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なぜみんな「魔王魂」を使うのか?ゲームアプリ開発者が求めるフリー音楽素材に迫る

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by [2014年9月09日]

 みなさんが日々遊んでいるゲームアプリの魅力は何だろうか? ゲームアプリを開発している側にお話を聞くと、シナリオ、ゲームシステム、グラフィックなどに力を入れているケースが多いようだ。だが、無くてはならないものが抜けている。そう、音楽だ。スマホアプリに限った話ではないが、ゲームの開発予算のうち、音楽の分は最後に割り振られるケースが多いと聞く。そんなゲーム向けの音楽制作を支え、個人のゲームアプリ開発者を中心に絶大な人気を得ているサイトが、フリー音楽素材「魔王魂」だ。
 今回、魔王魂の管理人であるKOUICHI氏(以下敬称略)にコンタクトを取ることができたので、魔王魂の音楽素材がゲームアプリのBGMや効果音に使われている理由や、音楽素材の制作環境についてお話を伺ってきた。

後編はこちら
ゲームアプリで聞くあの音はこうしてできている!フリー音楽素材「魔王魂」の制作現場に潜入

KOUICHI フリー音楽素材サイト「魔王魂」のメイン管理人にして、サウンド制作会社「株式会社ジョーカーサウンズ」代表取締役。都内でプロ作曲家として活動中。極度の面倒くさがりやな上、記憶力が人の半分も無い(ファンの方のほうが自分の曲に詳しかったりするくらい)。かなり熱しやすく冷めやすい、超絶気分屋。酒と猫とお笑いが好き。

バンド活動の傍ら、音楽配信を始める

作曲歴をお聞かせください。

魔王魂における音楽の源泉。詳細は後編にて

KOUICHI 高校生の時に音楽ツクールをいじったら曲が作れてしまったんです。それで「俺天才だな」となって、すぐにパソコン用の作曲ソフトを買いました。その時から年間100曲くらいずつ書き続けています。高校を卒業する頃には、ある程度作曲のスキルが身についていました。
 さらに、ちょうどその頃はGLAYの全盛期で「よし。5人目のGLAYになろう」と思って、ギターを買ってもらいました。さすがに5人目のGLAYは無理なので、メジャーデビューを目指してバンドをやることにしました。それからは、バンド活動の傍ら、DTMもやっていましたが、もともとギターで曲を作った時の記録としてパソコンに残しているというだけで、DTMという感覚は今でもないんですよね。
 今流行りの『初音ミク』にもまだ手を出していないです。バンドマンの意地なんですけど、歌わなきゃだめだろうみたいな。そういう意味ではDTMも反則なんですけど(笑)。

魔王魂を始めたきっかけは何ですか?

KOUICHI 高校の時にホームページを作って曲を公開したんですよ。そうしたら他のツクールユーザーから「曲を使わせてほしい」と連絡がきたんです。それがきっかけで音楽素材サイトとして曲を公開するようになりました。ある時、自分が好きなゲームで遊んでいると、自分の作った曲が使われていることがあって、これはおもしろかったですね。
 ですが、高校卒業時に経験した失恋のショックでそのサイトを閉鎖したんですよ。その後はしばらく、ネトゲ(ネットゲーム)にハマっていて、ギルドの名前を「魔王軍」にしていました。私のカリスマ性がすごかったのか(笑)、メンバーがどんどん増えていって「魔王さま!魔王さま!」と、みんなが私の情報を見たがるので、ギルドブログ「魔王魂」を作ったんです。
 ところがある日ネトゲに飽きちゃって、改めてブログを見たときに「何だこの痛いブログは!?」と我に返ったのですが(笑)、ブログの開設にあたりサーバーを用意していたので、せっかくだから以前の経験を活かして音楽を配信することにしました。それがフリー音楽素材サイト『魔王魂』の始まりです。

カリスマ性というのは、ゲームのうまさという事ですか?

KOUICHI ゲームがうまいとか、特にレベルが高いというわけではないのですが、人と感性がズレているようで(相手は)チャットなんかが楽しかったようです。「兄貴ぃー」みたいな感じで結構男性から好かれるんです(笑)。
 魔王魂は、音楽配信だけではなく日記も載せていたんですが、日記の方が人気出ちゃって、毎日コメントが100件も付いたりしていたんです。でも、地道に曲を公開していくうちに、日記を読んでいる人たちも、この曲いいなと聞き始めてくれて、だんだん音楽側のユーザーと日記側のユーザーが融合していったんです。
 魔王魂のデザインは、1、2年ごとにリニューアルしていたんですが、14回目くらいの変更時に、日記は時代遅れだから止めようという事で、音楽配信専門のサイトになりました。それまでは、素人が作ったサイトだったんですけど、真剣にデザインをして、SEOを勉強して検索順位で一番になろうと思ってまとめたのが現在のサイトです。

魔王魂は月間250万PV(!)

御社における魔王魂の位置付けはどのようなものでしょうか?

紆余曲折を経て完成した現在の魔王魂。KOUICHI氏こだわりのデザインだ

KOUICHI 本業としては、株式会社ジョーカーサウンズで作曲の依頼を受け付けています。アプリを制作している会社様のご希望を伺って音楽を作っています。
 実は、魔王魂の広告収入はそれほど多くないんです。アクセスは月間で250万PVほどあるんですけど、それだけで食べていける訳ではありません。マーケティング等、やることはたくさんあるのですが、手が回りそうにないので、今はGoogle AdSenseの広告を貼っています。広告無しというのが理想でしたが、アクセスが増えるに連れて維持費もかかるようになりましたので、ユーザーの皆様には申し訳ないと思っていますがご理解を頂ければ幸いです。
 ただ、最近のGoogle AdSenseは(ユーザーにとって)魅力的な広告もあったりするので、その辺りも見極めながら試験的に運用している面もあります。

魔王魂は、本業のPR、広告という位置づけでしょうか?

KOUICHI はい。認知度があがったからこそ、頂ける仕事も増えています。アプリ制作会社の中には「学生時代、ゲームを作った時に魔王魂を使っていた」という人も多いです。ユーザーには、演劇や映画を作っている方や、制作にお金をかけづらい学生さんもたくさんいます。
 会社であれば、音楽のコストを抑えたいという場合や、無料曲でデモ曲を作ったらその出来が良かった、ということでジョーカーサウンズに作曲をご依頼頂くこともあります。
 最近は、YouTube等で流行っているゲーム実況動画に、BGMとして使って頂く事も増えています。マインクラフトの実況動画に魔王魂の音楽が使われていた時は、私自身がマインクラフトを好きなこともあって嬉しかったですね。
 今の時代は、誰もが作品をリリースすることができますので、音楽の需要はあると思うんです。でも、有料の曲はハードルが高いものです。例えばゲームを作るならグラフィックの方にお金をかけたいじゃないですか。そういう意味では、音楽は、ファッションで言うとベルトや靴下なんです。おしゃれをしようと思ったら、初めにジャケットとかを買うでしょ? グラフィックはジャケットなんです。
 家族にもよく「一曲300円位で売ったらいいんじゃない?」言われるのですが、おそらく魔王魂で一曲1円でも頂いたら、ユーザーは離れていくと思うんですよ。有料の曲を販売していく事業計画もあるので、魔王魂はこのまま無料でやっていくつもりです。

なぜみんな魔王魂の音楽を使うのか?

魔王魂の利用規約はどのようになっていますか?

KOUICHI 他の音楽素材サイトでは、利用規約を細かく設定しているところも多いのですが、私としては“簡単な利用規約”&“少ない問い合わせ”を目指しています。逆に、少なすぎると問い合わせが増えてしまうのでその加減は難しいのですが、そうならない範囲でゆるくやっていこうと。「書ける人はクレジットを書いてね」「書けない人は書かなくていいから」というスタンスです。

(無料であることは除いて)魔王魂が使われている理由をどうお考えですか?

KOUICHI ユーザー目線の使いやすさだと思います。クオリティに関しては、特別高いものを揃えているわけではないんですが、目的の曲には3クリック程度でたどりつけるようになっています。他のサービスですと、ダウンロードして解凍してからでないと音が聞けない事がありますが、魔王魂はダウンロードする前に聞くことができます。

ほどほどのクオリティが、今のスマホゲームにあっているという事でしょうか?

KOUICHI そう思います。音楽素材の難しいところなんですが、品質を高め過ぎるとゲームに全然あわなくなってしまう事があるんです。オーケストラは演劇には合いますが、ゲームによっては使いづらいですよね。
 とはいえ、本当に、使っていただけるだけで光栄なことだと思います。「書く曲はわが子」という人もいますし「曲のタイトルは絶対にこれで変更はダメ」という気持ちも分かるのですが、私の素材はどう使ってもらっても構いません。
 よく「音楽は国境を越える」なんて言いますけど、たいていは国境しか越えていないんですよ。私は国境以外のモノもフリーダムに越えていくべきだと思うんです。私が料理人だとしたら、自分の作った料理にじゃんじゃんマヨネーズをかけて頂いて大丈夫です。お客様がいちばん満足できるように召し上がって頂きたい、と考えています。
 音楽は、コンテンツを盛り上げるために存在しているんですよ。例えばRPGに登場する魔法使いは力を付ける必要はありません。魔法を使っていれば良いんです。音楽家もそれと同様で、コンテンツを盛り上げるために音楽を作らなければなりません。自分の主義、主張を強めすぎないことが大事というのは、経営者を兼務する音楽家という立場の私ならでは、ではないでしょうか。

魔王魂の素材が、予想もしない使われ方をしたことはありますか?

編集部でもさっそく『THE・ギャルゲー』をやってみたが、いまだ、この画面より先に進めていない…

KOUICHI 『THE・ギャルゲー』というFlashゲームがあるのですが、ゲーム中の死んだ場面に歌物の曲を使っていて「えっ?そこで歌物使う?」とか、通常時のBGMにジングル流していたりして「逆だよ!逆!」と思ったり(笑)。音楽の使い方が独特すぎるんです。
 さらにゲームそのものがめちゃめちゃ難しくて、1ステージに初見殺しが20個くらい仕掛けられていて、グラフィックもわざとクソゲー風にしてあるなど、とにかく作りこまれていますね。ゲーム内容も全然ギャルゲーではないですし(笑)。
 こんな風に、自分の曲を使ってくださったゲームがおもしろいと、やはり嬉しいですよね。
 最近のタイトルですと『新宿ダンジョン』です。開発者のUeharaLaboさんからは「アプリに使わせて頂きました」といったご連絡を定期的に頂いています。UeharaLaboさんのアプリは1作目からすごくおもしろかったのでいつかヒットするだろうと思っていましたが、新宿ダンジョンまでのヒットとなると、魔王魂ではなくて、きちんとした曲の方がいいんじゃないのって?思うんですけど(笑)。
 あとは『艦これ』の効果音に使って頂いたことや、PLiCy(プリシー)も印象に残っています。PLiCyはブラウザでゲームを公開・共有することができる「ゲーム・コミュニケーション・サービス」で、そこで公開されているゲームを遊ぶためのAndroidアプリも用意されているんですよ。

後編に続く…
ゲームアプリで聞くあの音はこうしてできている!フリー音楽素材「魔王魂」の制作現場に潜入

おまけ:知る人ぞ知る裏サイト「魔王畑」

秘密の裏サイト「魔王畑」では、魔王魂のデザインの変遷を見ることができる

KOUICHI 普通に探しても辿りつけないのですが、実は「魔王畑」という裏サイトがあるんですよ。魔王魂の昔のバージョンなどを閲覧できるようになっています。
 初期の頃は日記だらけなんですよ。昔はコアなユーザーが掲示板とかにアツいメッセージを書き込んでくれたりしていました。今のサイトは整っていて気に入っているのですが、少し寂しい気もしています。

▼関連リンク
魔王魂
魔王畑(裏サイト)
THE・ギャルゲー

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