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名作の数々が次々と著作権切れに 過去の著作物は宝の山になるか

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by [2014年4月30日]

日本に限らず、世界各国の法律では誰かが書いた文やプログラム、描いた絵、写した写真、演奏した音楽、それに撮影した映画など、およそ創作活動の産物と見なされうるもの全てについて、著作権と呼ばれる権利が認められています。

今回はこの著作権とその保護期間、それにその保護期間の終了がもたらす新しいビジネスについて考えてみたいと思います。

そもそも著作権ってどんな権利?

著作権は大別して著作者人格権と財産権の2つの権利よりなっています。

著作者人格権は、著作物の公表可否あるいはその時期を決定する公表権著作者名の表示の有無や実名/筆名の選択などを決定する氏名表示権、それに著作物の内容あるいはタイトルを著作者本人の意図に反して勝手に改変されないことを保証する同一性保持権の3つの権利よりなります。

これらは権利の譲渡ができず、また著作者の意思や思想などによって左右されるため、著作者本人にのみ帰属し、その権利は他者に譲渡できません。

一方、財産権はその名の通り、著作物の複製、上演、演奏、上映、公衆送信・伝達、口述、展示、頒布、譲渡、貸与、翻訳・翻案、それに二次的な著作物の利用といった、わかりやすくいえばその著作物を利用することで「金になる」権利全般をいい、こちらはその権利を譲渡・相続できます。

一般に著作権と言った場合に取り扱われるのはほとんどの場合後者の財産権で、こちらの権利は日本の著作権法では著作者の没後(複数の共著者による著作の場合は最終に死亡した著作者の死後)あるいはその著作物の公表から50年(著作権法第五十一条)あるいは70年(※映画のみ:著作権法第五十四条)と期限を区切って保護期間設定が行われています。

この保護期間は国によって、あるいは分野によって異なっており、また著作権保護を取り扱う国際条約である「文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約」(ベルヌ条約)で条約加盟各国相互間での保護期間が異なる場合についての規定があり、加盟国各国はその規定に従って他の加盟国で作られた著作物を取り扱う義務があります。

戦時加算特例法の解消を訴えるJASRACのページ

また日本の場合は第二次世界大戦に枢軸国の一員として参戦し敗北したことから、連合国側各国中の開戦前の時点でベルヌ条約加盟であった、あるいはそれに準じた二国間条約を日本との間で結んでいた諸国において、開戦から平和条約締結までの期間に作られた著作物については著作権保護期間がその期間に応じて加算・延長されるという特別な法律(「連合国及び連合国民の著作権の特例に関する法律」(戦時加算特例法))が存在しており、その関係で著作権保護期間の計算とその取り扱いについては、他国と比較しても非常に複雑な体系となっています。

著作権の保護期間に関する戦時加算義務の解消を求めています(戦時加算特例法の廃止を訴えるJASRACのページ)

そのため、単純に期間だけで著作権保護期間を判断する場合にも、特に戦前・戦中の日本国外の著作物についてはそうした特例や例外規定がないか、慎重な調査が必要となります。

いずれは終わる著作権保護期間

しかし、「期限を区切って」と記したように、この種の法律には国によって期間が相違するものの例外なく保護期間満了となる日が訪れます。

その日を過ぎると、それらの著作物は著作権の内の財産権が消滅するため、誰が複製を作ったとしてもとがめ立てされることはなくなるのです。

そのため、いわば「賞味期限切れ」となったこうした「パブリック・ドメイン著作物」については著作権者の許諾無しで再利用して新しいビジネスを起こすことができます。

もちろん、そうしたパブリック・ドメイン化した著作物の再利用に当たっては、その著作物が何らかの手段により複製可能で、しかもその内容の同一性が保持されていなければなりません。

それゆえ、それそのものの固有性が重視される彫刻や絵画の複製を作ったところでビジネスとして大きなうま味があるわけではありません。

例えば、いくら著作権保護期間が過ぎたからといっても、日本の各家庭にアントワーヌ・ブールデルの「弓を引くヘラクレス」のブロンズ像が爆発的に普及する、といった事態とはまずならないでしょう。

つまり、こうした「パブリック・ドメイン著作物」を再利用して新規ビジネスを起こすには、元々の著作権者が複製権や頒布権で利益を得ていたタイプの著作物を対象とするのが早道となります。

わかりやすくいえば、元々複製の製作が前提となっている映画・音楽・書籍であれば、充分商売になり得るわけです。

もちろん、そうしたジャンルの著作物であっても流行り廃りがありますし、そうでなくともその内容が時代や社会情勢に合わなくなってしまっているものも多々含まれていますから、何でもとにかくパブリック・ドメイン化したコンテンツを複製販売すれば上手くゆく、というものではありません。何が売れるのか、どうすれば売れるのか、を考え工夫するのは個々の業者の腕の見せ所となります。

以下では、これら3つのジャンルについて、パブリック・ドメイン著作物を巡ってどのような動きが生じているかを見てみることにしましょう。

早期に立ち上がった著作権切れ映画DVDビジネス

著作権切れコンテンツの中で、恐らくもっとも早い時期に再利用ビジネスが立ち上がったのは映画産業でした。

これは、2004年に日本で行われた著作権法改正が、戦時加算特例法によって保護期間の延長されていたアメリカなどの戦前・戦時中の映画作品の保護期間の終了直後であったことから、1953年以前に日本で公開された名作映画の数々を自由に複製・販売できるようになった(※もっともこの期間については論争があり、最終的に2007年の最高裁判決で1953年12月31日以前公開の作品は著作権が切れたことが確定しています。また、監督個人の著作物と見なされた映画についてはその監督の死没日起算での著作権保護期間となることも、判例が出ています)ためです。

わかりやすく言えば「ローマの休日」や「シェーン」(共に1953年公開)あたりまでの名作群の多くが、(※アメリカ映画はともかく日本映画の場合、原本となるフィルムを一体どこから入手するのか、という根源的な問題はありますが)日本では「海賊版」のそしりを受けることなく誰でも自由に複製・販売できるようになったのです。

宝島シネマパラダイス 公式サイト
出版社の宝島社が「名作映画DVDシリーズ」と銘打って販売している低価格DVDシリーズの公式サイト。映画2タイトルで2枚組500円、つまり1タイトルあたり250円と一般的なビデオレンタル料金よりも安いレベルに価格が設定されている。

現在、書店などで驚くほど低価格にて映画DVDが販売されていますが、これらの大半が、正にこうした著作権消滅で「パブリック・ドメイン」扱いとなった作品を収録したものなのです。

映画の場合、フィルムをスキャニングし音声トラックを録音する手間がかかり、また海外作品の場合は字幕なり吹き替えなりそれなりにコストをかけねば商品化できませんが、それでも著作権者に対する著作権料の支払いや著作権者からの許諾取得が不要になることの影響は大きく、ちょうどこの時期の前後からパソコンの性能が向上し、個人レベルでもDVD製作に必要な動画のMPEG2エンコードやDVDオーサリングを行うソフトウェア環境が容易に入手できるようになってきたこと、それに中国や韓国などのプレス業者の参入でDVDプレスのコストが低下したこともあって、こうした「パブリック・ドメイン映画」を収録した販売価格250円~500円程度の低価格DVDが日本で一気に普及しました。

意外と普及しなかった著作権切れ音楽CD

著作権切れ映画DVDが2000年代後半以降一気に普及した一方で、音楽コンテンツのパブリック・ドメイン音源を収録したCDはそれほど劇的には普及しませんでした。

これは、映画が一律公開日起算で保護期間が設定されているのに対し、音楽の場合は書籍などと同様に楽曲の著作権が作曲者の没後50年間保護され、演奏については著作隣接権によりその音源の公開から50年間保護されるというやや複雑な条件となっている(※つまり、音源公開から50年経過していても、作曲者の没後50年経過していない楽曲については保護対象となります)ためです。

これにより2014年現在、1963年までに没した作曲家の楽曲は基本的に著作権が消滅、演奏についても同様に1963年以前公開のものは著作隣接権による保護期間が終了しています(※ただしこれらも戦時加算特例法の対象となるため、対象国・対象時期の作曲家・演奏については保護期間が延長されます)。

もっとも該当時期はモノラル録音の時代からステレオ録音への移行期までで、1953年以前のものは事実上ステレオ録音の音源が存在せず全てモノラル録音となってしまう上に当時の録音技術は今ほど良くなかったため、例えばアルトゥーロ・トスカニーニやヴィルヘルム・フルトヴェングラー、あるいはエーリヒ・クライバーなどの当時を代表する伝説的な名指揮者の演奏を聴きたい、といった音楽愛好家のマニアックな需要を別にすれば、今となってはなかなか一般に受け入れがたい音源しかない、ということになります。

もちろん、この種の音楽CDはそれはそれで一定の根強い需要を保っていて、恐らく今後とも無くなることはないと考えられますが、元々レコード業界では発売後一定期間を経過したレコードやCDについて低価格化の上で再発売するケースが少なくなかったこともあって、堰を切ったように怒濤の勢いで市場に出回ったパブリックドメイン映画DVDほどのインパクトがないのは確かです。

ようやくスタート地点に着いたばかりの書籍

青空文庫 公式サイト
日本におけるインターネット普及の初期から開設されてきた、パブリックドメイン著作物を中心とした電子図書館プロジェクト。著者提供などによる一部の例外を除き、大半はボランティアによる人海戦術的な底本からの入力・校正作業を行われたテキストが公開されている。

著作権切れコンテンツを活用したビジネスにおいて映画や音楽が先行して普及していった一方で、著作権切れの書籍を独自に複製・再販するビジネスはなかなか立ち上がりませんでした。

オンライン上では、例えば著作権の切れた書籍の文章をボランティアが手分けして入力・校正して公開する「青空文庫」のプロジェクトがインターネット普及の初期に当たる1997年から始まっていましたが、こうした底本のテキストデータ化を商業ベースで実施するのは莫大な人員と時間を要し、またそれを機械的な手段で代替しようにも、それは当時の技術では困難でした(※青空文庫でも、入力されたテキストを逐一チェックする校正者の不足が深刻な問題となっています)。

また、原本そのままの形での複製を取るにはスキャナが必要ですが、それもまた1頁ずつスキャンするには莫大な手間を要したため、つまるところ費用に見合った価格での販売が困難だったのです。

さらに、書籍の場合厄介なのは文章の著者だけでなく装画の作者の著作権も存在することで、単純に著者の死没から50年経っていればそれでOKというわけではなかったのです。

特に、著者の死没年については多くの場合は比較的容易に知ることができますが、装画を描いた画家の死没年を知るのは難しいケースが少なくなく、そうした装画に意味や価値のある書籍の場合を中心に、著作者の死没年が明らかで無いために完全なパブリック・ドメイン著作物とみなすことができずかつて刊行された書籍そのままの複製品を作成して販売するのが困難なケースが多々あります。

書籍のパブリック・ドメイン化の障害となる「孤児著作物」

こうした著者死没年があきらかでなく刊行や発表から相当年数が経過した、あるいは著者死没年が明らかでまだ保護期間内であっても著作権の譲渡を受けた個人あるいは団体の所在が不明で、著作権の権利所在が明らかではないためにパブリック・ドメインとして取り扱えない著作物のことを「孤児著作物(Orphan works)」と呼びます。

こうした著作物は、たとえ生物種としての人類の寿命に照らして著者死没から50年以上が経過しているとほぼ確実に断定できる状態のものであっても、死没年が不詳であるために著者死没年数からの期間計算で著作権終了を判定する現在の著作権法においてはそのままではその著作物を永遠にパブリック・ドメイン扱いとすることができず、有効活用できないことになります。

著作者情報 公開調査
国立国会図書館が所蔵する明治・大正期の孤児著作物の著作者情報を募るページ。平成15年度から平成22年度まで休止期間を挟んで5年度に渡って実施されたが、これにより収録可能となった資料数はわずか1015件で、全体の2%にしかならない。

実際、国立国会図書館が2002年に「近代デジタルライブラリー」を開設した際に、同館所蔵の明治・大正期に刊行された著作物の内、著者の没年情報が不明な作品5万点以上(※そもそも全国統一の戸籍制度が施行されていた明治・大正期の公刊書籍ですら、これほど多くの孤児著作物が生じていること自体が、著作権法の持つ制度的・構造的な問題を物語っています)について著作者没年情報の提供を求めたところ、著作者の没年を特定できたのは平成15年度から22年度までの間にわずか600件強、つまり約1%強にとどまりました(※そのため、近代デジタルライブラリーでは後述する文化庁長官裁定による公開に踏み切った書籍が明治時代刊行著作物の75%に達しているといいます)。

この時期に活動していた著者の場合、関東大震災や第二次世界大戦が原因で、死亡後に身元不詳の行旅死亡人として葬られた、あるいは行方不明のままとなったケースが少なくなく、「どうやらこの時期に亡くなったらしい」と推定はできてもその没年を特定できず、その著作物が孤児著作物と化してしまっている例が多数存在するのです。

著作者情報 公開調査(国立国会図書館)

この問題は著作権の保護期間が延長されればされるほど顕在化する傾向にあり、多くの著作物の再利用・有効活用を妨げる結果となっていることから、欧米各国でも深刻な問題と見なされるようになってきています。

公益社団法人著作権情報センター(CRIC)の「権利者を探しています」ページ

この問題の解決策あるいは回避策として、日本の著作権法では文化庁長官の裁定を仰ぎ、一定の補償金を供託することで一応利用を可能としている(第六十七条)のですが、これはこれでその著作権が既に消滅していた場合、本来ならば支払わなくても良いと推定できる補償金を供託金として支払うことを裁定申請者に強い、またそれ以外にもその権利の所在調査について「相当の努力」を行うことを義務づけていることから、その著作物を利用する側に非常に不公平な制度であると言えます。

権利者を捜しています (公益社団法人著作権情報センター)

この孤児著作物問題を完全解決するには、究極的には全ての著作物について映画や団体による著作物などと同様に、発表日あるいは製作日基準での保護期間設定を行うほかないと考えられるのですが、残念ながらこの問題についての国際的な議論は深まっていません。

ちなみに、孤児著作物についての日本の一般的な出版社その他の対応は、文化庁長官裁定に頼らず「著者の方を探しています」という一文を奥付などに記載して済ませる、つまり刊行した後で著作権者を探し出して承諾を求めるという事後承諾パターンが結構多く見られます。

お知らせ(群馬県立土屋文明記念文学館による復刻刊行物の著作権者に関する公開調査の例)

これなどは、孤児著作物の著作権者捜索について「相当の努力」をすることを求める著作権法の制定意図と、歴史の中で埋没していった良著をどうにかして再販、広く普及させたいという再販者側の願いの折り合いを付けるなかなかの便法と言えますが、再販を行わねば著作権者捜しを行っていることを関係者に広く伝えるのも難しい、孤児著作物を取り巻く厳しい現状を示したものとも言えるでしょう。

ようやく軌道に乗り始めた著作権切れ書籍の複製・再販ビジネス

キヤノン DR-M160
「ドキュメントスキャナー」と銘打たれた、両面同時スキャンを行うタイプのスキャナの例。この種の機種では、紙送り時の重送(複数枚同時送り)などのエラー検出とその防止に特に意を注いで設計されることが多い。

孤児著作物の話が長くなりましたが、近年ではいわゆる「自炊」の流行が物語るように給紙機能付きの両面スキャナの普及によって、底本の解体・破壊は必要となるものの、ある程度以上効率的に書籍をスキャンして画像データ化する作業が行えるようになってきました。

また、これまで人海戦術に全面的に依存せざるを得なかった書籍の文字データのテキストデータ化作業も、こうしてスキャナで読み取った紙面画像データに対するOCR(Optical Character Recognition:光学文字認識)処理ソフトウェアの高性能・高精度化により、かなりの正確さで読み出し・変換が可能となってきました(※もっとも、それでも縦書きやルビありのものなど、変則的なレイアウトを採用している紙面のものについては最新のOCRソフトでも誤ったテキストを出力されることが多々あるため油断は全くできず、校正者の負担は減っていませんが)。

さらに、カラーレーザープリンターの普及などによって少部数印刷のコストが従来よりも低減され、需要の少ない書籍でも商業的な出版が行えるようになりました。

加えて、先に述べた近代デジタルライブラリーの活動により「パブリック・ドメイン」として公的にお墨付きが与えられ、またその画像データがWeb上で公開される書籍が増えたことも無視できません。

こうした事情もあって、近年ようやく古い著作権切れの書籍を複製・印刷・製本して出版するビジネスが立ち上がり始めました。

例えば、インプレスR&Dは先日Amazon.co.jpプリント・オン・デマンドプログラムと三省堂書店オンデマンド経由で近代デジタルライブラリーが公開しているパブリック・ドメイン著作物を印刷・製本して販売することを発表しました。

『NDL所蔵古書POD』 国立国会図書館のパブリックドメイン古書が Amazon.co.jpで販売開始に -インプレスR&DとAmazon.co.jpの協業で実現-

これはパブリック・ドメイン著作物を単純に、そのまま印刷・製本して販売しようという試みですが、この方法論を応用すれば過去の名著に対する最新の研究論文や解説・解題を付することで、新しい書籍出版の可能性を模索することもできるでしょう。

実際、明治・大正期の稀覯本化してしまった著作物(※それは往々にして孤児著作物となっています)に対する研究論文では、著作権法の認める引用範囲の制限からそもそも閲覧することそのものが難しい対象書籍の内容理解・全体把握が困難になるケースが少なからず存在していましたから、研究成果と対象書籍の複製、という組み合わせで復刻を行うことには、商業的なメリットだけでなく学術的な面でも大きなメリットが生じることになります。

個人出版が可能な時代の流通とその問題

ここまで商業的な側面でパブリック・ドメイン著作物について見てきましたが、自由に複製できるからには個人でもパブリック・ドメイン化した稀覯本の少部数出版を行う、というのは当然に可能です。そして我が国の場合、個人的な少部数印刷・製本について、同人誌印刷という形で一定のインフラが存在しています。

その種の稀覯本に対するニーズが果たしてどの程度あるのかという問題はありますし、そこまでして印刷・製本しなければならない著作物なのか、という議論も当然あるのですが、そうした「選択肢」が存在していることは念頭に置いておく必要があるでしょう。

ただ、商業出版を含め、この種のパブリック・ドメイン著作物の複製販売で問題となるのは、その流通系統です。

一体、どこの会社/団体/個人がどんな分野の書籍を復刻しているのか、またそれがどこで入手できるのか。

そうした基本的な情報を包括的に取り扱い、あるいはそうしたパブリック・ドメイン復刻書籍の販売を手がけるサイトが十分整備されないことには、こうした書籍の一般化は難しいでしょう。

先にも述べたインプレスR&Dとの協業の例が示すように、Amazon.co.jpはオンデマンド印刷サービスとの連動という形でそうした書籍の取り扱いを始めていますが、受注生産的な形での販売も当然ありうることを考慮すると、「在庫」を前提とするAmazon.co.jpのシステムでこうした書籍を包括的に扱うのは難しい気がします。

複製著作物の刊行に踏み切る者が増えるのが先か、それともそうした情報・ショッピングサイトの整備が先か、いわゆる鶏卵問題状態に陥っているとも言えますが、これはパブリック・ドメイン著作物の複製出版が十分一般化するよう普及促進を図る上で避けて通れない問題です。

「パブリック・ドメイン」であることを保証するデータベースが必要だ

また、こうしたパブリック・ドメイン著作物の複製品が大手を振って一般社会に流通するには、それが「パブリック・ドメイン」、つまり著作権保護期間の終了した、合法的な存在であることを何らかの公的な団体・組織が保証する仕組みが必要です。

最低でも各著作者の死没年とその著書の初刊行時期を記録した公的なデータベースを作成し、それを広く公開して誰でも自由にその著作物が著作権切れであることを確認できるようにせねば、とても安心して孤児著作物を再利用できないでしょうし、常に海賊版というダーティなイメージがつきまとうことになります。

現状では、書籍についてはここまででも述べてきたように、国立国会図書館の近代デジタルライブラリーによって孤児著作物の解消の努力が行われ、また同ライブラリーでの公開、という形でパブリック・ドメイン化した著作物について一定の保証が与えられてきているわけですが、他のジャンルにおいては公的な機関や業界権利者団体がそうしたいわばパブリック・ドメイン著作物の「ホワイトリスト」を作成し公開する努力を過去に行ってきた、という話を筆者は寡聞にして知りません。

理想的なのは、著作権を所轄する文化庁がパブリック・ドメイン著作物のホワイトリスト一覧を公開する、あるいは請求された著作物についてパブリック・ドメインであるか否かの判定を行い、それを公示する、といった形でデータベース化してゆくことなのですが、現状の情勢を鑑みるに残念ながらそれは期待できそうにありません。

そのため、今後パブリック・ドメイン著作物でビジネスを行う場合、少なくとも当面の間は現行著作権法の下で許されている文化庁長官による裁定制度を利用するほか無いのですが、その裁定制度自体が「使えない」代物である(※この裁定制度の改善も、データベース整備と並んで今後行わねばならない重要課題の一つです)ため、そうした言わば足かせとなる問題があることを承知の上で進めてゆく他なさそうです。

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