で調整するのではなく、データレベルで音量を調整しているという形ですね。発音数制御もざっくりと全体数量を決めておいて、重なり合う懸念がある音のみを個別で制御しています。

川越 家庭用のゲームですと、このシチュエーションでこの音とこの音とこの音は絶対一緒に鳴ってはいけないとか、本当に細かい制御をすることもありますが……。

竹内 ゲームによっては細かい制御が必要なんですけど、『消滅都市』に関してはある程度シチュエーションのようなものが見えていたので、それに併せて必要なところだけシンプルに対応しています。もちろん弊社のアプリの中でも、複雑なものは細かく制御しているタイトルもあります。

川越 ゲームに合わせて仕様を考えられているということですね。

竹内 そうです。最後に、ピッチが使えるのと、フェイドアウト機能があります。以上がサウンド仕様です。次に調整ポイントですね。大きく4つあります。まずは、プラットフォーム間のバランスです。iOSとAndroidの作り分けは特にしないので、比較的メジャーな機種をピックアップして、どのように鳴るかなどを見つつ、塩梅をみつけて対応するという形を取っています。Androidだけでも物凄くたくさん機種がありますので、全ての機種で調整するのはなかなか難しいところです。続きまして、実機スピーカーとヘッドホンのバランスなのですが、これに関してはリスニング環境の多いスピーカーを中心に調整した感じです。

川越 電車の中で音を出してプレイしている人はいないかもしれませんが、皆さん、結構家で、スピーカーでプレイしてらっしゃる方も多いんじゃないかなと思います。

蛭子 本当に、どちらに合わせるかというのは、結構重要な話ですよね。

川越 蛭子さん、久しぶりに絡んできましたね(笑)ごめんなさい、マイク2本しかなくて(笑)もうすぐ蛭子さんのコーナーですから。で、続いて楽曲と効果音のバランス。『消滅都市』のキモかなと思っているのですが。

竹内 はい、どちらも聴かせたい、と。

川越 楽曲と効果音、両方を聴かせるっていうのは、音量のキャパシティがありますので、なかなか普通は難しいですよね。

竹内 ええ、なので、その辺をどう処理するかというのがポイントとなっています。今回の場合ですと、効果音の方を高域だったり低域だったり、そういった部分をなるべく強調させて、楽曲の帯域になるべく被らないように処理しています。単純に音量を上げるとか下げるという問題ではなく、周波数的な問題です。効果音と曲、まず音域で住み分けを作ってあげる……意外にやりようもなかなかないですからね。両方の音量を上げてしまっても、どちらも聞こえなくなってしまうので、周波数を変えるという形でバランスを取ってみました。

『消滅都市』における“距離感”の音楽表現

竹内 次、効果音同士のバランスですね。これも結構『消滅都市』のキモとなっています。アクションで前に進むんですけど、その裏でバトルも展開されている、というゲームなので、手前で起こっていることと奥で起こっていることを音でどうやって感じさせるかという部分。ここを分けて表現するというのが重要だと思うんです。

川越 距離感の表現というのはすごく難しいことですね。

竹内 今回、手前の方はなるべくモノラルを使ったりドライの音(加工されていない音、原音)を使ったりして、音が手前にありますよっていう感じに聞こえるようにしました。奥側の演出の方はなるべく音量を下げたりだとか、リバーブをかけて広げたりして、後ろの方でなんかやってますよ~という風に、2種類のメリハリをつけることで距離感を出しました。

川越 近くで鳴っているものと、遠くのものは全然違いますからね。響きのあるなしとか、音量とか、そういうところで調整しているんですね。

竹内 先ほどありました楽曲と効果音のバランスなのですが、グラフ化するとこんな感じかな、と。楽曲と手前の効果音のバランス感覚っていうのが、一般的なゲームの場合とかなり異なっているということです。

川越 なるほど。結構楽曲が印象に残っていらっしゃるという方が多いと思うのですが、通常ですとやはり音量のパーセントでいうと、楽曲というのは、MAXが100だとすると50だったりもっと小さかったりすることが多いですよね。効果音とかボイスは必ず聞こえなきゃならないので。下のグラフのような調整がごく一般的ですね。これは決して楽曲が小さいという印象を与えるわけではないですよね?

竹内 ではないです。聴かれている印象と実際の数値の差があるだけです。

川越 グラフを見てみると、「楽曲、前年比100%!」みたいな楽曲、かなり伸びてますね(笑)

竹内 足し算が合わないんですよ……。かなり楽曲を大きく調整しました。やはりゲームのテーマとしてもある、スピード感とかテンポ感とかそういいうところを楽曲でもしっかり出したいというコンセプトがありました。調整としては音楽ゲームのようなバランスになっているのかな、と思いますね。

効果音も世界観にあわせて


実際のゲームで使われた調整版と、調整前の音源を流しながら解説が行われた。

竹内 このような感じで私の方は最終的な調整を行ったのですが、実際に効果音を用意いただいた蛭子さんの方でも、なにか作る上では……?

蛭子 はい。そうですね……、『消滅都市』……世界観がすごく凝っていて。ストーリーとか。そういうものがかなり音にも影響してくるなぁと思いまして…、すごく気を使って作ってみました。

川越 言葉だとこだわりの点が伝わりづらいところもあるかもしれませんね。

竹内 音をご用意いただいたのでそちらを見ながら解説いただこうかなと思います。

蛭子 スフィアを取っていくごとに音階が上がっていくシステムになっていたり、非常に凝ったつくりになっているのですが、未調整バージョンのように世界観や立体感を考えずに作ってしまうと、かなり味気ないものになってしまう感じだな、という……。だからやはりサウンドを作る側も、全体の仕様だったりシステムを理解した上で作ることが大事ですよね。

サウンドを発注するにあたってのコミュニケーション

竹内 よく訊かれるのが「サウンドってどうお願いしたらいいですかね」ということです。

川越 サウンドっていうのはなかなか言葉で表現できるものではありませんし、竹内さんはすごく落ち着いた素敵な男性ですけど、僕みたいなのって怪しいじゃないですか、若干(笑)「音楽やってま~す」みたいな軽いノリに見られることもありますし。実際のやりとりはどういうものかを竹内さんがまとめてくださいました。いかに共有を行えるか、具体的にどういうものでやり取りするのが良いだろうかということですね。

竹内 いっぱいありますね。スライドの上からいってみましょう。

川越 指示書。数量、個別の内容。これは、効果音は幾つぐらいあるとか、そういったごく普通の最低限のサウンドリストと言われるものです。これがあったほうが全体が見えますし、求めていらっしゃるもの、内容、方向性がわかりやすくなります。続いて、ゲームジャンル、ターゲット。どのような層をターゲットとして考えていらっしゃるかということで、音楽のジャンルなどが決まってくるんじゃないかな、と。男性向けだとか女性向けだとか、そういうところでも音楽のジャンルや温度感みたいなものが変わってきますので、是非是非お教え頂きたいところです。

竹内 そして、システム。

川越 これはゲームサウンドならではという感じだと思うんですが、『消滅都市』のようにステージ制のゲームがあるとして、1ステージが30秒しかないのに2分の曲を書いても使うところがないですよね。後はシステムも、ユーザさんがどういったところで時間を過ごすのか、曲の尺はもちろんですけれど、(曲のパートで)Aの後すぐにBが来たほうがいいとか、イントロは極力短い方がいいとか……。

竹内 先ほどの構成の話になってくるんですけど、あまり毎回毎回イントロが出てくるような構成をメインの画面でやっているとウザくなっちゃうので、そういった場面、滞在尺がわかると助かりますね。

川越 ページの遷移があるときに、行って戻ってという動作が多いと、同じ曲がまたすぐに頭から再生されるということも起こりかねないですから、そういったところも共有させていただきたいです。それから世界観。全体的なカラーリング、スケール感。これは、すごく壮大な物語に編成の小さい、スケール感の小さい音楽をあてる。それで成功していることもありますし、逆もあるかと思います。

竹内 合わせることもあるし、わざと外すこともあるので、この辺はやはり重要ですよね。

川越 そこがわからないと狙うのか外すのか、そういったところを決めなくてはいけないですからね。

竹内 次、シナリオ。喜怒哀楽とかですね。続いて、キャラ、背景とか。

川越 キャラクターの外見イラストをいただきたいとお願いすると「なんでそんなものが必要なの?」と言われることが多いんですけど、僕らは音楽だけではなく効果音も作るので、キャラクターが何頭身で色味はどんなものなのかといったことで、音そのものの重さや質感が変わってきますので、是非ここもご教示いただきたいな、と思います。

竹内 続いて、動画。ゲーム。これはもう実際の動きですよね。

川越 ゲームのスピード感だとか、タイミングだとか。やっぱり動いているものを見せていただくのが一番ですよね。

竹内 続いて、顔合わせによる説明。

川越 この辺は蛭子さんから是非。色々あるんじゃないかなと思うので。

蛭子 僕はこれ、とても大事だと思っていて。やはりちゃんと一度会って、……ゲームの内容を説明いただいて、お互いに話すことで、文字に表わせないチームの熱なんかが伝わってくるので、打ち合わせがまず大事だな、と思います。

竹内 その次にある、根底にある要素は、ものすごく当たり前で何を書いているんだと思われそうなんですが、これも結局のところ、どういう風にゲームを考えていてどういったものを出したいのかという根底にあるものをちゃんと説明できるかどうか。

川越 技術的なところを超えたところにある要素。言ってみれば、ゲームを作っていらっしゃるのはどういう方なのか。人生をかけてゲームを作っていらっしゃる方々だと思うので、僕たちもその熱意と一緒に進んでいきたいなと。やはりお会いして、お話をさせていただけると一番良いなと思います。

竹内 具体的なものから曖昧なものまで幅があるんですけど、これらがあることで僕たちサウンドチームが見たり感じたりするものが違う、ということがちょっとわかっていただけたかな、と。実際に『消滅都市』の話ですと、これらを共有しながら進められたので、ビジョンがしっかりして形になったのかなと思います。

信頼関係や情報共有で成果物のクオリティが変わる

竹内 最後にお2人からコメントをいただけますか?

川越 普段、竹内さんとどういうお仕事をさせていただいているかというと、竹内さんのビジョンを僕たちが実現するために具体的に手を動かしながら作業をしていくという感じです。率直にいうと、竹内さんと僕はすごく仲良しで、『消滅都市』ディレクターの下田さんとも仲良くなりました。僕が誰かと仲良くするのが上手というわけではありません。同じ仕事に真剣に向き合っているうちに、自然と仲良くなれるということだと思います。ちょっと違う話になってしまうんですが、サウンドを作るときって一瞬でできあがることがあります。「効果音なんか、5~6分でできるでしょ」とおっしゃる方もいらっしゃいますし。音楽に関しては、道を歩いているときにパッと思いつく、思いつくのに10秒とか20秒の世界かもしれません。ただ、そこにいたるまでの信頼関係や、竹内さんがおっしゃったような情報の共有がいかにうまくいっているかといいうことで、その「一瞬のひらめき」にも大きな差が生まれ、最終的な成果物のクオリティがまったく変わってくると思います。僕たちのようなサウンドの人間に「どんな発注をしていいか分からない」と思われることもあるかもしれませんが、僕たちは決して得体のしれない生き物ではないので、是非皆さん、気楽に話しかけていただきながら、楽しくゲームが作っていけたらなと思います。

蛭子 『消滅都市』では、グリーさんの開発の方とサウンドチームが本当に一体化して、とても良い効果になったんじゃないかなと思っているので……。これからも、これを機に、色んなゲームにこういった形でサウンドをどんどん組みこんでいけたらいいなと思います。本日はどうもありがとうございました。

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消滅都市(公式サイト)

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