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FacebookやDropboxの急成長を支えるグロースハックの本質に迫る【前編】

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by [2014年6月02日]

最近注目を集めている、グロースハック(Growth Hack)という言葉をご存知だろうか。これについて、国内最大級のアドテクノロジーカンファレンス”Ad Engineering Summit”内で、パネルディスカッション『グロースハック進化論』が5月16日に行われた。
登壇者は、平石大祐氏(InnoBeta)、林宜宏氏(pLucky)、梶谷健人氏(VASILY)、須藤憲司氏(KAIZEN platform)、の4人。ファシリテーターは渡邊大介氏(CyberAgent)だ(以下敬称略)。
※各個人のプロフィールは記事最後で紹介

そもそもグロースハックとは?

“グロースハック”という言葉が注目を集めるにつれて、文脈によって異なる意味で使われることも多くなってきたが、今回のディスカッションの登壇者たちはこの言葉の定義に非常に気を使っていた。

今回の登壇者の一人である梶谷健人氏の「VASILY グロースハックブログ」の”グロースハックとは何か ~グロースハックをマスターするための究極のガイド~”というエントリ内で、”グロースハック”とは

数値やユーザーの声を分析し、ユーザーの数や質をGrowthさせる仕組みをプロダクトの中に組み込んでしまうこと

と定義している。

このディスカッションでも後に言及されるのだが、グロースハックとは要するに成長を生み出す仕組みを作りあげるという概念である。
2012年のアメリカの大統領選で共和党のミット・ロムニー陣営が実行したことをきっかけに”グロースハック”という言葉が一気に知れ渡った。FacebookやDropboxなど、急成長したスタートアップもグロースハックを実行していたことは有名だ。現在、このグロースハックを請け負う”グロースハッカー”の需要が世界中で高まっており、グロースハックバブルが起きている。
日本ではお金をかけないマーケティング手法、として見られがちなグロースハックだが、本質はそこではない。あくまでも本質はグロース(成長)だ。と指摘するグロースハックの第一人者たちのディスカッションをお送りする。

環境の変化がグロースハックバブルを招いた

渡邊 今日、インターネットメディアでは見ない日がないくらいグロースハックという言葉が流行っていますが、単なるバブルで終わってしまうのではという面もあるように思います。
まず、梶谷さんにお聞きします。そもそも、なぜ2012年後半のタイミングで”グロースハック”という言葉が使われ始めるようになったのでしょうか。今までもきちんと効果検証をしてサービスを成長させましょうとか、Webの数字を見ましょう、サイトを改善しましょうという話は昔からあったと思うのですが。

梶谷 最近になって、スタートアップ企業がグロースだけにフォーカスできる環境が整ってきたのが一因です。つまり、どんなに赤字でもグロースレートさえ高ければ(投資家が)イグジットできる仕組みができてきたんです。その結果、グロースを追求できる人材(= グロースハッカー)が求められると共に、グロースハックという概念がポピュラーになってきているのだと思います。

渡邊 2011~2012年くらいから、日本でもスタートアップという言葉が使われ始め、そういう文脈も関係しているということですね。

ビッグデータが可能にしたグロースハック

渡邊 昨今のグロースハックという言葉の使われ方についてはどうでしょうか。

 グロースハックの目的は、サービスをユーザーにとって本当に良いものに成長させていくことであり、細かい施策はあくまでも手段にすぎません。最近まではその成長をきちんと数字で評価することは技術的に難しかったのですが、ビッグデータというものを扱えるようになった結果として、ユーザーがサービスの中でどのように動き、サービスをどのように使い、その結果どのようにサービスに定着するのか。これを数字で見ることができるようになり、分析しやすくなりました。つまり、グロースハックに手を出しやすくなったということです。
バブルとは言いますが、本質的には当たり前のことを目指しているだけにすぎません。手段のバリエーションが技術的に増えてきたことで、グロースハックの裾野が広がっただけなのです。なので、今の時期はグロースハックバブルというよりは、グロースハックが本格的に表に出てきはじめる時期だと思います。

スマホの普及でグロースハックが身近に

渡邊 グロースハックバブルについて、須藤さんはいかがでしょうか。

須藤 グロースハックの流行には2つの要因があると思っています。まず1つ目は”ソーシャル”。Facebookなど、ソーシャルプラットフォーム上で何かをすることでユーザー獲得が可能になってきています。もう一つは”モバイル”。今はスマートフォンというデバイスが普及していて、しかもスマホの中には最初からアプリストアが入っている。だから、ネイティブアプリをストアに出すだけで皆の手に届く。つまり、ユーザーを伸ばす施策が一昔前と比較して明確にやりやすくなってきている。だから、今すごくグロースハックが注目されているのかなと。

グロースハック ≠ お金をかけないマーケティング

須藤 プロダクトやサービスを本質的に良いものに成長させるのがグロースハックだ、というのは間違ってないんですけど、じゃあマーケティングが意味ないかといえばそんなことは全くない。事例として、アメリカのグロースハックの企業はどこも数十億円レベルのネットプロモーションをやっています。要はグロースを実現するには、プロダクトとマーケティングの両輪を良くすることが必要なんです。それなのに、最近のグロースハックの取り上げられ方はちょっとエコっぽくて、マーケティングにお金を使わなくてもプロダクトのことさえ頑張ればいい、という感じなので残念です。グロースするならお金をいくら使おうが、手段を選ばずになんでもやればいいじゃないかと。

渡邊 日本に入ってくるグロースハックの情報は、マーケターとグロースハッカーの二項対立論で語られることが多いですよね。販売戦略の関係もあるんでしょうが、マーケターが死亡してこれからはグロースハッカーの時代だ!みたいな。草食系マーケティングみたいな、なるべくお金を使わずに、頭を使って、というまさにエコなものとして語られることが多いです。たしかにお金をなるべく使わず頭を使う、というのは大事な視点なんですけど、そこに固執してしまって大きな勝負を仕掛けられていない。これに対して梶谷さんはどう考えますか?

梶谷 グロースハックについて様々な誤解がありますが、その中でも一番大きいのが、グロースハックはお金を掛けないマーケティング手法である、という誤解です。グロースハックの本質とは、文字通りグロース(成長)です。グロースさえ達成できればなんでもいい。グロースへの転換率が良いならお金だって使うべきです。僕らVASILYのサービス・IQONも、次のフェーズでは広告にお金をかけていくつもりです。本質的に大事なのはあくまでもグロースなので、手段として効率が良ければ広告にお金をどんどん使っていこうというのは大事な姿勢です。

須藤 今後VASILYさんが広告をどうやって効率良くやるのか?ということも当然グロースハックです。

梶谷 もちろんです。

渡邊 グロースハックの本質に先行してハックの部分だけ、いわゆる手段でしかないTIPSのところだけ普及せずに、本質の考え方がうまく浸透していくことを期待したいです。

成長に関わるものは全てグロースハックだ

平石 グロースという観点からいくと、ユーザーサポートも注目すべき点だと思います。例えば、あんまり良くないプロダクトやサービスを使って、Twitterとかで愚痴る人も多いのですが、そのツイートをユーザーサポートの方が拾って対応してくれることがあるんです。小さい話ではあるのですが、これもグロースにつながっていると思います。アメリカに目を向けてみると、チャットでユーザーサポートをする、というものも増えてきています。たとえば、問い合わせフォームの画面で30秒以上滞在しているユーザーに対しては、「お困りですか?」というメッセージを自動でチャットに送れるような仕組みが出てきています。実店舗での接客のような対応が、Webでももっと発達していくべきだと思います。

渡邊 グロースハックという言葉からはなかなかユーザーサポートは思い浮かびませんが、本質の成長に立ち返って少し思考のレイヤーを上げるだけで、そういう部分もグロースハックに入ってくるというのは一つの発見だと思います。

グロースハックを実現している企業

渡邊 「いま注目すべき企業 = 本当の意味でのグロースハックを体現している企業」にはどんなものがありますか?

須藤 スタートアップで言えばGunosyさんとかがまさに、マーケティングも含めたグロースハックをしている会社だと思います。テレビCMをやって、キャリアさんとも組んで、プロダクトを大きく成長させようという活動はまさにグロースハック。最近注目を浴びているのは小さな枠組みでのグロースハックなんですけど、「グロースを実現する」という本質的なところに注目して見れば、Softbankような大企業もグロースハックをしていると言って良いと思います。Yahoo!ショッピングがEC革命と銘打ってEC無料化に踏み切りましたが、そうしてビジネスをシフトしながらもグロースをしっかり実現しているので。

お金があれば勝てる、という世界ではない


平石 グロースハックという言葉が出てくる以前から、ペイドマネージをやっているという意味で、リクルートはグロースハックに取り組んでいたと思うのですが。

須藤 リクルートの場合はユーザーグロースよりも事業グロースにフォーカスしていました。今でいうとAirREGIとかリクルートカードとか、これらは自分たちの事業を補完するためにプロダクトを作る、という事業グロースの観点でやっていると思います。

平石 しかし、たとえばリクルートのような大企業がグロースハックに取り組んでしまうと、スタートアップの勝ち目がなくなるんじゃないかという心配もあります。

須藤 自分は、スタートアップに勝ち目がないとは全然思いません。大企業だからといって楽に勝てているわけではないし、お金があれば勝てる世界ではないと思う。極端なことを言えばポール・マッカートニーやオバマ大統領が降臨しても勝てないときは勝てない。大企業は大企業でリードし続けなきゃいけないので大変だと思います。お金がないスタートアップでもグロースハックで大企業に勝つことはできると思います。

後編に続く
グロースハックの今後は広告代理店が握っている!【後編】

登壇者紹介

株式会社CyberAgent, 渡邊大介氏

2006年、青山学院大学を卒業後、株式会社サイバーエージェントに入社。同社広告部門においてナショナルクライアントのウェブマーケティング、コミュニケーションプランニングに携わりつつ、ソーシャルメディアマーケティング部門の立ち上げを行う。
現在はビジネスパーソン向けの新規サービス開発、新規事業開発に従事。本ディスカッションではファシリテーターを務めた。

KAIZEN platform Inc. CEO 須藤憲司氏

2003年、早稲田大学を卒業後、株式会社リクルートに入社。同社のマーケティング部門、新規事業開発部門を経て、アドオプティマイゼーション推進室を立ち上げる。
株式会社リクルートマーケティングパートナーズ執行役員で活躍の後、2013年にKAIZEN platform Inc.を米国で創業。

pLucky, 代表取締役 CEO 林宜宏氏

Netageグループ各社で開発・経営企画に携わった後、頓智ドットにて経営指標管理を主導。
独立後にpLuckyを創業し、ユーザーを経験によりセグメントして定着を計測できるツール「SLASH-7」を提供。
現在、誰でも改善プロセスを回せるようになるグロースハックのコンシェルジュ的なツール「Logbook」を準備中。

株式会社InnoBeta 代表取締役社長 平石大介

UIscopeというスマホアプリ・ウェブサービスのユーザーテストが簡単に行えるサービスを運営。600社以上が導入し、過去に2000件以上のテストを実施。
ユーザーテストを用いたサービス改善事例とサービス改善によるROI最大化についてのノウハウを共有させていただきます。

VASILY, inc. グロースハッカー 梶谷健人氏

VASILY, inc. のグロースハッカー。
自社プロダクト「IQON」のグロースハックに取り組む傍ら、グロースハック界隈でもっとも読まれている「VASILY Growth Hack Blog」を運営・執筆。

参考

VASILY Growth Hack Blog

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