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ベンチャーキャピタルに聞く [後編] ~思わず投資したくなる経営者像とは?~

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by [2014年3月05日]

前回は未来を予見しうる投資ビジネスについて、日本を代表するベンチャーキャピタルであるジャフコ(東証一部・8595)の執行役員投資担当 三好啓介氏に話を伺った。今やIT界の巨人であるグーグルやアップルも、その黎明期におけるベンチャーキャピタルの支援なしには現在の地位はあり得なかった。ジャフコが培った「成功する経営者」像は一体どのようなものであろうか? 前回に引き続き、三好氏にお話を伺う。

▼前編はこちら
ベンチャーキャピタルに聞く [前編] ~企業の成長を予見する投資ビジネス~

経営者を評価する基準は2つ


—-毎年、数多くのベンチャー企業が生まれ、その中で成功する経営者もいれば、失敗する経営者もいます。ジャフコの視点から、「成功する経営者」のモデルがあるとすれば教えてください。

投資を行うかの判断する際、経営者を評価する基準は2つあります。

最も大切なのは、自分がやりたい事業を大きくしたいと思っているかどうか。言い換えれば、旺盛な事業意欲です。実際の経営にあたっては、いろいろな困難が山のように降りかかってくるわけですから、それに打ち克つような事業意欲がなければ、途中で嫌気がさしてしまう経営者が多いのです。

2つ目は、人を集める魅力があるかどうか。もちろん、投資先・投資候補先の会社には、さまざまなタイプの経営者がいますが、これはどのような経営者にとっても重要な要素となります。新しいアウト・ソーシングであるクラウド・ソーシングなど、外部の労働力環境は近年整ってきていますが、それでも組織のコアな部分はひとりで作ることはできません。起業はできても事業拡大は難しい。経営者に魅力があれば、優れた人材が集まってくる。お金も集まってくる。それは結局のところ、経営者の魅力や、チームメンバーの魅力というところに行き尽くわけです。

逆に言えば、自分の事しか考えていない経営者には、最初は「面白そうだな」と人が集まってきても、必ずどこかで会社がガタガタとしてしまう。儲かっているときは、どのような経営者でも人は集まってきます。会社が苦しくなった時、例えば業績が芳しくなくなると、蜘蛛の子を散らしたように社員が去っていきます。ある意味、この瞬間から経営者の資質が問われることになるでしょう。

ベンチャー企業への出資はタイミング次第

—-ジャフコの場合、ベンチャー企業に実際に投資するまでには、どのくらいの検討期間が必要なのでしょうか?

投資検討から実際に投資させていただくまでの期間は、短い場合は1か月、長い場合だと…、長いです(笑)。「良いタイミング」というものが存在しています。経営者側からしてみれば、「ジャフコから出資を受けたいが、今はまだアクセルを踏むべきタイミングではない」ということもあります。逆に、我々から見た場合、「むしろ、このタイミングこそ最良ではないか?」と提案する場面もあります。ベストなタイミングについて、お互いの認識をすり合わせていく期間が、投資開始までの助走期間です。

—-未上場会社の経営者の中には、出資を受けるということに抵抗感がある方もいるのではないでしょうか?

そもそも、経営者の方の中にはジャフコという名前をご存じない方もいらっしゃいますし、ベンチャーキャピタル自体をご存じない方もいらっしゃいます。我々がベンチャー企業へ出資をさせていただき、その会社の株を買い受けて、株を持つというのは、一緒に事業をやっていく、もしくはそれ以上の感覚なのです。出資する、出資を受けるという関係になるためには、弊社ジャフコとベンチャー企業経営者がお互いに「本当にこいつは大丈夫なのか?」と腹を割って知り合う必要があります。そうした期間が必要な場合、出資させていただくまでに長い時間を要することもあります。

投資先会社と一丸になりスピードアップ

—-ベンチャーキャピタルとして、出資した企業の経営者側とうまく付き合っていくために大事にされていることはありますか?

私どもと投資先の経営者の方々とのコミュニケーションの上で、最も大事にしていることは、「信頼感」と「緊張感」の共存ですね。

投資先の経営者には「お金を他人から預かって事業を展開している」という「緊張感」を忘れずに事業を拡大して欲しいのです。お金をもらったわけではなく、あくまでも預かっている感覚が必要です。これは決して投資先に「身構えろ」と言うわけではありません。

また、弊社と投資先の経営者が一丸となって事業を拡大していくスタンスが重要です。これが信頼感です。一丸となるためには、ベンチャー企業の場合は特に、その会社の事業スピードを減速させないように心掛けています。経営資料も我々用に作ってもらうと時間がもったいないので、いつもどおりの社内資料を見せていただいています。

出資させていただいた会社には、事業のスピードアップを図れるように私達も全力を注ぎます。そのときに、一人でやるよりも二人、二人よりも三人といったように、複数人で協力した方がスピードアップの可能性が高まる。

例えば、ある投資先企業について、今こそスケールアップを図らなくてはならないという局面になれば、弊社の社員がみんなで北の端から南の端まで、その支援のために走り回ります。弊社は多くの社員を抱えていますが、同じ志や価値観を持った人間が働いています。同じカルチャーを持った上でなければ、なかなかそういったことは実現できません。

失敗者のブラックリスト…ある?ない?

—-投資した事業には、成功もあれば、失敗もあると思います。「失敗した経営者」といったブラックリストはあるのでしょうか?

弊社にはブラックリストはないですね(笑)。ただ、不幸にして事業が失敗に終わった場合、経営者がその失敗をどのように捉えているかを細かくヒアリングします。それが本人にとって、良かったことであっても、逆に悪かったことであっても、です。過去に関して、どういう風に考え、どのようなことをしたかをこと細かに聞きます。そして失敗から学んだことを今に生かし、前に向かっていこうと思っていらっしゃる方であれば、過去の失敗にとらわれず投資します

成功事例というものはあまり役に立ちません。なぜなら、成功事例を真似たからといって成功することはないからです。逆に失敗事例と同じことをすれば、必ず失敗する。そういった意味では、失敗事例を一つ潰すことができたとも言えます。失敗をしたからこそ、次の事業での成功確率が高まることさえあります。

—-投資先の事業が失敗した場合、その経営者には何か責任は課されますか?

弊社は投資をするときに経営者や投資先企業と投資契約を締結しています。人からお金を預かるということは、これだけ責任が必要なことだということを認識してもらうためです。そのお互い合意した決め事に違反した場合、それは契約違反でペナルティとなります。しかし、事業の失敗そのものは契約違反とはなりません。全力を尽くした上での失敗であれば、そのリスクは投資家である我々が取るべきであり、その場合に経営者に「責任を取れ!」とは言えませんよね(笑)。

従って、取り戻しがつかなくなる前に、早いタイミングで逐次、方針の共有とアドバイスを行ないます。経営者にとって事業は我が子も同然でしょうが、辛い判断をせざるを得ないこともあります。ベンチャーキャピタルとして、上場を待たずして投資先企業の株を売却することもあります。

最近、起業される経営者の方々は、合理的に考えられる方も多く、「ゴールは上場だけではなくM&A(企業の合併や買収)も」と見据えていることも多くなっています。最低資本金規制の撤廃など、昔に比べれば起業することはかなりハードルが下がりました。そうしたことから、以前では考えられなかった多種多様なタイプの経営者と、お仕事をご一緒する機会が増えています。

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ベンチャーキャピタルに聞く [前編] ~企業の成長を予見する投資ビジネス~

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