株式会社東芝・佐々木則夫副会長
1972年東芝入社。原子力事業部長、執行役員専務、代表取締役社長などを経て現在、取締役副会長。2013年6月より経団連副会長。

ICTが解決する日本や世界の課題とは?【CEATEC】

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by [2014年10月09日]

株式会社東芝・佐々木則夫氏
1972年東芝入社。原子力事業部長、執行役員専務、代表取締役社長などを経て現在、取締役副会長。2013年6月より経団連副会長。

 アジア最大級の最先端IT・エレクトロニクス総合展「CEATEC JAPAN 2014(シーテック ジャパン)」が10月7日から11日まで、幕張メッセで開催されています。初日におこなわれた株式会社東芝・佐々木則夫副会長による講演『ICTが拓く未来 ~安心、安全、快適な社会へ~ 』の模様をお伝えします。

 日本では一人に一台以上の携帯電話が普及し、約八割の国民がインターネットを利用しているといいます。情報通信産業は成長産業であると同時に国民のインフラです。ICT(情報通信技術)は日本や世界の課題をどう解決し、安心・安全・快適な社会を作り上げるのでしょうか。

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情報通信の現状とアベノミクス


 日本の情報通信産業の世界での売り上げ高は92.5兆円で、全産業の売り上げ高の6.6%を占めています。これは卸売り・小売り・建設に次ぐ第4位のシェアです。営業利益は4.9兆円で全産業の10.1%を占めています。2013年には全産業の研究開発費12.2兆円のうち2.2兆円が情報通信産業に使われ、輸送(自動車)に次ぐ第2位の数字を記録しています。同じ年度の日本企業の世界設備投資をみても、全体の13.1%を占める4.8兆円が情報通信産業です。国内でも約400万人の雇用を生み出すなど、情報通信産業は日本経済における基幹産業であり、その役割・影響力は大きいです。


 アベノミクスによって経済活動や事業環境が改善しつつあるのは間違いないでしょう。しかし、懸念もあります。今年4月から6月期にかけての実質GDPの成長率は消費増税の駆け込み需要が反動し、前期比年率7.1%のマイナスとなりました。原発再稼働の遅れや円安の進行すれば、エネルギー価格の高騰もさらに深刻化するでしょう。安部政権は6月24日に、「経済財政運営と改革の基本方針2014(骨太の方針)」を閣議決定しました。われわれICT業界としてもこの政府方針に対し、ネット減税・ITA(情報技術協定)の拡大・環境負荷低減の取組などの施策を要望していきます。

世界の課題とICTによる解決


 東日本大震災以降の日本は火力発電に依存しています。円安と値上げがこれに重なり、日本の化石燃料の輸入額は震災前に比べて10兆円ほど増加しました。こうした状況下で期待されているのが、ICTを活用した「エネルギーマネジメント」です。スマートメーターを利用した通信ネットワークの導入が精力的に進められています。これが実現すれば各家庭のエネルギー消費量をリアルタイムで把握でき、需要に合わせたデマンドレスポンスの電力供給が可能になります。ピーク電力削減効果はビルで最大22.8%、住宅で15.2%という実証結果もすでに出ています。

 先進国のCO2排出量は減っていますが、新興国を中心にエネルギー需要が増えています。世界全体ではCO2排出量は上昇しており、その影響による異常気象の発生が指摘されています。日本では一時間の降水量が50mm以上の雨が多くなっています。豪雨とそれに伴う災害を予測し、地域住民への伝達の仕組みとしてICTを利用した「地域防災ソリューション」が必要です。気象レーダーの能力は向上しており、ゲリラ豪雨の雲の発生や動きを最短10秒で観測できます。また、20~30分先の予測も可能です。


 世界の人口は2030年までに84.2億人になります。しかし、日本では少子高齢化が進んでおり、2030年には65歳以上の人口が31%を越えるといいます。生産年齢人口の減少や、高齢者の交通事故の増加などが予想されます。最大の懸念は社会保障費の増大です。すでに2009年には100兆円を超えました。マイナンバー・パーソナルデータ一貫活用により、予防・医療・介護における効率化が急務です。経団連と総務省の調査では、マイナンバー制度、医療情報ネットワークの全国展開、生体センサ・データ解析などのICT利活用で年間約6兆円の効果があるという結果が出ました。

 農業就業人口の減少と高齢化といった問題に対しても、スマートアグリ(農業へのIT活用)や植物工場といった対策が可能です。クラウド活用で統合制御を実現するITS、路車間・車車間通信によって交通流最適化が実現すれば、年間約一兆円の燃費改善効果が生まれます。社会インフラの老朽化に伴う更新コストの急増も大きな課題ですが、超低消費電力無線ネットワーク、センサ・画像処理、データ解析などのICT技術により構造物の状態をモニタリングと予防保全で、年間整備費用が2700億円削減できるという試算もあります。

更なるICT利活用に向けて


 ICT利活用に向けた課題の一つが、情報セキュリティの高度化です。巧妙さと悪質さが増しているサイバー攻撃の脅威に対して、第三者に読み取ることが理論的に不可能な量子暗号通信などの先端技術開発で対応する必要があります。IT機器の消費電力が増加しており、日本の総発電の約二割を占めていると指摘されます。2020年を目途とした5Gの開発をはじめとする高速大容量通信技術や、ストレージ高速とSSDの普及などによる低消費電力化を目指します。また、ホワイトハッカーなどの高度な人材が不足しているため、産官学民の連携によるICT人材の育成が必要です。

 2020年の東京五輪・パラリンピックに向けては、最先端のICT利活用によるおもてなしと先進性の発信が必要です。日本初の国際標準無線技術「TransferJet」は、無線LANの10倍以上の高速通信です。競技ハイライトや日本の観光紹介動画の配信に使用できるほか、五輪期間の無線LAN集中を緩和させる役割も期待されます。空港に設置されたTransferJet対応デジタルKIOSKから観光客向けに必要な情報をスマートフォンへ高速配信するという使い方も検討されています。

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