「次のアップル、グーグル、フェイスブックは日本から出す!」をテーマに、ビジネス界の第一線で活躍する識者たちが議論を交わした。

日本からグーグルは生まれるか? 経産省による識者会議が開かれる

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by [2014年4月30日]

「次のアップル、グーグル、フェイスブックは日本から出す!」をテーマに、ビジネス界の第一線で活躍する識者たちが議論を交わした。(経済産業省・ベンチャー有識者会議とりまとめ)

 経済産業省は4月14日、ベンチャー有識者会議のとりまとめを発表した。ベンチャー有識者会議は、経産大臣の私的懇談会として昨年12月から3回にわたり実施された。「次のアップル、グーグル、フェイスブックは日本から出す!」をテーマに、ベンチャー支援策の課題とその対応策が議論された。有識者メンバーは以下の通り。
 ▽WiL CEO・伊佐山元氏▽(株)経営共創基盤代表取締役・冨山和彦氏▽MOVIDA JAPAN(株) 代表取締役・孫泰蔵▽(株)ディー・エヌ・エー取締役ファウンダー・南場智子氏▽早稲田大学ビジネススクール教授・長谷川博和氏▽グロービス経営大学院学長・堀義人氏▽ボストンコンサルティンググループ日本代表・御立尚資氏▽(株)和える代表取締役・矢島里佳氏

ベンチャー創出は「経済活力のエンジン」

米国ではベンチャーが経済をけん引してるという。(経済産業省・ベンチャー有識者会議とりまとめ)

 とりまとめは4つのチャプターから構成され、産業の新陳代謝の核となるベンチャー企業の創出をテーマにまとめられている。冒頭に掲げられた「ベンチャー宣言」では、政官財やVCなどが協力し、ベンチャー創出に適した環境を整備すべきと主張した。また、ベンチャーは雇用とイノベーションを創造すると強調した。一方で、ベンチャー創出にむけた日本の課題として、グローバル化ができていない、リスクマネーが少ない、行政によるベンチャー支援が不十分などの問題点を指摘した。
 その上で、シリコンバレーなどのベンチャーが興隆した背景には、米国政府の明確な政策決定があったと分析。政府の支援策として、ベンチャー向け税制措置や、政府調達の入札受け入れ、公的セクターの規制緩和などを提言した。また、初等教育の段階から起業家精神を養い「グローバル・ベンチャー人材」を育成するべきとした。

起業率が上がれば、経済はよくなるのか?

日本は起業活動指数において4.0で最低との報告(経済産業省・ベンチャー有識者会議とりまとめ)

 とりまとめでは「起業家活動の国際比較調査では日本は最下位」とされ、OECD主要国のなかで起業者・起業予定者がもっとも少ないと報告されている。
 確かに、掲載されている図表を見てみると、日本の4.0という数字は最低であり、アメリカの12.8という数字がトップに来ている。


 よくみてみると起業家活動率の上位にあるのはチリ・タイ・中国・ブラジル・エストニア・スロバキアといった新興国や途上国ばかり。(福岡アジア都市研究所ホームページより)

 左図は福岡アジア都市研究所のホームページ上の「スタートアップ都氏が目指すもの」というスライドに掲載されていた図表だ。
 この図でも「世界的には低い日本のアントレプレナーシップ」とされている。だが、図表を良く見てみると、起業家活動率の上位にあるのはチリ・タイ・中国・ブラジル・エストニア・スロバキアといった新興国や途上国ばかりだ。その一方で、日本や欧州の先進国などは下位に属している。
 果たして、有識者会議や経産省のいうように起業率を高めれば経済は活性化するのだろうか?

雇用が安定してれば、起業率は下がる

 経済評論家の三橋貴明氏は4月9日、文化放送のラジオで、この問題を「雇用が安定していれば、起業率は下がる」と解説した。三橋氏によると、起業率の高い国では早期リストラなどで雇用が安定せず、失業率も高い。それゆえ、止む追えず自営業に移行する人々が少なくないという。
 また、起業という選択はリスキーなものであり、闇雲に起業率をあげようとする危険性を指摘した。三橋氏はそのうえで、経済をデフレから脱却させることにより、自然と起業率を高めていくべきと主張した。

開業率と失業率には相関関係がある。(社会実情データ図録)

 ホームページ『社会実情データ図録』では、都道府県別の「開業率と失業率の相関」が紹介されている。これを見てみると、沖縄が開業率と失業率の両面で一位になっており、ホームページでは次のように解説されている。「失業率が高いということは求職者数に対して職場が少ないということであり、そうした地域では余り収入にならなくとも何もしないよりましなので店屋などを開業する人も多くなる」。

 いままで見てきたように起業率の高さは経済状況の良さを示すものではない。むしろ、失業率と相関関係を持ち、雇用の不安定さを示すものだ。また、起業にはリスクがつきまとう。三橋氏のいうように「アップル、グーグルの向こう側には何万という敗者がいる」のだ。経産省にも「ベンチャー有識者会議」の成果を踏まえたうえで、とにかく数値目標として起業率を上げようとするのではなく、「次のアップル、グーグル、フェイスブックは日本から出す!」という目標を着実に達成できるような強力な産業政策の構築が期待される。

▽参考リンク
ベンチャー有識者会議のとりまとめを公表します(METI/経済産業省)
スタートアップ都市がめざすもの・福岡アジア都市研究所
【三橋貴明】おはよう寺ちゃん 2014年4月9日 文化放送ラジオ – YouTube
施 光恒(九州大学准教授) | 三橋貴明の「新」日本経済新聞
図録▽都道府県別事業所開廃業率

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