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露出狂をSNSで晒すと、露出狂より罪が重い?弁護士に聞くソーシャル時代の肖像権

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by [2014年7月17日]


先日、電車内で露出狂に遭遇しました。いい機会なので露出狂について検索したところ、露出狂に遭った方が露出狂を盗撮し、Twitterで晒した例について知りました。
露出狂の肖像権やプライバシー権は、現行法でどういった扱いを受けているのでしょうか? IT・知的財産権・肖像権などの問題に詳しい上村哲史弁護士(森・濱田松本法律事務所)に、SNSと肖像権についてお話を伺ってきました。

露出より「晒し」の方が性秩序を破壊する

───公然わいせつ罪とわいせつ物陳列罪では、わいせつ物陳列罪の方が量刑が重いようです。露出狂の被害者が露出狂を無断撮影して無修正でSNSにアップロードしたものが出回っていますが、この場合は露出狂よりもアップロードした人の方が罪が重いことになるのでしょうか?
公然わいせつ罪やわいせつ物陳列罪の目的は、我が国の性秩序ないし健全な性風俗を保護することにあります。露出狂がその場に居る人に見せつけることよりも、撮影してSNSにアップロードし不特定多数に拡散することの方が伝播する範囲が広いため、性秩序ないし健全な性風俗の侵害の程度が大きく、より重い刑になっています。

他人の肖像の無断撮影・利用は原則侵害

───露出狂に限らず、万引きなどの犯罪の現場を無断撮影しSNSにアップロードした場合、犯罪者の肖像権侵害となる可能性があるのでしょうか?
他人の肖像を無断で撮影・利用することは、原則としてその者の肖像権を侵害することになります。ただし、顔が写っていない、あるいはぼかしが入っているなど、個人の肖像が判別できない場合には肖像権侵害になりません。万引きGメンなどのテレビ番組でも、万引き犯の顔にぼかしが入れられていますよね。
また、個人の肖像が判別できる場合であっても、肖像権侵害とならない場合もあります。一般には、被撮影者の社会的地位、撮影・利用の目的、場所、必要性、態様などを考慮し、一般人を基準として、許容できる範囲(受忍限度)内のものであれば、肖像権侵害にはならないと考えられています。現に犯罪が行われているのであれば、それを証拠として残しておく必要性があり、また、撮影しただけでは肖像がその場にいない人にまで拡散しませんので、よほどおかしな態様・方法での撮影でなければ、撮影すること自体は肖像権侵害にならないと思います。しかし、それをアップロードして拡散させることには疑問があります。ケース・バイ・ケースですが、原則どおり肖像権侵害となる可能性があります。

名誉毀損は公共性・公益性がカギ

───SNSにアップロードした場合、肖像権侵害のほかに、何らかの罪に問われたりする可能性があるでしょうか?
犯罪を犯した事実を公開されれば、その人物の社会的評価を低下させますので、名誉毀損となる可能性もあると思います。もっとも、その行為が、公共の利害に関する事実に係るもので(公共性)、専ら公益を図る目的でなされ(公益性)、それが真実である場合(真実性)には違法性が阻却され、名誉棄損にはなりません。そのため、その人物による犯罪を公開することが公共の利益になるということであれば、違法性は阻却されると思います。
例えば、国会議員やテレビ番組のコメンテーターといった、影響力のある著名人による万引きであれば、それを広く国民に対して知らしめることには、公共性・公益性があるといえるでしょう。また、肖像権との関係でも、そういう著名人が万引きしている姿であれば、肖像権侵害となる可能性は低いと思います。他方、一般の私人の場合には、公共性・公益性は認められにくいです。

───私人の場合は公共性・公益性が認められにくいとのことですが、同じ場所に繰り返し出没する常習的な犯罪者を盗撮し、SNS上で注意喚起を行う場合もそうなるのでしょうか?
純粋に犯罪の注意喚起の目的であれば、公共性・公益性が認められる可能性はあると思います。しかし、個人への人格攻撃に終始していたり、おもしろ画像をアップしてアフィリエイト収入を稼ごうといった目的であれば、公共性や公益性は認められにくいと思います。露出狂が同じ場所に繰り返し出没するのであれば、警察に知らせるのが筋ではないでしょうか。

───著名人の家族の犯罪が大きく報道されることがありますが、その公共性・公益性は認められるのでしょうか。
著名なのは当人であって、その家族は一私人ですから、公共性・公益性が認められにくくなります。ただ、公共性・公益性が認められるかはケース・バイ・ケースであり、その人の社会的な立場や犯罪の内容等によって公共性・公益性が認められる場合もあります。

───犯罪者を盗撮し、警察に証拠として持ち込むことは有効なのでしょうか?手段が盗撮であることについて罪に問われませんか?
犯人逮捕に繋げるための手段として有効だと思います。先程述べたとおり、現に犯罪が行われており、証拠を残しておく目的で撮影しているのであれば、撮影すること自体は肖像権侵害にならないと思います。また、スカート内を盗撮するなど迷惑防止条例に違反するような盗撮は別ですが、盗撮自体が刑事上の罪に問われることはありません。

───事故や事件の現場を無断で撮影しSNSにアップロードしている例が見られますが、写っている人の肖像権が侵害されていることにならないのでしょうか。
先程述べたとおり、写っている人の肖像が判別できる場合には、肖像権の侵害になる可能性があります。顔が写っていない、あるいはぼかしが入っているなどで、個人の肖像が判別できない場合は肖像権侵害になりません。

有名人だけが持つパブリシティ権

───芸能人やスポーツ選手など著名人のプライベートを無断撮影してSNSにアップロードする方がいますが、違法なのでしょうか。
有名人のプライベートを無断で撮影しSNSなどにアップロードする行為は、一般の私人の場合と同様に、肖像権侵害になる可能性があります。芸能人になる前の写真を無断で公開することも同様です。
また、有名人には「有名人が使っている商品だから自分も使ってみよう」といったような、顧客を集める力(顧客吸引力)があります。有名人には、この顧客吸引力を財産として排他的に支配する権利があります。これをパブリシティ権といいます。有名人の名前や肖像を自社製品やサービスの宣伝広告に無断で使用したような場合には、パブリシティ権の侵害となります。

───肖像権やパブリシティ権の侵害は刑事罰に問われるのでしょうか。
肖像権、パブリシティ権、どちらの侵害でも刑事罰はありませんが、損害賠償など民事上の責任は問われます。

───ありがとうございました。

正当な理由なく他人を盗撮しアップロードすることは肖像権の侵害となり、民事で訴えられる可能性があります。ただ、犯人を逮捕する手段として盗撮したのであれば違法とはならなそうです。もし露出狂や万引きの現行犯を撮る機会に恵まれたら、SNSにアップロードして拡散するのではなく、警察に持ち込むことが最も公共の利益に繋がりそうです。

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