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日本独自のICTでオリンピック成功を!【前編】  東京五輪は日本がICT国家になるチャンスだ!

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by [2014年9月24日]

2013年9月、2020年の東京オリンピック開催が決定し、日本中が大いに盛り上がったことは記憶に新しい。
そこで、今回は東京電機大学の未来科学部学部長 である安田浩先生に『東京オリンピックにおけるICT』について取材をお願いした。安田先生は、かつてNTT情報通信研究所の所長を経験し、ICTの権威として知られている。
今回の取材では、資源を持っていない日本は今後生産人口が減っていく中、東京オリンピックで日本の独自ICTをアピールして稼げるようにすることが重要だ、という安田先生の考えを語っていただいた。

大きなイベントへのICT導入は必須の時代

2012年のロンドンオリンピックを振り返ってみれば、テレビやWebでのHD画質の映像配信、会場周辺のWi-Fi環境の整備、世界中から396億ビューを記録した公式サイトの運営、積極的なSNSでの情報発信などで『デジタル五輪』『ソーシャル五輪』と呼ばれていた。公式サイトのサーバが送信したデータ量は1451テラバイト、競技のライブ映像配信でのデータ量は1150テラバイトに上ったと言われている。
オリンピックとは規模は全然違うものの、毎年夏に開催されるコミケにおいても、各キャリアが移動基地局を設置するなど電波対策が話題に上る。
今後更にスマートデバイスが発達するだろうことを踏まえると、東京オリンピックの成功にもICT情報通信技術: Information and Communication Technology)の活用は必須である。

このままでは国内消費だけでは暮らしていけなくなる

───様々な講演の場で、「東京オリンピックでのICTの活用が日本にとって重要だ」と安田先生はおっしゃっていますが、その理由をお聞きしたいです

安田氏 まずは日本がいま置かれている状況から説明しましょう。日本の人口は50年後には8千万人になるという推計(内閣府HP)があります。つまり、国内の消費だけでは産業を支えることができない未来が推測されています。現状のままでは、この未来は避けられません。
そこで、「今後日本はどうやって稼いでいくのか」という問題を考える必要があります。「高齢者が増えるから介護で稼げばいい」という人もいるけども、介護のお金の出所は国民が積み立てた保険であって、実は何も生産していないという問題があります。
介護される人と介護する人の二人で、生産性が0です。しかも先ほどの推定では60歳未満と60歳以上の人口がほぼ半々なので、全員が介護職に就いてしまったら生産人口は0になり、日本は観光以外では稼げない国になってしまいます。

このような推計を踏まえると、やはり国外の市場で稼ぐことを考えなくてはなりません。そのために日本は国際市場で存在感を出さなければなりませんが、2050年には中国一国だけの人口でも約15億人になっています。やはり、15億人 vs 8千万人じゃあ単純勝負では話にもならないわけです。
生産人口が大幅に減っていく日本が各国と対等の立場に立つためには、欧米とアライアンスを持つしかありません。

日本発の独自ICTで欧米と対等な関係を目指せ

安田氏 近年ではICT技術が世の中の構造を大きく変えてきました。たとえば、ビッグデータの処理ができるソフトは産業構造を大きく変化させました。もっと大きなところではWindowsなどのパソコンの登場で世の中は大きく変わりました。このような変革をもたらすICTを、アメリカではなく日本発で作らないといけません。最近の日本発の技術でいえば、RubyRuby – Wikipedia)がかなり大きいのでそれでなにかできないかと思っています。
要するに、知恵の源泉である日本発のICTをいかに生み出すか、そしてそれをいかに全世界に使ってもらうかが最大の課題なわけです。

───日本の独自ICTの発展のために、ハードウェアとソフトウェアではどちらにより注力すべきなのですか?

安田氏 この課題はソフトウェアとハードウェアの両方の領域から解決を目指すべきです。
ソフトの話であれば、いま日本で使われているOSはWindowsかMacですが、どちらもアメリカのものですよね。他にもGoogleやFacebookなんかも全部アメリカです。世の中で使われているソフトウェアのほとんどはアメリカ製です。これは、もしアメリカがダメになると日本は暗黒の世界になってしまう、ということです。日本がIT国家として自立しない限り、このようなリスクは常につきまといます。
もっと極端な可能性の話をすれば、Windowsなんかはバックドア付きで、アメリカの本社からコントロールされるというリスクだってあるわけです。これを避けるには、IT国家としての自立は無理でも相手国が必要とする技術を日本も持っている必要があります。

───お互いに持ちつ持たれつの関係になって初めて、欧米と真にアライアンスを組めるということですね。

安田氏 まさにその通りです。一方でハードに関してはまだまだ日本は強いので頑張ればなんとかなるだろうと思います。
例えば、4Kや8K画像のディスプレイの開発に関してはまだまだ日本がリードしています。折りたたみ可能な布型ディスプレイなんかの開発に成功してこれが全世界に普及すれば最高です。最近この分野の勢いは少し落ちてきているけども、本当はもっとこの分野の研究開発に日本は国費を出して支援すべきです。

東京オリンピックはICTをアピールするチャンス

安田氏 こうした状況の中で、実は一番大きなポイントが2020年の東京オリンピックです。ICTを活用して盛り上がるオリンピックを全世界が日本に期待していて、オリンピックで使われた技術は今後かなり大きく伸びるだろうと言われています。
日本ITU協会賞という、ITの発展に貢献した人に贈られる賞があるのですが、実はこの賞を滝川クリステルさんが今年受賞してるんですね。これはもちろん東京オリンピック招致を評価されてのことです。日本のエレクトロニクス産業は一時期と比べてかなり勢いが落ちてしまいましたが、このタイミングで東京でオリンピックを開催できることは非常に大きいです。なるべく国外の技術を買わずに、日本で育てた独自技術を使ってオリンピックを成功させれば、みんなが日本の技術を使ってくれます。そうして、このままでは観光以外では稼げなくなるだろう日本も技術で稼げるようになるわけです。

国内人口が減り、このままだと国内市場だけでは立ち行かなくなる日本は国際市場で存在感を出す必要がある。そのためには日本独自のICTを開発することと、その技術を全世界へ普及させることがかなり重要であり、東京オリンピックは独自技術を大きくスケールさせるチャンスだ。というお話でした。
後編では、具体的にオリンピックではどのような取り組みをすればいいのか、についてをお話していただきました。
後編はコチラ⇒日本独自のICTでオリンピック成功を!【後編】  2020年開催までに残された時間は『あと3年』?

安田浩 氏
東京電機大学未来科学部学部長 。東京大学名誉教授。画像符号化・画像圧縮技術の世界的権威。JPEG、MPEG規格の世界標準化に中心的役割を果たす。1996年、JPEG・MPEG規格標準化の功績により米国テレビ芸術科学アカデミーよりエミー賞(技術開発部門)を受賞。「MPEGの父」として世界的に高く評価されている。2009年に紫綬褒章受章。
現在は東京電機大学未来科学部学部長 として複合領域サイバー・セキュリティ技術研究プロジェクト(MCSTRP:Multi-disciplinary Cyber Security Technology Research Project)の研究に尽力している。

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