ダイキンのHVACでのIoT適用例既存の室外機にIoTゲートウェイを付加してリアルタイムモニタリングや故障予防などを実現した。

Internet of Thingsがもたらす変革「ゲートウェイとデータセンタソリューション」

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by [2014年10月31日]

前々回前回に引き続き、先日行われたIoT/M2Mカンファレンス2014秋でのインテル株式会社IoTソリューションズ事業開発部の安齋氏による講演をご紹介したいと思います。

後編ではインテルのIoTゲートウェイとデータセンタソリューションへの取り組みが取り上げられます。

安齋尊顕氏 インテル株式会社IoTソリューションズ事業開発部 事業開発マネージャー。ソニー株式会社、アップル株式会社などを経てインテル株式会社でInternet of Thingsソリューションの事業開発に従事。クラウドに繋がった組み込み機器が作り出すビッグデータによる新たなビジネスの開拓に取り組んでいる。

Internet of Thingsがもたらす変革
前編 IoTの現在~未来
中編 インテルの取り組み
後編 ゲートウェイとデータセンタソリューション

IoTゲートウェイの実例

ダイキンのHVACでのIoT適用例
既存の室外機にIoTゲートウェイを付加してリアルタイムモニタリングや故障予防などを実現した。

次に安齋氏は後付けユニットを使ったIoTゲートウェイの使用例として、ダイキンの子会社で大型空調機器事業を専門とするダイキンアプライドシステムズのHVAC(Heating, Ventilation, and Air Conditioning:暖房、換気、および空調)ユニットと呼ばれるビル屋上などに設置の大型ユニット機器への後付け追加による事例を紹介しました。

この例では後付けIoTゲートウェイによりビル内空調の稼働状況などをきめ細かくモニター、あるいはコントロールできるようになった由で、安齋氏は「これは新しいサービスを生み出した事例ということになる」としました。

続けて安齋氏は、「これまで、ビルのエアコンというと壁にリモコンがついていて、暑かったら室温を下げるとか、そうするとビルの中で暑いところ寒いところできちゃったりですとか、エナジーマネージメントに関してはもう見える化というのはほとんどお手上げ状態、というのが旧来のビルの状況」であったとして、「こちらはゲートウェイを使って各種の信号を、消費電力ですとか重要な部品の信号を、センサーでデータを取って解析してサーバに送る、とかそういった手法を使うことで、まずはビルのオーナーについてはビルのパフォーマンスマネージメントがより的確に行えるようになった」とIoTゲートウェイ導入が省電力やビルマネージメントに大きなメリットをもたらしたことを紹介しました。

IoTゲートウェイの追加は、前述のHVACユニットに搭載された各種センサーから得られる信号のリアルタイム送信によるモニタリングを可能としたものです。

またこうした可視化により、「ピークカットやピークシフトといったデマンドレスポンスへの対応、あるいはアメリカでは義務づけられている関係省庁への報告といったことも逐一データがあるので簡単にできるようになった」と安齋氏は付け加えました。

さらに、この機能追加はメーカーであるダイキン側にもアセットマネージメントの面で大きなメリットがあったことが指摘されました。

常にHVACユニットの稼働状況がリアルタイムモニタリングできるようになった結果、1年365日24時間いつでもどこでもアクセス可能となり、遠隔監視とハードウェア診断ができるようになったのです。

これは取得データに含まれる異常値から統計的手法により故障の前兆を素早く感知し、予防措置として部品交換を行うことで空調の不慮のシステムダウンを防ぐ、障害予知メンテナンスを可能としました。

従来であれば、故障が起きて空調に不具合が出てからビル側より修理要求が出され、修理担当の技術者が派遣されて故障箇所を検出、必要な交換部品の特定を行って手持ちがない場合には後日再訪問して交換修理を実施、といった悠長なパターンで故障発生時の空調が使えない日数が長期化しがちでした。

それが前兆検出による予防交換で空調が使用できない期間を最小限で済ませられるようになり、さらにはこれにより突発故障対応が減って修理担当技術者のスケジュール管理が容易になり、また使われない交換部品を無駄に多く確保しておく必要もなくなって交換用パーツ在庫の管理最適化が可能となったのですから、少なくともダイキンにとっては絶大なメリットがあったわけです。

ここで安齋氏は「こうしたこと(IoTゲートウェイの後付け搭載)に対してインテルはシリコン(半導体)だけではなくてゲートウェイのリファレンスということで開発キットを用意しています」とIoTゲートウェイ普及のための後押しとして開発キットを提供していることを紹介しました。

インテルによるIoTゲートウェイ開発支援

インテルがリファレンスとして提供するIoTゲートウェイ開発キット
3機種が提供され、それぞれ想定される使用目的に合わせて仕様が違えてある。

これはこれらのキットさえ買えば後はソフトウェア開発をおこなうだけですぐIoTゲートウェイを利用できるように提供されているもので、現在は『IoT 向けインテル® ゲートウェイ・ソリューション開発キット』として『Intel® Quark™』搭載の『DK100シリーズ』・『DK200シリーズ』の2シリーズと『Intel® Atom™』搭載の『DK300シリーズ』の3機種(※注9)が提供されているとのことです。

 ※注9:他に『Intel® Quark™ SoC X1000』搭載の『DK50シリーズ』が提供されていますが、これはターゲット市場を「開発者、愛好家」としており、業務用途での利用を想定しない製品です。

ちなみにCPUとして同じ『Intel® Quark™ SoC X1020D』を搭載する『DK100シリーズ』と『DK200シリーズ』の違いは主にインターフェイスで、『DK100シリーズ』はRS-485とZigBeeが搭載されているのに対し、『DK200シリーズ』にはCANと呼ばれる車載機器用データバスインターフェイスやサウンド入出力、それに3軸の加速度センサーが搭載され、後者は車載機器に特化した設計となっています。

一方デュアルコアの『Intel® Atom™ E3826』を搭載する上位機種の『DK300シリーズ』は、IoTゲートウェイ用としてはCPU処理能力に余裕があることからエッジアナリティクス、つまりエッジデバイスで収集するデータが巨大な場合にここでプリプロセスやデータのフィルタリングを行いクラウドに送信するデータ量を絞る、といったクラウドの処理の一部を肩代わりするような使用方法を想定されており、そのためCPU性能が高くなっているだけでなく、メモリ容量が『DK100シリーズ』が1GB、『DK200シリーズ』が512MB搭載で固定されているのに対してこちらは最大8GBまで増設可能な設計となっています。

インテルがIoTゲートウェイ開発キットに提供しているソフトウェアスタック
一般的あるいは標準的な機能は一通り網羅してサポートされている。

なお、これらのゲートウェイキットは単なるハードウェアだけでなく、IoTゲートウェイとして使用することを前提にソフトウェアスタックが搭載され、具体的にはOSのWind River Linux上にクラウド接続・管理、ランタイム環境、セキュリティ、各種インターフェイスのデバイスドライバなどのソフトウェアスタックが構築された上で、IoTゲートウェイ開発を簡素化するためのセキュア開発環境であるWind River Intelligent Device Platform XT、ソフトウェア統合開発環境のWind River Workbench、それにセキュリティソフトのMacAfee Embedded ControlといったIoTゲートウェイ開発に必要なソフトウェア一式がバンドル提供されています。

安齋氏曰く「これを使って開発していただくことで、システムを最初スクラッチから作るコスト、あるいはタイム・トゥ・マーケット(※開発開始から市場出荷までの所要時間)といったところを短くしてコスト削減ができる」とのことで、大幅に開発コストや開発期間を圧縮できるわけです。

データセンタソリューション

最後にエンドツーエンドのアナリティクスとして紹介されたのが、データセンタソリューションです。

安齋氏によれば「インテルは今、世界のデータセンターのサーバ用CPUのシェアの95パーセントという高いシェアをいただいている」とのことで、「それに伴って色々なエコシステムを築くことができるようになっています」との補足がありました。

これにより「例えば、『こういった解析がしたいんだけど』、あるいは『こういったサービスを考えているんだけど』、といったときに――もちろん自社の技術もありますけど――最適なパートナーをマッチメイク、といったこともインテルの非常に重要な役割だという風に考えております」とのことで、単に自社のソリューションを提供するだけでなく、関連企業を巻き込んだIoT開発支援の大がかりなエコシステムそのものの構築に取り組んでいることが示されました。

インテルの半導体工場におけるビッグデータ活用事例
製造ラインだけでなく、製品の試験を行う製品テスターにおける歩留まり悪化要因の検出・解析に役立てられている。ここでは工業用コントローラの製品開発を行っている三菱電機との共同開発により、同社製C言語コントローラがIoTゲートウェイとして利用されている。

ビッグデータ活用にインテルが積極的であることは既に触れられましたが、その一例として示されたのが先日発表されたばかりの、インテルと三菱電機が共同で行う半導体工場におけるビッグデータ活用事業です。

元々インテル社内では前編でも触れたように工場内で毎時5TBもの製品製造データが生成され、製造ラインの製造装置にセンサーを追加してそれらの稼働状況をモニターし、それを解析することで障害の予兆を把握する、といったことが行われていたとのことです。

またこれに加え、製品であるプロセッサの動作テストを行う製品テスターにおいて問題となっていた、プロセッサの微細化が進みすぎたがゆえの端子・接点等の機械的な部分での精度不足に起因するハードウェア破損や、製品テスターそのものの故障・異常動作による良品プロセッサの不良品誤判定といった問題がIoTアプローチでのデータ解析により改善された由で、安齋氏曰く「年間900万ドル、(日本円換算で)だいたい9億円というコスト改善が実現しています」と具体的かつ大きな効果が示されました。

この製品テスターについては、三菱電機が開発した『Intel® Atom™』プロセッサ搭載の『C言語コントローラ』と呼ばれる工業用組み込みシステムソリューション向け制御コンピュータシリーズがIoTゲートウェイとして活用され、インテル社内での実証実験を通じて一定の効果が得られたことから2015年内の事業化を目指してインテルと三菱電機共同での発表が行われています。これについて安齋氏は「次世代の工場、という形でこの考え方を広めてまいりたい」と普及促進に意欲を見せました。

APIの利活用

APIの利活用によるEnd-to-end IoTの相関図

さて、データセンターで解析が行われたところで、それによって得られた知見が十分活用できなければ宝の持ち腐れです。

その知見を最大限に生かす手段として示されたのが、APIの利用です。APIは元々様々なIoTデバイスとの接続に当たっても活用できるものですが、それを社内向け、開発向け、顧客向けなどさまざまな階層・需要に応じて各種APIを用意しそれを用いて提供することで、データ解析結果を有効活用しよう、というのです。

これについて安齋氏は「これはマネタイズという部分についても非常に重要と考えております」という見解を示しました。

ちなみにこうしたAPI管理にはそれなりのノウハウが必要なのですが、インテルは今年に入ってAPI管理サービスを提供していたMashery(マシュリー)という会社を買収しており、そのブランドを維持しつつ製品開発を加速させています。

コンソーシアムの結成

industrial internet CONSORTIUM参加企業一覧
IT系の各社だけでなく、自動車メーカーなど異なる業種の企業も参加していることがわかる。

こうしたネットワークを利用し、多業種にまたがって活用される技術の場合、コンソーシアムを作って一定の業界標準規格・仕様を定める必要が出てくるのですが、IoTについてはインテルをはじめIBM、ゼネラル・エレクトリック、シスコ、AT&Tの5社を設立者としてindustrial internet CONSORTIUMというコンソーシアムが2014年に結成されています。

これには設立者の5社の他、トヨタ自動車や日立製作所、日本電気、それに三菱電機といった日本の大手電気メーカー各社、ヒューレットパッカードやデルのようなコンピュータメーカー、それにマイクロソフトやシマンテックなどの有力ソフトハウスなど様々な業種の企業が参加しています。

これについて安齋氏は「まさに総合運用性ですとかデータの活用に当たってどう実際のプロトコルだとかの折り合いをつけるか、といったところでは、こういったコンソーシアムの活動を通じて業界の標準化ですとか、規格になるか判りませんけども実際のシステムをさらに加速させるような相互の互換性の向上といったことを図っていきたい」としました。

実際、IoTのようなネットワークを利用する技術の場合、業種間での摺り合わせや標準化が不可避であるため、こうしたコンソーシアムの活動を通じた標準化・相互互換性の向上は特に重要です。

まとめ

最後に安齋氏は、インテルをIoTのパートナーとして選ぶ理由として、以下の3点を挙げました。

 ・モノからクラウドをカバーするテクノロジーとリーダーシップ
 ・CPUからソフトウェア、サービスまでをEnd-toーendでセキュリティを提供
 ・リファレンスアーキテクチャとエコシステムでTTMを短縮

正直、組み込み機器向け市場でSoCを中心に圧倒的なシェアを誇りソフトウェア開発環境でも分厚い布陣のARM系プロセッサに、この市場の延長上にあるエッジデバイス向け組み込み用CPUで対抗してシェアを拡大してゆくには並大抵の努力では済まない(※注9)と筆者は考えるのですが、安齋氏の指摘にもあるようにトップからボトムまで、総合的なソリューションを提供できるインテルの強みもまた圧倒的です。

※注9:実際、先に挙げた『Intel® Edison』の拡張ボードの一つである『Edison Arduino expansion board』はその名の通りARM系で業界標準となっているArduino(アルドゥイーノ)互換となっており、この分野ではインテルが挑戦者の立場にあることを示しています。

そのため、今後の先行きがどうなるのかは正直読み切れない状況なのですが、今一番「ホット」なのがこの分野であることは確かで、今後もその動向に目が離せません。

▼参考リンク
インテルR Quark テクノロジー
IntelR DK100 Series Development Kit
IntelR DK200 Series Development Kit
IntelR DK300 Series Development Kit
インテルと三菱電機、次世代 FA システムで協業
API Management, API Gateways, Strategy Services and Developer Platform Services
ラインアップ 組込みシステムソリューション FAテーマ別ソリューション | 三菱電機 FA

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