140407-a

多機能複合カラーコピー機の静かなる普及と進化

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

by [2014年4月23日]

コンビニエンスストア(コンビニ)にはつきものの機器の1つに、コピー機があります。

一体いつからそうなったものか今ではどの店でも当然のように設置されていますが、A4モノクロコピーで一般に1枚10円、大きなA3コピーやカラーコピーだとそれ以上の値段がかかるもののお手軽に、それも早朝から深夜までほぼいつでもコピーがとれるこの種の機器について、お世話になったことのない方を探す方が難しいのではないでしょうか。

筆者が田舎の中学生だった当時、初めて地元にできたコンビニでコピー機を利用し、その便利さにいたく感動した記憶があります。

あれから約30年、気がつくとコンビニのコピー機(複合機)は空恐ろしいほどの高機能化を実現していました。

今回はそんなコンビニ設置の複合機についてあれこれ考えてみたいと思います。

シャープと富士ゼロックスがシェアを分け合う
日本のコンビニ向け複合機市場

先日、シャープがサークルKサンクスから新型複合機を受注・納入することを発表しました。

 新型デジタルフルカラー複合機をサークルKサンクスの店舗へ納入
 (シャープのニュースリリース)

実はこのMX-3610DSという機種、既に2012年10月からローソンとファミリーマートへの導入が開始されていた機種で、今回のサークルKサンクスへの導入開始により、日本におよそ4万7000店舗ほどあるとされる主要コンビニの内、実に約58%の店舗にこの機種が導入されることになったのです。

 新型デジタルフルカラー複合機をローソンへ納入
 新型デジタルフルカラー複合機をファミリーマートへ納入
 (シャープのニュースリリース)

ちなみに、業界最大手のセブンイレブンは2009年から2010年にかけて4世代目の新型複合機を富士ゼロックスから導入し、既に2010年にスマートフォンで写真撮影した画像データなどの印刷サービスを提供開始しています。

 セブン-イレブン全店舗のマルチコピー機をリニューアル
 スマートフォンから写真や文書を全国のセブン-イレブンでプリント可能に
 (富士ゼロックスのニュースリリース)

また、主要コンビニチェーンの1社であるデイリーヤマザキは2010年に店内設置の複合機の更新を実施していて、シャープからMX-4500DSという機種を導入しています(※これはスマートフォンからの直接印刷をサポートしていません)から、これで何と全国の主なコンビニの6割以上がシャープ製複合機で埋め尽くされていることになり、更に今回のサークルKサンクスへの新型機導入で全国主要コンビニの90%以上の店舗(※店舗数ベースでの単純計算値。なお、現時点でも一部でこのサービスを実施していない店舗があるため、実際にはこれを下回る普及率となります)において、スマートフォン画像の直接印刷サービスが実施されることになるわけです。

 デイリーヤマザキ1,500店舗にデジタルフルカラー複合機を納入
 (シャープのニュースリリース)

なお、コピー機や複合機の大手であるキヤノンはこの分野では影が薄く、かつてローソンに納入していた実績がある他、現在ではミニストップにやや旧式のFAX機能付き複合機が導入されているのみ(※現在のシェアは5%弱)となっています。

コンビニ複合機の本質

富士ゼロックス セブン-イレブン向けマルチコピー機
セブンイレブンに納入されている多機能複合機。多段用紙トレイを備えるプリンタ本体にA3フラットベッドスキャナが覆い被さるように搭載され、各種メディアのリーダーを備えたコンピュータがタッチパネル付のディスプレイと組み合わせて接続されている。サイズ的にはプリンタ・スキャナ部が大きいが、サービスの中核を担うのはコンピュータ部である。

さて、表層的なサービスを取り除いて純粋に機能だけを見た場合、現在のコンビニに設置されている複合機にはメーカーを問わずある共通点があります。

それは、フラットベッド型スキャナとコンピュータ、それに多種用紙の給紙機能を備えたレーザープリンタの組み合わせを基本として構成されていることです。

もちろん、コピー機の本質がスキャナとプリンタの組み合わせにあるのは自明の話なのですが、これらの機能が分離可能であったことが、その後の複合機としての発展を可能としたのです。

つまり、古いコピー機がそうであったように単純にスキャンした画像データを直接プリンタに送り込んで印刷してしまうのではなく、スキャンした画像データを一旦コンピュータのメモリやハードディスクに蓄えて画像処理することで、同じ画像を何度もスキャンせずに複数枚コピー出力する機能や拡大縮小機能、あるいは画像のシャープネスや輝度の調整が可能となって飛躍的な使い勝手の改善がまず実現しました。

さらに、そのコンピュータにモデム機能を搭載することでFAX送信機能が、またLAN機能を搭載しネットワーク接続することでチケットの予約発券サービスや公共機関の証明書発行サービスがそれぞれ可能となり、さらにはそのコンピュータに液晶ディスプレイを接続しコピーの際にスキャンした画像を事前表示・確認できるようにすることで、ミスによるコピー失敗を大幅に減らせるようにもなりました。

入力部分と出力部分の間にコンピュータが挿入されることで高機能化し、やがて主従関係が逆転するという現象は、かつて電子式タイプライターが英文ワープロを経てパソコン+プリンタへ移行してゆく過程でも見られた現象ですが、ソフトウェアさえ用意すればそのハードウェアの許す範囲で新機能の追加が容易に行えるというコンピュータの特性を考えればこれは当然の帰結であったと言えます。

シャープと富士ゼロックスで大きく異なる
スマホからの印刷機能

シャープ PrintSmash 起動画面
写真(JPEG)かPDFかを選ばせ、後は印刷したい画像と複合機の接続されているWi-Fi接続を選択すれば店舗の複合機にデータ送信されるようになっている。

今回のシャープのMX-3610DSや富士ゼロックスのセブン-イレブン向け現行マルチコピー機では、スマートフォンからデータを送信し、印刷する機能がサポートされています。

しかし、実現方法は両者で異なっています。

いずれも、複合機本体にWi-Fi接続のためのインターフェイスを直接搭載させておらずスマートフォンに専用アプリ(※シャープは「PrintSmash」、富士ゼロックスは「netprint」。いずれもAndroid版とiOS版を提供)をインストールさせる、という点では共通するのですが、シャープの方は各店舗内に無線LANルーターを設置し、これを複合機のコンピューター部に搭載されているLANインターフェイスと接続、さらにスマートフォンでこの無線LANルーターを検出・接続させ、Wi-Fi接続越しに「複合機が見える」状態にして複合機に直接データを送信する、という「Wi-Fi接続で印刷」と言った場合に普通に思い浮かべるような、もっともシンプルな方法により実現されています。

富士ゼロックス netprint 起動画面
何も知らずにこのアプリをダウンロードし、気楽に画像印刷するつもりだったユーザーだと、いきなりログインを求めるこのそっけない画面が表示されるだけで心が折れてしまうかもしれない。ユーザー登録し、使い方に慣れれば便利だが、初心者には敷居の高いシステムであると言える。

これに対し、富士ゼロックスのシステムは元々企業内で使用する複合機などでの出力サービスのシステムを発展させたものであったためもあってか、各利用者にユーザー登録をさせ、同社サーバに用意されたその固有IDごとに提供された領域に印刷したい画像なり文書なりを一旦アップロードさせて印刷予約をさせ、その予約番号をメールで登録ユーザーに送って、その番号が入力された複合機に対してプリントイメージを同社サーバから送信して印刷する、という大がかりなクラウド印刷システムになっています。

これらには一長一短があって、まずシャープのシステムでは操作が簡便であるものの、「PrintSmash」で解釈できるファイルフォーマットがJPEG(画像)とPDF(文書)の2種類に限られます。

一方、富士ゼロックスのシステムの場合、クラウドで文書フォーマットを解釈・変換してプリントイメージを作成してから印刷を行うため対応フォーマットが非常に多く、ファイルサイズ上限が2メガバイト(JPEGのみ4メガバイト)でその他各フォーマットごとにいくらか制約があるものの、URLを指定すればネット上のWebページすら印刷できるほどの高機能ぶりです。さらに、料金にして最大1万円分までのページ数のデータ登録が可能であるため、大量のページを印刷したい場合には非常に便利な仕組みとなっています。

もっともその反面、データのサーバへの登録作業と印刷予約の工程が必要で手順が煩雑かつ時間がかかるため、こちらは写真1枚をお手軽に出力したい、といった使い方には全く向きません。

このあたりは、元々既にあった社内LAN用印刷サービスを基本としてパソコン向けの画像・文書印刷サービスの仕組みを先に構築し、それにスマートフォン用サービスを付加した富士ゼロックスのシステムと、最初からスマートフォンで簡便に直接印刷することに特化したシャープのシステムの立ち位置の差が明確に出た部分である、と言えるでしょう。

富士ゼロックス netprint かんたん写真印刷
本来のnetprintとは異なり面倒なユーザー登録は排除され、印刷時に予約番号を受け取るためのメールアドレスの指定と、暗証番号の設定のみで印刷が可能となった。このため、netprintよりは格段に初心者に対する敷居が低くなったと言える。

ちなみに、富士ゼロックスも「netprint」のユーザーログインを真っ先に求めるようなシステム構成が「気楽に1枚か2枚だけ写真を印刷したい」といった用途で使うにはあまりに煩雑すぎることについてはさすがに自覚があるようです。

実際、同社はローソンやファミリーマートでMX-3610DSの導入と「PrintSmash」を用いたスマートフォンからの画像・PDF印刷サービスが開始された後の2013年になって、遅まきながら「netprint かんたん写真印刷」というアプリの提供を開始し、画像印刷に限っては従来と比べて格段に手間が省けるようになりました。

とはいえ、それでもクラウドサービスゆえに画像のアップロード作業が必要なことには変わりなく、シャープのシステムのような簡便さは実現できていません。

ただし、富士ゼロックスのシステムの方が圧倒的に有利な点が1つあります。それは、店舗内のWi-Fi接続サービスに依存しないため、いざ店舗に行って「店内Wi-Fi接続サービスに接続できないため印刷できない」というトラブルが原理的に起きないことです。

コンビニの店内にはWi-Fi接続サービス、特に2.4GHz帯での接続にしか対応しない機種にとっては最悪の天敵と言える電子レンジが設置されているのが普通で、しかも「お弁当、暖めますか?」のサービスがありますからこれはかなりの確率で稼働しています。そのためこれらの機種のユーザー、あるいはそうでなくとも店舗側が5GHz帯に対応しない無線LANルーターを設置していた場合、シャープのシステムでは「接続できない」あるいは「接続がやたら切れる」という問題が頻発することになります。

実際、果たして各店舗のルーターが5GHz帯での通信に非対応なのかどうかはわかりませんが、Google Playの「PrintSmash」配布ページに表示されるユーザーレビューを見ると、この問題や接続時のパスワード入力問題で低評価としているユーザーがかなり多く、すんなり接続できたユーザーがおしなべてその使い勝手の良さを高評価しているのと対照的な状況となっています。

都市部では驚くほどの密度で普及している

ところでシャープの「PrintSmash」の場合、同社が把握している自社製複合機の設置店舗データを利用したコンビニエンスストア検索機能が搭載されています。

この機能を利用することで、シャープ製複合機設置店舗とその複合機で利用可能なサービスが確認できるようになっているのです。

試しに都心の適当な場所で検索してみると、東京スカイツリーのある墨田区内は半径2kmのエリア内にローソン・ファミリーマート・サークルKサンクスだけでも約40店舗がひしめき合う激戦区で、記事執筆時点ではサークルKサンクスには写真プリント・PDF印刷に対応した新型機(MX-3610DS)を設置した店舗がまだないことがわかります。

シャープの「コンビニエンスストア検索」の比較
「PrintSmash」からの印刷サービスに対応する店舗を検索する(右)と、現時点ではその条件を外した場合(左)に表示されていたサークルKサンクスの店舗は表示されない。また、ローソンの一部ではこのサービスに対応しない店舗があることがわかる。

一方「netprint」の方はこうした店舗検索のサービスが提供されておらず、ユーザーの立場では使い勝手に対する配慮が欠けている印象があります。

コンビニの場合、サプライチェーンの都合で店があるエリアには集中して店が建ち並び、ないエリアにはどこまで行っても店がないという状態になりがちなので、印刷できる店が周囲のどこにあるのかというのは結構切実な問題の筈なのですが、このあたりのことを富士ゼロックス自身はどう捉えているのでしょうか。

現状ではシャープの圧倒的優勢

以上、コンビニの複合機について見てきましたが、業界最大手であるセブン-イレブンを顧客とする富士ゼロックスがおよそ3割弱、業界2位から4位、それに6位までの各社を顧客とするシャープがおよそ6割強のシェアを占め、複合機メーカーとしては有力な他の各社がほぼ排除されて実質2社で寡占状態となっている、というのはちょっと意外でした。

先にも記したとおり、かつてはローソンが最大手のキヤノン製複合機を採用していましたから、合従連衡と統廃合を経て大手コンビニの会社数が減ってシェア争奪が椅子取りゲームの様相を呈していることを踏まえても、この分野でシャープが「強い」ことは明らかです。

先年の経営危機の際にサムスンがこの複合機事業を狙ってシャープに接近しましたが、こうした複合機事業での限定的な市場とはいえ圧倒的な強さを見るとそれも納得が行きますし、「PrintSmash」の作り込みや使い勝手を見れば、新サービスは拡充したいがそれによる店員教育の負担は増やしたくないコンビニ各社において、利用者に込み入った操作を求めないシャープ製複合機のシェアが拡大したことも、ある意味当然の結果と言えるでしょう。

ところで、前回のセブン-イレブンの新複合機導入から約5年が経過し、そろそろ新型機への更新時期が近づいています。

サービスの継続性の観点では従来通り富士ゼロックス製の機種になる可能性が高いのですが、果たして同社が今後どこのメーカーの機種を選び、どのような新機能を搭載してくるのか、興味が尽きません。

コメントは受け付けていません。

PageTopへ