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【CEDEC2014】ソフトの販促手法として使いこなす~「ゲーム実況」を考える(後編)

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by [2014年9月18日]

前回に引き続き、先日開かれたCEDEC 2014での「「ゲーム実況」時代のゲームプロモーション niconicoの事例から」という伊豫田旭彦氏による講演を踏まえて、「ゲーム実況」がこれからのゲームに与える影響について考えてみたいと思います。
伊豫田旭彦氏 株式会社ドワンゴ 会長室ゲーム戦略グループ。niconicoのゲーム戦略を担当する。過去には様々なユーザー文化をもり立てる仕事を行う。主なアウトプットはニコニコ本社カフェ、ニコニコ超会議(ゲームブース、ボーカロイドブース他)、ニコニコ自作ゲームフェス、ニコナマケット、ニコニコゲームマスター、長時間実況、ニコニコ学会、ニコニコニュース等。

ゲーム実況の周辺状況

伊豫田氏は「ゲーム実況はビジネスの敵なのか」といういささか挑発的な言葉を掲げてゲーム実況を取り巻く今の状況を説明しました。

曰く、「私はそう(ビジネスの敵)ではないと考える」とのことで、物語が最重要なゲーム以外は敵ではない、としました。

ここでいう「物語が最重要なゲーム」というのはつまり、ゲームの展開そのものに重要な意味のある、いわゆる「衝撃のラスト」を迎えるようなタイプの物語構成をもったアドベンチャーゲームやノベルゲームなどのことを指すと考えられ、そういったタイトルでは物語の核心部分まで流してしまうような実況は害にしかならないわけです。

もっとも、その一方でそれ以外のコンテンツならば敵とならない可能性が高いということで、その補強材料として、ゲーム業界でのビジネス環境の変化が示されました。

具体的にいえば、これまでの古典的なパッケージ販売の買い切り型から、アイテム課金やダウンロードコンテンツ販売、月額課金や都度課金といったネットワーク経由での課金システムによる運用型への販売システムの移行や、そのコンテンツのテレビアニメやコミック、音楽CD、あるいはグッズなどの他の媒体とのメディアミックスの実施による利益回収といった新しい収益体制への移行が起こりつつあるということなのです。

これまでのネット接続以前のパッケージ販売の場合、特に家庭用ゲーム機の各ゲームタイトルでは出荷時点でソフトに致命的バグの存在が許されず、発売後の修正も難しかった(≒致命的な場合には回収騒ぎになる)反面、開発元にとっては手離れが良い(≒後からバグが発見されても大概は「仕様です」の一言で済ませられ、修正の工数がほとんど発生しない)という特徴があったのですが、ネット経由での修正パッチの配布や追加キャラクターなどのダウンロードコンテンツの配信販売実施などが行えるようになった結果、最近の新しい課金体系を採る運用型のゲームでは発売後の対応が重視され、結果として継続的かつ長期的にそうしたゲームタイトルの販売ができる、つまりゲームタイトルの長寿命化が期待できるようになったのです。

ここで伊豫田氏は買い切り型と運用型の相違点を列挙しました。

買い切り型の場合、ゲームショップなどの実店舗でのパッケージ販売が中心で、それに対応したマーケティングが行われていたわけですが、運用型の場合は露出場所、つまりストアアプリであるとかWeb上の販売サイト、あるいはアフィリエイトサイトなどそのソフトが露出する場所すべてが販売場所となりうるわけで、例えばPlayStation VitaであればPlayStationストアを利用すれば製品紹介を読むところからファイルをダウンロードしインストールして支払い手続きを行いレジスト完了するまでのすべてをPlayStation Vita上で行えるようなエコシステムが構築されています。

こうした相違から、買い切り型の場合は製品発売前に雑誌広告・紹介記事などを通していかに面白そうであるかという情報を拡散できるか、つまりいかに客を店舗へ足を運ばせ、製品パッケージを手に取らせるかを重視した広告戦略が採られていましたが、運用型の場合は発売後の評判の拡散、つまりいわゆる「口コミ」の類いが販売実績に直結します。

伊豫田氏曰く、運用型の典型であるスマートフォン向けアプリの広告は200万ダウンロードが達成されてから行われており、買い切り型のパッケージソフトが発売前に広告を出すのとは大きな相違となっている由です。

また、買い切り型のパッケージソフトは基本的には購入者全員が同じ価格で購入するようになっているのに対し、運用型の場合は長く深く遊ぶ人ほどより多く支払うようなシステムになっています。ネットゲームの月額課金にしろ、スマホゲームなどのいわゆる「ガチャ」にしろ、より長くより深く遊ぶ人ほど金銭的負担が大きくなるような仕組みになっていることが指摘されました。

最後に、買い切り型のソフトの場合は基本的に購入者が一人でそのゲームを遊んで消費することが目的であったのに対し、運用型の場合はゲームを中心としたコミュニケーションが目的となっていることが示されました。

これは、パッケージソフト販売主体だった世代のゲーム機にそもそもネットワーク通信機能が欠如していた、あるいは十分な通信速度を得ることが困難でネット経由でのコミュニケーションの成立が困難であったことを考えれば、当然といえば当然の話です。

こうした、運用型でのコミュニケーションを目的とした状況を指して、伊豫田氏は「世の中すべてがゲームセンターになった」と表現しました。

運用型ゲームの要諦

ここで伊豫田氏は、運用型ゲームのポイントとして、「何を」「誰が」「どこで」という3要素を提示しました。

旧来のパッケージ版ゲームでもそうでしたが、そのゲームのジャンルによって「何を」「誰が」「どこで」遊ぶか、というのは全く違っており、そうした要素を「作る」ことがゲームビジネスでは重要なのではないか、と伊豫田氏は語りました。

実際、同じ「シューティング」とついていてもFPSと弾幕縦スクロールとでは遊ばれるプラットホームもユーザー層も大きく違いますし、コミュニティの文化も全く違っています。また、シューティング同士でもこれなのですから、いわゆる乙女ゲーやギャルゲーともこれら3要素で重なり合う部分が少なく、タイトルごとにそれぞれのジャンルに応じた要素想定、あるいは設計が行われるのは必然であるといえます。

そうした、コミュニティを構築し長く課金を行えるシステムを構築するのが運用型のポイントであるとすると、ゲーム実況はそうした買い切り型から運用型へ移行したゲームのシステムを支えるパーツの一つとして存在している、と伊豫田氏は指摘しました。

こうした運用型ゲームの運用の一手段として、ニコニコ動画でネットゲームメーカー各社が月1回放送している定例情報番組が取り上げられました。

こうした番組放映による効果として、

・ゲームファンの可視化によるプロモーション
・イベントとして実感を持った情報伝達の実現
・(スタッフの)顔の見える運営で、ユーザーとの行き違いによる不幸な炎上の防止

といったものが挙げられました。

ゲームファンの可視化は番組中でプレーヤーを露出させることで、そのプレーヤーを通じてゲームの魅力を伝える、という効果が期待でき、実感を持った情報伝達の実現は、アップデートや新機能の実装、ゲーム内イベントの告知などリアルタイム性の強い情報伝達をもたらし、さらに顔の見える運営はネットゲーム最大の問題である炎上について、例えばアップデートの改良意図や改良によるメリットの解説、あるいは意見募集など双方向性の情報のやりとりによって運営側の意図するところをより明瞭にユーザーに伝え、またそうした運営に対するユーザーの声を拾い上げることで、意思の疎通の欠如による炎上の発生を未然に抑止する効果が期待できます。

ゲーム実況を使いこなすには

続いて伊豫田氏は、ゲーム実況を使いこなす上でゲームメーカーと以下の施策を話し合うことを示しました。

・実況ポリシーを明確にする
・音楽、声などの権利関係を制作時からクリアしておく
・実況を単なる露出と考えず、コミュニティ形成の核として積極的に用いる
・動画、生放送の特性の違いに気をつける
・シェア機能や実況SDKなどを用いる

特に音楽と声の権利関係の問題は難しいようで、交渉過程で権利が分散していてゲームメーカー1社で(実況での利用許諾のための)権利関係のコントロールができないことが何度もあったそうです。

つまるところこれらの施策というのはゲーム実況を行う上で避けて通れない権利関係の問題をクリアにし、各メーカーにゲーム実況をどう利用するのか積極的な目的、あるいは方向性を持たせるための物であると言えます。

地球防衛軍4の実況ポリシー

ここでこうした諸条件の具体例として、D3パブリッシャーから発売されている「地球防衛軍4」の例が紹介されました。このゲームはPlayStation 3版とXbox360版が発売され、オンライン協力プレイとダウンロードコンテンツによるステージ追加が特徴となっています。

まずこのゲームでは、ドワンゴが行っているニコニ・コモンズと呼ばれる著作物利用のガイドラインサービスにより、メーカ-による利用宣言という形で著作物利用の許諾関係を明確にしたことが説明されました。

また、このゲームは当初、公式Twitterアカウントで(著作物利用の)ガイドラインを明確にするまではゲーム実況はしないで欲しい、とアナウンスをしていて、発売後時間経過と共に3段階に分けてゲーム実況可能なミッションモードの範囲を順次拡大してゆく、という実況ポリシーが明確に示されました。

実はこのアナウンス、当初「地球防衛軍4」では一切実況が行えない、という形で誤解されてニュースになってしまい、発売日にはニコニコ生放送ではこのゲームを扱った実況番組がほとんどなかったそうです。

ところが発売日に公式Twitterアカウントで先に挙げた実況ポリシーのガイドラインがアナウンスされると、その30分後にはこのゲームを扱った番組が100本も放送された由で、ゲーム実況を行うユーザーは本当にゲームが好きな人が多く、一部に悪質な利用者もいるものの、メーカーなりクリエイターなりがゲーム実況を禁止した場合はそれに明確に従う傾向が強いと伊豫田氏は語りました。

そのため、例えば物語重視のタイトルでメーカーがここから先は実況を行わないように、と表明した場合に該当部分の実況動画がアップされたりすると、他のユーザーが(コメント機能を利用して)その動画投稿者に指摘することが多くあるそうです。

つまり、ユーザーがゲームを愛するが故に一種の自警機能、あるいは自浄作用が働いているということで、このように実況に制限を設けたい場合にはメーカーは実況ポリシーを明確にした方が良い、と伊豫田氏は指摘しました。

なお、「地球防衛軍4」ではゲーム大会が実施されたのですが、これはニコニコ生放送を利用しステージ1からステージ10までの最速クリアを争い誰でも参加可能な予選と、予選通過者8名を集めて行われた、ユーザーが主役の決勝大会に分けて実施されました。

前者の予選では、各参加ユーザーが実況生放送を行い、それを運営側で行う生放送に集約して中継するという形をとって放送が行われたのですが、この運営形態は事前告知されていて各ユーザーは生放送を用いて練習を行うことができ、そこから各ユーザー間の横のつながりが醸成されたとのことです。

こうしたイベントを経てこのタイトルでは現在でも生放送で遊ぶ番組が多数生まれており、ゲーム固有の機能であるマルチ協力プレイを取り扱った物や、高難易度面への挑戦を取り扱った物、あるいは雑談しながらアイテム集めやレベリングを行う物など、多種多様な番組が放送されています。

ここで先に挙げた5つの施策はまさにこうした状況を創り出すために行われたのだと伊豫田氏は語り、このゲームを扱ったゲーム実況が定着し継続的な露出となっている実況が説明されました。

ゲームシステムでゲーム実況を扱う

ここまで、運営やユーザーサイドでのゲーム実況を見てきましたが、肝心のゲームパブリッシャーサイドでのゲーム実況の扱いはどうなっているのでしょうか?

この点について伊豫田氏はまずPlayStation 4のシェア機能を紹介しました。

この機種の発売がアメリカで2013年11月、日本では2014年2月ですから、まだまだできたてのほやほやに近い機種であり機能なのですが、伊豫田氏によるとニコニコ動画でこの機能を利用した番組は既に1週間あたり3.2万に達している由で、キャプチャ機器などの付加なしに手軽に実況を可能とするこの機能が早くも大きな支持を受けている状況が見て取れます。

次に動画投稿APIの利用によるmaimai動画投稿が取り上げられました。

これはセガのmaimaiという最大4人同時プレイ可能なアーケード向けリズムアクションゲームに搭載されている動画アップロード機能を利用し、ゲームプレイの場面を撮影してゲームセンターから直接アップロード・投稿するもので、こちらは動画タイトル数が24万に達しています。

ここまではコンシューマーゲームでの例だったのですが、最後にドワンゴが現在法人向けとして提供しているゲーム実況SDK経由でのアプリからの投稿が説明されました。これはアプリ画面やカメラを撮影するSDKになっていて、動画投稿先はYouTubeとニコニコ動画のいずれも選択可能となっています。このSDK、現在はiOS(iPhone)向けのみの提供となっていて、Android向けは鋭意開発中となっています。

ちなみにこのAPI、現状では生放送配信や視聴は対応していないのですが、これは今後対応の予定であるそうです。

カラオケとゲーム実況

最後に、1つのメディアコンテンツのあり方を変えてしまった事例として、カラオケが挙げられました。

1980年代半ばのカラオケボックスの誕生と流行にはじまり、1990年の音楽CD、中でもシングルCDへの「ボーカル抜き」の、つまり明らかにカラオケで歌うための練習素材を意図した「インスト曲」の収録開始、1992年の通信カラオケ誕生を経て1998年の音楽CD売り上げ最高潮、というカラオケの受容と発展、そしてそれに伴う「聴くだけ」だった音楽コンテンツの隆盛と「歌う」ことによるユーザーの関与で起きたコンテンツそのもののあり方の変革、というカラオケがたどった道が示すように、ゲーム実況はゲームコンテンツの作り方そのものに影響を与え変化を促すことになるのではないかと伊豫田氏は指摘しました。

今やゲーム実況は完全に市民権を得た

以上2回に分け、伊豫田氏の講演を踏まえてゲーム実況の現状とこれからのゲームに与える影響について見てきましたが、最早ゲーム実況は特別な行為ではなくなったことを痛感させられました。

記事中でも触れたように、現行最新の据え置き家庭用ゲーム機であるPlayStation 4(およびXbox One)でプレイ動画を保存し、それを動画投稿サイトへアップロードするための機能が標準搭載されています。

このことが何より雄弁に物語るように、今やハードウェアメーカーサイドでは完全にゲーム実況はゲームの楽しみ方の一つとして認知され、むしろソフト販促のために有益な存在であると見なされるようになってきているのです。

つまり、ゲーム機を買ってインターネット接続すれば、後はゲームソフトを用意して遊べばそれですぐに、そして誰にでも自己表現の一手段として「ゲーム実況」がたやすく行える時代が既にやってきているのです。

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