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まばゆく輝く小さな裏方 ~シャープ、従来比30パーセント小型のLEDバックライトを開発~

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by [2014年7月25日]

現在、モバイル機器を中心にディスプレイデバイスとして世界で広く利用されている液晶には、原理上一つの制約が存在します。

それは、液晶が電気的な作用により光のねじれ方向を変化させて光の透過可否を切り替える、つまり背面からの光がなければディスプレイとして成立しないことです。

モノクロ表示の電卓などでは一般に反射型、つまり自然光や電灯の光などを背面で反射して光源とする、最も簡素な構造とされているのですが、画質を犠牲にしてでも超低消費電力が要求される一部のデバイスならばともかく、昨今の一般的なスマートフォンやタブレットのように多色高解像度表示を行うカラー液晶の場合、常に一定の画質を維持する必要から、背面に別途光源を搭載したバックライト液晶としています。

先日、そんな中小型液晶バックライト用光源として、シャープが新しいLEDデバイス「GM4BN6F3S0A」を発表しました。

今回はこの新LEDデバイスを中心に、液晶バックライトについて考えてみたいと思います。

GM4BN6F3S0Aの主な仕様・特徴

公表されている「GM4BN6F3S0A」の主な仕様・特徴は以下のとおりです。

 タイプ:中小型液晶用 サイド発光タイプ(3.0mm幅パッケージ)
 色再現範囲:NTSC(CIE1931)比90パーセント
 全光束(明るさ):8.3lm
 駆動電流:20mA
 外形サイズ:3.0mm×0.84mm×0.6mm(※従来品(GM4BN6B3S0A)比で容積約3割減)

より小さく、より明るく

上に記した仕様・特徴だけをみても今ひとつピンとこない方も恐らく多いかと思います。

サイド発光タイプ、というのはつまり透明なアクリル板を導光板として用い、その一辺の端に細長い光源を置いてそこからの光をアクリル板内で反射させ、底面に貼られた白い反射シート(あるいはアクリル板に印刷された白色インクや特別な方法で成型された窪み)などを用いて反射地点で光を散乱させ、光を導光板上面から放出させることで面光源とするエッジライト式バックライトとよばれるバックライト装置において、その導光板の端に置いて光源とするタイプのLEDデバイスのことを言います。

エッジライト式バックライトの模式図
左端に置かれた光源(黄色の丸)からの光をアクリル製の導光板(水色の部分)に入力し、内部で反射する光を一方の面に印刷などで形成された反射ドットと呼ばれる部分(下の白い部分)で反射・拡散させてもう一方の面から光を放射させる。なお、反射ドットは反射による光の減衰を考慮し、光源に近いほど小さく、遠いほど大きく形成して各ドット単位での放射光量がなるべく均等になるよう工夫されている。

元々、この光源には細長いことと光量が大きいこと、それに寿命が長いことを生かして、冷陰極管という蛍光管の一種が用いられていました。

もっとも、この冷陰極管はその動作にあたって電極を約1,000V前後の高電圧で駆動する必要があって昇圧のためのインバータ回路を要し、またそのため消費電力もそれなりに大きく、さらに冷陰極管の直径やインバータ回路の分だけ液晶パネル全体の厚みが大きくなる、という弱点がありました。

そのため、特に消費電力とサイズの問題が深刻なモバイル機器向けバックライトではノートパソコンを中心にLEDへの移行が早期に進められたのですが、ここで一つ問題がありました。

LEDだと確かに消費電力が抑えられるのですが、青色LEDの発明でRGBの光の三原色全てに対応するLEDが揃ったのが1993年、しかもその時点ではRGBそれぞれのLEDの寿命にかなり大きな差があって、当初3色のLEDをうまく組み合わせて白色になるように調整してあっても経年変化で青が弱くなり次第に全体の色が赤や緑に偏るという問題があったのです。

また、単一で白色発光するLEDについても、光量が決して十分ではなく、そのため白色かつ十分な光量の光源が実用化されるまで、なかなかバックライトのLED化は進みませんでした。

GM4BN6F3S0AのRGBカラーフィルター利用による液晶搭載時の色特性とNTSCの色特性の比較図
NTSCと比較して若干赤方向にシフト気味だが、この種の発光デバイスとしてはかなり優秀な色特性である。

今回のGM4BN6F3S0Aは青色LEDを基本に赤と緑の蛍光体を組み合わせることで白色発光を実現しているのですが、これで色再現範囲NTSC比90パーセントという値はパッケージサイズを考えると非常に高い色再現性であり、また消費電流量20mAで全光束8.3lm(ルーメン)というスペックから、電圧を白色/青色LEDで一般的な3.5Vとして計算するとワットあたりの全光束は110lm/Wを超えることになり、小さなパッケージサイズと低い消費電力で非常に大きな光量、つまり驚くほどの高効率発光を実現していることになります。

実は、シャープの前世代モデルではGM4BN6F3S0Aよりも0.2mmパッケージが薄いGM4BN4B3S0Aと、厚みは同じであるものの平面積の大きなGM4BN6B3S0Aの2種が提供されていて、それぞれ色再現範囲NTSC比90パーセント、消費電流20mAの条件下で6.3lmと7.4lmの全光束を実現していましたから、GM4BN6F3S0Aは小さなGM4BN4B3S0Aと同じ占有面積でGM4BN6B3S0Aと同じ厚さとなったにもかかわらず、これら2機種を大きく上回る全光束を達成したわけです。

つまり、厚みを我慢すればGM4BN4B3S0Aと同じ消費電力で1.3倍の光量が実現でき、LEDの個数が多くなることを許容できるのであれば同じサイズの導光板に対してGM4BN6B3S0A比でおよそ45パーセント増しの明るさが実現できることになります。

言い換えれば、同程度の明るさで良ければGM4BN6B3S0A比約4割減のLED個数=消費電力で実現できるということで、バッテリー容量の制限が特に厳しいスマートフォンやタブレットには強い味方となるでしょう。

液晶の進化は続く

以上、シャープの最新LEDデバイスであるGM4BN6F3S0Aをみてきましたが、正直このサイズ、この消費電力でこの明るさは驚異的です。

しかもサンプル価格は1個あたり40円とのことで、青色LED1個に結構なお値段がついていた1998年頃のことを思い返すと、非常に安くなってもいます。

液晶の改良・低消費電力化というと、どうしてもIGZOのような液晶パネルそのものの駆動回路側の改良に目が行きがちなのですが、こうして恒常的に電力を消費するバックライトの光源についても、地味ながら大きな改良が続いているわけです。

ちなみにGM4BN6F3S0Aは今年9月より量産出荷開始とのことで、今年のスマートフォン冬モデルあたりからの搭載が期待できます。

当然ながら、これは黒子同然の表に出ないデバイスですから、こうした部品の搭載が最終製品であるスマートフォンなどのカタログなどで大々的に取り上げられることはまずありません。

しかし、額面上のスペックでは同じような回路/部品の構成なのに公称連続稼働時間に明確な差が生じている場合は、こうした部品レベルの性能差がボディブローのように効いていると考えられます。

そのため、こうした部品レベルでの地道な改良・進化が同じバッテリー容量でもより長い時間の連続稼働を可能にすることは覚えておいて損はないでしょう。

▼参考リンク
中小型液晶バックライト用LEDデバイスを開発、発売|ニュースリリース:シャープ(GM4BN6F3S0A)
液晶バックライト用LEDデバイスを開発、発売 | ニュースリリース:シャープ(GM4BN4B3S0A・GM4BN6B3S0A)

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