Motorola Moto 360

Android Wear登場! Googleはウェアラブルデバイス用OSの覇権を握れるか?

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by [2014年7月01日]

Motorola Moto 360

2014年6月25日に開催された「Google I/O 2014」の基調講演は、次期バージョンのAndroidである「L」をはじめ、多くの重要な新技術・新機能・新規格の発表があったという点で非常に重要な講演だったのですが、その中でAndroid Wearが正式発表され。これに対応する3つの製品が紹介されました。

今回は、このAndroid Wearとその周辺について考えてみたいと思います。

Android Wearって何だ?

そもそもAndroid Wearって一体何なんだ、という方も少なくないかと思います。

Android+Wearということで、その名称からウェアラブル機器向けにカスタマイズされたAndroidという予想が立てられるわけですが、はたして実際にもその通りで、腕時計形を中心とするウェアラブルデバイス向けに特化したAndroidとなっています。

ウェアラブルデバイス、中でも特に腕時計形デバイスの場合は,その端末の筐体サイズなどの物理的な制約から、スマートフォンなどと比較して搭載可能なハードウェアの性能が低くなることが避けられません。

そのため、これまでの腕時計形ウェアラブル機器ではAndroidを搭載する場合、各社が自社製端末の機能や性能に合わせてAndroidを大幅カスタマイズして不要な機能をばっさり省略したものが搭載されてきました。

しかし、そうなると同じAndroidがベースになっているとはいえ、それぞれの端末で実装されている機能に差異が生じることになります。

つまり、例えばA社のAndroidベースカスタマイズOS搭載スマートウォッチのために開発されたアプリは、B社の同じくAndroidベースカスタマイズOS搭載スマートウォッチで正しく動作することが保証できなくなります。

実際、それぞれの端末に標準搭載された著名アプリは(画面構成の特殊さなどもあって)メーカー各社によってカスタマイズされており、専用品と化しています。

そのような状況では、スマートウォッチ向けアプリの開発促進をいくら叫んだとしても開発者たちをその気にさせるのはなかなか難しく、そのため、Androidを基本とするOSを搭載する本格的なスマートウォッチとそれに対応するアプリを普及されるには、Google自身が機能を整理してスマートウォッチなどのウェアラブルデバイスに特化した機能を付与した、標準的なウェアラブルデバイス専用のAndroidを用意する必要がありました。

今回正式発表されたAndroid Wearは正にそのウェアラブルデバイス向け最適化版Androidなのです。

具体的にはどんなOSなのか

同時発表の自動車の車載カーナビ用「Android Auto」の場合はAndroid本体には特に手を入れず、スマートフォンと連係動作するための機能拡張を付与するような形となっているのと比較すると、Android Wearの方が改変が大がかりなのは明らかです。

中でも、サポートされるAPI(Application Programming Interface:ソフトウェア同士でデータなどをやりとりする際の通信手順)がAndroid 4.4W(API Level 20)とGoogle Play Services 5.0で提供される新しいAPIとなり、APIが整理されていることは注目されます。

OSそのものについては、メモリ占有量の問題などからメモリ512MBでの快適動作を謳うなど大幅シェイプアップされたAndroid 4.4を基本とするのは当然の話で、またこのバージョン以降ではこれまでサポートされていなかった(ウェアラブル機器に好適な)各種センサーも対応していることから、合理的な選択が行われたとみてよいでしょう。

APIの整理は既存アプリとの互換性を維持することを考慮すると、中々行いにくい(※例えばMicrosoft Windowsでは、x86(32ビット)版では互換性維持のため未だにWindows 1.0時代のアプリが動作するのに必要なAPIが搭載されていて、実際にも当時のアプリが動作します)ものなのですが、そもそも既存アプリを持たない新規開拓市場であるウェアラブル機器向けであれば、既存アプリが存在しないがゆえに古いAPIの動作互換性を保つどころか、そもそもそうした古いAPIをわざわざ搭載し続ける必要がありません。また、そうしたAPIの廃止は関連ライブラリやシステムファイルの整理・削減など、ストレージ容量もメインメモリ容量もスマートフォンと比較して格段に厳しいウェアラブル機器で運用する上で無視できない副次的効果も期待できます。

なお、Android Wearをはじめとする今回発表された各OSではGoogleが新たに開発したデザイン言語である「Material Design」が採用され、対応アプリではこのデザイン言語に準拠することが推奨されています。

また、これと関連してホーム画面にデフォルトで「Material Design」に従う円形と四角のもの(文字盤面形状により選択)が用意され、Androidスマートフォンのように端末メーカー各社が自由にホーム画面やユーザーインターフェイスを変更できなくなりました。

このあたりは、スマートフォンで各社が自由にホーム画面を改変した結果、それぞれのメーカーごと、端末の世代ごとに操作の「作法」がバラバラになってしまったりしたことへの反省があったと考えられ、結果として各世代ごとに定められたデザイン言語に従うことを求めるApple社製品(※ユーザーインターフェイスのデザインやボタンの挙動など、初代Macintoshの頃からガイドラインでかなり厳格に定められています)に近い考え方が取り入れられることになりました。

これにより、Android Wear搭載のウェアラブルデバイスでは、少なくとも最低限の「ルック&フィール」の互換性は確保されることになるでしょう。

OSと同時発表された3つのデバイス

今回、OSとしてのAndroid Wearの発表に合わせて、これを搭載する腕時計形ウェアラブルデバイスが以下のように3社から1機種ずつ発表されました。

・Motorola 「Moto 360」
・LG電子 「G Watch」
・サムスン 「Gear Live」

LG G Watch

SAMSUNG Gear Live

この内、円形のディスプレイを備える「Moto 360」はアメリカで今夏発売予定で、記事執筆の時点では詳細なスペック等が確定していないのですが、「G Watch」と「Gear Live」の2機種については7月7日に発売され、いずれも日本でも発売されることと、その価格が決定しています。

デバイスのハードウェアスペックは?

さて、気になるこれら発売決定2機種のスペックですが、1.2GHz駆動のCPU、メモリ512MB、ストレージ容量4GB、Bluetooth 4.0(BLE対応)搭載、それにIP67相当の防水防塵対応という点については(恐らくOS側の要求するスペックや必要となる通信機能の問題などもあって)共通となっていますが、それ以外は2機種で意外と異なっています。

まずディスプレイはG Watchが対角線長1.65インチで画素数280 x 280ピクセルのIPS液晶、Gear Liveが対角線長1.63インチで画素数320 x 320ピクセルのSuperAMOLED(有機EL)となっており、両社が自社で生産しているディスプレイを素直に採用しています。

つまり、画面サイズはG Watchの方がやや大きく画素数はGear Liveの方が多い、ということでGear Liveの方が密度感のある画面になります。あるいは、視力に自信の無い方はG Watchの方が良いかも知れません。

次にセンサー。ウェアラブル機器にとっては生命線とも言えるデバイスですが、G Watchが加速度計・デジタルコンパス・ジャイロスコープの3つを搭載しているのに対し、Gear Liveはこれらに加えて心拍数モニターを搭載していて、これを活用したフィットネスアプリとの連携機能を備えています。

このあたりは、Gear 2やGear Fitなどで酷評されつつも腕時計形ウェアラブルデバイス開発を続けてきたサムスンに一日の長がある、といったところでしょうか。

3つ目はバッテリーと稼動時間。スマートフォンでもそうでしたが、バッテリー容量とそれがもたらす連続稼働時間は、この種の機器の実用性を決定づけると言っても過言では無い要素です。そのため、筆者は各社から腕時計形ウェアラブルデバイスが発表される度に、真っ先にこの点を確認してきたのですが、今回のG Watchは容量400mAhのバッテリーを内蔵して「終日使用可能」とされ、Gear Liveは300mAhのバッテリーを内蔵して「一日中」使用可能、といずれも容量は明記されているものの稼動時間については実に曖昧で当てにならない表現がなされています。

仮に、これら2機種の稼動時間に関するGoogle Playの商品紹介ページに記された表現が正しいと仮定しても、さらに節電モードの活用である程度実用可能時間は稼げるにしても、大体1日使えばバッテリーが空になり、毎日充電器につないだりクレードルに載せたりして一定時間をかけて充電する必要がある、というのは流石に腕時計の代替としては厳しそうです。

また出荷時点でこの程度の使用時間しか確保できないなら、バッテリーが経時劣化した寿命末期ならばかなり連続稼動時間が短くなるはずで、そのあたりを考慮すると一日中腕時計を着けて、しかも充電のチャンスを得にくい職種の人などにはかなり使いづらいデバイスとなる(※さすがに、腕に巻いている状態で、充電ケーブルをつないで充電する、というのはあまり良い考えに思えません)のではないでしょうか。

搭載されているプロセッサのスペックなどを考慮すると、むしろこれだけの電池容量でよく1日動くな、とも思うのですが、実用を考えるとこれらは未だ稼動時間の面で「武人の蛮用に耐える」レベルには達していないとしてよろしいでしょう。

ウェアラブルデバイス用OSの新たな有力選択肢だが問題は多い

初物のOS、それもアプリ開発のためのSDK(ソフトウェア開発キット)がまだ提供されていなかったような状況のそれを搭載する端末を酷評するのは、なにやら大樹の芽を見て大きくない、とあざ笑うようで忸怩たるものがあるのですが、現状のAndroid Wearとそれを搭載する端末を実用レベルのものと考えるのはさすがに無理があるかと思います。

スマートフォンでもそうでしたが、筆者の知る限り公称稼動時間が1日レベルの機種が正直に丸1日使えたことはほぼ皆無です。

そして、徹夜仕事のあるような人間にとって、1回のフル充電で1日しか持たない機器というのは、往々にして一番その機能が欲しいときにバッテリーが切れる悪夢の事態となりがちです。他の各種ウェアラブル機器もそうでしたが、筆者の経験から言って、フル充電で丸2日か3日程度使えるレベルにならないことには、この種の機器はとても安心して丸一日使えません。Android Wear搭載のウェアラブルデバイスが実用的な機器として成功を収めるには、まずこの条件がクリアされる必要があるでしょう。もちろん、1週間ないしはそれ以上連続使用できるのなら、それに越したことはありません。

また、これはAndroid搭載スマートフォン側のハードウェア的な問題になってしまうのですが、これらAndroid Wear搭載ウェアラブルデバイスでは可能な限り低消費電力で母艦となるスマートフォンと通信を行う必要から、Bluetooth 4.0でサポートされたBLE(Bluetooth Low Energy)に通信機能を依存しています。そのため、Bluetooth 3.0までしか搭載していないAndroid 4.2以前の世代のスマートフォンやタブレットとは通信ができないという問題があります。

こればかりは、手持ちのAndroid搭載スマートフォンなりタブレットなりをBluetooth 4.0搭載のBLE対応機種に買い換える以外の解決策がありません。

それゆえ、Android Wear搭載ウェアラブルデバイスを使用したい場合には最悪の場合、そのデバイスのコストに加えて手持ちの端末の買い換えコストが生じることを覚悟せねばなりません。

そんなわけで、Android Wear最大の敵は、実は他社の競合製品ではなく、身内とも言えるAndroid搭載スマートフォン・タブレットのハードウェア対応の不足ということになりそうです。

BLEのサポートは、先日ご紹介したBeaconの講演記事でも触れたように、徐々に拡がりを見せつつあります。そのため、そのあたりとセットでBLE対応Bluetooth 4.0搭載端末への乗り換えを訴求するキャンペーンを行うなどの策を講じれば、案外あっさりとこの問題は解決しそうな気もします。

もちろん、母艦となる端末の買い換えを行ってでも是非使いたい、と思わせられるような魅力的なデバイスや強力なキラーアプリが提供できれば、こんな問題は瞬く間に吹き飛んでしまうのですが・・・。

※Android Wear:
Android Wear
Android Wear | Android Developers

※Motorola Moto 360:
Moto 360 by Motorola
Moto 360: It’s Time.

※LG G Watch:
LG G Watch: Always with you, always-on Powered By Android Wear | LG Electronics
LG EYES MAINSTREAM ADOPTION OF WEARABLES WITH FIRST DEVICE POWERED BY ANDROID WEAR

※SAMSUNG Gear Live:
Samsung Expands Gear Portfolio with Android Wear

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