ブラザー MFC-8520DNスーパーG3モードに対応するA4レーザー複合機の上位機種の一つ。このクラスの機種でも6万円を切る実売価格で販売されている。

固定電話のサービスから見えてくるアナログ回線の存在意義

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by [2014年8月07日]

前回の記事では家庭向けの固定電話がなぜ携帯電話に駆逐されず無くならないのかを考えましたが、それでは「今」提供されている一般家庭向け固定電話サービスにはどのようなものがあり、どんな端末が提供されているのでしょうか?

今回はサービスという側面から固定電話に迫ってみたいと思います。

急速に進むIP電話への移行

固定電話のサービスを自宅や自室に導入する場合、以下の3つの方法が選択可能です。

 ・無圧縮アナログ音声信号を送受信するアナログ回線
 ・無圧縮デジタル音声信号を送受信するISDN回線
 ・圧縮デジタル音声信号を送受信するIP電話

厳密に言うと、IP電話ではそのデータ通信手段をどうするかによって更に細分されるのですが、大まかに考える場合は上の3つに区分するのがわかりやすいでしょう。

ただし、以下で述べるように長らく通信回線の「ラスト・ワンマイル」を事実上独占し固定電話の日本における総元締めとも言うべき立場にあるNTTはともかく、それ以外の各社では長らく独自回線によるアナログ回線を利用する電話サービス「メタルプラス」を提供していたau(KDDI)が2013年6月に同サービスの新規契約を終了(※注1)し、またISDNはNTT以外まともにサービスが実施されていなかった(※注2)上、同社でも2020年以降はISDN回線の廃止が予定されているため、ケーブルテレビ系のプロバイダを利用している場合を除くと、一般家庭向け固定電話はアナログ回線を残す必要のあるNTT以外では、将来的にIP電話サービス以外の選択肢がなくなる予定です。

 ※注1:既契約者に対するサービス提供は今後も継続します。
 ※注2:NTT以外では元々送電網に付加する形で専用線を敷設していた電力系の通信事業者が参入しましたが、大々的な展開には至らず既に完全撤退した会社すらあります。

何でもござれのNTT

NTT東日本 新規電話申し込みページ
NTT東日本・西日本ではアナログ・ISDN・IP電話の3方式の固定電話サービスを提供している。なお、アナログ・ISDNについては「ライトプラン」と称して施設設置負担金(3万6千円)の支払いがないものの月額使用料が若干割高のプランが提供されている。

現状で一般家庭向け固定電話サービスを選ぶ場合、最も立場が強く選択肢が多いのがNTTです。

これは前回の記事でも少し触れましたが、NTTがその前身である電電公社時代より国策としての通信網整備の一翼を担ってきた、という歴史的経緯によるものです。身も蓋もないことを言ってしまうと、各地の電話局から各家庭までのアナログ/ISDN方式の電話回線敷設を長らく独占してきたのが電電公社→NTTであったためです。

このNTTの場合、一般家庭向け固定電話は「加入電話」=アナログ回線と「INSネット64」=ISDN回線、それに「ひかり電話」=IP電話の3方式となっています。

もっとも、「加入電話」と「INSネット64」の場合は電話単体での契約が基本で、インターネット接続サービスがそれに付加する形で提供されているのに対し、「ひかり電話」は光回線によるインターネット接続サービス(「フレッツ 光」)の契約を前提とする付加サービスであってそれ単独での提供を前提としない、という立ち位置の大きな相違があり、そのためこの「ひかり電話」は「フレッツ 光」の契約を前提とした料金体系となっています。

つまり、「加入電話」と「INSネット64」の場合はそれぞれ「電話単独」での利用が可能ですが「ひかり電話」はIP電話単独での契約ができません。

NTT東日本 ひかり電話
「フレッツ光と合わせて」と強調されているように、「ひかり電話」は単独での契約ができない。

これはそもそも「ひかり電話」がインターネット回線経由で通信を行う以上、当然の話と言えば当然の話なのですが、そのため「ひかり電話」そのものの月額基本料金(基本プランで500円)や音声通話料(携帯電話や国際通話以外は全国一律8円/3分)は低廉でも、それに「フレッツ 光」の月額利用料が加算される上、工事費も結構高額(※注3)であるため、他の2方式よりもかえって高くついてしまう場合も少なくありません。

 ※注3:「フレッツ 光」と同時工事の場合は重複する基本料金が無料となりますし、各種工事費割引サービスも設定されていますが、それでも全体的な傾向としてはアナログ回線やISDN回線よりも高額となります。

ちなみにこの「ひかり電話」では

 ・「ボイスワープ」(かかってきた電話を外出先電話で受けられる)
 ・「ナンバー・ディスプレイ」(発信者の番号などの情報を表示)
 ・「ナンバー・リクエスト」(番号非通知の空いてからの電話を遮断する)
 ・「迷惑電話おことわりサービス」
 ・「キャッチホン」(通話中にかかってきた電話も受けられる)
 ・「着信お知らせメール」(不在時電話着信状況をメールで通知)
 ・「複数チャネル」(電話を複数回線同時通話できる)
 ・「追加番号」(最大5つの電話番号を使い分け可能にする)
 ・「FAXお知らせメール」(ファクシミリの受信状況をメールで確認できる)
 ・「特定番号通知サービス」

といったアナログ回線やISDN回線で提供されていたサービスが有償ながら網羅して提供されており(※注4)、さらに「ひかり電話」および「FOMA」契約者との間での通話限定となりますが、「テレビ電話」機能も提供されています。

 ※注4:「ひかり電話A(エース)」では使用頻度の高い6つの付加サービスが標準でセットになっています。また、指定の付加サービスの中から3つ契約すると自動で割引が適用される付加サービスセット割引も設定されています。

なお、これら「ひかり電話」はフレッツ 光の高速インターネット接続を前提とすることから高音質での通話サービスが提供されており、G3モードでのファクシミリの送受信に問題ないことも表明されています。

実質IP電話のみとなったKDDI

au ケーブルプラス電話
auがケーブルテレビ各社と提携して提供しているアナログ電話サービス。提携ケーブルテレビ各社との契約が必要だが、現状でNTT以外で新規契約できる数少ないアナログ電話の一つである。

KDDI(au)は現在、新規契約では提携ケーブルテレビ各社の回線を利用して各家庭とKDDIのネットワークを接続する(=提携ケーブルテレビ各社との契約が必須となる)「ケーブルプラス」、2003年よりサービスを開始していた光回線契約とセットのIP電話サービスである「auひかり電話サービス」、それにKDDIの提携回線事業者経由でのIP電話サービスである「KDDI-IP電話」の3種類のサービスが提供されています。

対象が限られ毛色の異なる「ケーブルプラス」はともかく、後2種はどちらもIP電話サービスなので統合してもよさそうなものですが、KDDIが合併を繰り返して成立してきたという歴史的経緯や、その提供されるサービス内容が違っている(※注5)という事情もあってか、そのまま2つの異なったIP電話サービスが併存しています。

 ※注5:例えば「KDDI-IP電話」では市外局番「050」で始まるIP電話専用の電話番号が付与されるのに対し、「auひかり電話サービス」では既契約回線の番号をそのまま引き継ぎ可能となっています。このため、「KDDI-IP電話」では050で始まる番号間での通話料金が無料になるのに対し「auひかり電話サービス」では通話料がかかる、といった差異があります。

ちなみにNTTの「ひかり電話」とは異なり、KDDIの「auひかり電話サービス」は歴史的経緯から「auひかり マンション」タイプの一部に限って電話単独での契約も可能となっています。

auひかり 電話サービス 公式ページ

なお、「auひかり電話サービス」でもNTTの「ひかり電話」と同様に、

 ・割込通話(NTTのキャッチホン相当)
 ・発信番号表示(NTTのナンバー・ディスプレイ相当)
 ・番号通知リクエスト(NTTのナンバー・リクエスト相当)
 ・割り込み番号表示(NTTのキャッチホン・ディスプレイ相当)
 ・着信転送(※着信時にあらかじめ設定された転送先に通話を転送)
 ・迷惑電話撃退(NTTの迷惑電話おことわりサービス相当)

の各サービスが有償付加可能で、更に無償付加サービスとして

 ・KDDI電話 auで着信確認(不在着信や話し中の着信をau携帯電話のCメールとして通知する機能
 ・プッシュ信号 
 ・移転番号アナウンス(電話番号変更時に旧番号へかかった際に相手に新番号を案内するサービス)

が提供されています。

当初よりIP電話のみのYahoo! BB

Yahoo! BB ひかり電話機能
Yahoo! BBの光インターネット接続サービスはNTTの回線を利用しているため、このようにNTTのサービスを併用できる。

ソフトバンクのインターネットプロバイダブランドであるYahoo! BBでは、ADSL時代から提供されているIP電話であり市外局番「050」で始まるIP電話専用の電話番号が付与される「BBフォン」と、Yahoo! BB 光 with フレッツ/Yahoo! BB 光 フレッツコース専用の固定電話サービスである「ホワイト光電話」、それにNTTの「ひかり電話」の3種のサービスが提供されています。

Yahoo! BBでNTTの「ひかり電話」??と首をかしげたくなる方もおられるかと思いますが、これはYahoo! BBの光回線によるインターネット接続サービスがNTTの光回線を利用する形で提供されているため、NTTのサービスも併用可能となっていることによるものです。

Yahoo! BB BBフォン
Yahoo! BBは日本国内で最も早期からIP電話サービスを提供してきた。

なお、元々ADSL全盛期にYahoo! BBがアナログ回線やISDN回線による固定電話サービスを持たなかったがゆえに積極的かつ早期から実施していた、という事情から「BBフォン」は他社の同種サービスと比較して普及率が高く、また料金体系的にも他よりやや低めの価格設定となっています。

固定電話回線のインフラではNTTやKDDIと比較して劣勢にあったソフトバンクだからこそ、という話もありますが、ともあれYahoo! BBではアナログ回線やISDN回線の電話サービスは提供されておらず、自社独自提供の「ホワイト光電話」と「BBフォン」は共にIP電話となっています(※注6)。

 ※注6:その関係はKDDIの「auひかり電話サービス」と「KDDI-IP電話」に近く、「ホワイト光電話」では「auひかり電話サービス」と同様に、既契約回線の番号をそのまま引き継ぎ可能となっています。

その他のプロバイダ

以上、国内通信大手3社を例にして固定電話サービスの現状を見てきましたが、その他のインターネットプロバイダ各社が提供する固定電話サービスでも、アナログ回線(※注7)やISDN回線(※注8)によるサービスが無いこと以外は基本的にこれら3社と同様の状況にあります。

 ※注7:自社で各契約者の自宅/自室まで独自回線を敷設するのが基本でアナログ回線サービス提供が比較的容易なケーブルテレビ系プロバイダを除く。
 ※注8:先述の電力会社系プロバイダを除く。

いずれにせよIP電話が主流であることには変わりはなく他にめぼしい対抗馬も無いことから、災害時などの非常時対策として公衆電話のためにアナログ回線を維持し続ける必要のあるNTT(※注9)を例外として、恐らくこの状況は長期的に続くことになるでしょう。

 ※注9:緑の公衆電話は硬貨での利用に限定されますが、停電時でも電話局の交換機と電話線がつながってさえいれば通話可能な設計となっています。またこうした設計が求められるが故に、公衆電話についてはアナログ回線の維持が事実上必須となっています。

電話機の今

パナソニック VE-GP24TA
現行機種では最もシンプルな部類に入る電話機。このクラスの機種でも比較的大型の液晶ディスプレイが搭載されていて、デジタル留守録機能を搭載している。

IP電話への移行が急速に進行しつつある固定電話ですが、ヒューマンインターフェイスデバイスである電話機そのものは、実のところナンバー・ディスプレイが導入された1990年代末以降、それほど大きく変わっていません。

もちろん、フラッシュメモリの急速な低価格化を背景とした留守番電話機能における音声データ記録媒体のマイクロカセットテープからフラッシュメモリへの移行をはじめ、半導体技術の進歩の恩恵は電話機にもあったのですが、自分の声を受話器内蔵のマイクロフォンで音声信号に変換・送出し、相手の声の音声信号を受話器内蔵スピーカーで音に変える、という電話機の基本機能は変えようがなく、大きな変化をしたくともできなかったのです。

パナソニック KX-PD101DL
家庭向けファクシミリ送受信機では国内最大手のパナソニックによる最新機種。受信画像をスマートフォンで確認する機能や、無線LAN環境経由でスマートフォンを追加子機として登録する機能など、スマートフォンが普及した「今」に適応した機能を備える。

一方、ファクシミリ送受信機については、半導体技術の進歩の恩恵を最大限に受けることになりました。

というのも、SDカードなどの大容量FLASHメモリの普及により、これまでならば用紙切れなどで受信データが喪失することがあったのが、一旦受信画像データを外部ストレージに保存しておいて、本体に搭載された大型の液晶ディスプレイやスマートフォンなどで画像確認を行ってから印刷するかどうかを決定できるようになったためです。

つまり、これまでは常に用紙や印字リボンなどをセットした状態にしておかねばならなかったのが、それなりの容量のメモリカードなどを挿しておくだけで済み、しかもいたずらで送られてきたような不要な受信データまでいちいち印刷せずとも済むようになったため、大変経済的にファクシミリを運用できるようになったのです。

ブラザー MFC-8520DN
スーパーG3モードに対応するA4レーザー複合機の上位機種の一つ。このクラスの機種でも6万円を切る実売価格で販売されている。

しかもパソコンでのプリンタ技術の発達で、経時劣化に弱い感熱紙を使用するタイプの印刷機構に代えてインクジェット印刷方式やレーザー印刷方式の機構を搭載した製品が複合機という形で低価格で販売されるようになり、IP電話やインターネットFAXの時代になってかえって選択肢が広がっています。

複合機については、むしろ高性能プリンターとスキャナのセットにファクシミリ送受信機能(および通話機能)が「ついで」で付加されたような印象もあるのですが、それによりかつてであれば何十万円もする業務用製品しかなかったスーパーG3モード対応かつレーザー印刷方式採用で高画質送受信可能な高性能ファクシミリが5万円前後の価格帯で入手可能となっているのですから、なるほどこれではいつまで経ってもアナログ回線経由のファクシミリがすたれないのも当然でしょう。

アナログ回線は死なず

以上、固定電話の「今」をざっと見てきましたが、全体としてIP電話への移行が進む趨勢にあり、またISDNの廃止が将来的に決定している一方で、IP電話では安定して利用できない可能性のあるスーパーG3モードでのデータ送受信に対応するファクシミリ送受信機がメーカー各社のビジネス向け上位モデルを中心に多数提供されており、これらの性能発揮が可能なアナログ回線・ISDN回線の需要が未だに高いことがわかります。

実際、筆者が以前勤務していたある小さな事務所では、取引先とのパソコンを用いたメールのやりとりの傍らで莫大なページ数の文書がファクシミリで送受信されていました。機密性の高い情報をやりとりする場合、インターネット経由では少なからぬ危険性があって、そういう場合は今なおアナログ回線経由のファクシミリ、それも高速通信できる機種の方が便利なのです。

先に触れた災害対策としての公衆電話の維持もそうですが、単純なアナログ回線には単純なるが故の強みがあって、一概に旧式だから、あるいは使用料が高価だから、と切って捨てて良いわけではないことは留意しておいた方が良いでしょう。

もちろん、ファクシミリを使わない/使う予定の無い家庭ならば特にこうしたことを気にする理由は無く、積極的にIP電話を選んでも全く問題ないのですが…。

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