Intel SCS 110K仮想化を基礎とするワークロード・コンソリデーション技術により産業機器に関わる複数の周辺機器を1台に集役・代替することを目的として開発された。

Internet of Thingsがもたらす変革「インテルの取り組み」

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by [2014年10月29日]

前回に引き続き、先日行われたIoT/M2Mカンファレンス2014秋でのインテル株式会社IoTソリューションズ事業開発部の安齋氏による講演をご紹介したいと思います。

中編ではインテルのIoTについての考え方と、インテリジェントな機器への取り組みが取り上げられます。

安齋尊顕氏 インテル株式会社IoTソリューションズ事業開発部 事業開発マネージャー。ソニー株式会社、アップル株式会社などを経てインテル株式会社でInternet of Thingsソリューションの事業開発に従事。クラウドに繋がった組み込み機器が作り出すビッグデータによる新たなビジネスの開拓に取り組んでいる。

Internet of Thingsがもたらす変革
前編 IoTの現在~未来
中編 インテルの取り組み
後編 ゲートウェイとデータセンタソリューション

IoTについてのインテルの考え

インテルがIoTに必要と考える3要素

ここで安齋氏は「インテルでは(端末となるエッジデバイス、通信を束ねるゲートウェイ、ネットワーク、そしてデータセンターなどのクラウドソリューション、という3つの命題についてそれぞれ1つずつ)3つの要素が必要であると考えている」と語りました。

一つ目がインテリジェントな機器。

要するにエッジデバイスのことですが、「IoTではThingsつまりモノの所がインテリジェントにならないと始まらない」としました。

この部分ではデータを安全に取得あるいは生成し、Edge of Analyticsである程度の選別作業を行ったり、取得したデータをデータセンターで処理して得られた結果を人や物にフィードバックするという複雑かつ高度な処理を行うことが期待されています。

二つ目はインテリジェントなシステム・オブ・システムズ。

これも要するにゲートウェイのことです。今後2020年までに500億台の機器がネットに接続されるようになるとされるわけですが、安齋氏は「いろんな調査があるんですが、その(500億台の機器の)中の85パーセントは既存の機器だと言われています」としました。

つまり、今ネットにつながっていない有り物の機器へ後付けでゲートウェイを付加しIoTデバイス化するということで、安齋氏は「今後、古い産業機器だとかあるいはインフラだとかにセンサー、ゲートウェイを付加することでIoTデバイス化して、そこからデータを取って解析をしてメンテナンスだとかあるいはコストの低減だとかいったことにつなげる、といったケースが非常に多くなってくると思います」としました。

さらに安齋氏は「最近はシステム・オブ・システムズということが非常によく使われているんですけども、IoTだと非常に間口が広いのでいろんなものがつながってきます。ですので、言葉だけでなく非常にヘテロジーニアスなレガシーなものから非常に新しいものまで、いろんなプロトコルまで含めて有機的に結合する、という技術が非常に重要になってまいります」と説明しました。

実際、日本の製造業ではネットワーク非接続の古いパソコンやマイコンが生産ラインで稼働する製造機材の制御に使われているケースが結構多いですから、こうしたレガシーな機材をIoTデバイス化し、あるいは古い通信プロトコルを用いる産業機器やインフラでも問題なく一つのネットワークに参加しデータを共有・フィードバック結果を反映できるようにするのは今後重要課題となってくることでしょう。

最後はエンドツーエンドで行われるアナリティクス。

これは要するにエッジデバイスで得られたデータをどう解析しどう活用するのか、あるいはどう価値を見いだすのか、という部分の話です。

安齋氏曰く「ここ(エンドツーエンドのアナリティクス)こそがIoTを行う理由だと思っています」とのことです。

3つの構成要素に対するインテルの取り組み

ここで安齋氏はこうした3要素に対してインテルがどのように取り組んでいるかを紹介しました。

まず最初のインテリジェントな機器については、「組み込み用CPUを非常に積極的に開発・発売している」としました。

Intel® Quark™ テクノロジー
インテル初のフルシンセサイザブルな組み込み用x86系CPU。単独のCPUとしてだけでなく、競争相手であるARM系のCPUコアと同様、必要に応じて他社が提供するグラフィックコントローラなどの周辺デバイスと合成(シンセサイズ)して自由にSoCをカスタマイズできる。

そんな組み込み用CPUのトップバッターとなるのが『Intel® Quark™』です。

近年のインテルはデスクトップパソコンやノートパソコンなどに搭載されるメインストリーム向けの『Intel® Core™ i7』、『Intel® Core™ i5』などの『Intel® Core™』プロセッサファミリー(およびその派生機種である『Intel® Celeron®』プロセッサや『Intel® Pentium®』プロセッサ)、サーバやワークステーションなどに用いられマルチプロセッサ対応やECCメモリ対応などメインストリーム向けでは要求されない特殊機能をサポートする『Intel® Xeon®』プロセッサ、それにネットブックやタブレットなどモバイル機器や組み込み機器向けを中心とする低消費電力特化の『Intel® Atom™』プロセッサと3つの特性の異なるCPUファミリーを主力製品としてラインナップ展開してきました。

これらは皆、俗に「x86」と呼ばれるIntel 386(i80386)以来の同じ命令セット体系に対応しているのですが、低消費電力特化を武器に急速に普及した『Intel® Atom™』でさえIoT用途ではプロセッサの規模が大きすぎ、この分野ではインテルは元々機器組み込み用を中心に発展してきたコンパクトなARM系プロセッサの後塵を拝してきました。

『Intel® Quark™』はそうしたラインナップの不足を補うべく2008年登場の初代『Intel® Atom™』以来久々に追加された新プロセッサシリーズです。

初号モデルとなった『Intel® Quark™ SoC X1000』のCPUコアは動作クロック周波数400MHz時消費電力わずか1Wで、処理能力を重視してきたこともあって数十W~130Wクラスのプロセッサが一般的で、発想の転換が行われた『Intel® Atom™』系でも一般的には数Wクラスが精一杯だった(※注7)これまでのインテル製x86プロセッサと比較して驚くほどの超低消費電力CPUとなっています。

これについて安齋氏は「1Wで動いて400MHzのCPUは実は珍しくないと思うのですが、この上で86(x86)のコードが走るという風に考えていただくと、サーバから脈々とつながるIoTのピラミッドの中でインテルアーキテクチャでこんなに下まで行ける、という風に考えていただくと意味合いも変わってくるのではないか、という風に思います」とそれ単独ではなく、インテルアーキテクチャのプロセッサファミリーの中での位置づけを強調してその存在意義を示しました。

※注7:『Intel® Atom™』でも初代で『Intel® Atom™ Z500』として機能や性能を切り詰めてTDP0.65Wを実現した製品が提供されましたが、以後はモバイル機器向けでTDP1.3W、それ以外ではTDP2W~20Wの製品が提供されています。

実際、安齋氏の言葉にもあるように、400MHzで1W、SoCにCPUコアとして自由に合成可能という仕様はARMやMIPSなど他のアーキテクチャの組み込み向けRISC CPUでは特に珍しくも何ともないレベルのものなのですが、様々な事情から他の組み込み用RISC CPUと比較して煩雑なCISC命令セットとなっていて、CPU内部の命令デコーダ部分が大型化せざるを得ない=消費電力がどうしてもRISC CPUよりも大きくなる傾向にある(けれどもソフトウェア資産の多さやソフトを「書ける」プログラマの多さではそれらのRISC CPUとは比較にならないほど充実した)x86系命令セットをサポートしつつこの性能、この消費電力を実現したという一点にこそ、この『Intel® Quark™ SoC X1000』の真価はあります。

SDカード大のコンピュータ

Intel® Edison
低消費電力かつ非常にコンパクトなx86系CPU内蔵SoC搭載モジュール。ただし先に挙げた『Intel® Quark™』より高性能なCPUコアを2基搭載している。

次に紹介されたのが、CPUとチップセットを集積したIoT向けプラットホーム製品の第一弾である『Intel® Edison 開発プラットフォーム』です。

こちらはIoT向け、ということでCPU単独のパッケージではなく、500MHz動作のデュアルコアCPUを組み込まれたSoC(System on a Chip)と呼ばれるチップを専用規格・サイズの基板上に実装したモジュールの形で供給される製品で、Wi-FiやBluetoothに対応する無線インターフェイスも内蔵されていて通信手段が備わっており、これ一つでも電源さえあれば独立したコンピュータとして機能できる製品であったりします。

安齋氏曰く、「プロトタイピングですとか、あるいはニッチな少量多品種生産ですとか、そういった用途に使っていただける」とのことで、製品発表会ではいち早くネットワーク機器や周辺機器専門のぷらっとホームが開発した、この製品を使ったゲートウェイを展示したそうで、「レーザーポインタ位の大きさでその中に『Intel® Edison』が入っていて、いろんなインターフェイスがついている」とのことで、さらに「後付けで(ネットワークへの)接続性を追加する、といったときにはスペースも非常に問題となってくる訳なんですけども、これだけフォームファクタが小さくなってくると場所を選ばずに設置が出来るということで、IoTを広げていく、接続デバイスを増やしていくというところに当たって非常に最適なデバイスではないか、という風に考えております」とこの製品のフットプリントの小ささがもたらす利便性を安齋氏は強調しました。

実際、この『Intel® Edison』のモジュール本体はSDカード程度のサイズしかない非常に小さな基板よりなり、これを利用する開発ボードや各種センサーを接続するのに必要となるインターフェイスを拡張するための拡張ボードなども提供される(※注8)ことが発表されています。

※注8:そもそも『Intel® Edison』のモジュール本体には70ピンの専用インターフェイスしか搭載されていないため、センサー類との接続には拡張ボードの接続が必須です。

また、IoT向けの場合、無線インターフェイスの搭載は事実上不可欠ですから、こうして無線インターフェイスコントローラやチップセットをCPUと同じチップ上に作り込み、さらにメインメモリやFlashメモリを汎用プラットフォームとして提供することで、後は各種センサーを所定のインターフェイスで接続すれば、低コストかつ低難度でエッジデバイスを試作・開発できるわけです。

つまり、このモジュールと拡張ボードがあれば安齋氏の言葉にもあるようにエッジデバイスの多品種少量生産も可能ということなのです。

一方、IoTのエッジデバイスというとどうしてもこの種の低消費電力デバイスを思い浮かべてしまうのですが、実のところ産業機器などへの搭載を行う場合には、もっと複雑かつ高度でリッチなエッジデバイスが求められるケースが多くなってきます。

既存プロセッサ製品をエッジデバイスに生かすワークロード・コンソリデーション技術

Intel® Industrial Solutions SCS 110K
仮想化を基礎とするワークロード・コンソリデーション技術により産業機器に関わる複数の周辺機器を1台に集役・代替することを目的として開発された。

こうしたケースに対応すべくインテルが提供しているのが、ワークロード・コンソリデーションと呼ばれる技術を用いた機器です。

このワークロード・コンソリデーションというのは、要するに『Intel® Core™』プロセッサファミリーなどのCPUに内蔵されている複数のCPUコアを一つのプログラムの並列分散処理に用いるのではなく、それぞれのCPUコアを独立したCPUのように扱い、これまでであれば必要に応じて用途別に独立したコンピュータ機器を接続し分散処理していたPLC(Programmable Logic Controller:プログラマブルロジックコントローラ。工作機械などのシーケンス制御を司る)、HMI(Human Machine Interface:ヒューマン・マシンインターフェイス。対象となる機器の状態を人間に伝えるためのインターフェイス)、ビジョンセンサー、それにモーションコントローラなどを、CPUコア数の許す範囲で1台のコントローラで集約・処理させよう、というものです。

従来、マルチコアCPUでも基本的にはその上では一つのホストOSしか動かせなかったわけですが、このワークロード・コンソリデーション技術ではそれぞれのCPUコア上でそれぞれ全く異なるOSを走らせる、つまりPLCで用いられるリアルタイムOSを筆頭にそれぞれの使用目的に応じた異なったOSを一つのCPUパッケージ上で動作可能としています。

『Intel® Industrial Solutions SCS 110K』のデータシートに示されたOSなどソフトウェアレイヤーの図(右下)
各CPUコアがWind Riverのハイパーバイザレイヤによって各仮想マシンに個別に割り当てられていることが明示されている。

こう言うと何か特別なハードウェアが備わっているのかと思ってしまうのですが、この技術を導入した『Intel® Industrial Solutions SCS 110K』という製品の場合、インテルの数ある子会社の一つであるWind Riverが提供するVirtualization Profile for VxWorksという仮想化モニター(ハイパーバイザ)を利用し、搭載された『Intel® Core™ i7 』プロセッサの4つのCPUコアのうち、Wind River Linux 5.0が2CPUコアを割り当てられた仮想マシン上で動作し、残りの2コアをそれぞれ1コアずつ使って同じくWind RiverのVx Worksという組み込み機器制御用リアルタイムOS(RTOS)2つが仮想マシン上で動作する、つまり3つの仮想マシンが動作する構成になっています。

つまり、最近のデータセンター向けサーバなどで一般化しているIntel® VTと呼ばれる仮想化支援機能を援用して、制御機器の集約化を図っているわけです。

安齋氏は「これまでこういった産業機器をコントロールするには用途別に複数の機器を使って例えばPLC、HMI、それからビジョンセンサー、モーションコントローラといったそれぞればらばらの機器を結線して接続をして、そして(システムを)インテグレートして動かす、といったことをしなければいけなかったのですが、この提案はそういった一つ一つの機能をマルチコアCPUのそれぞれのCPUコアで行う、ということで一つに集約するというのがポイントです」と語り、この技術の主眼が産業機器周辺のコントロール機器の整理統合にあることが示されました。

この構成ではCPUコア間=仮想マシン間の通信も可能で、セキュリティも非常に高くなっています。

さらに安齋氏は「バーチャライゼーション(仮想化)は結構高度な開発が必要で、技術者も熟練された方がおられるというのがこれまでの理解ですけども、この製品はその敷居をぐっと下げるものであると我々は期待しています」と付け加えました。

実際、この製品ではWind Riverの仮想化モニタ(ハイパーバイザ)を利用した環境を標準的にセットで提供することで確かにそのあたりの敷居をぐっと低く下げることに成功しています。

ワークロード・コンソリデーションのもたらすもの

ワークロード・コンソリデーションの利点
端的に言ってしまえばサーバの仮想化と本質的には同様である。ただし、組み込み機器制御用のリアルタイムOS(RTOS)を扱うため、サーバの仮想化にはない特徴がいくつか備わる。

それではこのワークロード・コンソリデーションを導入することで具体的にはどのようなメリットがあるのでしょうか。

安齋氏はソリューション全体コストの低減、物理的スペースの節約、システムや工場の複雑性の緩和、よりシンプルなセキュリティ対策、管理する機器数の削減、そして信頼性の向上、の6点を挙げ「バーチャライゼーションはIoT時代に非常に有効な開発システムになっている」としました。

いずれも基本的にはサーバの仮想化によるメリットと同様のものばかりなのですが、こちらも仮想化を導入しているのですから当然といえば当然でしょう。

後編ではインテルのIoTゲートウェイとデータセンタソリューションを取り上げます。

▼参考リンク
インテル® Quark テクノロジー
インテル® Edison 開発ボード
Intel® Industrial Solutions System Consolidation Series(SCS 110Kデータシート(PDF))

API Management, API Gateways, Strategy Services and Developer Platform Services
VxWorks RTOS
Wind River Hypervisor

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