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連載『bitcoinに迫る!』第9回 ~マイニングに最適な国はどこか?~

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by [2013年12月25日]

前回の記事ではマイニングから見たbitcoinの総量について考えました。今回はbitcoinマイニングの収支について考えてみたいと思います。

マイニング手段の変化は常に電力効率が問題だった

前回までの記事でご説明してきたように、bitcoinマイニングは、SHA-256という一つ一つの演算は単純でも全体としては非常に「重い」演算処理を行わせることで、bitcoinの信頼性の根拠となるハッシュ(要約値)の累積作業の「はじめの一歩」を構築する作業です。

そしてそれは演算処理の内容が非常に「重い」が故に、その演算を行うプロセッサに(プロセッサの種類に関係なく)大きな負荷をかけます。

コンピュータの世界では大きな負荷=消費電力の増大と事実上同義ですから、マイニングはすなわち際限なく電力を投じてbitcoinという通貨を得る、一種の錬金術とも言えます。

そしてその錬金術が商業化、つまり効率性を求められるようになると、当然のことながらより少ない電力消費量でより多くの結果=より多くのbitcoinが得られる手段が模索されるようになります。

いずこであれ、電気料金がタダの国など存在しませんからそれは当然の話なのですが、こうなってくると電気料金がより安い国の方がマイニングのコスト比較で有利になるのも自明です。

もっとも、ただ電気料金が安ければそれで良いのかと言えばそうでもなく、マイニングがbitcoinネットワークの信頼性維持の柱となっていることから、一定の通信インフラが整っていることも、マイニング作業を行う上で重要な要素です。

つまり、電気料金が安くて高速なインターネット接続手段が安定的かつ廉価に得られる国こそが、マイニング作業に最も有利な条件を備えている、ということなのです。

電気料金の安いのはどこの国?

それでは、電気料金が安い国という観点で見ると、どこの国が有利なのでしょうか。

その答えを見いだすのに好適な研究を、資源エネルギー庁さんが出してくれていました。

電気料金の各国比較について

これによると、いわゆる西側の先進国の中では日本は、為替レート換算で比較した場合は産業用も住宅用も共に、東日本大震災の前の2009年の時点でさえ(電気料金の高額なことで定評のある)イタリアに次いで電力料金が高いことが明言されています。

電気料金の各国比較について
資源エネルギー庁電力・ガス事業部が平成23年8月に公表した、西側主要先進国(および韓国)と日本の電気料金比較研究。参考として各種条件を共通化して条件を揃えた場合の各国の電気料金がグラフ化されている。日本はいずれの条件の場合も電気料金が高額な部類に入る。

この研究では更に一歩進めて、様々な条件を共通化の上で重回帰分析を行って国際比較推計が行われているのですが、この場合でも産業用では日本・アメリカ・イギリス・ドイツ・フランス・イタリア・韓国の中で日本はイタリアに次いで高価、住宅用でもイタリア・ドイツに次いで3番目に高価、となっており、少なくとも電気料金の観点では、日本でのbitcoinマイニングには全く優位性がない、と判断せざるを得ません。

ちなみに、西側先進国の中ではイタリアの電気料金が飛び抜けて高額なのですが、これは同国の電力供給が火力・水力発電に依存し、火力発電では(震災後の日本でもそうなったように)輸入される化石燃料のコストが非常に大きくそれが電気料金にストレートに反映されていること、自国内では原子力発電所を持っていないこと、そして国内の発電量の不足を補うためにフランスから買電している電力の料金が(原子力発電所のないイタリア側の事情を承知で露骨に足下を見たフランス側によって)非常に高額に設定されていることが、主な理由となっています。

また、ドイツの電気料金の内で住宅用だけが高価なのは、脱原発政策の下で再生エネルギーの固定価格買い取り制度を行ったツケを全て住宅用に押しつけている(産業用は国際競争力を維持する目的で政策的に安く設定している)のが原因です。

なお、この研究では触れられていない中華人民共和国の電気料金は、特に住宅用が低く設定されており、大規模な値上げ直後の2011年12月の時点で日本が1キロワットあたり0.232ドルに対し0.075ドルで圧倒的なほどに低価格設定(※政策的に原価割れの料金設定を行っている韓国でも0.1ドル前後で、中国の料金体系はこれを下回ります。一方産業用はアメリカや韓国の方が安く設定されています)となっています。

これだけ安ければ、中国でbitcoinマイニングが大流行したのも(それ以外に国外送金に関する規制を受けないというメリットがあったことを考慮しても)納得です。

幾ら安くても停電するのは困る

もっとも、こうして単純に電気料金の観点で見ると日本は不利なのですが、その一方でbitcoinマイニングのように連続的に途切れずに続ける必要のある作業の場合に重要な停電率は、日本が最も低く電気料金の一番安かったアメリカが最悪(※中国については例によって例のごとく都合の悪い話なので詳細が公開されていませんが、国内の電力供給が常時不足傾向を示していて安定供給の点で問題となっていることは「電力事情が緊張する可能性がある」といういかにもお役所的な遠回しな表現で示されています)となっています。

この停電率については東日本大震災後に原子力発電所の停止が相次いだ上に、さらに直後に冷房使用で電力消費が急増する夏がやってくるという危機的な状況さえ、国を挙げての節電徹底と最小限の計画停電で乗り切った日本の他、ドイツ・韓国が低率となっています。もっとも、韓国は政策的に電気料金を安く設定しているものの原子力発電所に対する依存度が極端に高く、しかも電力需給調整を担当する韓国電力取引所の不手際で2011年9月15日に、何の災害もないのに突然全国規模で大規模停電(ブラックアウト)を引き起こして162万世帯が停電した前科があり、また最近でも電力会社が立て続けに書類仕事で不祥事を起こして原子力発電所の停止が相次いでおり、少なくともこの点ではあまり信用できない状況となっています。

電力供給については最悪の場合、安定化電源装置を導入すれば、短時間の停電が繰り返されるようなタイプの国であればある程度までは対処可能ですが、自分の所の電力供給をそうして安定化させても周囲が停電すれば自ずと通信インフラも停止するため、常時ネットワーク通信を行う必要のあるbitcoinマイニングを前提とすると自分の所の電力対策だけで済まないのが難しいところです。

問題は電力だけではない

また、いくら電気料金が安くとも、中国のようにネットワークの運営・管理に政府が口を出してくる国の場合、政治的な理由でいつ何時bitcoinネットワークの通信が遮断されるか知れたものではない、という不安があります。

特に中国はGoogleをはじめ過去に様々な国外のインターネットサービスとの接続を政治的な判断でブロックして閉め出してきた前科があり、更に先日には人民元とbitcoinの交換を事実上禁止した、という実績もあって、この種の自由主義的、あるいはより過激な言葉を使えば無政府主義的な思想を持ったサービスに対しては激烈な敵意を抱いていることは明らかです。

この中国の例は極端としても、通信インフラの利用料が(規制緩和前の電電公社→NTTが独占していた時代の日本のように)法外に高額な国も未だ少なくなく、電気料金が安く供給が安定していて、しかも通信インフラが自由かつ低料金で使用できる、という各条件を全て満たす国となると、なかなか見当たりません。

無論、ある程度停電で作業ロスが生じたり、政府によってネットワークそのものが遮断されたりする、といった各種リスクを織り込んで、それらを全て承知の上で電気料金や回線利用料の安い国でマイニングを行う、という判断もありえます。

しかし、bitcoinの枚数が定まっていてマイニング可能な期間が限られていることを考慮するなら、マイニングが効率的に行える国を探す努力をする暇があるなら、より低電力かつ高速にマイニングできる機材を揃えて得られる間にさっさと利益を確定することに注力した方が賢明だ、という今のマイニング業者たちの行動にも一定の合理性があるということになります。

例え電気料金が基準となる国より10倍かかる場所/国であっても、消費電力が1/10で済む機材を導入すれば計算上はそれで相殺して競争力を維持できるわけで、その上で電力供給や通信回線の安定が得られるのならば、それは決して悪い話ではないのです。

結局はbitcoinの価値に支配される

以上、bitcoinマイニングのコストを考えた場合に無視できない電力と通信のインフラにかかるコストについて見てきました。

最近の日本では、電力会社(特に東日本大震災の後、福島で不始末をしでかし続けている東京電力)が自らの無策のツケ払いを電気料金に転嫁した結果、これまで見たことのないような凄まじい金額の記載された請求書が利用者に送りつけられてきているわけですが、このような悪条件の国でbitcoinマイニングを続けるのは簡単ではありません。

しかし、bitcoinの価値が(先日の中国での人民元との換金停止までのように)際限なく上昇し続けるのであれば、話は別です。

電気代が多少高かろうが安かろうが、bitcoin 1枚ずつの価値が急騰するのならばそんな問題は放り出して、ともかくマイニングをやろうという話になってしまいます。

もっとも、これと反対にbitcoinの価値が急落すれば、マイニングに要した電気料金をペイするのも難しくなります。

その意味では、現在のbitcoinマイニングはコイン1枚の価値に左右される、非常にリスキーな仕事になってしまっている、と言えます。

流石に、実質的な中国からのbitcoin締め出しがあった後の、今この時点から新規にマイニングを「仕事」として始める人はまずいないと思いますが、いるのであれば、これは非常に危うい事業であることはあらかじめ認識しておかねばなりません。

さもなくば、結局高価な機材を大量に買ってメーカーを儲けさせただけで終わり、ということにもなりかねません。

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