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ベンチャーキャピタルに聞く [前編] ~企業の成長を予見する投資ビジネス~

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by [2014年3月05日]

新興IT企業に対して、ベンチャーキャピタルから数億円もの巨額の出資がなされることは今や珍しくない。しかし、出資の金額や詳細に関しては、その情報が表に出ることはあまりない。ベンチャーキャピタルからIT企業への出資のプロセスはどのように行なわれているのだろうか? ここでは、これまで国内外合わせて940社(2013年12月末現在)の上場を支援した実績のある、日本の代表的なベンチャーキャピタルであるジャフコ(東証一部・8595)の執行役員投資担当 三好啓介氏にお話しを伺う。

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ベンチャーキャピタルに聞く [後編] ~思わず投資したくなる経営者像とは?~

経験で培われた「人を見抜く眼」


—-グーグルやアップルのように世界に名立たる企業が、創業まもない時期にベンチャーキャピタルからの投資を受けて急成長しています。しかし投資を行う側にとっては大きなリスクを伴うため、高度な判断力を必要とするビジネスかと思います。ベンチャーキャピタルの第一線では、どのようなスタッフの方々が活躍しているのでしょうか?

昔から、ベンチャーキャピタルは「経験のビジネス」と言われてきました。その理由のひとつは、経営者の人間的な部分の評価など、定量化しづらい対象が絡んでいるからです。セコイア・キャピタルやクライナー・パーキンス・コーフィールド・アンド・バイヤーズ(KPCB)といった著名で伝統あるベンチャーキャピタルの上層部には、結構なお年を召した方々もいらっしゃいます。極端に言えば、今の世の中で起きている最先端の技術的要素に関して、彼らがユーザーと同じ肌感覚でそれを理解しているわけではないと思われます。

例えば、そうした伝統あるベンチャーキャピタルが、スマートフォン・アプリ事業に投資する場合、彼らがスマートフォン・アプリを自在に使いこなしている訳ではないのです。ただ、その方々がずっとトップティア(Top-tier = 一流)と呼ばれ、投資の最前線で仕事を続けていられるのは、経験によって磨かれた「経営者や組織を見抜く眼」があるからだと言われています。たとえ事業の表層がスマートフォン・アプリ開発という形態を取っていても、事業の骨格はどのような業種であれ、共通の要素を含んでいます。

つまり、ベンチャーキャピタルは今まで行なってきた投資の経験による判断が極めて重要なビジネスと言えます。そうしたことから、弊社の社員に対しても「経験」を非常に重要視した教育をしています。

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投資判断の軸を作る

—-ベンチャー企業への投資の第一線で活躍するためには、経験の積み重ねが必要とのことですが、ではジャフコではどのような社員教育を行なっているのでしょうか?

弊社の場合、新卒で多くの社員が入社します。新卒社員には、上司と一定の期間、投資先の会社などに同行させます。まずは上司が経営者の方々と話すのを横で聞かせるのです。そして、最後に上司と新卒社員とで、感想や印象を話し合ってもらう。その一連のプロセスを通して、「どのように思ったか」を共有し、それを繰り返します。

私達は、投資した会社の経営者以外にも、その会社の一般社員の方とも、ありとあらゆるコミュニケーションを行なっていきます。その会社の営業会議にも顔を出しますし、昼飯も一緒に食べます。飲み会にも出席します。きっと社員の方からすれば「いつも居る、あの人たちは何者なんだろう?」と思うでしょうね(笑)。投資した会社とは、すべての情報を共有させていただいています。

こうした投資した会社とのコミュニケーションから得られる人的評価の情報は決して数字に置き換えることはできません。会話の中で「この経営者や社員はどういったロジックで意思決定を行おうとするのか? 何を大事にするのか?」など、感じたことを判断しながら、私達は「判断の軸」を作っていきます。軸は変動的な部分と不変的な部分があります。不変的な部分を言語化しようとしても、陳腐にならざるを得なく、したがってこのように実践の積み重ねで、ジャフコの個々人の社員が習得していくしかないのです。

新入社員については、先輩社員の様々なやり取りを見聞きしたり、社内に戻って部内のメンバーと話したりするなかで、軸を束ねて蓄積していく…というイメージです。そのプロセスが最終的に定量化しづらい人的評価を社内で共有する方法に繋がっていきます。どのような軸があり、どのようにその軸を束ねて行くか? それがジャフコというベンチャーキャピタルのDNAであり、カラーになるのだと考えています。

業界が激変するとき、ゲームチェンジャーが必ず存在する

—-ジャフコが得意とする投資のジャンル・業種などはあるのでしょうか?

弊社は、未上場のベンチャー企業等に対して出資をさせていただいています。未上場であれば業種や地理的範囲による制限はありません。弊社の支社は北海道から福岡まであり、投資部員たちが、地域ごとにベンチャー企業をご訪問させていただいています。海外にも現地法人があり、海外企業へも投資をしています。

—-未上場企業は数多存在しますが、投資対象の企業をどのように絞り込んでいくのでしょうか?

未上場企業の中でも、次にお話しする3つの観点から、投資先を選定しています。必ずしも、その3点のすべてを満たしている必要はありませんが、これらの観点をもって投資先選定を行なっています。

1つ目は「イノベーション(革新)」。投資対象となる企業が、技術的な革新などによって、まったく新しい市場を作り出し得るか? また、そのための事業を構想しているかどうか。

2つ目は「ディマンド(需要)」。いくらイノベーションを起こそうとしても、現実的に事業を進めて行く上で、マーケットが無い、あるいは想定より小さいものであったら、商売にならない。現実に需要が世の中にあるかどうか。一定の市場規模まで成長していく見込みがあるか、と言い替えることができます。これはシンクタンクが発表している「業界展望」のようなものより、もっとミクロな話になります。

そして3つ目は「ゲームチェンジャー」。それぞれの業界には、昔から維持されてきた既存の業界構造があり、有力なプレイヤーがポジションを確立しています。新しいビジネスモデルや技術によって、その業界構造をガラッと変えてしまう、そういう挑戦に取り組んでいる企業かどうかです。例えば、出版や書店業界は不況です。現代人の読書離れも原因の一つでしょうが、その業界構造や市場を奪ったのは、出版とはまったく異業種であるIT業界のアマゾンやグーグル、そしてアップルです。彼らは新たに自分たちで「パブリッシュ」「販売」「著作者への印税の支払い」といったエコシステムを構築し、既存の業界をひっくり返そうとしています。業界が根底からひっくり返る時、必ずゲームチェンジャーの存在があります。そして、それはとてつもなく大きなビジネス・チャンスとなります。

これら3つの観点から事業を評価し、その企業が急成長する可能性を捉え、そして投資対象となる企業を探しています。

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