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ヤフー、手数料モデルからの脱却 ー Yahoo!トラベルも無料化

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by [2014年3月07日]


ヤフーは今夏を目処に宿泊予約サイト「Yahoo!トラベル」において、予約が成立した際に宿泊施設がヤフーに支払うシステム利用料を無料にする。

いままで「Yahoo!トラベル」は、JTB、るるぶ、一休、ベストリザーブなどの宿泊予約事業者から提供を受けた宿泊施設情報を掲載し、予約成立ごとに宿泊予約事業者などから手数料を受け取る「アフィリエイト型」のサービスを展開してきた。今回、宿泊施設との間で直接契約するビジネスモデルを開始することで、通常、宿泊予約事業者が宿泊予約サイトに支払う、成約した宿泊料金の10%程度のシステム利用料が無料となる。

ただし、ユーザーには宿泊費の5%をポイントとして還元し、その費用は宿泊施設が負担する形になる。

「eコマース革命」で次々と無料化を推し進めるヤフー

この無料化の流れは「Yahoo!トラベル」が最初ではない。ヤフーが2013年10月に発表した「eコマース革命」では、「Yahoo!ショッピング」「ヤフオク!」のストア出店料などの無料化を発表している。「Yahoo!ショッピング」においては、いままで必要になっていた21,000円の初期費用と25,000円の月額費用、さらに売上の1.7%〜6.0%の売上ロイヤリティをすべて無料にする大きな改革を行った。

無料化を行ったことで、月間で約10億円の減収という予測もされており、大きなビジネスモデルの転換であったことが伺える。

大変革に迫られるヤフーの裏側

大きなポイントは2つある。1つは日本最大のモール楽天市場との埋まらない大きな壁。そしてもう1つは無料で簡単にネットショップが作成できるインスタントコマースの台頭だ。

2012年流通規模でみると、Yahoo!ショッピングが3,082億円で楽天市場が1兆4,466億円と約5倍の差がある。知名度こそ楽天市場に劣らないYahoo!ショッピングだが、この圧倒的な差を埋めることができなかった。

そんな中、2013年に急激な勢いで成長した市場がインスタントコマースだ。インスタントコマースとは、無料で簡単にショップを作成できるサービスで、国内ではSTORES.JPとBASEがシェアを獲得している。ヤフーが「eコマース革命」を発表した時点で、両社の出店数はそれぞれ5万店ほどで、店舗数だけみれば楽天市場をも上回る規模に成長している。さらに、STORES.JPに関しては2014年3月の時点で8万店を超えており、まだその勢いは止まる気配がない。

これらの状況がヤフーに大きな改革を行うことを意思決定させたのではないかと思われる。

「Yahoo!ショッピング」の手数料無料化後の新規出店申込みは約3ヶ月ほどで9万件を超える大きな反響を呼んだ。発表時の出店数は2万店ほどであったことからもこの反響の大きさがわかるだろう。まだ申込みの段階なので、実際にどれだけの店舗が出店されるかは不明瞭だが、楽天市場の店舗数である、約4万店を上回る規模になる可能性が高そうだ。ヤフーがこの反応に手応えを感じ、関連事業の無料モデル化へ前向きな検討がなされたことは間違いないだろう。

無料化はヤフーのサービスにおける基本路線になり得るか?

「eコマース革命」のインパクトで少し影が薄れてしまった感があるが、ヤフーは「Yahoo!予約 飲食店」の開始も同日に発表している。「Yahoo!予約」は、Yahoo! JAPANの検索結果から直接予約ができる新たなネット予約サービス。オンラインで24時間予約を受け、Yahoo! JAPAN IDでログインした状態で利用すれば基本情報の入力などが省けるサービスだ。

飲食店に対しては、初期登録料、月額利用料、予約成立手数料はすべて無料で提供し、一切費用は発生しない。ヤフーは無料で提供する理由として以下のように述べている。

「インターネットは自由であるべき」という理念のもと、無料にすることで飲食店にとってのインターネット予約導入のハードルを低くし、インターネット予約のプラットフォームを充実することで、Yahoo! JAPANをご利用いただいているユーザーへ利便性を提供するためです。

利用者のハードルを下げ、すべての人が利用しやすいプラットフォームを提供するというのが、ヤフーの基本路線だ。それにより、「掲載店舗が増える」→「利用者が増える」→「さらに掲載店舗が増える」というサイクルをヤフーは作り出し、いずれのプラットフォームにおいても掲載数No.1となることを狙う。

ヤフーの圧倒的な媒体力を活かした戦略

ヤフーの強みはなんといってもその媒体力だ。Yahoo! JAPANの月間平均ページビューは約600億を誇っており、トップページだけでも月間約64億ページビューものアクセスを集めている。

ヤフーの各サービスにはトップページからの誘導はもちろん、各サービス間でユーザーを循環させることも可能だ。これはヤフーならではの強みであり、今回の無料化の動きはその強みを存分に活かすことができるものであると言えるだろう。無料化を一気に推進することによって、相乗効果を高め、プラットフォームとしての集客力を一気に高める狙いがあると思われる。

もう1つ忘れてはならないのが、Yahoo!プレミアム会員の存在だ。2013年3月の時点で919万人が会員となっており、会費が月額399円であることから、月間にして36億円を超える売上が発生している。

これは今回の無料化とは無関係ではない。実際に、個人が「Yahoo!ショッピング」へ出店するためには、プレミアム会員の登録が必須条件であったり、「ヤフオク!」が制限なしで使い放題になったりと、プレミアム会員になることで、ヤフーの関連サービスをお得に使えたり、より便利に使えたりと、その名の通り「プレミアム」性を提供している。つまり、プレミアム会員を素地とした一連のサービス体系をエコシステムと位置付ければ、無料化によって利用者が増え自ずとプレミアム会員の獲得機会が広がることは、エコシステムの更なる好循環を意味する。

月額サブスクリプションであるプレミアム会員が増えれば(或いは現会員が不満を抱かずに会員で居続けてくれれば)、ヤフーにとって非常に安定的な売上を確保することができる

まだまだ無料化を推し進める余地がある

ヤフーが展開するサービスの中で、今後、無料化の可能性があるサービスは「Yahoo!不動産 賃貸」が挙げられる。「Yahoo!トラベル」同様、ヤフーがポータル的な役割を果たし、仲介に要する手数料で稼ぐモデルだ。

Yahoo!不動産は2014年1月に「中古マンション」「中古一戸建て」「土地」「新築一戸建て」において、1店舗あたり月額1万円で物件を無制限で掲載できるというという低価格で不動産業者からの直接掲載するモデルを開始している。こちらはさすがに無料とはならなかったが、「賃貸」に関しては無料化の可能性が残されている。

賃貸に関しては、2006年9月より株式会社いい生活と連携し不動産業者からの直接掲載を受け付けているが、現在の物件の掲載数は160万件。それに対しHOME’Sが400万件、SUUMOが200万件といった形で、他社より少ない掲載数となっている現状がある。この状況を打開するためにも、直接掲載を全面に押し出し無料化に転換する可能性は大いにあるだろう。

ヤフーは手数料モデルから脱却し、各分野でのNo.1を獲得する戦略に切り替えた。現状の収益化の方法は広告とされているが、集客力や決済手段としての優位性を持つことで、新たなビジネスの可能性が広がっていくものと思われる。広告という面だけでも、プラットフォームとしての力がつけば、サービスを利用する店舗などからの広告得掲載は確実に増える。より好循環が生まれることは間違いないだろう。

ヤフーの無料化の決断が、どのような結果に結びつくのか、今後の展開にも注目だ。

■著者紹介
イイヅカ アキラTwitter
ブロガー / ウェブクリエイター。フリーで活躍中。多くのメディア運営を手掛ける。著書に「仕事を成功に導くFacebook活用術」「サクッと始めてバッチリ分かる facebook」がある。
・EC専門メディア「Shopping Tribe
・ソーシャルメディア&ガジェットメディア「TECH SE7EN
・ソーシャル映画レビューサイト「CineMatch

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