ステッカー_50mmx50mm3-672x372

浅井智也氏「Firefox OS 2.0 ~解き放て!未来~」【ABC2014 Spring】

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

by [2014年3月28日]

3月21日、秋葉原UDXにて国内最大級のAndroid祭典「Android Bazaae and Coference 2014 Spring ANDROID REBONE」が開催された。当イベントで講演されたMozilla Japan浅井智也氏による「Firefox OS 2.0 ~解き放て!未来~」をお伝えする。

これからはWeb技術が主役


今日、Internet of Thingsという技術の進歩に伴い建築物や家電、メガネや腕時計など一見ITとは無関係なものも含めたあらゆる”モノ”がインターネットに接続する時代になりつつある。インターネットに繋ぐことのできるデバイスの数は爆発的に増え、企業によってその予測値は異なるものの2020年には2000億個のデバイスが出回るとも言われている。この数字を世界人口で割ると一人あたり実に26個ものインターネットに接続されたデバイスを持つことになる。実際、近年を振り返ってみるとスマホに限ってみても新興国を中心に出荷台数が伸びており、2013年には世界の出荷台数は10億台となった。

このままインターネット接続できるデバイスの数や種類が増えていくと、幅広い業界が合意できる標準の技術の必要性は当然増し、今まで以上にWeb技術が重要になるだろうことが予測される。Web技術の粋を尽くしたFirefox OSが主役の時代がくるのも時間の問題かもしれない。

Firefox OSとは?


Firefox OSとは、Android OSのweb機能を強化・最適化してweb機能のみですべてが完結するように構築されたOSである。要するに複雑なつくりであったAndroid OSが非常にシンプルに軽く生まれ変わったOSである。実際に下位階層のカーネルはAndroid OSと同様のものを使っている。アプリなどもWebサイトそのものがそのままアプリにする、つまり今までもGoogle mapやGoogle docsなどwebで使うことができたのだからそれをそのままPackaged Webアプリとして使えばいいし、Web全体がアプリの配信環境であるという発想だ。Web技術で現在できないことは全部解決して標準化することを目指している

Android OSとFirefox OSの違いについてもう少し具体的に見てみよう。AndroidにはJavaで書かれたアプリを動かすためのDalvikという仮想マシンがあり、またパフォーマンスの問題で場合によっては必要となるC言語を扱うためのNative Interfaceもある。更に、ブラウザ機能も当然必要であるからWeb Kitもある。それに対してFirefoxでは上記のAndroidの機能のうちWebKitのみを残し、そのWebkitにデバイス操作やシステム系のAPIなどを追加して足りない部分を補いWeb技術のみですべての機能を提供する(Web Platform)OSとなっている。


※編集部注
Firefox OSではWebエンジンであるGeckoがすべてのアプリを動かすInterfaceを提供し、WebアプリケーションはJavaScriptで書かれる。Webアプリケーションはデバイスドライバと直接やりとりしないため、アプリからOSがクラッシュすることがない、C++でよく起こるようなオーバーフローなどのポインタエラーがおきにくい、セキュリティホールがおきにくい、というメリットがある。また、Geckoさえ書き換えればOSの下位階層をいじらなくともバージョンアップができるため、Androidよりもアップデートの配信がしやすいというメリットもある。

Firefox OSの2013年を振り返って


2013年には15カ国で3種のデバイスを出し、Web Platformを実現したデバイスの商用化まで実現した。具体的にはZTE、ALCATEL、LGの3つのキャリアから3種のデバイスを商用展開した。

更に商用化前にgeeksphoneからは2機種、ZTEでは商用展開したZTE OpenのSIMフリー版を開発者向けに販売した。

このように2013年に15カ国で商用化されたFirefox OSについて米国の市場調査会社IDCのアナリスト・John Jacksonは「新しい製品、ツール、導入分野、パートナー、機能が増え、非常に魅力的な価格も揃ったFirefox OSは、2014年もさらに勢いが増すでしょう」と評価している。

Firefox OSの開発状況


現在製品に搭載されているFirefox OSはFirefox 1.2であるが、既に1.3は開発が完了しており、1.4に関しては安定化を進めているところである。(Mozillaで開発Roadmapを公開している。:https://wiki.mozilla.org/B2G/Roadmap)現在はAndroid 4.3をベースとした開発がメインであるが、Android 4.4をベースとした開発も並行して行っている。Firefox OS 1.3ではWebブラウザ上でリアルタイムコミュニケーションを可能にするWebRTC(Web Real-Time Communications)と呼ばれるAPIや、近距離通信の国際規格NFC(Near Field Communication)用のAPI、また、共有するメモリ領域を使ってアプリケーション間での通信をするDataStore用のAPIなどが揃って開発しやすくなってきている。Firefox OS 1.4では新興国を中心に海外で増えてきているDSDS(Dual SIM Dual Standby)と呼ばれる端末にあるような、2つのSIMスロットを有し一台の端末で任意に回線を切り替えられる機能や、先進国のLTEやIPv6方式にも対応できるように開発している。また、アーキテクシャを徹底的にシンプルにした結果メモリ使用量も小さくなっており、Android 4.4は標準2GB(最小で512MB)で動くが、Firefox OS 1.4は標準256MB(最小で128MB)で動くようになっている。

また、パートナー各社と共同でMozillaとは独立した組織Compliance Review Boardをつくり、Firefox OSブランド要件の基盤づくりも作っている。ロードマップを見れば分かるが、現在のFirefox OSはMozillaが単独で開発しているというよりはキャリア各社と共同で開発に取り組んでいる状況である。そのため、キャリアは自分の欲しい機能をOSに付けることができ、これは一つの魅力となっている。もちろんキャリアが戦略的にプライベートにしておきたいコードもあるためすべてがオープンソースというわけではないが、それ以外の部分(ふりがな機能や災害の傾向などローカルで必要な機能など)のコードは全てオープンにしている。Tier1と呼ばれる業界の最上階層のAndroidベンダーのいない日本のメーカーからすると最新のコードが見れることは大きな魅力である。

実際にドイツのメーカーの要望に応えたOSの機能の一例を紹介する。ヨーロッパでは日本よりもプライバシーに関する意識が高く、それを反映した結果ヨーロッパのFirefox OSにはプライバシーに関する機能が組み込まれている。プライバシーに関する設定やアプリの機能を一箇所でまとめて確認・設定することができるPrivacy Panelや、位置情報がどうしても必要なアプリを使う際に位置情報の精度を落としたりランダムな位置情報を送るLocation Blur、友人に貸すときなどにアプリの個人情報を一部制限したモードに簡単に切り替えられるGuest Modeといった機能がそれである。また、Androidでは位置情報や電話帳へのアクセス権の認証をアプリのインストール時に行うが、Firefoxではそれらの機能の実行時に行われる。

MozillaもOS側から機能の充実に取り組んでいる。例えば、キーワード入力で履歴やアプリ、webなど全ての情報を横断検索できるuniversal searchや、左右スワイプでアプリを切り替えるwebブラウザのタブ切り替えのような機能などを開発中である。また、端末が大きく上まで指が届かないためnotificationを上からでなく下からポップアップしたり、cameraを写真と動画を同時に撮影可能にしてよりシンプルに使いやすくアップデートしたりとUI面も充実させていく方針だ。

パフォーマンス

一昔前はJavaScriptで書かれたコードはCで書かれたコードと比べてFirefoxで10倍、Google Chromeでは20倍程度実行に時間がかかるのが当たり前であり、JavaScriptは大規模なコードには向かないとされてきた。しかし去年、asm.js(コードを書く際のルールのようなもの)を導入し、asm.jsに対してFirefoxブラウザを最適化した結果、asm.js形式のJavaScriptで書かれたコードの実行時間をC言語の2倍くらいにまで短縮。去年のその時点でJavaよりも少し早いのだが、現在では更に最適化が進んでC言語の1.5倍程度の実行時間にまで短縮した。2013年12月のデータでは、C言語のコードをclang 3.2でコンパイルしたものよりも場合によってはJavaScriptのコードのほうが最適化されたFirefox上での実行が速いこともあった。

そのような最適化の結果、パフォーマンスでいえばネイティブよりも遅いもののUnreal Engine 4という最新のゲームエンジンもFirefox上で十分動作するようになり、UnityとMozillaの協力の結果WebGL出力ができるようになりasm.jsと組み合わせてFirefox上では十分動作するようになった。

今後のFirefox OSの展開

2014年はZTEからはZTE Open 2(昨年のモデルのDualコアモデル)とZTE Open C(画面が大きく、性能も高いモデル)の2機種が、ALCATEL onetouchからはFIRE C(昨年のモデルのDualコアモデル)、FIRE E(画面が大きいモデル)、FIRE S(画面が大きく性能が高いQuadコアモデル)の3機種が販売される。また、FIRE 7という7inchタブレットの製品化も発表している。上記の機種のうちFIRE SはFirefox OSのスマホ端末中ではハイエンドの性能を誇る。それでもAndroid端末と比べればミッドレンジの性能ではあるのだが、最近のスマホ端末の高性能化はユーザー体験にとって必要なところから逸れてきているため、性能以外のところで魅力を出せれば勝負できるのではないか。

今後は、スマホ以外の端末にも展開を拡げていきたい考えだ。Firefox OS搭載のシングルボードコンピュータもシングルコアで動くものができた。今後UIを整備し、HDMIやGPIO、PCIなどのドライバを開発すればもっと色々な使い方もできるはずだ。パートナーのfoxconnは注文があればパソコンでもプロジェクタでもカメラでもなんでも開発するという姿勢であるし、パナソニックは2015年中にFirefox OS スマートテレビを欧米や日本などでグローバル展開していく方針だ。

また、LINEやdisney mobileなどアプリケーション側のパートナーも増えてきており、LINEはテレフォニカと提携してスペインや南米で販売するFirefox OS端末にLINEをプリインストールする契約を結んだ。

国内展開では、KDDIの田中社長が「来年度内に発売したいと思っており、いま開発を進めています。」「Firefox OSならではの差別化要素を活かして、ギーク層にドカンと響くものを狙っています」と発言しているし、パナソニックは先ほどのスマートテレビを今年中に日本国内で製品化する予定だ。KDDIプロダクト企画部の上月勝博氏は「今までギーク向けというと、どちらかと言えばハード志向だった。一方で、これだけスマートフォンが大画面になり、クアッドコアCPUも当たり前になると、ハードウェアだけでの差別化が難しい。使い方やWebのオープン性に期待する方に向けた端末にしていく」と述べており、Firefox OSへの期待は十分高まっていると見ていいだろう。

既に楽天やリクルートなどグローバル向けにアプリケーションを出している国内企業も多く、今後もエコシステムを拡大していきたい。

グローバル展開では、既に12カ国が新たにFirefox OSを展開すると発表しており、今年中に30ヶ国以上での展開が見込めそうである。既に書いたスマートテレビなどの他に「世界中すべての人にインターネットを」を合言葉に25$スマホを販売する予定である。現行のスマホ端末が高くて買えない人にもインターネットを手にしてもらうために、中国のチップメーカーSPREADTRUMと組んでローエンド国で販売していく考えだ。今後は価格的な意味でも端末の種類的な意味でも、バリエーションが上にも下にも横にも拡がっていくことが予想される。その中でFirefox OSがどのような影響を世界に及ぼすのか、今後の動向にますます目が離せないだろう。

コメントは受け付けていません。

PageTopへ