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Web漫画『ぼろくら』連載中~旧福嶋屋土蔵を保存したい~

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by [2014年10月09日]

APPREVIEW読者の皆さんは、歴史(特に日本史)についてどのような印象をお持ちでしょうか。「入試が終わると同時に忘れた」「パーリィは楽しまないと」「戦国ディフェンスなう。」「大河ドラマのエロシーンは一体誰得なのか」……色々なご意見があると思いますが「そもそも選択していないので興味ないし知らない」という方もいらっしゃるかもしれません。スマートフォンを自在に操り、プログラミングだってお手の物、最近の関心ごとはアドテクについて、趣味はDTM。そういった時代の最先端を行く皆さんと「歴史」は対極のジャンルと言っても過言ではないでしょう。

しかしこの記事でご紹介したいのはWebを活用して古い文化を守りたいIT世代です。

写真をご覧ください。何かわかりますか? 「ボロボロの蔵」、そう答えたあなたは正解です。正式名称は『旧福嶋屋土蔵』(きゅうふくしまやどぞう)、愛称は『ぼろくら』といいます。山梨県は勝沼に建つ、不安になるほどボロボロになってしまったマイナーな土蔵です。しかしかわいそうな見た目に反して、歴史的な価値は高く(後述)中におさめられていた品々も建築当時(明治27年)からの風俗にかかわるものばかりです。

この土蔵を後世に伝わるように修繕し保存したいと考える方がいます。旧福嶋屋土蔵を将来継ぐ予定だった漫画家harukaさんです。harukaさんがWeb漫画を描いたことがきっかけで、取り壊されそうになっていた旧福嶋屋土蔵を見直す動きが始まっています。本記事から3回にわたって、旧福嶋屋土蔵保存活動について特集したいと思います。

▼目次▼
Web漫画『ぼろくら』連載中~旧福嶋屋土蔵を保存したい~
Web漫画発プロジェクト!広がる『旧福嶋屋土蔵』保存の輪~インタビュー前編~
雪害を乗り越えNPO法人設立!『旧福嶋屋土蔵』の未来を見る~インタビュー後編~

すべてはここから始まった~Web漫画掲載~

すべての始まりたる漫画を引用させていただきます。

(『ぼろくら』より『はじまりの春』)

ちょっとファンキーな感じの父、ネットに疎いけど上品そうな母、そしてITの発達とともに育った漫画家の娘(harukaさん)。ほんわかとしたイラストと強烈なキャラ立ちのギャップが面白いですね。たまたまリアルタイムでこの漫画を知っていたのですが、「日本はやっぱりはじまってた」と思ったのを覚えています。

harukaさんは主に広報用の漫画などを描く現役の漫画家です。また海外向けに日本の妖怪をモチーフにした短編漫画を描き下ろしていて、コミックスも発売されています(私はその海外コミックのファンです)。

上の漫画の通り、旧福嶋屋土蔵の保存活動が始まったのは、ご家族のちょっとした『おもいつき』がきっかけでした。harukaさんは公式サイト『ぼろくら』を制作し、そこにエッセイ漫画や土蔵擬人化漫画、勝沼に縁のある妖怪漫画などを掲載しはじめました。同時にPIXIVやcomicoなどのWeb漫画用SNSに投稿し、それがTwitterなどで拡散されるに従って、まったくの無名だった旧福嶋屋土蔵の知名度が少しずつ上がり始めました。

YouTubeに動画もアップされています。

旧福嶋屋土蔵について

さてここで、ぼろくらこと旧福嶋屋土蔵について軽く解説したいと思います。

  1. 名称:旧福嶋屋土蔵(きゅうふくしまやどぞう)
  2. 所在地:山梨県甲州市勝沼町勝沼3133番地
  3. 構造・規模:地上3階、地下1階の四層
  4. 建築年代:明治27年(1894年)
  5. 施主:小池忠右衛門(13代目)
  6. その他:昭和62年(1988年)、放火により土蔵以外の建物は全焼

小池忠右衛門は「草龍園福嶋屋」という薬業を営んでいました。江戸時代からたびたび火災に見舞われていたため、延焼を防ぐために建てられた土蔵だと推測されています。(編注:木造建築物は燃えやすく、特に冬場は空気が乾燥するため、火災を防ぐのは非常に難しかった)


薬業の家系らしく、土蔵の2階部分にはたくさんの薬箪笥が置かれています。


3階には明治時代やそれ以降に土蔵を利用した人々の日用品も保存されていました。
当時の書物や、貴重な写真などもたくさん残っています。公式サイト『ぼろくら』やFacebookにて公開されていますので、詳しくはそちらをご覧下さい。基本的に写真は無断転載禁止です。ご利用の際は公式サイトへメールでご相談ください。当記事の写真はすべて許諾済みです。

少々話がそれるのですが、日本には歴史的価値のある建物が無数に存在してます。四方を海に囲まれていて外部の影響(侵攻を含む)を受けにくいため、世界でも類を見ないほど国家が長く続いており、また、外来文化もアレンジして独自進化させていくという土壌が古くからあります。2014年6月に指定されたばかりの富岡製糸場と絹産業遺産群をはじめとする世界文化遺産だけでも14件、国の重要文化財に指定されている建造物は2014年1月の時点でなんと2400件を超えています。

そんな中で旧福嶋屋土蔵はかなり知名度が低い建物といわざるを得ません。私は学生時代に日本史に携わっていた時期もあるのですが、はっきり申し上げるとまったく知りませんでした。現在のように保存活動が行われていなかったころは、ネットで検索してもほとんど情報があげられていませんでした。

旧福嶋屋土蔵は建築様式が明治27年のものとしては珍しいため、元々は勝沼市で保存される予定になっていたそうですが、予算が厳しくマイナーな建物を未来に残すのは難しいのが現状です。放火火災によって傷んでしまったため、保存には個人負担が難しい額が必要で、取り壊すしかない状態に追い込まれてしまいました。

Facebook、Twitter…ITを駆使して歴史を守れ

Webでの活動に話を戻しましょう。
地道に漫画の連載を続けているうちに、土蔵の保存に協力したいという人たちが集まり始めました。協力者の助力で山梨日日新聞に掲載されたり、NPO法人を立ち上げたり、「あなたの残したい建物コンテスト」の最終選考に残ったりと着実に知名度があがっていったそうです。


Facebookページを作り、Twitterアカウントを取得したことで、より拡散されやすくなりました。
Facebookは主に写真、サイト(ぼろくら)には漫画が掲載されています。ネットで各地の人に土蔵の現状を知ってもらうことによって、より活動の方向性がはっきりしていきました。

comicoの利用

PIXIVと並行して、comicoというWeb漫画サイトにも『ぼろくら』は掲載されています。

comico(コミコ)は、毎日更新のオリジナルコミックが無料で読める、新しい形のWeb漫画サイトです。
スマートデバイスに最適化された「スマートコミック」スタイルで、お気に入り作品がさくさく簡単に読めます。

comicoはスマートフォンアプリとPCから閲覧できるのですが、スマートフォンから漫画を読むときは4コマ漫画のような縦長のものが読みやすいとされています。ストーリー漫画のようなコマ割りよりも、スクロールするだけで読める漫画の方が良いといことです。harukaさんのスタイル(4コマ、フルカラー)と合致していたため、comicoでもベストチャレンジ作品に選ばれています。

comicocomico

取り壊しは免れないだろうと思われていた旧福嶋屋土蔵は、Webの力を借り、2年弱でNPO法人の立ち上げにまでこぎつけられました。ITと歴史という一見相性の組み合わせが、Web漫画という接点で絶妙なマッチングを見せた好例だと思います。

次回は保存活動の中心にたつharukaさんにインタビューを行います。

▼関連リンク
旧福嶋屋土蔵(Facebook)
旧福嶋屋土蔵(Twitter)
旧福嶋屋土蔵(blog)
ぼろくら
あなたの残したい建物コンテスト
comico

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