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最高のゲームは最適なチームから~『昭和駄菓子屋物語』ができるまで

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by [2014年10月03日]

 店の奥でお茶をすするおばあちゃん、そのおばあちゃんとのコミュニケーションを求めて集まってくる子どもたち…放置系でありながら登場人物が実にいきいきと描かれているスマートフォン向けゲームアプリ『昭和駄菓子屋物語』。プレイすれば、100円で何を買おうか真剣に悩んだあの日が脳裏によみがえるに違いない。そして「駄菓子屋って何?」という若者にはぜひこのゲームで昭和文化を体験してほしい。
 この昭和駄菓子屋物語を企画・開発したのは株式会社GAGEX(ガジェックス)というゲーム専門のベンチャー企業だ。今回は代表取締役の井村剣介氏(写真)に、昭和駄菓子屋物語の開発裏話のほか、ゲーム作りのこだわりにについてお話を伺った。

 空き時間にゆる~く楽しめる『昭和駄菓子屋物語』。Google Playの無料アドベンチャーカテゴリで長期間に渡り2位を維持。本稿執筆時点でも4位と息の長いヒットを記録している。

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ゲームの仕事は子どもの頃からの夢

まずはGAGEX創業以前からお話を伺えますか?

 大学を卒業してしばらくは知り合いの社長さんの所で、SE、プログラマーをやっていました。その仕事は楽しかったんですが、子どもの頃からゲームの仕事をやりたいなと思っていたので、数年後に一年発起してフロム・ソフトウェアに入社しました。
 その後は、再び転職してスクウェア・エニックスのモバイル開発に8年間携わりました。そこでは、フィーチャーフォン向けのアプリ開発、月額サイトの運営責任者をやっていました。
 そして、2011年2月に独立してGAGEXを創業しました。現在は学生時代の友人とともに会社経営をしています。僕らが所属していたサークルでは麻雀とゲームばかりやっていました。アナログなコミュニケーションで盛り上がるゲームセンター等、(自由な時間が多い)学生時代にゲームのコアな部分に触れられた事は良かったと思っています。
 ちなみに、GAGEXは今期で4期目になりますが、これまではすべて自己資金で運営しており、特に出資等は受けておりません。

子どもの頃の夢をゲーム会社の創業という形で叶えたということですね?

 そうですね(笑)。この仕事を一生続けていきたいと思っています。

GAGEXの業務内容は何ですか?

 主にゲームの開発とコンサルティング業務をやっています。自社のゲームを作りながら、他の企業のお手伝いもしている状況です。受託開発というよりは、その企業のラインに入って、マネジメントやプロデュースをしています。
  現在はコンサルティング業務の売上がメインになっていますが、本来は自分たちのコンテンツで経営していく事がベストです。将来的にはこれを逆転させていきたいですね。幸い『昭和駄菓子屋物語』が好評なので、それを足がかりにしていければと考えています。

開発環境やポリシーを教えてください。

 昭和駄菓子屋物語の開発環境は「Cocos2d-x」ですが、もともと僕らは開発者が少ない会社で、往年のエニックス流の開発スタイルになっています。これは、企画の段階では開発者は決まっていなくて、プロジェクトに合わせて最適な人材を集めていくというものです。確かに、優秀な開発者も欲しいですが、映画と同じ様に、まずは“作りたいシナリオありき”がおもしろいものを作るためのこだわりですね。

開発ではなくプロデュースということですね?

 そうでないと僕らの作りたい物が作れないんです。「自分はプローデュースワークの方が向いている」と気づいたのは(エニックスとは対照的な開発スタイルだった)フロム・ソフトウェアに在籍していた時のことです。

初めは放置系ではなかった昭和駄菓子屋物語

開発そのものはどちらで行なっていますか?
 2D Fantasistaという会社です。以前から、この会社の『タップ・シーフ・ストーリー』(画像)を素敵なゲームだなと思っていました。今年の春に、2D Fantasistaが「BitSummit(ビットサミット)※」に出展していることを知り、そこでご挨拶したことを機に「一緒に何かやりましょう」となったのがご縁です。※京都で開催されるインディーズのゲーム会社が集まる展示会。

開発にあたりどのようにコミュニケーションを取りましたか?

 初めに大まかな仕様をお渡しして「ココとココだけはお願いしますね」という感じで、後は手触り感やレイアウトを含めてお任せなのですが、好きなところだけ口を出させてもらい、落とし所を決めていきました。
 昭和駄菓子屋物語については、お互いのフィーリングが合って、委託というよりも共同開発のようになりました。「思っていたのと全然違う」という事はなかったです。コンセプトが分かりやすいのも良かったのですが、先方もこちらの意図をうまく汲みとってくださって素晴らしいものになりました。

昭和駄菓子屋物語の開発期間はどのくらいですか?
 ちょうど3カ月半位ですね。ゆくゆくは手の込んだ物も作りたいのですが、当面は今回のように短期で作ったアプリをどんどんリリースしていきたいと思っています。

昭和駄菓子屋物語は下町のイメージですがご出身はどちらですか?

 東京の池袋近辺で、がっつり下町というわけではなかったので、子どものころ(1980年代)でも、さすがにゲームに出てくるような木造の駄菓子屋さんはありませんでした。ただ、少しは下町感が残っていて、おばちゃんがやっている駄菓子屋さんが3軒くらいはあったと記憶しています。昭和駄菓子屋物語の原体験はそのあたりの駄菓子屋さんです。

初めから放置系だったのでしょうか?

 それが違うんですよ(笑)。初めは社内でミニゲームをいくつか作っていこうと話し合っていました。駄菓子屋さんに10円玉を使ったゲームがありましたよね? そういったものをミニゲーム化して、シナリオを用意して、駄菓子屋さんを作っていくゲームにしようとしていたんです。ただ、ミニゲームは、すでにたくさんの会社が作っているので、ただ後追いするのでは勝負になりません。そんなことを開発会社さんと相談していくうちに、開発規模が見合わないということになってしまいました。
 それで、あるとき開発会社さんから「ミニゲームを集めるのではなくて、放置系にしてはどうですか?」という提案があって、即決でしたね(笑)。

プロモーション方法を教えてください。

 基本的にはクチコミで、後はプレスリリースを配信したくらいです。
 昭和駄菓子屋物語は近々のアップデートを予定しています。その際、スクリーンショットをTwitterに投稿する機能を追加する予定です。ゲームの雰囲気を感じてもらえればダウンロードしようという方も増えるのではと考えています。
 もちろん、クチコミだけでは難しいと感じています。特にAppStoreは競争が激しく、iOS版の昭和駄菓子屋物語の売上は徐々に落ちてきていますね。

ブースト広告等も考えていますか?

 さすがに何もしないわけにはいかなくなっていますね。お客様の目に触れないことには勝負になりませんので。

マネタイズは広告ですか?

 はい。アプリ内課金もやってみたいですが、ゲームの仕組みがしっかりしていれば広告で良いかなと思っています。知り合いから聞いた話だとアプリ内課金の収入が広告の1~2割くらいにしかならないそうなので。アプリ内課金を導入する場合は、例えば章立てのゲームを1章ずつ開放していくという方法は良いかもしれません。

お客様はおもしろいものにお金を払う

よくゲームで遊びますか?

 昔はよく遊びましたが、今はハマって遊ぶというよりも仕事の知見を広めるために遊ぶようになりましたね。作り手になってしまうとあまり楽しめなくなった気がします。

ソーシャルゲームブーム以降のゲーム業界についてどうお考えですか?

 僕自身はソシャゲーを好きなわけではないですが、あれはあれで良いと思っています。ただゲーム開発者には「ソシャゲーは面白くないけど儲かっている」という人が多いですが、僕から見るとそれは間違っていて、お客様はおもしろくないものにお金を払いません。お客様が僕らゲーム屋とは違う視点でおもしろさを見出しているんです。そこを見誤った会社は退場していきましたしね。「自分たちにはマネタイズのノウハウがあるから、その上におもしろいものを乗せたら良いんでしょう?」みたいな勘違い。優秀な人は本当に多いのに、リソースを使う場所が違うという。
 その後(ブラウザで遊ぶ)ソシャゲーからネイティブアプリになっていきましたが、ゲームとしてきちんとおもしろい物を作ってきた人達が結果を残していますね。

冒頭に麻雀のお話がありましたがゲーム化してみては?

 麻雀は好きですけど、弱いんですよ(笑)。運の要素も入ってくる麻雀はエンターテイメントとして最適です。いつかは麻雀のゲームを作ってみたいのですが、ゲームとしてあまりにも完成しすぎているので、麻雀+αだとイケるかもしれないですね。

月額課金ができれば企画が立てやすい

プラットフォーム展開はスマートフォンのみですか?

 はい、当面はスマートフォンのみでいきます。
 Oculus Rift等が話題で、開発者から見ると表現力も上がって魅力的ですが、プロデューサーとして見ると新しいビジネスモデルが生まれない限りは様子見です。
 あと、“30分でいくら”といったストリーミングはおもしろいと思います。結局、商売しなくてよければ作りたいゲームは山ほどありますが、商売が必要だから99%の企画はボツになるので、商売としての幅が広がる物の方に興味があります。

今のアプリ業界に対して言いたい事はありますか?

 月額課金ができるようになると良いですね。僕はもともとフィーチャーフォンの仕事で月額課金サイトの運営をしていました。当時は“使っていない人からもお金を取る”という批判もありましたが、結局フィットネスクラブ等と同じで、利用権は個人にあって使うかどうかはお客様の自由です。
 月額課金だとお客様に長く使っていただけるので、企画が立てやすいんです。今の買い切りやアプリ内課金のビジネスモデルではそういった企画がしづらいので、新しいマネタイズの仕組みが必要かなと思います。

最後に現在開発中のゲームについて少しだけでも!

 ちょうど企画を立ち上げているものがあります。まだ秘密ですが(笑)。2014年末から年明けに出せればと思っています。
 昭和駄菓子屋物語は、お客様に懐かしいと思って頂けているので、この系統は続けていくつもりです。レビューを見ていると「続編期待しています」という声も頂いています。しかし、これしか作れない会社というイメージが定着することは避けたいので、今度出すゲームは少し系統を変えるつもりです。ご期待ください。

▼参考リンク
株式会社GAGEX
2Dファンタジスタ
BitSummit MMXIV: Sound + Vision, Kyoto Indie Game Festival

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