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DeNA、グリー、じげんの経営者が語る!新規事業の作り方【B Dash Camp 2014】

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by [2014年7月25日]


本記事では、福岡で開催された「B Dash Camp 2014」でのセッション「ネット経営者新旧対決 ~イケてる新規事業の作り方」のダイジェストをお送りする。
登壇者は青柳直樹氏(グリー株式会社 取締役 執行役員常務)、平尾丈氏(株式会社じげん 代表取締役社長)、守安功氏 (株式会社ディー・エヌ・エー 代表取締役社長兼CEOの3名だ。

株式会社ミクシィ 顧問 朝倉祐介氏

なんとも刺激的なタイトルのセッションだが、ここでは新規事業の創出を積極的に行っている3社が、どのように新規事業を創出しているのかが語られた。モデレータは株式会社ミクシィ顧問 朝倉祐介氏だ。

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グリーは、非ゲーム事業に1年間で100億円投資

───本日は新規事業創出に積極的な3社に集まっていただきました。まずは順番に、各社の新規事業創出への取り組みを聞いてみたいと思います。

グリー株式会社
取締役 青柳直樹氏

青柳 グリーではゲームに次ぐ新規事業創出のために3つの取り組みをしています。

 1つ目は、新規事業検討会議というもので、全社員から公募した事業案のプレゼンを一日かけて行うというものです。この会議は、8人の役員の中から社員本人が選んだ役員に対して事業案をプレゼンし、その中から、各役員が2案ずつ選定して最終プレゼンを経て、その中から必ず1つは事業化する、という仕組みにしています。最後まで通れば必ず事業化されることと、役員にコミットしてもらうことで、良いモチベーションが生まれています。

 2つ目は、新規事業の撤退メカニズムの導入です。具体的には、少し乱暴ですが3ヵ月でβ版をローンチできなかった事業は撤退するとか、新しく事業を4つ始める際には、現時点で運営している事業のKPIや売上から判断して下位の4つと入れ替える、といったJリーグ制を導入したりしています。新規事業をフェーズ分けし、初期のフェーズ期間中は新規事業の撤退判断を担当役員に任せることで、組織が大きくなったことの弊害(判断スピードの低下)を避けようという試みもしています。

 3つ目はIncubation & Acquisition戦略です。最近のVC界隈を見ていると非常に活発で、ベンチャーのエコシステムと争いながら新規事業をうまくやっていくためには、他社とは違う取り組みをしなければいけないな、という思いから、人材の派遣も含めた少し踏み込んだ投資をする戦略をとっています。具体的には、ゲーム事業への投資以外に、非ゲーム事業へのBS投資予算を100億円用意していて、これを12ヵ月で投資していく、という計画が社内にあります。最近の投資では、アジア最大手のホテル当日予約サイト「Hotel Quickly」への投資がこれにあたります。グリーが始めた「Tonight」というサービスのシナジーを見込んで投資しました。

ホテル当日予約アプリ『Tonight』

───これはグリーベンチャーズとはまた違う取り組みということなんですよね?

青柳 そうです。グリーベンチャーズは意思決定も予算もグリーとは別で、今の話はグリー社内の取り組みです。グリーでは、基本的には事業シナジーを見込んだ投資をしていきたいと考えています。

じげんは時価総額10兆円を目指す

───それではじげんの平尾さん、よろしくお願いします。

株式会社じげん
代表取締役社長 平尾丈氏

平尾 じげんは時価総額1兆円超の企業を目指しています。ただ、社内では既に時価総額10兆円計画というものもあります。これは決して勢いで言っているわけではなく、ソフトバンク孫正義さんの後継者プログラム「ソフトバンクアカデミア」を通じて孫さんを間近で見たことで、ここで詳しくはお話できませんが、時価総額10兆円のソフトバンクの経営者孫さんの弱点も見えてきたということがあります。

 新規事業については、「ギャンブルで終わらせないこと」「事業家の発掘と育成」「事業を常に創出すること」が重要だと思っています。

 新規事業をギャンブルにしないために、じげんではPlatform on Platform型、つまり「メディアのメディア」を作る、というやり方をとっています。これは、既存のプラットフォームをリソースとして統合し、先発の企業が見落としたり捨てたりしていた価値をリサイクルする、というやり方です。このやり方は、リソースを持たないベンチャーが既に強豪のいる領域で事業を始める上で有効です。
 次に事業家の発掘・育成についてですが、じげんは事業開発会社を謳っているので、採用の際にアントレプレナーシップを持った人間のみを採用しており、社員は全員事業家でもあります。エンジニアや営業、人事であっても新規事業に携わってもらいます。
 常に事業を創出する、ということについては「じげんEXPO」という新規事業コンテストを行っており、先ほどのような採用方針もあり全社員数70名に対して180もの提案がなされています。

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じげんの1兆円計画を支える戦略、ジゲノミクス(CNETより)

───じげんさんは相当手広く事業をやっているイメージがあります。数え方にもよると思いますが、現在は大体どのくらいの数の事業をやっているのですか?

平尾 大体40くらいの事業ユニットがありまして、その内の半分弱くらいが新規事業として動いているものです。あえて特定の領域に事業を絞らないのがじげんのやり方ですが、イノベーションのジレンマを克服しなければならない領域の優先度は低いので、コンテンツ産業には手を出していません。基本的には衣食住など無くなることのない事業領域に投資をしています。

DeNAは周到な大規模投資型事業と、
スピード重視の小型事業で攻める

───それでは守安さんのお話をお聞きしたいのですが、最近のDeNAはかなり多くの新規事業を手掛けていますよね?どういった取り組みをしているのでしょうか?

株式会社ディー・エヌ・エー
代表取締役社長兼CEO 守安功氏

守安 DeNAの新規事業への取り組み方には、その規模に合わせて2種類のパターンがあります。

 パターンAは、大型の提携や数億円規模の初期投資を必要とするタイプの大型事業で、経営会議でしっかりとした議論を通してからスタートします。例を挙げれば、大型出版社と提携をしているマンガボックスや、自前の設備で東大医科研との共同研究をしているMyCodeなどがあります。

 パターンBは、企画や経営に時間をかけるよりもスピードを優先するべきであったり、企画や経営を練ろうにもやってみなければ分からないタイプの小型事業です。数千万円規模のものであればとりあえずやってみて、大きくできそうであれば数億円かけて一気にアクセルを踏みます。例を挙げれば、欧米で流行っているNextDoorのような、マチコトというローカルSNSがあります。まだ三軒茶屋限定でのオープンであり、広告もほとんどしていないのですが、この他にも様々な事業をステルス的に走らせています。ウェアラブルデバイスを視野に入れた事業の計画もあります。

 まとめると、パターンAの大型投資事業でスタートアップ企業を蹴散らして、パターンBのスピード重視型事業ではスタートアップと同じ土俵で戦うという考え方です。

───隣で話を聞いていて、ひやひやしてしまいました(笑)

事業に関わる社員全員が納得できることが重要

───例えば、グリーさんやDeNAさんには収益の柱としてやはりソーシャルゲームがありますが、新しい事業を始める際にはそこからも人員を割くことになると思います。既に大きな事業があるから新規事業をやりにくい、という話も含めて、社員がどのように新規事業と向き合っているのかについてお聞きしたいです。

青柳 自分としては、なぜその事業をやるのか、なぜ辞めるか、という説明をきちんとすることが重要だと思っています。例えば、事業検討会議ではなぜその事業案が通らなかったのかは本人に必ずきちんと説明します。ゲームから撤退する時も一緒で、やはり一年かけてゲーム開発をした社員にも納得して貰えるようにきちんと撤退理由を説明しています。
 また、先ほどお話した撤退メカニズムの導入はトランスペアレンシーを高めるためのものでもあります。事業なんてやってみないと分からない部分もある、というのはインターネット業界の前提として分かっているだろう、と考えています。

───新規事業への向き合い方について、じげんではどうでしょうか。

平尾 じげんの場合は、そもそも新規事業をやりたい人しか入社してこないので、事業について説明して納得して貰う、という点ではあまり苦労はしません。じげんは自分にとって3社目の起業であり、起業家としての私に憧れて入社してくる人もいるので、今後もそういった会社のブランドを大事にしていきたいです。その他には、社員のアントレプレナーシップを高める仕組みを作っていくのが重要だと思っています。

───一つの事業にこだわっていない、という企業イメージのおかげで事業家向きの人材採用がしやすい、ということですね。DeNAではどうですか?

守安 最近は新規事業をやりたい人が新卒としてたくさん入社してきているので、新規事業を抑えめにしてソシャゲーにシフトしていた時期と比べると、新規事業に関して納得は得られやすくなってきたと思います。

───新卒の方は、ゲームをやってもらうとか新規事業をやってもらうとか、採用の時点で決まっているのですか?

守安 中途の採用ではゲーム開発のスペシャリストを採用することもしていますが、新卒採用ではスキルよりもポテンシャルを重視しています。若いうちからチャレンジできる、というのを前面に押し出して新卒採用をしているので、やはり新規事業をやりたい方が新卒で多く入ってきていますね。

事業間の距離が遠くとも、根本が共通していれば
シナジー(相乗効果)は生まれうる


───新規事業における既存事業とのシナジーについてはどのようにお考えでしょうか? DeNAのMyCodeなどはシナジーがありますか?

守安 シナジーは常に意識してます。やはり、今までの事業で培ったノウハウやリソース、ユーザーを活用できるのは有利です。
 また、DeNAでは注力すべき領域として、従来から取り組んでいるゲームとECの領域に加えて、コミュニケーションサービスとマンガボックスのようにIP(知的財産)を生み出せるサービス領域を決めています。遺伝子検査サービスのMyCodeに関しては、現時点でのシナジーは無いものの、今後はヘルスケアサービス領域にも事業を拡大しようと考えているので、MyCodeが大きくなればその領域でシナジーを生むと考えています。

───先ほど、グリーではホテル当日予約サービス「Tonight」を始めたとありましたが、今までのソーシャルゲームとのシナジーは何でしょうか?

青柳 事業シナジーについては、今までは分かりやすい点と点を繋げていくように、例えば他社のゲーム会社に対して投資していたりしていました。しかし、今はスマホによってあらゆるものが置き換えられている時代であり、我々の事業機会は以前よりも拡がってきています。それに合わせて今までよりも広い視野で考えるようになり、一見遠いように見える点同士でも、それを繋げる線がぼんやりとでも見えていて納得できているならばやるべきだ、と思って事業を展開しています。ただ、例えば競り勝たなければならない競合他社がいる場合など、悠長に構えていられない局面では、視野を絞って繋げやすい点を結んでシナジーを生むことも重要だと思っています。

───シナジーについて、平尾さんはどうお考えでしょうか?

平尾 自分は常にシナジーを追求するべきだと考えています。自分は特定の事業を主力にしてしまうことの危うさを感じているので、事業を大きくする投資よりも事業の種をまく投資をたくさんしています。
 事業を始める上で、最初にかかるコストのほとんどは人件費です。段々と事業が大きくなってくると、途中でコスト構造が変わっていきます。コスト構造が変わってくると、マーケティングが重要になってくるのですが、根本のユーザーが一緒なら他の事業が広告になりうるんです。根本のコストと根本のユーザーが同じであれば2つの事業間にシナジーが生まれるという考えから、じげんではリテンションコストを複数の事業に点在させています。広告に投資している企業も多いですが、自分達はこのような考え方で多角化することの価値を大事にしていきたいです。

5年後を見据えて

───各社とも事業の幅は今後も拡げていくと思いますが、5年後は何の会社になってるのかを教えて下さい。

青柳 グリーは今年で創業10年になりますが、これまでの10年間を振り返ると、我々の会社も業界も非連続な変化をしてきたように思います。自分としてはそういう非連続な変化は大切にしたくて、そういう意味では5年後も今の延長線上にいるというのはヤバいかな、と思っています。なので、もしかすると5年後は違うことを言っているかもしれませんが、現時点ではインターネットを軸にスマホとグローバルに切り込みたいです。理想を言えば、時代を追いかける側ではなく、時代を作る側になりたいですね。

平尾 自分は事業家として十数年やってきましたが、マクロ経済や、ポスト資本主義など以前よりも大きな話に興味が出てきはじめました。最近はGoogleやAppleのGDPやその製品の数が国の規模を超え始めてきていて、ミクロ経済がマクロ経済を上回り始めていると言われています。そんなパラダイムシフトが起きている現代だからこそできるビジネスとはなんなのか?というのを追究していきたいです。今後は、全産業の中に入り込んでいけるような新しいプラットフォームを作っていきたいと思っています。

守安 5年後に限らず今もそうなのですが、DeNAは勝てそうな領域に注力する会社です。現在は、ゲーム、EC、ヘルスケア、コミュニケーション、IP創出の領域で事業を大きくするのを目標にしていますが、もしソシャゲーのような大きな金脈を見つけたらそこにシフトします。なので、必ずしも5年後のことを明確に考えて経営しているわけではありません。絶対にブレない目標を言えば、国内だけでなくグローバルで勝ちたいと思っています。

事業創出に積極的、と言っても3社それぞれが異なる心構えで新規事業に取り組んでいることが良く分かるセッションであった。
グリーは、ホテル予約アプリ”Tonight”とソーシャルゲームのシナジーについて問われた際の「事業シナジーを以前よりも広い視野で捉えていきたい」という発言からも分かる通り、基本的には現在の事業とのシナジーを考えた事業拡大を進めていくようだ。
一方でDeNAは、「MyCodeが大きく成長していけば、今後展開するヘルスケア領域の事業と大きなシナジーを生む」と言っている通り、自分達の注力したい事業領域を定めた上で、その中でシナジーを生み出せる構造を作り出すことを主軸にしているように見える。
じげんは、「イノベーションのジレンマを克服しなければならない領域は優先度が低い」としながらも、特定の事業領域にはこだわらず、「根本のユーザーとリソースが同じならばシナジーが生まれる」という考え方に基づいて今後も事業を拡大していくようだ。
また、DeNAとじげんは「新規事業をやりたい新卒が多いとやりやすい」という旨の発言をしており、「事業創出に積極的な会社」というブランドイメージが新規事業を生みだすコツである、とも言えそうだ。
今ある事業とのシナジーを考えるグリーと、注力したい領域でのシナジー構造を生みだすDeNA、敢えて特定の領域にこだわずにシナジー重視で事業を拡げていくじげん、どこが勝者と呼ばれるようになるのかは分からないが、今後素晴らしいサービスが生まれることを期待したい。

▼参考リンク
ホテル当日予約アプリ『Tonight』
じげん、ブレイン・ラボを11.7億円で買収–B2Bに本格参入

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