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Internet of Thingsがもたらす変革「IoTの現在~未来」

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by [2014年10月27日]

先日行われたIoT/M2Mカンファレンス2014秋においてはさまざまな興味深い講演がありました。
中でも注目されたのが、先日IoT向け製品を発表してこの分野へ進出をはじめたばかりのインテル日本法人でこの事業を担当するIoTソリューションズ事業開発部の安齋氏による、IoTにおけるインテルの立場を明確にする講演でした。

安齋尊顕氏 インテル株式会社IoTソリューションズ事業開発部 事業開発マネージャー。ソニー株式会社、アップル株式会社などを経てインテル株式会社でInternet of Thingsソリューションの事業開発に従事。クラウドに繋がった組み込み機器が作り出すビッグデータによる新たなビジネスの開拓に取り組んでいる。

Internet of Thingsがもたらす変革
前編 IoTの現在~未来
中編 インテルの取り組み
後編 ゲートウェイとデータセンタソリューション

IoTを取り巻く環境

まず安齋氏はIoTを取り巻く環境の説明から始めました。

今後10年のエネルギー需要予測グラフ
発展途上国を中心に爆発的に需要が増大する見通しが示されている。

最初に示されたのは、次の10年の予測として、世界のエネルギー需要予測のグラフです

先進国と発展途上国で色分けされていて、先進国の需要増大は2010年~2020年で見てもさほど多くはないのですが、発展途上国では100千兆BTU以上も増える見込みであることが判ります。

単位がヤード・ポンド法に基づくいわゆる英熱量(British Thermal Unit)と呼ばれる単位になっていますので、これを日本で一般に利用されている単位に換算してみると、1英熱量≒0.293071Whですから100千兆BTU=10京BTU=29兆3071億kWhとなります。日本に現存する原子力発電所全基が休止なく10年フル稼働したと仮定したときの発生電力量がざっと計算すると4億kWhほどですから、途方もないエネルギー需要の増加が予測されていることになります。

さらに、安齋氏は「2025年までには(これまで供給者クラスにいた)18億人以上の人々が消費者クラスに参入する」と指摘し、さらに「その人数が18億人、中国(の人口)が12億人と言われているからそれ以上の最大の国が一つ出来てしまうようなそんな勢いである」と付言しました。現在の予測では2025年には世界の消費額は64兆ドルに倍増すると見込まれています。

消費者クラスに属する人口増、というのはすなわち市場の拡大≒購買需要の増大を意味していますから、現在の中国の人口の1.5倍もの人口が消費者層となるのであれば、消費額の倍増は当然の結果であると言えます。

それを裏付けるように新興市場、つまり発展途上国などを中心とした市場の消費額が現在の12兆ドルから30兆ドルに増加すると予測されています。これを指して安齋氏は「これまで先進国が引っ張ってきた経済が、主役が今度はよくエマージング・カントリー(Emerging Country)と言われる新興国に軸足が移っているという風に捉えられる」と語り、今後の市場拡大の主戦場が新興国市場となることを示しました。

もっとも、こうした市場の拡大はエネルギーコストの上昇をもたらします。そのため、世界のエネルギー需要は2035年までに40パーセントの増加となることが見込まれていて、需要予測のグラフでもあきらかなように、発展途上国≒新興国での需要が急増することが予測されています。

こうしたことから2025年までに人口1000万人以上のメガシティが37出現し、その内22がアジアに集中することが予測されています。

こうしたメガシティ増加、エネルギー需要予測の増大などの状況を踏まえて、安齋氏は「世界全体が効率化しなければいけない。これは喫緊の課題になっている」としてエネルギー利用効率の改善が最重要課題の一つであることを訴えました。

効率化のもたらすもの

ここで安齋氏は「Power of 1%」というキーワードを提示しました。

これは様々な業種・業態の各分野を対象にして、1パーセント効率化が実現すればどれだけの効果が期待できるかを示すものです。

これによると航空では1パーセントの航空機燃費向上で15年間に3兆円の効果が見込まれ(※注2)、ガス火力発電では1パーセントの燃費向上で15年に6.6兆円の効果が、ヘルスケアの分野では1パーセントのシステム効率向上で15年に6.3兆円の効果がそれぞれ見込まれています。

また、元々エネルギー効率のよい鉄道(※注3)でも1パーセントの効率向上で15年に2.7兆円の効果が見込まれていることも示され、安齋氏は「1パーセントというのグローバルでは大きなマグニチュードの効果がある」とわずかな効率化でも地球規模になると非常に大きな効果をもたらすことを指摘しました。

※注2:実際に航空業界では昨今の燃料価格高騰を受けて、低燃費の新型高バイパス比ターボファンジェットエンジン導入により運航コストに占める燃料費の割合を大幅低減する努力が積極的に行われています。
※注3:鉄道は空気抵抗や摩擦によるエネルギーロスの観点では自動車輸送に対してエネルギー効率で勝ります。

IoTとビッグデータ

IoTとビッグデータの結合による規模の経済は決して無視できない。

こうした効率化の手段として、2020年には500億台ものIoTエッジデバイスが普及し、何らかの形でネットにつながりデータ通信を行うようになるとのことで、安齋氏は「その(蓄積される)データをいかに活用するか、いかに解析を行ってそこから『価値』を見いだすか、ということがキーになる」としました。

その『価値』とはすなわち収入増加・コスト削減・収益改善という企業活動上の利益につながる結果が考えられるわけですが、「やはり『価値』を見いだすのは得られたデータを解析するところである、という基本は変わらない」と安齋氏は強調しました。

続けて安齋氏は「IoTというといろんなものがつながるんでしょ、データをやりとりするんでしょ、というところから話が始まることが多いんですが、ビッグデータはそのままではただの重いデータであるにすぎず、それをどう解析するかがポイントになってくる」と指摘し、IoTとビッグデータの組み合わせでは解析手法の選択が特に重要になってくることを指摘しました。

いかに貴重で莫大なデータを収集しても、それを適切な手法で解析しなければ、何の価値ある結果も得られないのです。

500億台の機器接続がもたらすもの

IoTのもたらす巨大な市場機会創出
現在の地球人口の8倍以上に当たる500億台のデバイス、40ZBのデータ、と途方もなく大きな数字が並ぶ。

それでは2020年、500億台のIoT機器がネットワークに接続されるようになった世界ではどのような状況となるのでしょうか。

まずネットワーク上のデジタル世界に存在するデータ総量が40ZBに到達する予想であることが示されました。

ZB、つまりZettaByte(ゼタバイト)で1ZB=1,000,000,000,000,000,000,000(10垓) バイト=1,000EB(エクサバイト)=1,000,000PB(ペタバイト)=1,000,000,000TB(テラバイト)という途方もなく大きな天文学的単位が持ち出された段階で既に筆者には想像も出来ないような領域なのですが、自分自身のパソコンで使っているハードディスクの総量がここ6年ほどで2TBから30TBまで増えていることを考えると、この数字も嘘ではないのだろう、と推測できてしまいます。

もっとも安齋氏は「データには寿命がいろいろある」と指摘し「生み出された瞬間に消えてゆくようなデータもあればアーカイブされて永久に保存されるようなデータもある」としました。

それでは、そうした天文学的な量のデータをどう活用するのか、という話になるのですが、安齋氏はここでいくつかの具体例を示しました。

まず紹介されたのが中国のスマートシティプロジェクトの例です。

このケースでは街中の各所に設置された監視カメラの映像を用いた画像解析により、交通流量を測定し信号の時間設定を動的に変更する、あるいは道路の車線割り当てを時間帯によって動的に変更する、といった先進的な実験が行われている由です。ここで毎日生成され解析に利用されている画像データの総量が1日あたり6.7PBに達するとのことです。つまり、毎日一時的にとはいえ一般的な3TBのハードディスクを22,000台以上埋め尽くすほどの莫大な画像データが生成・消費されているわけです。

次に示されたのが、インテル自身の社内での事例です。

安齋氏曰く「インテルはこうしたビッグデータの活用に積極的な企業である」とのことで、同社工場では「1時間に記録されるデータ量が5TB、製造データとか環境データといったものになりますけども、こういったものが出てきます。インテルはこうしたデータを活用して歩留まりの向上とか品質の向上とかに役立てています」と紹介されました。

同社工場の製品といえばすなわちCPUやチップセットなどの半導体製品が主力ですが、製造データや環境データなど個々のチップなり部品なりの生産工程管理の上で必要な情報を記録するだけでもこれだけの莫大なデータ量(※注6)になるということで、これだけデータを収集・記録していれば同社が製品に不具合などが発生した際に迅速に該当ロットを特定できるのも納得です。

※注6:先ほどのスマートシティの例と比較すれば微々たる量ですが、あちらが元々巨大になりがちなカメラ画像データ1日分、こちらは基本的には文字データ1時間分であることを考慮すれば、十分すぎるほど巨大なデータ量であると言えます。

最後に紹介されたのがアメリカの医療業界での例です。

安齋氏曰く「アメリカの医療業界でビッグデータ活用によって実現しうる医療売り上げは実に60Bドル、今のレートだと1ドル=108円換算で60兆円以上にもなる」とのことです。

IoTが効果を発揮するには

IoTにかかわるネットワークの関係図
つながっていてこそのネットワークであり、どれが欠けてもIoTは効果を発揮しない。

次に安齋氏はIoTが機能しこうした効果を発揮するために必要な条件として、「エッジデバイス、ゲートウェイ、そしてネットワークがあって、最終的にデータセンターなどのクラウドソリューション、と(IoTを構成する要素が)揃わないとシステムとして意味がないと考えている」としました。

エッジデバイスで収集されたデータがデータセンターなどで処理されてエッジデバイスにフィードバックされるというIoTの仕組みを考えれば、経路上の構成要素が欠ければシステムとして成り立たないというのは至極当然の話なのですが、これは前提条件として念頭に置いておくべき話ではあります。

それはつまり、安齋氏の指摘にもあったのですが、「むやみやたらとエッジデバイスをつないでデータが出てきたといっても、そのデータをどうするかというビジョンがなければどうにもならない」ということであって、データを集めたはいいがそれをどう活用するのかというビジョンがなければ、つまりデータセンターで何をどうするのかというビジョンがなければ、全くもって宝の持ち腐れで何にもならないのです。

中後編の「インテルの取り組み」に続きます。

インテルのInternet of Thingsソリューションへようこそ
IoT/M2Mカンファレンス2014秋

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