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紛争鉱物の排除を急ぐインテル

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by [2014年4月22日]

紛争鉱物の排除についての取り組みを紹介するIntelの公式ページ

一般的に半導体はその製造にあたって、さまざまな希少鉱物を必要とします。

単純にその材料として希少鉱物が必要となるばかりでなく、その製造過程で利用される様々な資材、例えば半導体結晶を切り分けるカッターであるとか、その表面を研磨する研磨剤であるとか、様々な種類の希少鉱物がその製造工程で利用されています。

そうした鉱物が利用されるのは、ひとえにそれらの鉱物の持つ物理的特性が、その工程や材料として求められる性能などに合致していて他の資材で代替するのが難しいからですが、それだけにこうした希少鉱物の安定供給は製品製造そのものを安定的に行う上で重要な課題となります。

偏在する希少資源

問題は、そうした希少鉱物の多くが地球上で偏在、つまり特定の地域に集中して産出し、それ以外の地域ではあまりまとまった形で産出しない、ということです。

2010年の中国政府による対日禁輸措置で大問題となったレアアースでもそうでしたが、こうした希少資源の産出国が恣意的にそうした資源の輸出をコントロールすることで自らの政治的目的を果たそうとした場合、それらの鉱物を利用する企業は製品の安定供給が困難となり大打撃を受けることになります。

またそうした希少鉱物の産出国は希少鉱物の輸出に依存する経済構造を持つがゆえに、往々にして希少鉱物の採掘権等の利権を巡る国内の部族・民族対立などで政情不安定になりがちで、実際にコンゴ民主共和国(旧ザイール共和国)では、1960年に始まったコンゴ動乱以降現在に至るまで長期にわたってこれらの鉱物資源が国内各勢力の争奪対象となり、その輸出が彼らの武力強化の資金源となることで紛争が長期化し、それゆえにさらなる争奪戦を引き起こすという悪循環が続いています。

そのため、特にコンゴ民主共和国およびその周辺で産出するこれらの希少鉱物、具体的には以下の4種の鉱物資源は同国で大量に産出することから各武装勢力の資金源として狙われ、実際にも資金源として利用されてきたことから「紛争鉱物(conflict minerals)」とまで呼ばれています。

  • 錫(Sn)
     主に酸化物である錫石として産出。はんだや電極などに使用される。
  • タンタル(Ta)
     コロンバイト-タンタライト(コルタン)という鉄・マンガン・ニオブとの化合物の形で産出し、特性が良いことから一般に小型高性能キャパシタ(コンデンサー)に使用される。
  • タングステン(W)
     鉄重石(鉄マンガン重石)という化合物の形で産出。非常に硬く融点が高いことから様々な用途がある。
  • 金(Au)
     延性・展性が高く電気伝導が良く腐食しにくいことから微細配線をはじめ多くの用途がある。

こうした事情から、同国は現在もなお政情不安定な状態なまま「紛争鉱物」により潤沢な資金を得た各武装勢力による暴力や虐殺などにより多くの犠牲者を出し続けています。

「紛争鉱物」排除のための法制度整備

当然ながら「紛争鉱物」がコンゴ民主共和国内の紛争を長期化させ、多くの犠牲者を出し続ける一因となっていることは誰の目にも明らかでした。

それゆえ2008年頃から紛争根絶のための手段として、法制度整備による紛争鉱物の排除→各武装勢力の資金源潰しが模索されるようになりました。

その最初の試みは2008年にアメリカ上院で提出された「紛争コルタン・錫石法(Conflict Coltan and Cassiterite Act)」と考えられ、さらに2009年にもそのものずばりの「2009年コンゴ紛争鉱物法(Congo Conflict Minerals Act of 2009)」という法案が提出されました。

これらはいずれも様々な事情から廃案に追い込まれたものの、紛争鉱物取引規制そのものは重要課題の1つとしてアメリカ議会に認識され、翌2010年7月には、「ドッド・フランク ウォールストリート改革および消費者保護法(Dodd-Frank Wall Street Reform and Consumer Protection Act:DRC)」と呼ばれる金融規制改革法の一環としてアメリカ合衆国証券取引委員会(Securities and Exchange Commission:SEC)に登録する各企業に紛争鉱物の使用状況を(第三者による監査をおこなった上で)毎年報告するよう義務づける条文(第1502条)が制定されました。

さらにこの条文を根拠としてSECは製品に紛争鉱物が含まれる場合に「当該鉱物が対象国産ではない、または対象国産であっても武装勢力の利益となっていない」ことが結論付けられた場合に限って紛争鉱物を含むその製品を「DRC conflict free」と表示できるとする規則を定め、さらに2014年12月31日までを暫定期間として調査で「DRC conflict free」と結論付けられなかった製品を「DRC conflict undeterminable」と表示することができる、としました。

DRCに深刻な影響を受けた半導体業界

この法律および規則の制定は、当然ながら製品製造にあたってこれらの紛争鉱物を大量消費する半導体業界に深刻かつ重大な影響がありました。

この規則をSECが正式に採択した2012年以降、アメリカの半導体メーカー各社は「DRC conflict free」表示を得るためにこれら紛争鉱物の調達先の明確化のための調査や、これらの鉱物の使用排除に追われるようになったのです。

もっとも、この規則に従って製品で「DRC conflict free」表示を得るのは至難でした。

メーカー各社が調達した紛争鉱物が果たしてどこで採掘され、どこで精錬されて、どこの企業を経由して納品されたものであったのか、全流通経路(サプライチェーン)を追跡調査して「DRC conflict free」を宣言できるほどその出自を明確化するには莫大なコストを要したためです。

特に、複数の国に工場を複数持ち、資材納入を複数の企業に依存している巨大企業の場合は調査だけでも非常な手間を要し、2014年末の暫定期間終了までわずか2年の間に「DRC conflict free」を宣言するのは困難と考えられていました。

「DRC conflict free」の実現を宣言したIntel

Conflict Minerals Sourcing Policy(紛争鉱物調達方針)
Intelが自社サイトで公開している、紛争鉱物の調達についての方針を記した文書。

そんな中、そうした巨大半導体メーカーの筆頭であるIntelは、今年1月のCES 2014で今年発売の全プロセッサから紛争鉱物を完全排除することを表明しました。

同社は、様々な半導体材料の研究を通じて蓄積してきたノウハウをフル活用して紛争鉱物の使用量そのものを削減し、さらに他で代替の効かない部材などについては、コンゴ民主共和国内など紛争鉱物を産出する各地に武装勢力の資金源とならない採掘場・精錬場などを確保・設立する(※これは紛争鉱物の採掘・精錬事業が最貧国の1つであるコンゴ民主共和国にとって数少ない外貨獲得手段であり、同国国民の生活や収入を今以上に悪化させないためには同国から「DRC conflict free」な形で紛争鉱物を調達する必要があったことによるものです)ことで、武装勢力の資金源としての紛争鉱物を製品製造工程から排除したというのです。

業界のリーダーであるIntelが率先してこうした対応を取ったことは、大いに賞賛されるべきものです。

「DRC conflict free」でない紛争鉱物はこれまで各社の半導体製品に、つまりスマートフォンやパソコンなどに大量に使われてきましたから、これらの消費が完全に排除、あるいは他の材料で代替されるようになるだけでも、コンゴ民主共和国内での武装勢力の資金調達には無視できない影響があるはずです。

果たしてこれが、最終的に同国の治安回復にどの程度効果をもたらすのかは定かではありませんが、こうした施策が紛争解決の一助となることを祈らずにはいられません。

In Pursuit of Conflict-Free(Intel)
Conflict Minerals Sourcing Policy

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