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Bluetooth Low Energyで実現するOpen Beaconの可能性

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by [2014年6月23日]

6月11日から13日まで幕張メッセでアプリケーション開発企業およびユーザー企業を対象とした展示会、「APPS JAPAN(アプリジャパン2014)」が開催されました。

この展示会では様々なセミナーが開催されましたが、その一つに、日本Androidの会のメンバー3名が3部構成で講演を行う、日本Androidの会セッションがありました。

今回はその中から第三部「OBFTの活動説明とBLEの可能性について」と題して行われた講演をご紹介したいと思います。

長谷川 力也 氏

講演者:長谷川 力也 氏

日本Androidの会 理事・コミュニティ運営委員
(株)インフォシティ 企画営業部 プロジェクトマネージャー
会社でもiBeaconやBLEの研究開発を進めておられるそうです。

Beaconって何だ?

長谷川氏はまずBeaconとは何なのか、という話から解説を始めました。

ここでいうBeaconはAppleがiOS 7よりサポートを開始したiBeacon機能を指します。

iBeaconはBLE、つまりBluetooth 4.0を基礎として拡張の上で新規に制定されたBluetooth Low Energyを利用しています。

このBLEはBluetoothが基本であるため2.4MHz帯での通信を行う規格で、「Low Energy」、つまり低消費電力動作に特化した実装となっています。そして、iBeaconはこの規格で定められているAdvertiseデータと呼ばれるフォーマットのデータを送信するためだけの簡素なBLEモジュールと呼ばれるチップを搭載した装置を用意し、常時データ発信状態とすることで、その装置からのAdvertiseデータ受信により端末側が店からのクーポン受信やその装置への接近状況などを検出するようになっています。

iBeaconが扱うAdvertiseデータは128ビット長のUUID(Universally Unique IDentifier:汎用固有識別子 ※一意で他に同じ値の存在しない、固有ID。バージョンにもよりますが、端末・デバイス固有のIDを生成します)と、それぞれ16ビット長のMajor・Minorといった識別IDの集合体です。それらはソフトウェアにより、例えばUUIDがチェーン店の系列、Majorが店舗、Minorが店舗内のiBeacon送信デバイス、といった形で割り当てられて、そのデバイスがどこのチェーンのどの店にあるどのデバイスなのか、という情報を受信する端末に伝える仕組みとなっています。

ここで重要なのは、このiBeacon送信デバイスはあくまでAdvertiseデータを一方的に送信し続けるだけで、デバイス側が受信端末の情報を受信・収集するわけではないということです。

これは個人情報保護の観点では結構重要な要素なのですが、このような仕様であるためこの機能は「使えない」のではないか、という見方もありました。

iBeaconの問題点

さらに、2013年6月のWWDCでiOS 7と同時に、しかしひっそりと発表された時点でiBeaconには様々な制約や問題点がありました。

まず、対応アプリがフォアグラウンドで動作している状態でないと、この機能が利用できませんでした。iOS 7はマルチタスク機能、つまり同時に複数のアプリが動作するための機能が従来よりも大幅強化されたことが特徴だったにも関わらず、iBeacon対応アプリを起動した状態で、他のアプリを利用しているとiBeacon送信デバイスからのデータ受信ができなかったのです。

また、基礎となるBLEへの各端末の対応状況も問題でした。iPhoneではiPhone 4s以降でBLEがサポートされたため、iOS 7で対応機種に含まれるiPhone 4(※当然ながら現在でも多数が稼働中です)が未対応で、さらにAndroid搭載スマートフォンではAndroid 4.3になるまでOSそのものでBLEがサポートされていませんでした(※しかもAndroid 4.3搭載機種でも端末によって動作しなかったようです)。

長谷川氏によれば、この時点でiBeaconを利用可能な端末がiOS側では約70パーセント~80パーセント、Android側ではわずか4パーセント程度とのことで、この機能を盛り上げていくことは難しい状況でした。

iBeaconの進化

このあたりは開発元であるApple自身も先刻承知のことで、今年6月3日~6日に開催されたWWDCでのiOS 8の発表に合わせて、iBeaconの大幅機能強化が発表されました。

主な新機能はLocation Authorization、Visit Monitoring、それにIndoor Positioningの3つで、それぞれ位置情報取得の可否設定、店舗などでの滞在状態の検出、それに位置測位のための機能となります。

Location Authorizationにより、状況に応じて細かく位置情報取得の可否を提供側で設定できるようになりましたが、言い換えればアプリ側でユーザーがきちんと確認してその可否設定を行わねばなりません。

Visit Monitoringは長谷川氏曰くリアルタイムにその領域を出入りしたかどうかではなく、滞在状態を自動で判断した模様だとのことです。

Indoor Positioningは、長谷川氏によるとiOS 7ではiBeaconを用いた位置測位は期待してくれるな、とApple関係者から言われていたそうなのですが、今回のiOS 8からはそれが可能となったわけです。

iOS 8からは近接Beacon送信モジュールに対応するアプリのインストールを促し、またインストール済みの場合はその起動を促す仕組みが導入された。

また、今回の大きな変更点として、これまでiBeacon対応アプリの開発者にとって悩みの種であった、アプリをインストールしていないとiBeaconが使えないという問題にも対策がなされ、iBeacon送信モジュールに接近した時に、そのモジュールに対応するアプリがインストールされている場合にはロックスクリーンにそのアプリのアイコンが、そうで無い場合にはそのアプリのインストールを促すためにApp Storeへのショートカットが表示されるという機能がiOS 8で追加されました。

これまで、送信モジュールが近くにあってもそれに対応するアプリをどうやって案内し、ユーザーにインストールしてもらうかが最大の難問となっていたとのことなのですが、iOS 8ではそれに対する一つの解決策が示された(※長谷川氏は苦笑交じりに「ぜひAndroidの方でもこうした動きができたら良いなと思います」とAndroid側ではこの問題について未だ解決策が示されていないことを遠回しに指摘しました)わけです。

国内のBeaconモジュール

続いて長谷川氏は現在国内で流通しているiBeacon送信モジュールの現状について説明しました。

ここでは現状では種類が少ない由で、BLEAD(芳和システムデザイン)、先々週発表されたばかりのMyBeacon(アプリックス)、それにBluetooth Beacon(Braveridge)の3つが簡単に紹介されました。

OBFTとは何か

ここでOBFTの紹介がありました。

OBFTとはOpen Beacon Field Trialの略です。

Beaconの設置やそれに対応したアプリを開発する場合、その試験を自社の会議室や廊下のような狭い場所で行わねばならなかったり、また多種多数のモジュールのある中で実験することはなかなか困難です。

そこでOBFTはNPOとして、広い場所で多数のBeacon送信モジュール設置や、あるいは特定のIDの解放といったオープンな実験の場の提供と、それによるBeacon技術の開発と普及を目指して活動を行っているわけです。

OBFTとしての実験の場の提供は既に行われており、1回目は2014年3月21日に東京・秋葉原UDXで開催された、日本Androidの会のABC2014Springというイベントの会場を利用し、その全域に通し番号を振ってUUID・Major ID・Minor IDを全て公開したBeacon送信モジュールを50個設置したとのことです。

この第一回OBFTでは解放された個々のモジュールのIDを利用してアプリを開発し、スタンプラリーのようなイベントが行われたと長谷川氏は語りました。また、このイベントでは企業も参加し、例えばKDDIは位置測位の実証実験を実施し、その結果を踏まえた研究論文も発表された由です。

六角橋商店街での長期実証実験

これに続いて、この6月には横浜市神奈川区の東急電鉄東横線白楽駅周辺にある六角橋商店街(※神奈川大学横浜キャンパスの直近にあたります)で実験用のBeacon送信モジュールを設置してきた(※現段階ではID解放のための準備中)という報告がありました。

ちなみに、こうした商店街のようなオープンなフィールドに常設の形でBeacon送信モジュールを設置して長期実証実験を行うのは、長谷川氏曰く世界初の試みとのことで、ここでモジュールに設置期限を設けていないことも明かされました。

モジュールの電池切れについてはOBFT側で管理対応するとのことで、IDが公開されればマッチングアプリの開発など様々な実験が可能となるわけです。

もっとも、商店街そのものは全店24時間営業というわけではないため、常識の範囲内で節度を持って利用して欲しい、と長谷川氏は付け加えました。

なお、この六角橋商店街での実証実験では、OBFTとして様々な企画を準備しているそうです。

具体的には、7月上旬には特定のテーマについてグループ単位でアイデアを出し合い、それをまとめていく形式のイベントであるアイデアソンを開催し、8月上旬にはソフトウェア開発者たちが集まって一定期間集中的にソフトやサービスの開発について共同作業を行うイベントであるハッカソンを開催することが決定しており、さらに11月には商店街でのイベントに合わせて各種実験アプリのリリースやアプリコンテストの開催を計画中であることも発表されました。

長谷川氏曰く、このアプリコンテストについては自由にアプリを開発して欲しい、その実験結果が次に他の商店街に提案するときに役立つとのことで、OBFTのイベントそのものが未だ発展途上というか手探りで新しいことを試している状況であることが見て取れました。

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