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ITは飲食店のサービスを向上させたか?

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by [2014年7月18日]

 現在、多くの飲食店はITによってサービスの一部をまかなっている。特にファストフード、回転寿司、居酒屋などの飲食チェーン店は、ITの活用なくしてはサービスが成り立たないほどになっている。POSシステムによる売り上げの管理や端末のパネルをタッチする注文方法などが例として挙げられ、これらはチェーン店の特徴である合理的、効率的、画一的なサービスを提供することに一役買っている。
そして当然のことではあるが、いくらサービスシステムが自律的に運用されるよう構築されていたとしても、人間がサービス提供の最終的な責任者である。
以上を踏まえて、飲食店は果たしてどのようにITを活用すればいいのだろうか。まず回転寿司店を、ITを活用した合理的、効率的なシステムを利用している一般的な飲食店の代表として挙げる。そして次に、東京と近畿地方に店舗を構えている飲食チェーン店を運営する株式会社がんこフードサービスのIT活用事例を挙げ、両者のどちらが有効であるかを考えたい。

回転寿司店のIT活用

 回転寿司は他の飲食店に比べ、ITをもっとも活用している飲食店である。これは回転寿司自体が合理化、効率化を図ることを目的として生まれた店舗の経営形態だからである。つまり、料理があって、その後にサービスシステムが構築されるのではなく、合理的、効率的なシステムがあり、そしてそれに適していたのが寿司という料理ということで、通常の飲食店の経営とは順序が逆になっているのだ。人件費などのサービス面での費用を削減するために考案された、多数の客に効率的に料理を提供できるチェーンコンベアは回転寿司にしかないシステムだが、これは寿司が常温で食べるものであるという料理それ自体の性質が理由として挙げられ、熱々のものを提供することが当たり前の飲食店では到底まねすることはできないものとなっている。このチェーンコンベアの目的である「料理の提供」は、ホールの人員を削減することに成功し、人件費の節約に大いに役立っている。このほかにも、回転寿司店だけでなく居酒屋チェーンでもよく見かけるが、画面つきの電子端末を操作することで注文するなどといったように、こうしたところでもITが使われている。また、これら直接的に人間の労働を肩代わりするチェーンコンベア、端末操作による注文の一方で、間接的にサービスを支援するものとしてITの活用も最近は進んでいる。例えば、皿の下にICタグをつけることで、衛星管理(一定時間を越えて回っている寿司は自動的に廃棄される)、動向調査(どのネタが売れているのか)をすることが挙げられる。

飲食店における新しいIT活用

東京・銀座の和食店、がんこ銀座四丁目店。街の喧騒から隔離されたくつろぎ空間は、商談の場としても人気が高い。ここが、過去数回にわたり科学的・工学的アプローチによる「おもてなし研究のフィールド」になった。顧客が望む十分な接客ができているのか。それをつかむため“仲居さん”にセンサーを付け、行動を分析。おもてなしのレベルを高め、夜間の注文件数を4割伸ばすことに成功した。

 日本経済新聞の取材によれば、近畿地方と東京都に主に店舗を構える外食チェーン、がんこフードサービスはサービス工学の観点から、サービスの質の向上のため、接客スタッフが普段、どのように動いているのかという実態を調査したという。調査方法はスタッフにセンサーを取り付け、就業中の店員の行動を3Dにすることで可視化し、POSデータと連動させる形で、どのような行動をスタッフが取っていたかを把握するというものであった。結果としては、本来、接客をするはずのスタッフが人手不足のために配膳係をすることになってしまい、接客がおろそかになっていたというものであった。そのため、配膳係を増員するという対策をとり、以前に比べて四割増の注文を受けることができたという成果を得られたとのことである。またそれ以降も、取得したデータをもとに適切なスタッフの配置計画を実施したところ、ベテランの仕事の負担が減り、また新人も自らの仕事に対する責任が生まれたという。

両者のIT依存度の違い

 先の回転寿司店に比べて、がんこフードサービスのITの活用の仕方は目的とするものが違う。回転寿司店は人件費の節約という面での合理化、効率化を目的としている。原理的に言ってしまえば、この削減に対する積極的姿勢の行き着く先は一人で店舗を回すワン・オペレーションである。もちろん生ものを扱っているために、現実的にはその場その場で調理する必要があるため、一人になるとは考えにくいが、人手を削減する方向に動くのは間違いないだろう。そして、少数の人員での運営は、取ることのできるオプションの幅が狭くなるため、危機的状況、例えば停電のように、電気の供給が何らかの理由で止まってしまった場合、営業することが難しくなるというデメリットも抱えている。店によっては、何時から何時は店員が接客し、忙しくなる時間帯にはチェーンコンベアを活用するというところもあるが、もとからチェーンコンベアの稼動のみを前提とした大型店舗にとっては、そうした非常事態を想定して何らかの対策を練らなければならないだろう。このように回転寿司店におけるITの活用は、あまりにITに依存しすぎており、またその依存状態によって引き起こされる問題に対処するところまで手が及んでいない。それに比べて、がんこフードサービスは従業員の動きを合理化、効率化しようとしている。言い換えるなら、従業員教育の一環として利用しているのだ。ここではあくまでもITはサービスに補助的、間接的な役割を果たしており、回転寿司店とは違って依存度は低い。そのためシステムの不備によって致命的な影響を受けることはなく、店員の質の向上だけを高めることができるということで、リスクを負うことなく売り上げの増加が期待できるのである。

 ちなみに回転寿司店でも、がんこフードサービスのように、間接的にサービスを支援するものとしてのITの活用も進んではいる。例えば、大手回転寿司チェーン、スシローは世界初の「すし総合管理システム」なるものを導入しているが、これは先に述べたとおり、ICタグを付けた皿で、衛星管理、動向調査をすることが目的といえるだろう。

▼参考リンク
日本経済新聞『仲居さんにセンサー装着 がんこフードの「科学接客」 』
がんこフードサービス株式会社
株式会社あきんどスシロー
予約システムを活用したO2O集客支援|株式会社エビソル

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