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【アドテック東京】インターネット広告における健全な価値指標とは

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by [2014年10月07日]

池田宜秀氏
株式会社ビデオリサーチ 部長

 現状のインターネット広告取引の課題と現状の対応策を広告主視点、媒体社視点、広告会社視点からまずは伺いながら、今後さらにデバイスの多様化や広告フォーマットの多様化と、動画市場の成長で想定される広告出稿・効果に関わる課題を確認していきます。 それらを従来的なテレビを含むマス広告と比較しながらご意見を伺い、いくつかの調査データを用いながら、オンライン上での直接的な行動把握だけでは捉えきれなかった広告効果(広告認知の有無、広告認知後の心理変容などの中間指標)を測定することの重要性を議論する構成を考えています。
 今回は、現状のインターネットでどういう指標を使って物事を考えているか、そして今後どういった指標・広告効果が分かっていくことが望ましいのかということをお話しいただきたいと思っております。

Speaker

田村修氏
株式会社アイレップ メディアマネジメント本部メディアマネジメントグループ グループマネージャー

沢桂一氏
日本テレビ放送網株式会社 営業局次長(兼)営業戦略部長(兼)営業企画部長

牛込貴博氏
日本コカ・コーラ株式会社 マーケティング本部IMCコネクションプランニング&メディア シニアマネジャー

楠本和哉氏
株式会社電通 MCプランニング局メディア・マーケティング室長シニア・プランニング・ディレクター

1インプレッションの価値

───田村さんと牛込さんは日常的にインターネットと関わっていますし、沢さんと楠本さんは、今後どうしても関わらざるを得ない状況かと思います。まず、田村さんから現状をお聞かせください。

田村 僕らは「専業の広告代理店」と言われることが多いんですが、実は別に専業であり続けるつもりは全くないんです。
プランニングをしていくときに、よく「今回の施策はブランディング系ですか?」「パフォーマンス系ですか?」等と分けて聞かれるんです。パフォーマンス系の施策は「閲覧行動」や「検索行動」などをデータ化して分析し、そこからどのようにクリックを作り、コンバージョンを高めていくのかという施策です。

パフォーマンス系の施策は、テクノロジーによって可視化されて最適化、指標化も進んでいます。
一方でブランディング系の施策は、指標的にはあまりないように思います。モチベーションを持っていた人が検索に移ったとか、どのくらいのモチベーションが高まったときに閲覧行動を始めたのか、というところは「なんとなく」しか考えていないので。ブランディング系とパフォーマンス系の施策は、分けて考える傾向があるんですが、それを具体的にしたのがこの図です。

1インプレッションの価値は、どうやって考えたらいいか。もちろん、インプレッションからしかクリックは生まれないので、どのような価値のある1インプレッションを積み重ねていくかで、1クリックが生まれていくのかということを考えます。

そもそも1インプレッションの価値というのは、やはり「コンテンツの価値」です。ヒトは、広告を見るためにブラウジングしているわけではなく、必ずコンテンツを見るためにスマホをタップしていると思うんです。

この図で見ると、上の青い点線の囲み(インプレッション、態度行動変容、コンバージョン)が実はマスやプレミアム広告と言われている「PDCAサイクル」だと思うんです。インプレッションがあって、出稿数はいくつで、どれだけ認知が上がってそれがどんな売り上げに繋がったか。ところが現状は、ショートカットして態度変容や認知からコンバージョンや売り上げになっています。
一方で、パフォーマンス系のサイクルはユーザー行動や購買効果、サーチのデータなどからスタートしてるんです。例えばサーチがあった後、閲覧行動、クリックがあってその中からコンバージョンして、そこからコンバージョンを売ったサーチは何か、コンバージョンを売った閲覧行動は何だ、というように下の方だけでPDCAサイクルが回っているんです。態度変容などその上の方のモチベーションを考えないといけないのに。ですから本当は、このくらいの広さでPDAサイクル(茶色の点線)を考える必要がある。しかし、特にあの態度変容やモチベーションから閲覧行動に移ってくるところには、「なんとなく」や過去の知見があるんです。ここが昔ながらのトラディショナルなマーケティング手法に頼ってしまっていて、一番の大きな課題なのかなと思っています。

予測できないネットの費用対効果

───態度行動変容の部分は、楠本さんがいつもやられているメディアプランニングにもよく出てくると思うんですが、これについてはどう考えていますか?

楠本 最終的にコンバージョンに全く寄与していないとは思いませんが、アトリビューション分析というのは、ネットだけでなくマスでも難しいんです。テレビの場合、GRP(※Gross Rating Point)やターゲットの場合TRP(※Target Rating Point)と言っていますが、それに対しては目処が立つんです。ただ、このインターネットの世界で何千万インプレッションを打ったとき、人がどういった態度変容を起こすのかに関してはよく分からないんです。例えば予約型の垂直立ち上げで、あらゆるメディアとコンタクトポイントを一斉に動員して、一気に認知を上げるムーブメントを起こすとします。このとき、インターネット以外のメディアであれば費用対効果が読めるんです。しかしインターネットだけは、その業務推進担当の人間の主観的な判断に全部誘導されてしまうところがあるんです。普段こうしたことを仕事でやっていて、ネットにも事前に予測できるものがあると便利だなと思います。

IMCトラッキング

───プランニングの視点から苦労されている点が垣間見えたんですが、実際に広告主として牛込さんがどういった風に物事を考えているか教えてください。

牛込 例えばテレビの効果がどのくらいあったかというのは「トータルとして」どのくらいのコミュニケーション効果を作ったかという話になります。そうするとやはり(様々なメディアを)並列して比較できる指標が欲しいです。
 特にクリックレートの部分に関しては、数字が上がることは上がるんですが、そのクリックが1%やそれ以下の指標だったりするんです。残り99%の部分の評価の仕方についてはいつも疑問に感じていて、1%を最適化するよりも、残りの99%を最大化していく方が効果が出やすいんじゃないでしょうか。そうした部分が整理されて共通になるような客観的指標が、絶対的に足りていないんです。
 弊社が取り入れているコミュニケーションの考え方に“IMC”(統合型マーケティングコミュニケーション)というものがあるのですが、IMCの評価の指標や独自の調査をかける=IMCトラッキングを行なうことで、効果の度合いについては知ってはいるんです。ただ、リサーチ会社や広告代理店においても、説明責任を持てるくらいのインプレッションのスタンダードを打ち立てて頂きたいですね。

───日頃はどんなことをしていますか?

牛込 IMCトラッキングということをやっています。
これはシングルソースパネルなどを使って調査したもので、テレビのリーチ、アドネットワークのリーチ、サイト広告のリーチの差を見たものです。こうするとやはり、テレビでは取り切れない層をインタラクティブが補完している状況が明確に分かります。我々は、こうした調査をキャンペーンごと、ブランドごとにずっと行なっているんです。

そしてハイブリッドアロケーションというモデルを独自に作り上げて、テレビとデジタルの投資効率の最大化、リーチ効率の最大化を図っています。

CM広告の今後

───沢さんは、みなさんのお話を受けていかがですか?

 難しいね。このマーケットに参入したばかりで、難しくてついていけないんですよ(笑)。ただ我々がどういうモチベーションで、何を期待してテレビコンテンツを出そうと思ったかについてお話しておきます。
 期待していることは、2つあります。1つは仮に同じCMであっても違うデバイスで見ることによる「重複視聴」の認知効果が高まるということです。もう1つは、リーチしにくくなっている層に対して、それを補完できるのではという期待です。
 先日、日本テレビの見逃し番組の無料視聴キャンペーンサイト「日テレいつでもどこでもキャンペーン」でも1つ発見がありました。それはドラマだけでなく意外とバラエティも反応があったということです。
 「有吉反省会」というバラエティがドラマに迫るくらいの再生数があったんです。これは日曜日の22時半からローカルでやっている30分枠の番組なので、それほど認知は高くなかったんですが、これを見た方にアンケートを取ってみると、3割くらいが「初めてこのサービスでこの番組を知った」そうなんです。つまり、その3割の方々に「有吉反省会」を初めて当てることができたということです。これは将来に向けて、広告という意味でも可能性が広がるんじゃないかと感じました。
 ただ、我々はクリッカブルなどの運用に全く今、対応していません。さらに言えば当面対応しないと思っています。
 やはり我々としては、コンテンツを見て欲しいんです。労力とお金と情熱とアイデアそして時間をものすごくかけて作ったコンテンツなので、どうしても最後まで見て欲しい。途中でどこかに行かれたくないんです。モチベーションとやってるんだという意識がものすごくあって。それは多分CMも一緒で、15分CMを作るのも1時間番組を作るのも、もしかしたらCMの方がそれ以上の労力やお金をかけているかもしれません。それを飛ばすような仕組みを作っていいのか、最後まで見て頂くべきなんではと思うんですが、牛込さんはやはりクリッカブルがいいんですかね?

牛込 クリックの延長というと変ですが、クリックをしてそこから自分のサイトに連れて行って、そこでカスタマージャーニーをして頂いて、最終的にコミュニケーションしていくという設計においては、今はクリックというレートが絶対的指標としてあるのでクリックされるべきだと思います。ただ将来的に長い期間で見た時にCM・動画・コンテンツなどで、認知やキャンペーン効果が見込めるものが証明できるようになってくれば、必ずしもクリッカブルなものでなくてもいいと思っています。

 その日が早く来ることを期待しています。やはり我々が忘れちゃいけないのは、番組にしろCMにしろそのコンテンツに対するリスペクトです。数字でしか見えなくなりがちですが、それはやはり一人一人の顔であって人間なんです。

田村 僕も、コンテンツの大切さについては最近特に思っています。インターネット広告の悪い点は、アドネットワークやアドサーバーが出てきてから、広告枠やコンテンツ枠を別々に管理しはじめてしまったことです。そうすると広告枠は広告枠としてコンテンツを置き去りにして、CPCとかCPAの世界に入ってきた。広告コンテンツも置き去りにしたまま、クリックとユーザーの他のところでの行動がコンテンツを置き去りにしたまま取り出してしまって、その中で最適化が図られてしまうようになったと思うんですが、それがもしかしたらPDCAサイクルの下の方だけで廻っているようなものの原因かもしれない、と考えています。
 最近、ネイティブアドという考え方がでてきています。ベタで考えると、広告と広告枠がコンテンツをくっつけるような考え方もひとつかな、と思っています。なので、やはりコンテンツはコンテンツで非常に大切ですし、そのコンテンツにふさわしい広告がそこに乗っかってこそ、広告が最大限の成果を出すんじゃないかなと思っています。

───本日は、インターネット広告における健全な価値指標とはということをテーマにお届けしてまいりました。中間的な指標の部分をうまく作り上げることができ、皆さんの共通認識の中に中間的な指標が浸透していけば、色々な局面に使えることが徐々に分かっていくのではないかと思います。

ビデオリサーチ
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日本コカ・コーラ株式会社 Coca-Cola Journey
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アドテック東京2014年 | デジタルマーケティングカンファレンス

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