NTT東日本の固定電話新規申し込みページこれまで長く提供されてきたアナログ電話回線()やISDN方式デジタル電話回線()に加え、IP電話サービスも提供されている。

今さら? それとも今だからこそ? 固定電話について考える

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

by [2014年7月31日]

NTT東日本の固定電話新規申し込みページ
これまで長く提供されてきたアナログ電話回線(加入電話)やISDN方式デジタル電話回線(INSネット64)に加え、光IP電話サービス(ひかり電話)も提供されている。

スマートフォンを含めた携帯電話の普及で最も影響を受けたのがNTTなどの有線による加入電話(固定電話)であったことは、恐らくほとんどの方に同意いただけるのではないかと思います。

個々人で個別の電話番号の付与された携帯電話を所持するのであれば、わざわざ家庭あるいは自室に固定電話を設置する必要性は以前よりも格段に低く、さらにSkypeのようにインターネット回線経由で無料通話する手段が普及するようになったとあっては、最早各家庭で固定電話を維持する理由はほとんど残されていないように思えます。

しかし、それでも有線のアナログ/ISDN方式による伝統的な固定電話にはいくつかの点で、他の通話手段による代替が困難な部分があります。

そこで今回は、(事情の異なる事業所や店舗などは別にしても)固定電話が何故携帯電話に駆逐されず無くならないのか、その理由について考えてみたいと思います。

安定性の高い固定電話

家庭向けを含めて固定電話が無くならない理由の一つに、その安定性の高さがあります。

基本的なシステムが確立されてから100年以上が経過し、途中自動ダイヤル方式への移行や信号の長距離搬送の際の減衰対策としての増幅回路の改良、光ファイバー回線の導入、それに光ファイバー回線を各家庭などに設置された端末との直接接続にまで援用したISDNの導入といったトピックもありましたが、銅配線を用いるタイプのものについては構成要素となる各機器の代替はあっても、その基本構成は現在に至るまで長く変更されていません。

言い換えれば、余計な機能追加などを求めないのであれば変更の余地がないほどに「枯れた」、完成度の高いシステムなのです。

電話機能だけならば電話線の他に配線は要らない

アナログ固定電話のモジュラーケーブルに付いているコネクタをご覧になったことのある方ならご存じと思いますが、一般的な電話の場合、RJ-11と呼ばれる電話回線接続に利用されるモジュラーコネクタにおいては信号線は2本だけ(※注1)しか接続されていません。

 ※注1:ファクシミリ機能やコードレス電話などの各種付加サービスのための電源としてACアダプタを接続するタイプの電話機の場合、このRJ-11コネクタで未使用の信号ピン4本のうち2本を給電用に用い、4本の信号線が接続されることがあります。

この2本の信号線でダイヤル操作のための信号と通話される音声信号、それにダイヤル操作のための回路動作に必要な電力の供給(※注2)、と「電話をかける」という行為に必要なすべてがまかなわれるようになっているのです。

 ※注2:電話局の交換機から給電される仕組みになっています。

そのため、往年の黒電話のように「電話をかける」機能しかない最も単純な構造の電話機の場合、コンセントなどから別途電源などを特にとらずとも、例えば停電などのトラブル・災害時にも回線と電話局の交換機が健在であれば問題なく利用できるという、緊急時には他に得がたい大きな特徴(※注3)があります。

 ※注3:実際、阪神・淡路大震災と東日本大震災を共に経験した筆者は、携帯電話がほとんどつながらない状況下で何度もアナログ回線の固定電話に助けられました。

そのため、こうした特徴を買って緊急時用にアナログ回線の固定電話を維持しているケースが少なからずあります。

音の良い固定電話

アナログ回線にせよ、ISDN方式のデジタル回線にせよ、IP電話ではない伝統的な固定電話の音声信号は非圧縮で送受信されます。

音声符号化の基本技術である「LSP(Line Spectral Pairs:線スペクトル対)方式」がアメリカのIEEEマイルストーンに選ばれたことを報じるNTTのページ
世界中の携帯電話で広く利用されている高効率音声符号化技術の基礎となったLSPは、実はNTTの前身である電電公社によって1975年に開発された技術であり、より少ないデータ量で人の声を伝達することにフォーカスして開発された。

つまり、データ通信量削減のために人の声で使われる周波数帯を多く残し、他の帯域の信号を切り捨てるようにして不可逆圧縮を行う携帯電話や多くのIP電話などと比較すると、固定電話は必然的に音がそれらよりも良く、相手の声が聞き取りやすくなります。

近年携帯電話を利用した振り込め詐欺が横行していますが、これは携帯電話などではこの音声信号の圧縮により個々人の声の特徴となる要素が欠落してしまうため、誰がかけても似たような声に聞こえることが、被害を拡大させた一面があります。

一部のコードレスフォンのように電話機と子機の間で携帯電話と同様にデータ圧縮を行って音声の送受信を行っている機種を除く多くのアナログ固定電話端末では高圧縮率のIP電話アダプタなどを接続しない限り、携帯電話と比較して原理的にこうした「誰の声を聞いても同じに聞こえる」という現象が起こりにくい(※注4)ことは、覚えておくと何かの役に立つかもしれません。

 ※注4:もちろん、広帯域回線接続を前提とするタイプのIP電話ならばアナログ電話回線やISDN方式などと同様に、ものによってはそれ以上に高音質での通話が可能です。また、こちら側の電話機が固定電話でも発信側が携帯電話であれば、そちら側が原因で音質低下します。

IP電話でのファクシミリ利用の可否についてのauのQ&Aページ
ご覧の通り、通信の仕組み的にそもそも利用できないG4 FAXだけでなく、アナログ電話回線で高速データ通信を行うスーパーG3 FAXも非対応扱いとなっている。

一方、そうした非圧縮の音声信号での通話が一般的であった時代に、その音声信号帯域を用いて画像データを送受信する形で規格制定されたファクシミリの場合、高圧縮率のIP電話経由で送受信を行うと、送られる画像データに深刻かつ致命的な欠損が発生する恐れがあります。

実際、最近のファクシミリやIP電話のマニュアルなどを確認すると、必ずと言って良いほど「回線状況によって送受信できないことがある」という断り書きがあります。そうした場合にはNTTなどの固定電話回線経由でファクシミリを送るように、あるいはスーパーG3モードで駄目ならより低画質のG3モードに切り替えて再送信してみるように、といった指示がなされており、狭い通信帯域で音声信号を高圧縮率で不可逆圧縮してパケット単位でやりとりするタイプのIP電話は、そのデータ転送帯域の不安定さ故に本質的にファクシミリの利用に適していない(※注5)ことがわかります。

 ※注5:一方、NTTのフレッツ光ネクストのように広帯域の回線接続を基本とし、IP電話でのファクシミリのサポートをアッピールするサービスも存在しています。

また、そもそも携帯電話の場合、ファクシミリとの間で送受信する仕組みは普通持たされていない(※注6)訳でありまして、少なくともこの用途では固定電話の代替の役に立たない場合が大半です。

 ※注6:対応アプリをインストールすれば可能です。なお、NTT東日本の「ひかり電話」では「ひかりFAX」としてAndroid搭載端末からフレッツ光回線経由で電話網に接続されたファクシミリとの間の画像送受信を可能とするアプリ・サービスの提供を行っています。

長くなりましたが、要するにファクシミリを利用するには通常の場合は固定電話を使用する他なく、また事業所や店舗などの場合、ファクシミリの送受信にかかるトラブルを回避するには帯域的に安定なアナログ回線かISDN回線、さもなくばファクシミリ利用を保証している一部の広帯域IP電話のいずれかに機器を接続して利用する必要があるということなのです。

そもそも携帯は信用されていない

サラリーローンやクレジットカード、特に前者を利用したい場合、一般に携帯電話の番号では契約が拒否され、固定電話番号の提示が求められます。

これは、携帯電話の市外局番部分がその携帯電話の契約者の居住地域と紐付けられておらず、実際にその住所に契約者が居住しているのかどうかの確認に利用できないため(※注7)です。

 ※注7:通常は契約時の与信作業の過程で固定電話経由での契約者の所在確認が行われます。

要するに、どこに住んでいるのかの確認にも使えない携帯電話の番号は、少なくとも金融業者からは基本的に信用に値しないものと見なされていて、お金も貸して貰えないわけです。

ちなみにその金融業者、例えばサラリーローンを行っている貸金業者の場合、貸金業登録簿という名簿に掲載される情報の一つとして固定電話番号の登録が、貸金業法という法律により義務づけられています。

つまり、金融業者どころか国さえも、信頼性の一つのよりどころとして固定電話の電話番号を認識しているということで、少なくとも日本国内における固定電話の社会的な重み・信用は携帯電話とは比較にならないほど大きいと言えます。

もちろん、これには元々固定電話がかつて電信電話公社(電電公社)という公的な組織によって独占的に運営されていて、また電話網整備費拠出のための施設設置負担金を含む高額のいわゆる電話加入権(※注8)を購入せねば固定電話が利用できなかったため、その電話加入権には借入金の担保や差し押さえ物件となるほどの価値が認められ、また相応の信用もあったことが影響しているのは否定できません。

 ※注8:筆者が大学に入学し下宿していた1990年代初頭の時点で固定電話設置のための施設設置負担金として72,000円がかかり、ただでさえ高額な通話料に加えてこんな金までむしり取るのか、と唖然とした記憶があります。テレホーダイなどの割引サービスも存在しなかった当時、パソコン通信を行っていた人間にとって固定電話を事実上独占していたNTTを血も涙もない企業と認識していたことを覚えています。

しかし、現実の問題として携帯電話は新聞などでも時折報じられるように犯罪の手段となることが少なからずあって社会的な十分な信用を得るには至っておらず、そのため未だに固定電話の有無が信頼性の評価基準の一つとなっているのです。

信号干渉などのトラブルの少ない固定電話

アナログテレビ放送が周波数帯域の整理再割り当てのためデジタルテレビ放送で置き換えられたのと同様の理由で、無圧縮でアナログ通信を行う固定電話については携帯電話への移行を勧められるようなことはないものの、ADSLモデムを用い音声を高圧縮率のデジタルデータとして送受信するIP電話への置き換えを促進するキャンペーンがしばしば行われています。

アナログ固定電話回線を残している筆者の部屋にも代理店等からこの種のキャンペーンを案内する電話がしばしば(時には執拗なほどに)かかってくるのですが、そうした電話では係員のお兄さんお姉さんは必ずと言って良いほど通話料が安くなることを前面に押し出して、それ以外の問題点は触れないように必死で誘導しようとしてきます。

実は、筆者が自室にアナログの固定電話を残している理由には、ここまで挙げたファクシミリ送受信や信用面の問題の他にもう一つあって、むしろその問題が深刻であるためにここまでIP電話化せずにアナログ回線を残さざるをえなかったものでありました。

もう一つの深刻な問題、それはIP電話のためのADSLモデムと、マンションなどに設置のVDSLやADSLなどの銅配線による固定電話回線を利用した高速データ通信のためのシステムとの干渉です。

ADSLにせよ、VDSLにせよ、一つの信号回線系統に一つだけ使用するのであれば、トラブルが起きるとしてもADSLモデムの電話局交換機からの距離による減衰問題程度で済むのですが、これが複数重畳して利用されるとなると、途端にトラブルが頻発します。

アナログの固定電話の場合、住んでいる同じマンションの建物内に敷設された電話網でADSLやVDSLが利用されていても致命的なトラブルが出ることはほとんどない(※注9)のですが、同じ電話回線に対してADSLとマンションのVDSL、あるいは2社以上の異なったADSLモデムによる通信が共存した場合、運が悪いと信号干渉でそのADSLなりVDSLの通信速度が覿面(てきめん)に低下してしまうことがあるのです。

 ※注9:まれにファクシミリの送受信に悪影響が出ることがありますが、大概はノイズ対策等で回避可能です。

例えば筆者が長年住んでいるマンションの場合、入居開始後何年かはアナログ回線の固定電話のみであったため、インターネット接続にNTTのADSLサービスを契約して利用していたのですが、ある時マンションにUCOMのVDSL方式による光回線(※注10)が導入された途端、自分の部屋には関係ないはずなのに信号干渉が起きました。その結果ノイズ対策を講じようが何をしようがそれまで理論上限に近かったADSLの通信速度が極端に低下し、14.4kbpsモデムより低速な、それはもう悲惨な速度でしか接続できなくなってしまいました。

 ※注10:集合住宅用のサービスで、マンション内に引き込まれた光ファイバー回線をVDSLモデムに接続し、各戸にはそのモデムに接続された電話回線経由でサービスを提供する。これを利用している場合、「光接続」と謳っていても、実際にはラストワンマイル未満の部分で銅配線の電話回線を利用していることになり、光配線では通常発生しない上下方向の通信速度差が発生します。

そこで仕方なく件のUCOMのサービスと契約して問題解決を図ったのですが、そうした経緯や先に挙げたファクシミリのトラブル回避(※注11)を考慮すると、トラブルの原因となる可能性の高いIP電話は導入できない、と判断せざるを得ませんでした。

 ※注11:実際UCOM公式サイトのFAQページを確認してみると、同社のIP電話サービスでは回線状況や特性によって送受信できない場合があることや、環境によりスーパーG3モードでのファクシミリ送受信に問題があることが(概ね通常の機種なら問題ないが、という前振りに続けて割と遠回しに)説明されています。

そのため、IP電話への切り替えの勧誘電話が(UCOM以外の各社から)かかってくる度に、そのあたりの経緯を説明してそうした問題に対処できるのか、あるいは回避する策は用意されているのか、と丹念に質問しているのですが、残念ながら満足出来る回答が得られたことがありません。

ファクシミリ送受信の機会が皆無にならない以上、IP電話であろうが何だろうが、「きちんとファクシミリの送れる固定電話」を無くすわけにはいきませんから、こちらとしてはかなり真剣かつ突っ込んだ質問をしているのですが、大概の場合はこの質問を行うと途端に向こうが逃げ腰になってしまいます。

にもかかわらず、そうやって何度も理由をきちんと説明してお断りしているにもかかわらず、いつまで経ってもこの種の勧誘が止むことはありません。電話会社側としては流れるデータ量の割に回線占有量の大きなアナログ固定電話はさっさとなくしてしまいたいのはわかるのですが、このあたりの対応はもう少し何とかして欲しいところです。

全廃は当分無理?

以上、筆者の個人的な経験を交えて固定電話が何故生き残ってきたのかを見てきましたが、結局の所、安定性や信頼性、それにファクシミリの利用可否の問題が大きく立ちはだかっているように思います。

困ったことに筆者の場合、注文がファクシミリか往復はがきでないと受け付けてくれないといういささか面倒かつ古式ゆかしい団体にご縁があるため、今すぐファクシミリを捨ててしまうことも固定電話を捨ててしまうことも出来ません。

特に小さな団体や商店などでIT革命どこ吹く風の所を相手にしていると、こういった状況は頻繁に目にすることになるわけで、また相手先のファクシミリの電話番号を知っていればコンピューターなしで自分が描いた絵やメモを簡単に送付できるファクシミリの簡便さや画質の意外な良さ、それにIP接続で上下ともまともな速度が出る=上下ともファクシミリ使用で問題の出にくい光配線方式の場合、月額使用料もさることながら非常に高額な初期工事費が必要になることなども考慮すると、最低でもあと10年くらいはこのままこうしたアナログ回線による固定電話が残るのではないでしょうか。

▼参考リンク
意外と知らない!電話・通信の仕組み|Voice from NTT東日本|官公庁・法人のお客さま|NTT東日本
NTT HOME > NTT持株会社ニュースリリース > 全世界の携帯電話に欠かせない音声符号化の基本技術である「LSP(線スペクトル対)方式」が世界的に権威のあるIEEEマイルストーンに認定
Android端末向けFAX送受信ツール「ひかりFAX」の提供開始について ~「ひかり電話」の「データコネクト」利用時には高速・高画質・お得にFAXデータの送受信が可能に~ | お知らせ・報道発表 | 企業情報 | NTT東日本
【別紙1】ひかりFAXの概要について | お知らせ・報道発表 | 企業情報 | NTT東日本
auひかり電話サービスでFAXは利用でき… │ au Q&Aプラス
UCOM光電話|よくある質問

コメントは受け付けていません。

タグ:
PageTopへ