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【CEDEC2014】開発者が押さえておくべき現状とは?~「ゲーム実況」を考える(前編)

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by [2014年9月17日]

最近の家庭用ゲーム機やパソコン用ゲームソフトで無視できない重要なトレンドとなっているものの一つに、「ゲーム実況」があります。

ゲームのプレイをプレイを、あるいはその攻略を、音声やコメントで解説しながら進める動画を作成し、YouTubeやニコニコ動画などの動画共有サイト上で公開する。

以前ならば少なからぬアングラ臭や極端なマニアック臭が漂っていたこうした行為は、YouTubeでゲーム実況を行っているユーザーが4億円を稼いでいるという話題がニュースとなり、さらにはPlayStation 4やXbox Oneなどのいわゆる次世代家庭用ゲーム機でのプレイ動画録画機能や編集機能、それに何より各種動画共有サイトへの動画アップロード機能の標準搭載により事実上メーカー側の公認が得られるような状況で、今やゲームの新しい遊び方の一つとして市民権を得た格好になっています。

筆者のように、縦スクロールシューティングゲームのいわゆる「スーパープレイ」動画の同人ビデオやメーカー公認レーザーディスク(※BDでもDVDでもない)を買ってその超絶プレイにため息をついていたような世代の人間からすると、何とも隔世の感のあるこの「ゲーム実況」ですが、そこには今後のゲーム開発を考える上で無視できない、重要な要素が含まれています。

そこで今回は、先日開かれたCEDEC 2014での「「ゲーム実況」時代のゲームプロモーション niconicoの事例から」という講演での、動画共有サイト側の当事者である伊豫田旭彦氏の見解を踏まえつつ、この「ゲーム実況」がこれからのゲームに与える影響について考えてみたいと思います。

伊豫田旭彦氏 株式会社ドワンゴ 会長室ゲーム戦略グループ。niconicoのゲーム戦略を担当する。過去には様々なユーザー文化をもり立てる仕事を行う。主なアウトプットはニコニコ本社カフェ、ニコニコ超会議(ゲームブース、ボーカロイドブース他)、ニコニコ自作ゲームフェス、ニコナマケット、ニコニコゲームマスター、長時間実況、ニコニコ学会、ニコニコニュース等。

ゲーム実況の人気

「ゲーム実況」がなぜ人気を集めるようになったか、について伊豫田氏はそもそもゲームというテーマそのものが高い人気を持っていたことを指摘、これが重要であるとしました。

伊豫田氏によれば、ニコニコ動画で最も人気が高いカテゴリはゲームであり、全動画再生数の内34パーセントをこのカテゴリが占め、生放送の月間放送番組数の半数がゲーム関連のものとなっているとのことです。

また、YouTubeでも日本におけるトップ100chの全再生数の24.5パーセントをゲームが占めているとのことで、ニコニコ動画よりは比率が低いものの、それでも母集団の大きなサイトで全体の1/4を占めるというのは絶対値として相当に大きな再生数となっていることが判ります。

さらに先日Amazonに買収されて話題になったパソコン向けゲーム実況配信プラットフォームのTwitchでは月間ユーザー数が4500万人に達しており、そもそもゲームというコンテンツは世界的に大人気である、と結論しました。

ゲーム実況が生んだ新しい表現

ここで伊豫田氏は3本のゲーム動画を例として示しました。

まず、ゲームミュージックを扱った物が示されました。インターネットのゲームコンテンツでは音楽をテーマにした物が一番長い歴史を持つとのことで、「特にRPGの楽曲は昔からずっと人気があります」とのことです。

次にオープンワールド系の世界を自由に構築できるタイプのゲームの代表例の一つであり、世界で3000万本の販売実績を残し、つい先日開発元がMicrosoftに買収されて話題となった「Minecraft」を扱った動画が示されました。

このソフトは完全にゲーム動画配信を通じて販売プロモーションが行われた由で、ニコニコ動画でも人気を集めたとのことです。

実はこの「Minecraft」、開発陣が来日した際にドワンゴに(コミュニティイベント開催のために)このゲームのゲーム実況を行っているユーザーを紹介して欲しい、と要請があった由ですが、動機を尋ねたところ、「彼ら(ゲーム実況を行っているユーザー)にお金儲けをして欲しい」とのことだったそうです。

インディーズのゲームの場合、開発サイドの情報を継続的に発信し続けるのは大変なのですが、それをそうした実況ユーザーに代行させることで低コストでの情報発信が可能となる、ということだったようです。

最後に取り上げられたのが、RPGツクールで作成されたフリーの脱出系ホラーゲームであり、ニコニコ動画などでの実況動画から人気に火がついて実写映画化されたゲーム「青鬼」の実況動画(【青鬼】絶叫に定評のある友人に無理やり実況させた【実況】part1)です。

これは2009年5月8日のPart1より投稿が始まって同月25日のPart9まで続き、Part1の再生回数が502万回を突破、それ以外の回も概ね180万~200万回の再生を記録したという人気実況動画シリーズの一つです。

以上、3つの典型例を示してから、伊豫田氏は2014年7月の月間ゲームカテゴリランキングTOP100に入ったゲーム動画の分類グラフを示しました。

それによればゲーム実況が68パーセント、企画・ネタが12パーセント、スーパープレイが5パーセント、ゆっくりが4パーセントとのことで、ゲーム実況が一大勢力をなすものの多様な動画があり、ゲーム実況ばかりが強調されるがそれ以外もものすごい割合を占めていることを強調したい、としました。

伊豫田氏はここで触れなかったのですが、実のところゲーム実況のカテゴリを主カテゴリとして示されている動画でも、例えば古典的な縦/横スクロールシューティングゲームを題材とした「スーパープレイで実況」のように実況とそれ以外の要素を組み合わせた複合形態のものが多々あるわけで、そうした動画をどのカテゴリを主カテゴリとして処理するかによってグラフの割合が大きく変動することは念頭に置いておく必要があるでしょう。

ゲーム実況の実態

続いて伊豫田氏はゲーム実況の実態に触れ、ゲーム実況の作者は単に漫然とプレイ動画を流しているわけではないことを、先に取り上げたゲーム「青鬼」の異なった実況3種を例として示しました。

動画として視聴者を飽きさせないためには、プレイ動画をそのまま流しても駄目で、それ相応にシチュエーションを変えるなど何らかの特徴が必要なのですが、ある例は父親と小学2年生の息子の2人で実況、というプレイヤー構成で一工夫し、別の例では青鬼の動作速度を大幅に引き上げてプレイする、というプレイ難度の引き上げで笑いをとり、さらに別の例ではタイムアタック、つまりプレイの最適化によるクリア時間の短縮に挑むというシチュエーションの変化とスポーツ実況風のナレーション導入で視聴者を飽きさせない工夫を凝らしていることが示されました。

いずれも(プレイしているバージョンは異なるとはいえ)同じゲームを題材としているのですが、あの手この手で視聴者を楽しませようと工夫を凝らした結果、全く違う毛色の動画となったわけです。

言い換えれば、シチュエーションに工夫を凝らせば同じゲームが題材でも(面白いかどうかはともかく)それこそ無限に実況動画が作れてしまうということで、ゲーム実況が流行する理由の一端が垣間見えます。

投稿数の多いゲーム実況動画

ここで伊豫田氏はゲーム実況動画の投稿数の多さについて触れました。

基本は毎日動画投稿とのことで、例えばYouTubeでのパズドラ実況動画投稿で有名なマックスむらい氏の場合、1日4本~5本の動画を投稿し、ニコニコ動画では実況プレイヤーのブンブン氏が5年間で3300本を投稿し、いい大人達氏はニコニコ動画に4年間で1600本を投稿したことが示されました。

ここで伊豫田氏は「40時間RPGを実況するとすると、(投稿が)1本20分だとして120本になります」と語り、これを毎日1本ずつ投稿したとすると視聴者は「4ヶ月間毎日(投稿者の)声を聴くことになる」と指摘しました。

つまり、この場合テレビの「笑っていいとも」やラジオの「オールナイトニッポン」などよりも高い頻度でこの投稿者の声を聴いていることになるわけです。

実況が人気の理由

次に伊豫田氏は、ゲーム実況が人気を得ている理由として以下の3点を挙げました。

 1.元々人気の高かったゲーム動画で
 2.新しいコンテンツを開拓し
 3.毎日投稿して視聴習慣を作ったから

曰く「単なるゲーム好きの兄ちゃんがゲームが好きだから毎日毎日やっている」とのことで、そうした投稿者のゲームに対する情熱あるいは愛情が原動力となっていることが指摘されました。

実際、ニコニコ動画やYouTubeで公開されているゲーム実況動画を見てみると、投稿者のそのゲームに対する愛が溢れんばかりのものが多くを占めており、その一方で投稿者がプレイヤーとして上手いかといえば必ずしもそうではない状況が見て取れます。つまり、いわゆる「下手の横好き」でもゲーム実況は工夫次第で成り立つということで、逆にそうした「下手」な投稿者のプレイに対する共感や応援が、そうした動画投稿を支えているように筆者には見えます。

ビジネスの側面から見たゲーム実況

続いて伊豫田氏はビジネスとしてみたゲーム実況に触れました。

彼は「ゲーム実況」で売り上げは伸びるのか、という言葉に続けて「伸ばせると思っています」と語り、ゲーム実況に商機が潜んでいることを示唆しました。

ニコニコ動画を視聴したことのある、あるいは視聴する習慣のある方には既に先刻承知のことと思いますが、ニコニコ動画の各投稿コンテンツには、「ニコニコ市場」という形でそのコンテンツに関連した商品広告が表示されるアフィリエイトサービス機能があるのですが、このアフィリエイト機能経由で直接Amazonなどでの販売が確定した物に限っても、ゲームタイトルで約1000~7000個程度の販売実績が得られた例が示されました。

しかも、伊豫田氏曰く、このアフィリエイト外での購入を考慮すると、実質的には動画を見てゲームを買っている視聴者は少なくともアフィリエイトでの販売実績の3倍から5倍はいるのではないか、とのことで、この種の動画投稿はマイナーゲームの場合、ことによると続編製作の可否を左右するほどの影響力があることになります。

ここで伊豫田氏は、積極的にこのアフィリエイトによるキャンペーン展開を行った実例を紹介しました。

まず紹介されたのは、スパイク・チュンソフトが日本でのパブリッシングを行っている多人数プレイ対応サンドボックス型アクションゲーム「テラリア」です。

このゲーム、海外産パソコンゲームに由来することから、発売前の段階では日本での知名度はかなり低かったようです。

その販売推移を見ると、発売時の初動の実績値がかなり厳しかったものの、Vita版はパッケージ版よりもむしろダウンロード版の方が多く売れていて、しかもじわじわとと継続的に売れ続けているため、現時点で2機種合わせて累計で約25万本もの販売実績が得られているとのことです。

パッケージソフトの場合、初回出荷の販売実績、つまり初動の実績が評価の全て、といった状況だったのですが、ダウンロード販売の場合はそれとは異なる販売実績のパターンとなっているわけです。

この状況についてスパイク・チュンソフトがアンケートハガキとWebによる購入者のユーザーアンケート調査を行ったところ、ゲームを知ったきっかけも購入時に参考にした情報も、共に動画サイトが1位であったそうで、ゲーム購入に至る最大の認知をユーザーにもたらしたのが動画サイトであったことが明らかになった由です。

つまり、少なくともこのゲームに限れば、「ゲーム実況で売り上げは伸びた」わけです。

このゲームについては、ニコニコ動画で積極的なゲーム実況による販売促進施策を行ったそうです。

具体的には、発売前に先行実況者を募集してゲーム本体をプレゼントし、作って貰った実況動画を発売日に合わせて投稿する先行実況(再生数合計120万本以上)や、ゲーム実況チャンネルを用いた定例実況生放送番組の配信(視聴数3万~5万/回)、実況者による公式プレイ動画(再生数12万)、そして24時間実況生放送(視聴数47万)、といった施策を実施した結果、毎日何らかの動画が投稿あるいは新規に配信される状況が1年以上にわたって続きました。

テラリアの場合、ダウンロード版はとりあえずダウンロードだけしておいて、気に入ったら購入手続きをとってレジストする課金方式であったため、そうしたゲーム実況施策による露出機会の増大が継続的な販売実績に結びつき、功を奏したことになります。

後編に続く

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