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北朝鮮兵士によるピンポン奪取で浮かび上がる「軍の強制力」

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by [2014年7月10日]

画像はイメージです

北朝鮮兵士による「命懸けすぎる」ピンポンダッシュが話題になっている。

時事通信によると、韓国国防省は8日、南北軍事境界線を挟んで広がる非武装地帯で6月19日に、北朝鮮兵士数人が境界線を越えて、韓国軍が設置した北朝鮮からの亡命者用のインターホンを破壊したことを明らかにした。インターホンが鳴ったため、韓国軍兵士が急行したところ、北朝鮮兵士は既に逃げ去っていたという。

北朝鮮側の「度胸試し」か、それとも

さらにソウル聯合ニュースではこの事件に関連付けて、北朝鮮軍が今年に入って訓練中に軍事境界線(MDL)を越え、5回にわたり韓国側に侵入していたことを韓国軍の消息筋が明らかにしたと報じた。同消息筋によると、北朝鮮軍は金正恩第1書記の指示により、非武装地帯での訓練を強化しているという。
今回の事件について、軍関係者は兵士の度胸を試す北朝鮮側の訓練の一環とみているというが、一方でYOMIURI ONLINEは、今後は非武装地帯の草が人の背丈まで伸びて監視が難しくなる夏場に侵入訓練を活発化させると報じていることもあり、単なる「度胸試し」で済まされる話ではなさそうだ。

ピンポン奪取の他にも

今回の事件の他に、北朝鮮軍は過去に「ベル」までも”奪取”していた。
ソウル聯合ニュースによると、6月19日には、北朝鮮軍兵士3人が、韓国側が設置した「帰順(亡命)誘導ベル」をはずして持ち去る事件も発生したという。当時、帰順誘導ベル周辺に設置された監視カメラの映像には、北朝鮮軍の兵士3人がベルをはずし北に逃走する様子が映っていたと報じている。

ここで注目したいのが、今回と過去の事件で破壊・取り外されたインターホンとベルは共に、韓国軍が設置した北朝鮮兵士が亡命するために設置されたものということだ。特に「帰順(亡命)誘導ベル」は、2012年10月に起きた北朝鮮兵士による亡命事件を受けて設置されたものだった。

2012年10月6日に起きた
北朝鮮軍兵士による亡命事件とは

当時のことを報じたAFPBB Newsによると、2012年10月6日の正午頃、特殊部隊員の北朝鮮軍兵士1人が南北軍事境界線を越えて韓国へ亡命をした。その際兵士の話によると、亡命した兵士は北朝鮮で仲間の兵士2人を射殺。射殺したのは兵士が所属する小隊の指揮官と中隊長であったという。
さらに、この亡命した兵士は亡命した理由を「北朝鮮社会には希望がない」と話し、北朝鮮の軍統制の強化が浮き彫りになった。アジアプレス・ネットワークによると、北朝鮮では、軍事境界線に近い前方の部隊で勤務する兵士は、出身成分(階層、身分を指すと言われている)が良く、思想が強固であるのが一般的とされている。これは、韓国への憧れを持つことや逃亡を防ぐためで、食糧事情も他の部隊に比べて良好な方だとされていたが、この事件によって北朝鮮の厳しい状況が露呈する形となった。

北朝鮮軍の強制力

韓国側は、この事件を受けて北朝鮮兵士が安全に亡命出来るようにこの「帰順(亡命)誘導ベル」を設置したが、奪取された。亡命する兵士がいる一方で、亡命への道を自らの手で潰す兵士たち。こうした背景を見てみると、兵士による「度胸試し」という側面よりも、亡命という考えを何とかして打ち砕こうとする軍による強制力の強大さが浮かび上がってくる。

今回の事件だけを見てみると、「ピンポンダッシュ」に引っ張られて楽観的に捉えてしまいがちだ。しかし、少し掘り下げてみると兵士へ亡命という選択肢を与えず、思考統制を強いる北朝鮮軍の徹底ぶりが見えてきた。今後も北朝鮮の一挙手一投足に注目し、体制の変化や思惑などに気を配る必要があるだろう。

< 参考リンク>
韓国軍のインターホン破壊=北朝鮮兵士、度胸試しか (時事ドットコム)
北朝鮮軍 軍事境界線越え韓国側に今年5回侵入 (ソウル聯合ニュース)
草伸びて監視難しく…北、非武装地帯に侵入作戦(YOMIURI ONLINE)
北朝鮮兵1人が韓国に亡命、「兵士2人を射殺した」 (AFPBB News)

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