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ポエム化の功罪 情報の波にかき消される思考

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by [2014年4月09日]

 2014年1月頃、NHKで取り上げられたことを皮切りに、通販サイトやグルメサイトのレビュー欄で、コメントがポエム化していることが話題となっている。現代社会に必要なことと擁する意見もあれば、結局何が言いたいのかわからないと批判する意見もある。ここでは、なぜコメントがポエム化してしまうのか考えてみたい。

ポエム化とは?

 そもそも「ポエム化」とは何なのか。みなさんは、食べログの店舗評価コメントやAmazonの商品レビューなどにユーザーが書き込む、抽象的であったり、韻を踏んだりする、詩のようなコメントを見たことはないだろうか? 事実に基づく具体的な評価ではなく、自分の心情を表すような抽象的な言葉で埋め尽くされたコメントのことだ。このように、コメントが抽象化した詩のようになることを「ポエム化」という。ポエム化しているのは、食べログやAmazonのようなユーザーが書き込めるサイトだけではない。自社商品の情報を提供する企業サイトでもポエム化しているものが存在するのだ。ポエム度はサイトによってまちまち。ほとんどは、通常のコメントに時折ポエムが見受けられる程度で、今のところサイトのほぼすべてがポエムで埋め尽くされている例は発見できていない。
 それでは実際に、ポエム化しているコメントが楽しめるサイトをいくつか紹介しよう。

グルメサイト(食べログ)

 テレビ番組などでも取り上げられることが多い大手の飲食店レビューサイト。

花がほころぶ。
その音が耳をすませば聞こえそうな昼下がり。

 店内の雰囲気や料理の質ではなく、自分が店舗を訪れるまでの心情や、店舗で注文した料理の感想とおぼしきコメントがポエム化している。もちろん、ポエム化していないコメントが大多数なので、お店を探す人は安心して利用して欲しい。

通信販売(アマゾン)

 食べログと並ぶ定番はご存知アマゾン!

きっと無くても済んでしまうもの。
でも、あるからこそ素晴らしいもの。

 こちらはゲームボーイアドバンス用ソフト『MOTHER 1+2』に書き込まれたレビュー。昔ファミコン版を遊んだ人には「懐かしい」と参考になるレビューかもしれない。

マンション販促サイト(ブリリア有明シティタワー)

 ロケーションを紹介する記載の中に、周辺環境について一言も書かれていないポエム化した紹介ページがあった。

感度の高いユーザー達のパワースポットでありたい

横並びなライフシーンはデリート

「住まいを眠るだけの場所にしない」のは、どのマンションでも同じことだし、「24ライブリゾート」の意味は難解すぎる。ちなみに、筆者は実際に有明に住んでいるが、リゾートとは程遠い環境だ。近くにトラックターミナルが2つもあってトラックが走り回っているし、目の前には首都高速湾岸線が通っていて、高層階では騒音が気になる。バックの写真も、都心側からレインボーブリッジを望むように撮影しており、うまい見せ方だと感心する。

大学紹介用パンフレット(帝京短期大学)

 大学のTOPページは、きちんと学科名や、どんな資格が取得できるのかといった記述がされているが、学校案内パンフレットには、ポエム化したコメントが記載されていた。

さあ、手にした本のページを迷わずめくってみよう。
あなたの未来がここにある。

「ここにあなたの無限の可能性を秘めた本がある」と書かれているが、大学生(パンフレットを見る時点では高校3年生)にもなって、今さら無限の可能性があるといわれても少し遅い気がする。「なりたい自分が笑顔であなたを待っていてくれる」とあるが、本当にそうだろうか。
 ちなみに、後ろのページにはまっとうな学科紹介の記載があった。パンフレットの1ページ目ということもあり、「キャッチコピー」がポエム化したものと思われる。

なぜポエム化が進んだのか?

 ここからが本題である。なぜ、このようなサイトでポエム化が進んだのだろうか?
 それは、差別化を図ることにほかならない。
 例えば、食べログに投稿されるコメントの量は膨大だ。その中で目立とうとするならば、具体的な感想を述べたりするだけでは注目されないと考えたあげく、ポエム化したコメントを投稿する。他人とは明らかに違うコメントなので、レビューを表示したユーザーの目にとまりやすくなり、読まれる可能性が高くなるのだ。ただし、ポエム化したコメントが他のコメントより読まれているかという測定結果がないので、実際のところはわからない。
 また、マンションや大学紹介パンフレットでも同様だ。競合と差別化するために、ポエム化コメントをうまく使っているように見える。ここで紹介したサイトやパンフレットでは、いずれも、開いたユーザーを離脱させない「キャッチ」としてポエム化コメントを使用している。食べログの投稿者と考え方は同じで、ポエム化した、あたかもユーザーに感動を与えるような雰囲気のコメントがあれば、他よりも凄いという心証をユーザーに与えられ、結果として、自分のところが選んでもらえると考えたのではないだろうか。まっとうなコンテンツだけでは、勝負できないと判断されれば、今後もポエム化が促進されるかもしれない。

ポエム化は悪か?

 ポエム化についてまとめられたサイトなどでは、おもしろおかしくネタ化されるか、批判的に書かれることが多いようだが、実際のところポエム化は悪いことなのだろうか? 
 良し悪し両面から考えてみよう。
 ポエム化することで、コンテクスト(文脈)が大きく膨らみ、本質が見えなくなっているのは明らかだ。マンションの例でいうと、ポエム化したコメントの裏には、マンションを販売するのに、マイナスとなる事柄が潜んでいる。例えば「リゾート」と表現された言葉の裏には、都心から遠く不便であるという本質が隠れている。筆者が住む有明のマンションから都心に出ようとしたときの所要時間を計算してみよう。「新橋」に行くのに、現地からゆりかもめの「お台場海浜公園」駅まで徒歩で20分程度、そこからゆりかもめで、新橋駅まで15分程度かかるから、待ち時間も含めて40分はかかってしまう。「東京」に行こうにも、都営バスの東京駅丸の内南口行きのバスに乗って30分はかかる。反対に、デートスポットとして有名なお台場までは徒歩15分で行けてしまうことを利便性としてプラス評価する人もいるだろう。そういう人は「リゾート」という言葉に納得できるかもしれない。
 一方で、ポエム化した抽象的なコメントを読んだ人が、その真意を確かめようと、現地に赴いて確認してみようと思うかもしれない。そうなると、コメント投稿が増えたり、掲載されたサイトへの流入数が多くなり、結果として、コンバージョン数が増えるかもしれない。ただし、本質を理解したユーザーのコンバージョン数は減るだろうから、結果としてコンバージョンレートは小さくなるだろう。マーケティング的には諸刃の剣だ。
 大学などは、ポエム化したコメントがプラスに働く可能性があるので、コンバージョンレートを下げてでも、コンバージョンの絶対数を増やした方がよいだろう。入学した後に「笑顔で自分を待っている自分なんていないじゃないか」なんて苦情は出るはずがないからだ。

ポエムに惑わされるな

 ポエム化コメントが増えている背景には、他との差別化が難しくなっている実情が見えてくる。レビューにしろ、マンションにしろ、学校にしろ、インターネットによって気軽にたくさんの情報が手に入るから、できるだけ、マイナス面は隠して、コンバージョン数は多くしたいのだ。
 今後は、総研系企業などに、ポエム化コメントの使用有無による営業効果の違いを調査して頂きたい。ポエムの効果が悪いとなれば、少なくともレビューサイト以外のポエム化は終息するはずだ。
 ポエム化コメントそのものが悪いわけではない。本質をきちんと表現することがクリアされていれば、言葉で遊ぶことは大いに結構だと思う。

▼参考サイト
食べログ
アマゾン
ブリリア有明シティタワー
帝京短期大学

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