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「スマートフォン広告の進化と展望」デマンドサイドの精緻化とサプライサイドの多様化

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by [2014年5月27日]

2014年5月15日から16日にかけて開催されたAd Engineering Summit<アドエンジニアリングサミット>にて「スマートフォン広告の進化と展望」を取材しました。

ユナイテッド株式会社 プラットフォーム事業本部 SSP事業部 マネージャ 堺真幸氏

これまで私がやってきたことに、共通しているのは“ケータイ”と“広告”です。今日は「広告はどのように進化してきたのか? この先どんなふうに変わっていくのか?」についてお話させていただきます。

精緻化と多様化

映画「ミッション:インポッシブル」では、トム・クルーズが掛けていたかっこいいサングラスで上司と会話したり、何もない場所で手を動かすと3Dのように情報を取捨選択できたり…そんな世界が描かれていました。
今回はそういった「世界で広告がどのようになっていくのか」という大層な話ではなく「これまでモバイル広告がどのような形で進化してきたのか? そこからその延長線上にあるような1~2年先の世界」を中心にお話しできたらと思います。そこで一番のキーワードになるのが「精緻化と多様化」なのです。

Buy sideの進化

ここからが本題です。ここに挙げたBuy sideは、メディアからインプレッションを買う側つまり広告主です。リマインドサイドとも言います。広告を出資する側から見ると、広告はどのように進化していったのでしょうか?

もともと広告は広く告げるという文字の通り、情報をいかに広く知らしめるか? という問題からスタートしています。これまでのブロード配信(全配信)はターゲットではない人にも情報を届けるので、広告効果という面ではあまりよろしくないところがあります。そこで、広告を適切に届けていくために、ターゲティングをしていくということになります。


条件ターゲティング、app to app、時間別帯配信、メディア指定配信、プライベートEX、いろいろあると思います。親和性の高いメディア順に配信するパターンもありますし、例えば広告主がゲームクライアントであれば、たくさんゲームをやっているユーザーを獲得する目的で広告を配信する方法もあります。あるいは学生向け、ティーン向けのECが、広告を配信するにあたって、下校時間以降の夕方や夜に時間帯を絞って広告を配信するケースもあるでしょう。一番身近な例としては、テレビCMもありますが、お昼のワイドショーに主婦向けの洗剤のCMを流すという、スタンダードな広告があります。現在この部分に関しては、アドネットワークが非常に強い領域となっています。

その先がオーディエンス拡張とオーディエンスターゲティングの話になります。まず一番下にありますターゲティングは、サイトを訪れた、その人だけに広告を配信する仕組みです。
例えばトップページに来た人に関しては、Aというメッセージを出す。トップページ→商品詳細ページ→カートで離脱した人に関してはBという広告を出す。実際に商品を購入した人には「今度はこういう商品がありますよ」という広告を出す…それぞれのユーザーに対してメッセージを変えて配信することができています。
ターゲティングに関しては、一度サイトに来た人をターゲットにするので、どうしてもボリュームが出てこない、という問題があります。そこで広告効果を維持しつつボリュームを出していくために、オーディエンスやオーディエンス各所に出していくという方法があります。例えば、30代男性スポーツ好きのユーザーに対してワールドカップの広告を出すという方法になるのですが、それから一歩進んで「オーディエンス拡張はどうするのか?」という問題があって、30代男性スポーツ好きの人が、それまでに起こした行動と似ている行動をとったユーザー層に対しても広告配信をしてしまおうという流れです。
下にもまとめとしてありますが、ターゲットを精緻化して、ボリュームを獲得する方法です。

もうひとつ、オーディエンス拡張、オーディエンスターゲティング、リターケティングというのは、インプレッションやリクエストベースで広告を出し分けしています。これをプログラマティック・バイイングと言います。条件ターゲティングのように「このメディアにだけ配信したい」「何時から何時まで配信したい」というのは、人が頑張ったらできる事ですが、オーディエンスターゲット・拡張以下は「リクエストがきました。このリクエストはおそらくAさんのだと思います。Aさんに適している広告はコレです」と、サイト単位ではなくリクエスト単位・インプレッション単位で広告を出しわけていくのです。これは機会ではなく、プログラムで動かしていくという事になります。もう一つ有名なリアルタイムビッディングの広告やリコメンド広告は、プログラマティック・バイイングの一つの手法と理解していただければと思います。


これらの広告の特性を、縦軸、横軸をボリュームでマッピングするとこのような形になります。まずブロード配信はボリュームは一番大きいですが、ターゲティング精度が非常に低い。一方で、リターゲティングは広告効果は非常に高いですが、ボリュームがそれほど出てきません。そこで広告効果を維持しつつ横軸を広げて、オーディエンスターゲティング、オーディエンス拡張を増やしていくという状況になっていきます。
広告は、効果を高くして、なおかつボリュームを出していくのが理想的なので、矢印の先を目指して、プランニングしていく流れになります。ここのベクトルは変わりませんので、できるだけ高い所でボリュームを獲得するための新しい配信手法が出てくるのではないでしょうか。

Sell Sideの変遷

Sellの方は、インプレッションを売る側という事で、サプライサイドという言い方をします。メディア側がどう変わってきたかということになります。

一番シンプルな形は、この左側にある純広告です。impだったり、クリック報酬であるとか、いろいろな形がありますが、基本的に純広告は一人のお客様にいくつかのキャンペーンをして、マネタイズしていくという流れになります。
ここから一歩進んだのがアドネットワークです。これはその名の通り、クライアントをネットワーク化しているので、マルチクライアントです。ただシングルロジックですので、どんな広告を出すかはネットワークに依存しています。例えば、広告効果がいい案件、CVR・CPAがいい案件は単価が高くなりやすい、CTRが高い案件は多く配信されやすい、エントランス側でたくさんの予算が入っているものに関しては配信されやすいということは、ネットワークのロジックごとに色々あるのですが、それぞれ固有のネットワークが持っているロジックは、ここでは一つしか使えないという欠点があります。

最近、増えてきているSSPは、アドネットワークを最大限使いマネタイズを最大化するものです。こうなると、ロジックが複数ありますので、マルチロジックでマルチクライアントの広告を回していくことになります。

さらに一歩進むと、プログラマティック・バイイング、売り手側からするとセリングです。リクエスト単位・ユーザー単位でインプレッションを販売していく。そこで、販売できなかったインプレッションをネットワークマネーで最適化しましょう、となります。広告収益を最大化するために配信手法をどんどん多様化させる方法に進化してきていることがわかります。


こちらは、弊社SSPの営業がメディアへ説明する際に使っている図です。プログラマティック・バイイングとアドネットワークをどのように最適化するという所なんですが、まずは上からインプレッションが来ました、その時にこのインプレッションを一番高く買ってくれるところに販売してしまうところですが、メディアが設定するフロアプライス(底値)がありまして「このインプレッションに対して、いくら以上の入札でなければ売らないですよ」という設定ができます。
このフロアプライスから落ちてきたインプレッションは、ボリュームをたくさん持っているアドネットワークで最適化していく仕組みになっています。このインプレッションを最大単価で販売するにあたって、重要な要素は何かというと、一つは入札人数が多い程、競争入札が働くので単価が上がってくることです。

そしてもう一つは入札ロジックがどれだけ複雑であるか、ということです。例えば、30代男性のAさんのインプレッションが発生した時に、ビジネス情報系クライアントがそこに買い付けに来ると、結構強気になるのではないかと思います。さらに、今度は全く別のニッチな書品の商品ページを見たのがリターゲットしたユーザーでした、となった場合、リターゲットでさらに高い単価が期待できます。買い付けのロジックにいろいろな軸、種類があればあるほど、高く売れる可能性があがります。
そこでプログラマティックで最大化されて、販売されなかったインプレッションがアドネットワークへまわるわけです。

次に、アドネットワークの収益最大化にあたってプラットフォーマーはどんなことをしているのでしょうか。大きくは、人的と機械的の二つの手法で最適化をかけています。

人的には、メインの業務はアドネットワークの交渉です。例えば「うちは今だけのインプレッションがあって、CPC・CPRこれだけあるけど、CPC・CPRがいくら以上だったら今くらい出せますよ」という交渉があったり、逆に、ネットワーク事業者側から「新しくこんな案件が入ってきました。それをハケなければなりませんので、こんな媒体の今だけのインプレッション利用持ってきて頂けないでしょうか?」みたいな提案を受けて、そういうメディアを見つくろっていく、という交渉もあります。
次に広告メニューの選択については、広告メニューが多彩化していくにあたって、どんな場所にどんな広告を張るのが一番最適なものか? できるだけユーザビリティを壊さずに、マネタイズを最大化するためのプランニングをメディアと一緒に行なっております。
そして、三つ目が未来予測の最適化です。例えば「明日、予算の大きな案件が入るかもしれないから、そこにたくさん沢山準備しておきましょう」というものです。

一方、機械がしていることは大きく二つあって、一つは「過去収益データをもとにした配分最適」です。複数のアドネットワークがあって、その中で一番よいパフォーマンスをしている所に配信を自動的に寄せていくという考えです。そこで重要になっていくのが、この配信を寄せていくロジックです。これがメディアと合致しているかが重要です。「3日前のデータよりも昨日、昨日よりも今日のデータが重要。最大のパフォーマンスを出しているネットワークを最優先すべき」こうしたロジックは変動幅がものすごく大きいのですが、うまくいった時の収益が非常に高く期待が持てます。逆に「2~3週間というロングターンの中で最もいいパフォーマンスを出しているネットワークを多く出していく」というロジックもあります。こちらはチャンスの時にすごく収益が上がるというようなことは無いのですが、リスク無く安定して高収益を上げられます。そのメディアに合致したロジックを採用することが重要になっています。

もうひとつはリスクヘッジです。サーバーに異常があって配信ができないなど、何かあったときにいち早く他のサーバーから切るという機構を設置していることが多いです。人間が気付くよりも機械の方が断然早いので、そのような設定は重要です。特に大きなメディアほど、何かあった時の損失が大きくなってしまうので、どれだけバックアップがとれるか、補完ができるか、が重要になっています。

ここまで「広告主側とメディア側でどれだけ広告が変ってきたのか?」という話をしてきたのですが、ここからは「広告そのものがどういう風になってきているのか」という話をします。

愛される広告とは?

「正しい時に、正しい相手に、正しい広告を」広告の原理原則はこれだと思っています。なぜかというと、友人と飲みながら「どんな仕事してんの?」なんて話になった時「スマートフォンのアプリの広告の仕事をしているんだよ」と言うと、たいてい「あれってすごい邪魔だよね」というネガティブな反応をされませんか?
残念ではあるのですが、仕方がないかなとも思っています。その人が接してきた広告が、正しくない内容の広告だったのか、正しくない時に表示されたのか、あるいは正しくない相手だったのか…。一つ言えることは、誤った広告の出し方をしているケースが非常に多いのです。
広告の性質を考えたときに、必要悪とまでは言いませんが、そういうものなのでは?と考えてしまいがちです。それでは「理想の広告って何だろう?」と考えたときに、こういう広告は良いと思ったものがあるので紹介します。

それは、スーパーボウル(アメリカンフットボールの決勝で、アメリカ最大のスポーツイベント)の広告です。今年は2月に開催され、広告費は30秒のTVスポット広告で400万ドル(約4億円)です。この広告には当然製作費もかかっているはずです。スーパーボウルの視聴率が47%なので、単純計算で日本の人口よりも多い1億何千万もの人たちが、その瞬間その番組を見ているという点では、広告効果そのものも高いのですが、それだけではありませんでした。


これは電車のラッピング広告です。クライアントのジャガーがここにどんなメッセージを出したかというと「今度スーパーボウルで広告出すから、みんな見てね」なのです。“CMのCM”です。
あとはスーパーボウルのこれまでの面白かったCMをシェアしてコンテンツとして観ましょう、というサイトです。ここで見える事は、30秒に4億円を払うクライアント側も、当然アイディアや技術の粋を集めてコンテンツを作るのですが、それを見る側、視聴者も「広告はトイレタイム。邪魔なもの」という認識ではなくて、それを一つのコンテンツとしてスーパーボウルを楽しもう! という姿勢があちこちから感じられるわけです。
そんな「ユーザーと広告の関係」が素敵だなと思いましてスマートフォンの広告も一つのコンテンツとして愛されるようなものにしていくことは不可能ではない、そういうものがどんどん出てきてほしいと思っています。

広告の多様化

広告の流行としては、インタースティシャル広告やアイコンアド広告に注目です。

アイコンアドは、既存の広告枠を変えず・減らさず全く新規で広告を設置でき、マネタイズする所が単純に増えるという点で好評を頂いております。AdStirのアイコン広告の流通量に関して言えば今年1月と今月で比較すると5倍ほどになっています。
インタースティシャルは、全画面で「ボーン」と出てくるので、非常に訴求力のある広告です。「邪魔!」と思われやすい欠点がありますが、例えば左側のように、ゲームアプリでゲームが終わった時に表示されるリザルト画面に広告を出したり、右側の様に通話アプリで通話が終了したタイミングで出す事で工夫をしています。ユーザーが何かしら終わってテンションが下がった時に広告を隙間のように滑り込ませる。これがメインの使い方になっています。


次が、Naitive ads(ネイティブアド)です。この広告のメリットは自然な形で広告が出てくるので、いきなり広告の中身を見てもらえる。それがなぜ優れているかと言うと、従来の広告はメディアとの接点が多い人ほど、それが何かと認識しなくなります。「画面の中でこういう風に出てくるものは広告で、自分にとっては邪魔なものだ」という風に思い込んでしまっていて、目に入っていても脳が勝手に無視しちゃいます。「ユーザーの広告慣れ」と言いますか、ほとんど反応が鈍っている状況です。そうすると、中身がどんなものであっても、吟味する前に認識されないので、広告効果がどんどん落ちていきます。今回、このようにコンテンツの中にコンテンツと同じ様な形式で広告を出していくと、まず中身を見て、興味があればタップし無ければスルーという、クライアント側にとってもユーザー側にとっても非常にメリットのある広告になるんではないかと思います。


最後はRich video ads(リッチビデオアド)=動画広告です。これもアメリカで増えていて、日本でも増えるでしょう。これはバナーを押すとプレイヤーが立ち上がって動画が流れます。結構大きめのバナーで、その中で動画が動くパターンもあります。またYouTubeやNewssonicといったサイトで動画を再生すると、その動画が始まる前に広告動画が数秒間流れるパターンもあります。
ここ最近の動画広告では、技術力の進化もあって、テレビCMで流れているようなコンテンツをモバイル広告で流せるようになってきています。これにより、テレビCMを流しているクライアントは、そのコンテンツをそのままモバイル広告に流せるようになります。
現在の日本のモバイル広告はまだ偏りがあり、テレビで広告をバンバン出しているような大きなクライアントは出てきていません。そういったクライアントがモバイルに出てくるキッカケとして、このリッチアドが使われれば非常に大きなインパクトになると思っています。


まとめます。左側がBuy sideで広告出稿側、右側がSell sideでメディア側です。

今はクッキーベース、ブラウザベースで「この人はこのユーザーである」と紐付けているんですが、これがユーザーベースで紐づけるようになります。こうすることで、PCで、ある商品を見た人に対して、その人がスマートフォンを使っているときもその商品ページをターゲティングして回収するという事が出来るようになります。
もう一つが「ジオグラフィックターゲティング」です。技術的には、GPS単位での広告配信も可能です。そうすると数メートル単位でユーザーを補足する事ができるので「今どこどこの駅にいるユーザーに対して駅近のクーポンを配る」という広告の配信が可能になってきます。
このほかにもDMP的な流れがあります。簡単に言えば、登録された会員情報と広告を紐づけて配信するという事です。日本では、個人情報保護的な意味合いで二の足を踏んでいますが、アメリカでは当たり前に売り買いされており広告がバンバン配信されています。遅かれ早かれ、日本でもアメリカの様になるのではないでしょうか。

例えば、ネイティブ広告を出したい時に、ネイティブ広告を出す事業者とメディア側が直接やり取りするとか、リッチ広告にあわせてクライアントと広告主とメディアが一緒にフォーマットを作るのは現実的では無くなってきています。そこで重要になるのが、間に入っているプラットフォームです。このプラットフォームが「自分たちが出したい」「自分たちにヒットした」広告の配信の仕方を選びます。そしてそれをメディアが出したい形式に変換してあげます。そうした機能としてのプラットフォームが、非常に重要になってきていると思います。

Buy Sideの広告の精緻化とSell Sideの広告の多様化が、これからもどんどん進んでいくと思います。そうして生まれるあらゆる組み合わせに対して、プラットフォームが代わりに対応するので、メディア側からすると一つのプラットフォームに繋いでいれば、いろいろな種類の広告主から広告を出す事ができます。逆に出稿側もプラットフォームに紐づいてさえいれば、いろいろな形式のメディアに対して一気に配信する事ができます。そしてプラットフォームの役割は、Buy Side広告主側とSell Sideメディア側の間に入って、それを繋いで、インプレッションの価値を最大化し、変化し続ける広告フォーマットに対応するということになっていくでしょう。

ご清聴ありがとうございました。

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