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4大ニュースアプリの勝者は誰か?未来のメディアの姿を探る【B Dash Camp 2014】

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by [2014年7月24日]

左から順に、モデレータの手嶋浩己氏、鈴木健氏、梅田優祐氏、町野健氏、木村新司氏

本記事では福岡で開催された「B Dash Camp 2014」内のセッション「スマホニュースメディアの勝者は誰か?」 のダイジェストをお送りする。このセッションでは Gunosy, Antenna, NewsPicks, SmartNewsといったスマホニュースを代表するメディアそれぞれの理想が語られた。ニュースに限らず、キュレーションサービスの開発を考えている人には必見の内容だ。

モデレータはユナイテッド株式会社 取締役の手嶋浩己氏が務めた。

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スマホニュースアプリを事業として始めた理由

スマートニュース株式会社
取締役 鈴木健氏


───まずは、なぜスマホニュースを事業にしようと考えたのか。について伺いたいと思います。

鈴木 SmartNewsの原点は、共同創業者である浜本が趣味で開発したTwitterのクローラです。
このTwitterクローラはそのままニュースになる、と思って完全にパーソナライズされたソーシャルニュースリーダCrowsNestというサービスを始めました。
CrowsNestはコアなファンはついたものの、半年で数万ユーザーしか獲得できず、サービスとしては失敗してしまいましたが、この失敗では諦めきれなかったので、サービスとしてうまくやるために今度はスマホアプリに特化したニュースリーダを作ろうと決めました。

株式会社グライダーアソシエイツ
取締役COO 町野健氏

───町野さんはいかがでしょうか?

町野 Antennaの場合は自分が雑誌を読んだり本屋で拾い読みをしたりするのが好きで、そうした発見のある楽しさをアプリとして提供しようと思ったのがきっかけです。
海外のFlipboardというソーシャルマガジンアプリが既にあったのですが、日本語のアプリはまだありませんでした。Flipboardはかなり流行っていたので、これは絶対にいける、と思ってAntennaを始めました。

株式会社Gunosy
代表取締役 木村新司氏

───木村さんはGunosyというサービスのリリースを知ったのがきっかけですよね? なぜ数あるサービスの中でGunosyを選んだのですか?

木村 GunosyがFacebookから分析して記事を推薦するのを見て、人間っぽいメディアだと感じたのがきっかけですね。
最近は色んなサイトを回ってニュースを追うのがしんどくなってきた。それと同時に、SNSなどからビッグデータもとれるようになってきた。だったらその統計データを分析して、個人の興味に合わせて記事を推薦するのがいいだろう、という創業者福島の考えに賛同したのでグノシーに参加しました。

株式会社ユーザベース
代表取締役 梅田優祐氏

───梅田さんはどうですか?

梅田 私はコンサルティングファームや投資銀行で働いており、ビジネス情報を集めて加工する仕事をしていました。その中で、「複雑で分かりにくいビジネス情報の世界を変えたい」と思い、SPEEDAというエンタープライズ向けの経済情報のデータベースサービスを始め、ユーザベースを創業しました。
そのような経緯で創業した当初から、経済コンテンツの王様であるニュースを扱うサービスは絶対にやりたいと思っていて、世界一の経済メディアを目指して、NewsPicksを始めました。

SmartNewsのライバルはゲーム産業

───ここで、他社のメディアとの競争をどの程度意識しているのか? また、自分達のメディアの軸はなんなのか? というのを聞いてみたいと思います。

───Gunosyさんは最近、12億円を調達して一気にテレビCMをやりましたよね。

木村 半年前、GunosyはSmartNewsにDL(ダウンロード)数で思いっきり負けていました。なので、自分達からしてみればアクセルを踏み込むのは当たり前だと思います。テレビCMでDL数では追い付けたので、ここからは違う部分での勝負が始まるな、と思っています。

───鈴木さんはどうですか?SmartNewsは最近リワード広告を始めましたよね。やはりGunosyを意識しているのでしょうか?

鈴木 リワード広告は本格的に導入したわけではなく、まだ実験段階です。
自分達が競争を意識しているのは、ゲーム産業ですね。CrowsNestをやっていた時代に、電車内でスマホをいじっている人を観察してみたところ、ほとんどの人がゲームをしていたんです。自分は過去にブラウザゲームで人生を潰しかけたこともあり、ゲームに時間を費やしすぎている人が多すぎる状況を変えたい、と思いました。「地下鉄では電波が入らなくてニュースが読めない、だからゲームをするしかない」という状況を変えようというのが、圏外でもニュースを読める仕様に決めたきっかけだったりします。

───競争ということで言えば、最近はヤフーやLINEもニュースアプリをリリースしましたが、今ヤフーやLINEにやられると嫌なことってありますか?

鈴木 Gunosyの買収ですね。業界のスピードが突然早まってしまうので。

木村 我々はKDDIから出資を受けているので買収は無いですけどね。ただ、ほとんどのスマホユーザーが使っているLINEアプリの中でニュース配信をしているのは結構つらいですね。配信されるニュースの種類が違うので、今のところはまだそこまで競合ではないのかな、とは思っていますが。

───NewsPicksやAntennaは少し毛色が違うのであまり嫌なことはないですかね?

梅田 (大手IT企業に)日経新聞が買収されたら嫌ですね。

───結局のところ、ヤフーやLINEに自分達と全く同じことをやられたら嫌だな。ということですね。

鈴木 これは個人的な意見なのですが、一つのメディアが独占的であるのはよくないと思っています。今の日本のメディアではヤフーが圧倒的に強いですが、これだけ強いアグリゲータがいる国は世界的にも珍しいんです。
 もちろん経営者としては自社メディアを拡大したいのは当たり前なのですが、社会的にはメディアが複数あるのが健全です。僕らニュースメディアはそういった政治的な影響力も意識しないといけないと考えています。

木村 Gunosyでもニュースメディアとしての責任のようなものについては考えています。自分は、なるべくメディアとして色を出さないようにすべきだと思っています。

キュレーションメディアは独自コンテンツを扱うべきか?

木村 編集者を雇って意見を発信したり、メディアとしての色を出すようなことはGunosyとしてはしたくないと思っているのですが、他のメディアの方はどう考えますか?

───NewsPicksは編集者を雇って意見を出していますよね?

梅田 そうですね。僕らはNewsPicksらしいコンテンツを出していきたいと思っています。というのも、ユーザーがコンテンツを求めている限り、最後にはコンテンツが圧倒的な1,2社がアグリゲーターとして生き残るのではないかと思っているからです。
 SPEEDAをリリースした時、後から色んなプレイヤーが真似してきて、結果的にどこも似たようなUIに収斂していくというのを経験しました。結局テクノロジーをベースとしたプラットフォームは最終的にはどこも似たようなUIになっていくので、長い目で見ればコンテンツが一番重要なんじゃないかと考えているのでNewsPicksでは独自のコンテンツを追究していきます。

NewsPicksでは、記事についたコメントを見ることもできる。

───そういえばGunosyとSmartNewsのUIは似てますよね。

木村 結局のところ、UIは一年もすれば似てきますよね。Gunosyの場合は、他のニュースアプリとGunosyを使い分けてるユーザがいたので、それなら同じUIにしてしまった方がいいだろうと思いました。

───Antennaでは独自コンテンツについてどう考えますか?

町野 我々は雑誌的なメディアなのでグルメやファッションの情報が多いのですが、どうしても都心の情報が多くなりがちです。なので、地方の情報も補完できるように地元のキュレーターさんに現地のグルメ情報や観光情報を書いてもらうヨンナナCh.という独自コンテンツを始めました。

全国のご当地情報を見ることができるヨンナナCh.

───一番都会的なイメージのあるAntennaが地元の情報を扱っている、というのは面白いですね。独自コンテンツについて、SmartNewsではどう考えていますか?

鈴木 僕らはあくまでアグリゲータであり、コンテンツを作るレイヤーではないと思っていたのですが、今のお話に説得力があったので独自コンテンツについてもちょっと考えてみようかなと思いました。

テレビCMが効果的なのは認知度か?DL数か?

───GunosyとAntennaはテレビCMを経験していますが、その効果についてお聞きしたいと思います。AntennaのCMの効果はどうでしたか?

町野 テレビCMの効果は高かったと思います。Antennaのメインターゲットは女性なので、テレビCMの目標をDL数ではなくブランドイメージの定着にしました。目標は都心での認知度40%だったのですが、50%の認知度を得られたので成果はあったと思っています。
 今後は、Antennaのことを知っているけどまだ使っていない、というユーザーを取り入れるプロモーションを頑張りたい。

───なるほど。一方でGunosyさんの目標は完全にCPIでしたよね?

木村 そうですね。もちろん認知度も見てはいますけど、僕らは完全にDL数を目標にしました。代理店の方には思いっきり引かれてしまったのですが、3ヵ月で17本のCMを発注しました。

ニッチか?スケールか?広告マネタイズの方向性

───最近はネイティブアドが流行っていますが、その将来性についてどう考えているのかをお聞きしたいと思います。例えば、Facebookのネイティブアドに対抗するのか、それとも中に入っていくのか。具体的なお話が聞きたいです。町野さん、お願いします。

町野 Facebookには入らないです。というのも、Antennaが採用している広告は独自性が高すぎるのでアドネットワークの枠に入稿できないんです。ただ、そのおかげで広告そのものがAntennaのコンテンツの一つになっていて、より広告をしっかり見てもらえるので今のままでいきたいと思っています。

───しかし、それだとスケーラビリティは得られないのではないですか?

町野 もちろんスケーラビリティ的にはFacebookなどのようなネイティブアドの方が大きいと思います。ただ、ネイティブアドには、バナーアドの延長線上のものとリッチアドの延長線上のものの2種類があると思っています。スケーラビリティが大きいのはFacebookなどのようなバナーの延長線上のもので、今までのバナー広告をコンテンツの中に埋め込んだようなものです。
 自分達はそうではなくて、リッチ広告のような、そのまま自分のコンテンツの一部であるかのようなネイティブアドを目指したいと思っています。

───Gunosyではどうお考えですか?

木村 ネイティブアドについてはあんまり考えていません。ネイティブアドのために記事稿を書いたりすることを考えると、スケールさせるのは難しいと思っています。
今後のことを考えると、PVがあるのに売上は少ない、というスマホのWebサイトが沢山あるのを解決すべきです。雑誌や新聞からユーザーが移ってきても、そこの広告費が来る場所と見せ方がまだないので発明すべきだと思います。

───SmartNewsは今までアドを出していませんでしたがW杯の間アドを出してましたよね? 今後どうするつもりですか?

鈴木 あれは広告を出すことでユーザーの体験や反応がどう変わるのか?というのを実験してみたくてやりました。今後広告をどうするかについては、色んな企業からかなりの量の話がきていて、現在は少し混乱しています。どこの会社と組むのがいいのか検討中ですね。

梅田 うちも同じく、どことどんな風に組むべきか検討中です。

事業領域をどう拡張していくのか

───先ほどまでのお話を聞いていると、Gunosy、SmartNewsはヤフー、Antennaは出版社、NewsPicksは日経のようなポジションを目指しているのかな、という気がするのですが、今後どのような幅で事業領域を拡張していくのかについてお聞かせください。

木村 結局ニュースだけでは人の時間は埋まらないので、それ以外の時間を埋めるコンテンツも提供していこうと思っています。
 今までのインターネットはどちらかというと、ユーザーが自分自身でGoogleなどを使ってコンテンツを探していましたが、最近のユーザーは徐々にプッシュされたコンテンツを見るように変わってきました。なので現在は、天気や占いなど、届けられて嬉しい情報がニュースの他にないかと探しています。当然のことながら情報をプッシュする側で、ユーザーに合わせて情報を厳選することが大事です。

鈴木 SmartNewsではニュースの他に天気やスポーツもやっていますが、今後も届ける情報は広げていきたいです。そうするとどんどんヤフーに近づいてきますが、それは最低限のレベルだと思っています。
 また、独裁国家などではまだまだニュースが国民に行き回っていない国もたくさんあります。そのような国で民主主義を構築するサポートができるメディアになりたいとも思っています。例えば、2億人の国民がいるインドネシアで最も大きなメディアは新聞ですが、その発行部数はわずか30万部です。東京オリンピックが開催される2020年までにはスマホ人口は40~50億になり、その内の20~30億人がスマホでニュースを読むようになると思っています。今まで新聞もテレビもなかった人が、スマホで初めてニュースを見る時代がもうすぐそこに来ていると思います。私たちはインターネットメディアの責任を追究しつづけたいです。
 良質なコンテンツをユーザーに届けるのがスマートニュースの使命なのですが、人によって何が良質かというのは異なります。スマートニュースとしての意見ではなく個人の意見としては、人間の価値観を変えるようなコンテンツが良質なものだと思っているので、そうしたコンテンツをユーザーに届けたいと思っています。人間はどうしてもわかりやすいものを受容してしまいがちで、メディアもそれに乗っかって分かりやすいものを扱ってしまいがちですが、そこに切り込めるようなメディアを作っていきたいと思っています。

町野 Antennaは、ニッチだけどリッチなメディアを目指しています。要するに、オフのときに見たくなるような生活を楽しくするメディアです。なので、衝動買いをしたくなるようなものを集めてECの方向にも事業を拡張していきたいです。

梅田 経済の領域の外には出ないことは決めています。自分達がまだ手がけていない情報接点は、テレビも含めた動画と、紙があると思っています。衰退している、と言われていて社員からも猛反対にあっている紙のメディアですが、自分としては紙も含めて全てのビジネスパーソンの情報接点を押さえたいと思っています。

ツールという印象が強いニュースアプリですが、今後の方向性にはそれぞれの個性が表れていました。ウェブメディアのマネタイズプラットフォームという印象が強いGunosyと、読者に対する政治的な責任感を強調するSmartNewsでは、現在のポジションが同じでも、見据えているものが異なるように感じます。また、ビジネスパーソンを狙うNewsPicksと、消費に対して意欲的な女性を狙うAntennaでは、ターゲット読者こそ違うものの、独自コンテンツなどの「メディアの色」を出していく方向性は似ています。「スマホニュースメディアの勝者は誰か?」というタイトルのセッションでしたが、それぞれのプレイヤーがそれぞれの領域で、既存プレイヤーから読者・視聴者に対する影響力を奪っていく未来を想像しました。

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