RF HAND TRACK超小型ワイヤレストラックボールの例。このように小型のトラックボールは片手で握り混んで操作できるという他で得がたい優れた特性がある。

連載:ITエロ進化論「入力操作を巡る葛藤(1)~煩悩には煩雑だったキーボード~」

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by [2014年3月24日]

一般的な話として、ゲームやそれに類するアプリの入力操作機器というのは簡便さと操作性の狭間で難しい選択を迫られるジャンルではあります。

ことにアダルトゲームとなると普通のゲームプレイにない特殊事情があるため、更に難しい一面があって、古来より皆あれやこれやと創意工夫を凝らして遊んできたものでした。

今回はそうした入力操作について考えてみたいと思います。

▼連載目次▼
煩悩には煩雑だったキーボード
意外と使いづらかったジョイパッド
事実上の標準入力機器となったマウス
思わぬ操作性を発揮したトラックボール
可能性の封じられたタッチパッド
▲目次▲

煩悩には煩雑だったキーボード

NEC PC-9801RA付属キーボード
PC-9800シリーズの絶頂期に作られた本体標準添付キーボード。この機種が作られた1989年頃には既にマウスが普及し始めていたため、このキーボードで単語入力式のアダルトアドベンチャーゲームをプレイしたユーザーは少なかったはずである。

最初期のアダルトゲームは当時のパソコン用ゲーム、中でもアドベンチャーゲームの例に漏れずキーボード入力にのみ対応するものがほとんどでした。

そもそもの話として、1980年代初頭の時点ではまだマウスは一般的な製品が存在しておらず実質的にキーボード以外の入力デバイスが存在しなかったのですから当然と言えば当然の話なのですが、問題はそのキーボード入力の内容にありました。

黎明期のパソコン用アドベンチャーゲームでは、その後一般化した選択肢の番号を入力する、あるいはその選択肢にカーソルを合わせてEnterキーを押す、という入力方式ではなく、何らかの指示を英単語あるいは半角カナで表記された単語の組み合わせという形で指示する、という単語入力形式のものが多かったのです。

具体的に言えば、例えばあるゲームである特定の場所に十字架をはめる操作を指示したい場合には「attach cross」と一文字たりとも間違いなく入力する必要があったりしました。

この当時の日本のパソコンではOSレベルでかな漢字変換入力機能をサポートしていた、本当にごく一部の機種を別にすれば全角日本語を標準で入力できる環境そのものが希少でしたから、こうした方式の採用も無理からぬ面がありました。

もっとも、入力ミスあるいは表現の揺らぎを一切許さず、そもそも使用する単語を探し出すこと自体がパズル同然(※先に挙げた「十字架をはめる」という例ではinput、insert、put、あるいはsetなど、思いつく限りの単語を試した末にattachが正解と知って発狂しそうになったユーザーの話が伝わっています)という有様では、エロゲーと言っても肝心のエロはそうした難解な、ある意味理不尽と言って良いパズルを解いたことに対するご褒美以上のものにはなり得ませんでした。

エロゲーに限らずこの時代のアドベンチャーゲーム全般がそうした理不尽の押しつけに終始した背景には、メモリ容量とストレージの貧弱、という問題がありました。

先に挙げたような選択肢列挙型の場合、選択肢をメッセージとして表示する必要があるわけですが、それすら困難なほどにこの時代のパソコンのメインメモリ容量は貧弱で、そもそもランダムアクセス可能なフロッピーディスクドライブさえ満足に普及していなかったため、この方式の有用性が理解できていてもゲームとしての難易度とプレイ時間のバランスなどから採用が難しかったのです。

つまり、ゲームで一定のプレイ時間を稼ぐには、操作性の悪さを甘受してでもパズルじみた単語入力方式を採るほか無かったのです。

この時代のエロゲーは数がそれほど多くないのですが、それは同じくハードウェアリソースの貧弱ぶりを原因とするグラフィック面での制約の大きさと共にこうした事情も少なからず影響しており、身もふたもない言い方をすれば「これでは抜けない」のが原因だったと言えます。

(次回、「意外と使いづらかったジョイパッド」へ続きます)

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