ゴンザレス氏の訴えは切実だが、グーグルは要請に応えるのだろうか

「忘れられる権利」表現の自由とプライバシーの境はどこか?

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by [2014年6月09日]

 米大手IT企業グーグルはインターネットの検索結果に対する個人からの削除要請フォームを開設した。欧州連合(EU)議会裁判所は5月13日に個人が自身に関する情報へのリンクの削除を求める権利を認めており、グーグルによるフォーム開設はこれを受けての対応だ。
 AFPBB Newsによると、受付を開始した5月30日だけで1万2000件の削除要請があったという。欧州議会は個人が「忘れられる権利」を持つとの観点から、古かったり不正確な情報に対して、個人がグーグルの検索結果に対して削除要請をする権利を認めた。スペイン人のマリオ・コステハ・ゴンザレス氏の申し立てに対する判決だった。

ゴンザレス氏の訴えは切実だが、グーグルは要請に応えるのだろうか

 申し立てによると、インターネット利用者がグーグル検索でゴンザレス氏の名前を検索すると、ヴァングァルディア紙が1998年に掲載した2つの記事が出てくるという。記事の内容は、ゴンザレス氏が社会保障料債務の回収のための差押え手続と不動産競売が実施される旨の公告だった。
 ゴンザレス氏は、自身の差し押さえは何年も前に終了しており、現在の情報としては適切性を失っていると主張。スペインデータ保護局に対し、ヴァングァルディア紙とグーグル・スペイン社及びグーグル・インク社を相手方に救済申し立てをおこなった。

 裁判所はゴンザレス氏の主張に対し、ヴァングァルディア紙の記事は適法に公表されたとして却下したが、グーグルに対する救済申し立ては認める判断をした。

どこまでがプライバシーか

 リベンジポルノをはじめ、検索サービスにおける個人情報のトラブルは近年増加している。検索サービス上の不利益な情報に振り回され続けている人もいるだろう。その意味で「忘れられる権利」を認定した今回の判決は画期的だ。だが、その一方で、インターネットが個人の「履歴書」として機能することが、公共の安全に資する面も大きい。今回の判決をはただちに肯定できない面があるのも確かだ。(株)情報通信総合研究所法制度研究グループの中島美香氏は6月3日のInfoComニューズレターで、次のように指摘している。

本判決が、「忘れられる権利」に言及していることは個人の(特にプライバシー情報の)保護の観点から注目に値するが、一方で、例えば、公共性及び公益目的を有する言論となりうる公務員あるいは犯罪者等に関わる言説については、当事者の申し立てにより削除が命じられることには問題がないか、「表現の自由」との関係で、検索エンジンという「メディア」のあり方が問題となる可能性がある。

 インターネット検索サービスでは、どこまでがプライバシーとして守られる部分で、どこからが表現の自由という線引きは慎重にする必要がある。そしてその線引きは、司法がするべきなのか、民間企業であるグーグルがするべきなのかという問題もでてきているようだ。朝日新聞記者の平和弘氏のブログ『新聞紙学的』では、ニューヨーク市立大起業家ジャーナリズムセンター所長、ジェフ・ジャービス氏の声を紹介している。

これは表現、ウェブ、欧州にとって最も厄介な出来事だ。裁判所はグーグルだけでなく、グーグルがリンクするサイト、その発信者の表現の自由の権利を踏みにじった。(中略)裁判所は、皮肉にも、グーグルをより強力な存在にしてしまった。どの情報が見られて、どの情報が見られないか、それを決める審判者にしてしまったのだ。

 
 今回の判決を受け、グーグルは要請を個別に精査し、削除が必要か判断するというが、期限などは設けていない。検索サービスにひっかかることまで含めて表現の自由なのかという問題や、削除要請にこたえる企業側の負担なども含め、議論すべき課題は多そうだ。

【参考リンク】
グーグルの検索サービスと忘れられる権利~最新のEU司法裁判所判決(スペインの事例)を題材に~
「忘れられる権利」とグーグル:プライバシーは誰が守るのか | 新聞紙学的

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