Microsoft Surface Pro 3の標準的な構成イメージ

Surface Pro 3はノートパソコンを喰うか?

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by [2014年5月26日]

Microsoft Surface Pro 3の標準的な構成イメージ

Windowsの開発元であるMicrosoft自身が開発したタブレットであるSurfaceシリーズは、当初Windows RTプリインストールでARM系CPUを搭載する初代Surfaceでスタートし、その後x86系CPUを搭載しWindows 8をプリインストールしたSurface Proが上位モデルとして追加され、さらにSurface・Surface Proそれぞれの後継モデルであるSurface 2・Surface Pro 2が発表されるなど、販売予測の読み違いによる品薄や在庫一掃セールもありましたが、一応は順調に販売実績を伸ばしてきました。

このほど、そんなSurfaceシリーズの最新作が発表されました。

事前の予測では、サイズを小型化したSurface Miniとでも呼ぶべき製品が発表されるのではないか、とされていたのですが、実際に発表されたのは意外なことにx86系CPUを搭載する上位モデルであるSurface Proシリーズの3世代目に当たる「Surface Pro 3」のみで、Windows RTを搭載するSurfaceシリーズの後継モデルは発表されませんでした。

もちろん、今回の発表だけでWindows RT搭載のSurfaceシリーズの開発が終了した、と断じることはできないのですが、それでもこのタイミングでSurface Pro 3のみが発表されたことには相応の理由がある筈です。

今回はそんな「Surface Pro 3」について考えてみたいと思います。

主な仕様

記事執筆時点で公表されているSurface Pro 3の主な仕様は以下の通りです。

  • OS:Windows 8.1 Pro
  • CPU:Core i3/i5/i7(モデルにより相違)
  • サイズ:約292×201.3×9.1mm
  • 重量:800g
  • メインスクリーン
  • 種類:IPS液晶
  • 解像度:2,160×1,440ピクセル(縦横比3:2)
  • 画面サイズ:12インチ(対角線長)
  • 内蔵メモリ
  • RAM:4GB(Core i3/i5モデル)あるいは8GB(Core i5/i7モデル)
  • 内蔵ストレージ:64/128/256/512GB SSD
  • カメラ
    • メインカメラ解像度:5メガピクセル
    • フロントカメラ解像度:5メガピクセル
  • Wi-Fi:
    • 対応規格:IEEE 802.11 a/b/g/n/ac
  • Bluetooth:Ver.4.0

従来のSurface Pro 2だとCPUがCore i5-4200U(1.6GHz 2コア4スレッド、Turbo Boost時最大クロック周波数2.6GHz)、ディスプレイが10.6インチフルHD解像度IPS液晶でしたから、CPUの選択肢が大幅に広くなり、またディスプレイがより手書きのノートに近い縦横比とサイズとなって大型化したことになります。

にもかかわらず、公称重量はSurface Pro/Pro 2比で約100g軽くなり、厚さは4.4mm薄くなっています。

この点だけでも、Surface Pro/Pro 2から乗り換える価値がある、と判断する人も少なくないでしょう。

メーカー出荷時構成で複数用意されたモデル

このSurface Pro 3ではCPU・メインメモリ・内蔵ストレージ容量が複数設定されていますが、現時点で公表されている組み合わせは以下の5つに限られます。

  • Core i3、4GB メインメモリ、 64GB SSD
  • Core i5、4GB メインメモリ、128GB SSD
  • Core i5、8GB メインメモリ、256GB SSD
  • Core i7、8GB メインメモリ、256GB SSD
  • Core i7、8GB メインメモリ、512GB SSD

搭載CPUは第4世代のIntel Coreプロセッサ(4th-generation Intel Core processor)とされ、それぞれの具体的なモデルナンバーについては明言されていません。しかし、第4世代Intel Core=Intelでは現行最新のHaswellマイクロアーキテクチャのプロセッサとなる(※Surface Pro 2搭載のCore i5-4200Uも同じくHaswellアーキテクチャに属するモデルです)ため、最近秋葉原などで「艦これに最適」などという触れ込みで販売されているWindows 8/8.1プリインストールの低価格タブレットに搭載のIntel Atomプロセッサ(※主に低消費電力化のため、各部設計が簡素化されており純粋なプロセッサ性能ではIntel Coreプロセッサに及びません)などとはCPUコア・GPUコア共に次元の違う圧倒的な処理能力が備わっていることになります。

なお、Haswellアーキテクチャのモバイル向けCore i3/i5/i7プロセッサは上位のCore i7の一部(物理CPUコア4基搭載)を除き、物理的なCPUコアを2基搭載して各コアが仮想的に2基あるふりをするHyperThreadingと呼ばれる技術を用いることで、見かけ上のCPUコア(論理CPUコア)を4基搭載したマシンとして振る舞うようになっており、更にCore i5/i7ではTurboBoostと称して、プロセッサパッケージの冷却能力で許される範囲で物理CPUコアを定格より高速で動作させる機能(※例えば物理CPUコアを2コア搭載で1.6GHz動作のCore i5-4200Uだと、1コアのみ動作する時には残り1コア分の冷却能力を流用できることから最大2.6GHzまで動作クロック周波数を引き上げられます)も搭載されています。

ちなみにHaswellアーキテクチャのCore i3/i5/i7は基本設計が共通で、内蔵されるGPUのグレードやCPUコアの動作クロック周波数、TurboBoost機能の有効無効、搭載される3次キャッシュメモリの容量や4次キャッシュメモリの搭載の有無、それにCPUコア数など性能に影響の出る部分で差をつけて別グレードとしています。

そのため、当然ですが性能はCore i7>Core i5>Core i3となります。

購入時に特に検討を要するストレージ容量

Surface Pro 3のアメリカ市場での想定売価は先ほどの組み合わせで上から順に799ドル、999ドル、1,299ドル、1,549ドル、1,949ドルと発表されています。

Microsoft Surface Pro 3のMicro SDメモリカードスロット
標準でこのスロットが搭載されている。

しかし、WindowsパソコンでSSDを使用している方なら恐らくご存じの通り、日本語環境の64ビット版Windows 8.1 Proをインストールするとそれだけで25GBほどのストレージ容量を占有し、さらにページファイル(pagefile.sys:仮想メモリ)やハイバネーション用ファイル(hiberfil.sys:一時休止のためのメモリ内容の待避用ファイル)といったシステムファイルが、通常はその実装メインメモリ容量(※一般に実装メモリ量に比例してこれらのファイルサイズは大きくなります)やその使用状況に応じて適宜自動で容量設定されます。そのため、他に何も入れず素の状態でOSをインストールしただけで30GB~40GB、場合によっては50GB近いストレージが占有されることとなり、この段階でさえ64GBのSSDではいささか苦しい(※Micro SDカードのインターフェイスが標準搭載されているため、データをそこへ逃がすことである程度は回避できますが)、ということになります。

また、仕様その他で特に記載がありませんが、メインメモリ実装量が4GBあるいは8GBの2択となっていることから、インストールされるWindows 8.1 Proは必然的に32ビット版ではなく64ビット版(※このことはMicrosoft自身がコミュニティでの質疑応答等で明言しています)となります。一般に64ビット命令で書かれたx86系プロセッサ向けプログラムのバイナリデータは32ビット命令で書かれた場合よりも命令サイズが大きい分だけファイルサイズが大きくなるため、これもOSのストレージ占有量を増やす一因となっています。

さらに、日本市場向けSurface Proシリーズは過去の機種の例からMicrosoft Office Home&Business 2013が標準でプリインストールされると考えられ、空き容量が少ない状態で使用すると急速に寿命が縮まる傾向の強いSSDの性質も併せて判断すると64GBのSSDを搭載する最安モデルは搭載ストレージ容量を重視する日本市場での販売は難しく、恐らく128GBのSSD搭載モデルが最下位となるでしょう(※現行のSurface Pro 2は最下位モデルでも128GBのSSDを搭載して販売されています)。

あるいは、CPUはCore i3搭載でSSDだけ128GBに増量した「Core i3、4GB メインメモリ、128GB SSD」構成のモデルが日本市場限定で設定される可能性も皆無ではありませんが、SSDの部品単価を考慮すると上位の「Core i5、4GB メインメモリ、128GB SSD」構成と大差ない価格設定とならざるを得ずメリットがあまりなく、さらにSurface Pro 2の例から後でCPU交換やメモリ増設、SSD交換を行うのは事実上不可能な構造となっていると考えられる(※筐体がホットボンド溶着で組み立てられていて、実質的に分解=破壊となる可能性が高い)ため、購入時のモデル選択にあたっては今後自分がこの機種でどのような使い方をするのかについて特に慎重な検討が必要となります。

特別な解像度・縦横比となったディスプレイパネル

Microsoft Surface Pro 3標準添付のスタイラスペン

さて今回のSurface Pro 3で最も注目される部分が、他にない解像度・縦横比を実現した内蔵ディスプレイパネルであることには、恐らく多くの方の賛同を得られるのではないかと思います。

残念ながら、スタイラスペンがペンタブレットで著名なWacom製ではなくなり、感圧レベルが1,024段階から256段階に減るなど若干のスペックダウンもあるのですが、2,560×1,440ピクセルのWQHD解像度パネルを横方向に400ピクセル分切り飛ばして縦横比3:2としたと推定されるこの液晶ディスプレイパネルの採用には、それを補ってあまりあるメリットがあります。

まず、一番大きいのは一般的な紙のノートに近い縦横比となること。

紙のサイズはA4だと210×297mm、B5だと182×257mmで、いずれの場合も縦横比がおおむね5:7ですから、タブレットとして手書き入力で使う際や、電子書籍の閲覧などで利用する際には、これに近い比率の方が感覚的に使いやすくなります。

Microsoft Surface Pro 3の手書き入力イメージ
画面縦横比の変更で紙に書くのに近い感覚となり、また精細度が向上しているのが見て取れる。

また、画面サイズが面積で約38パーセント増、画素数では50パーセント増となることから実際の画面面積が増加し、しかも画素密度が従来よりも増えており、画面サイズが大きくなってなお画面の精細感が向上しているのも無視できないメリットです。

Surface Pro 2までの10.6インチフルHD(1,920×1,080ピクセル、縦横比16:9)というディスプレイパネルサイズは単にこの解像度のパネルが量産されていて入手性が良かったことから採用されたにすぎないと考えられ、Surfaceシリーズが事業としてきちんと成立するかどうかの見通しが完全に立っていない状況では、やむを得ない選択であったと言えます。

その点、このSurface Pro 3では他に採用例のない特殊解像度・縦横比のディスプレイパネルを採用していることから、こうした特殊なパネルを発注してもディスプレイパネルメーカーに安定して供給を引き受けて貰える程度の数量が販売できる見通しにある(※ノートパソコンでも例えばレノボのThinkPad X200s・X201sなどでは目玉であった1,440×900ピクセルのパネルの安定供給が得られずBTOオプション限定となり、通常モデルは1,280×800ピクセルのパネル搭載で妥協しています。それどころか後継のThinkPad 220では1,280×800ピクセルのパネルさえも入手難で一般的な1,368×768ピクセルのパネル搭載に変更されており、少数しか販売されない特殊解像度の液晶パネルは製品の安定供給の観点で難しい問題を抱えています)ことと、そうした特殊な解像度の液晶パネルを採用したことによる生産コスト増を充分吸収できる収益見通しが立っていることが見て取れます。

ちなみに、12インチという画面サイズはレノボのThink Pad XシリーズやパナソニックのLet’s Note SXシリーズなどで採用された、モバイルノートパソコンの一つのスタンダードであったサイズです。

Microsoft Surface Pro 3のキックスタンドの傾きの範囲を示したイメージ画像
クラムシェル形ノートパソコンに匹敵する画面傾斜角度の自由度を確保している。

そのため、このサイズのパネルを採用し、しかもCPUとしてCore i7を、メインメモリも8GB搭載をそれぞれ選択できるようにしたことや、本体を自立させるための「キックスタンド」が0°~150°の範囲で自由に角度調節できるようになったことなどから、このSurface Pro 3はiPadなどのタブレット機市場だけではなく、その上に位置するそうしたモバイルノートパソコン市場も「喰う」ことを明確な目標として開発されたことが見て取れ、実際にアメリカでの発表時には「the tablet that can replace your laptop」という挑発的とも取れる惹句を用いています。

Surface Pro 2よりも改善された純正オプション

Microsoft Surface Pro 3用Type Cover

こうなってくると、もはやタブレット機とモバイルノートパソコンの境界は曖昧になってきて、実用上はちゃんとしたキーボードが標準搭載されているか否か程度しか差異が無くなってきます。

Surface Pro 2の場合、感圧式のタッチ感/クリック感のないキーボードを搭載した「Touch Cover 2」とメカスイッチによる本格的なキーボードを搭載した「Type Cover 2」、それに「Type Cover 2」を基本として大容量バッテリーを内蔵した「Power Cover」の3種類の「カバー」をオプション提供していたのですが、Surface Pro 3では現時点で予告されている範囲では「Surface Pro Type Cover」、つまり「Type Cover 2」の後継となるメカスイッチ搭載のキーボードカバーのみ提供される予定となっています。

これもまた、Surface Pro 3がその立ち位置をモバイルノートパソコンに近づけていることの現れといえるでしょう。

Microsoft Surface Pro 3と純正ドッキングステーション

さらに、Surface Pro 2は従来から高速なUSB 3.0ポートが標準搭載されていたのですが、純正ドッキングステーションはなぜか100BaseーTXの低速な有線LANインターフェイスを搭載していて、結構不満の種になっていました。さすがにSurface Pro 3ではこの点は改善され、純正で1000BaseーT、つまりギガビットイーサネット(GbE)の外付け有線LANアダプタ(USB 3.0接続対応)と、GbEポートを搭載した純正ドッキングステーションが提供されることが発表されています。

従来のSurface Proシリーズのオプションで低速な100Base-TXインターフェイスが採用されていた背景には、無線LAN(Wi-Fi)の普及を念頭に置いて、有線LANは低速なもので充分という判断があったようです。もっとも、実用を考えると有線のGbEが使えるならそちらの方が無線LANよりよほど高速に転送が出来るのは自明な話で、特にオフィスでの利用を考慮するとGbE非対応は(サードパーティ製の外付けUSB 3.0接続GbEアダプタの併用で回避が可能であったとは言え)導入のネックになるケースが少なくありませんでした。

その意味では公式に「有線GbE接続をサポートする」ことを表明したSurface Pro 3は歓迎されることでしょう。

弱点を確実に潰してきたSurface Pro 3

以上、Surface Pro 3の概要を見てきましたが、従来のSurface ProやSurface Pro 2にあった問題点が着実に改善され、実用性が大きく向上していることが見て取れます。

従来モデルだと、どこか既存のノートパソコンメーカー各社に遠慮したような印象があったのですが、今回のSurface Pro 3では画面サイズの拡大をはじめいっそ清々しいほど明瞭にノートパソコン市場を侵食する方向性を示しており、それもまた実用性向上に大きく寄与しているように見えます。

対するノートパソコンメーカー各社はトップダウンで、つまりノートパソコンをタブレットとして使用できるようにする方向性でSurfaceシリーズに対抗してきたわけですが、正直ここまでの完成度を、それもMicrosoftブランドの製品として実現されてしまうと、これに対抗するのは至難の業ではないでしょうか。

Microsoft introduces Surface Pro 3: the tablet that can replace your laptop(ニュースリリース)

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