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次のアプリが成功しなければ「引退します!」~個人開発者の覚悟にみるアプリ収益の現実~

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by [2013年12月02日]

FusionCalc』というKDDIも採用した電卓アプリの著名な個人開発者が、12月中に成功しなければ引退するとTwitterで宣言しました。その開発者とは「Studio Loupe」のリオ・リーバス氏です。リオ氏はTwitterにて以下の発言をしました。

なぜ引退宣言をしたのか? 早速、リオ氏にインタビューを申し込みました。

こんなに有名なアプリでも売上が月20万円?

—-個人開発者には失敗アプリが付きものですが、なぜ「引退」の覚悟までされたのでしょうか?
25歳の時にアプリ開発者として活動を始めて、全財産が「30円」というドン底の時も経験し、妻に対して30歳までに結果が出せなければこの仕事を辞めると約束をしました。このままダラダラと収入が安定しない個人開発者を続けて、家族関係が壊れるリスクを持ち続けるのはマズイと感じ始めたからです。

—-現在のアプリから得られる収益を教えていただけますか?
ここ数年はだいたい1か月に20万円前後を行き来しています。安定はしていませんが。新作をリリースした直後は30万円くらいでしょうか。一見、そんなに悪くないようにも思われそうですが、将来の保証がないフリーランスの仕事としては、このままの収益が続く状態は決して喜べるものではないですね…。

収益源は有料アプリ2割。無料アプリが8割です。アプリ内課金は実装していないので、無料アプリは広告収益です。主力アプリの『FusionCalc』ですが、広告収益はほぼ一定しており、ここ数年はこのアプリの収益で生活していたと言って良いほどです。最も安定した収益に繋がるのは、広告型の無料アプリを一気に拡散して、そこから長い間使ってもらうことだと思います。

KDDIも採用した電卓アプリで勝負

—-今回、リオさんが開発者生命を託すことになる『FusionCalc』について教えてください。
『FusionCals』は電卓アプリです。初代『FusionCalc』と、続編の『FusionCalc2』があります。初代は2010年4月にリリースしたアプリなのですが、企画は同年1月に閃きました。というのも、そのタイミングで結婚式の準備を進めていたのですが、電卓アプリで計算した結果を付箋にメモって、また別の計算をしメモって…。で、先ほどの付箋を探し出すの繰り返しで…。計算した結果をそのまま付箋のように保存できたら便利だろうなって思い付いたんです。まぁ、その時は面白いアイデアかな?くらいで放置してました。他の誰かに作って欲しいくらいの気持ちです(笑)

ただ、その年の4月に初代iPadが発売された時、標準で電卓アプリがインストールされていないことが判明して。これは作るしかない!と決意しました。作るのを面倒くさがっていた割に、いざ動きだしたら、わずか2週間で作れたので、もっと早く作れば良かったですね(笑)

想定する利用シーンは、日常的な計算を要する場面です。ですから、複雑な計算機能は入れずに、四則演算や税率計算といった基本機能に割り切っています。女性や主婦層にこそ使ってもらえるよう、シンプルでポップなデザインを意識しました。「電卓」、「計算機」に付きまとう堅いイメージを払拭してもらいたくて。

面白ことに、フタを開けたらまったく想定外のことが起きました。会社や営業の方たちに結構使っていただけているようなんです。2013年8月にはKDDIさんに社内導入のお話も頂き、営業用iPadで運用されています。自分が想定していた以上の幅広い場面や、人々にアプローチできたのは凄く嬉しいです!

そうしたことから、国境を越えたアメリカ、引いてはその他の国々でも認めてもらえるのでは…と考えるようになりました。

引退を賭けて米テレビでプロモーション

—-引退を賭けたプロモーションに40万円を投資したとのことですが、その概要を教えてください。まず、なぜ日本ではなくアメリカのなのでしょうか?
『FusionCalc2』は自身のブログやSNS、メディアへの掲載など、周りからの協力も得て、お金を掛けていない割に、好調なスタートを切ることができました。リリースから約1か月の現時点でダウンロード数は約6万8000です。このうち6万5000が日本からです。つまり日本以外のマーケットでは、ほとんどダウンロードされていません。『FusionCalc』シリーズは、海外においてまったくの無名です。今回、アメリカを舞台とした理由は、未開拓でかつ巨大な市場であるアメリカでヒットすれば、その他の国での注目が自然と伝播していくと考えたからです。まさにハイリスクハイリターンを狙った最後の賭けといった感じです。

アメリカで2つのプロモーションを行ないます。1つはニュース番組で紹介されます。テレビでの放映に加えて、番組の持つYouTubeチャンネルに出演した放送がアップロードされ、番組SNSアカウントからの拡散、PRサイトへ配信が行われます。これまでの成功例では、カテゴリ1位を獲得したアプリもあれば、そこまで結果が及ばなかったアプリもあります。全てはアプリ次第なのですが、逆に言えば、僕のアプリを多くの人に認めてもらうことが出来ればチャンスはあります。テレビと言う巨大なメディアを通じて、僕のアプリの良さを伝えることが出来ること自体がチャンスですし、賭けてみようと決心しました。

もう1つのプロモーションは『3 Magic Shots』というアプリ紹介サイトを通じて、『FusionCalc』を24時間限定で無料配布します。『FusionCalc』は本来、有料200円のアプリです。アメリカでは完全に無名のアプリなので、存在を知ってもらえば、続編である『FusionCalc2』への流入が見込めるものと読んでいます。

限界集落での暮らし 支えは家族と応援の言葉

—-現在の開発環境を教えてください。
2013年1月から東京を離れた後、岩手県にある妻の実家で一時的にお世話になり、現在の新潟県津南町に落ち着きました。アプリ開発は自宅でできる仕事ということもあり、都心での生活に重要性を感じなくなりました。引っ越した先の津南町の集落は高齢化100%、つまり全員が65歳以上です。近所で人が住んでいるのは5軒です(笑)

毎日、野生動物を見かけるほどの自然が豊かに拡がっています。ニホンカモシカ、ニホンザル、イノシシ、タヌキ、キツネなど。都会では味わえない刺激に溢れています。人にもよりますが、僕の場合は、自然の中で感性は研ぎ澄まされるようです。

現在、リオ氏が在住する新潟県津南町の風景。「アップママ」より引用

アプリ開発は企画、デザイン、プログラムなど一人で全て手掛けていますプロモーションは2013年8月から妻が行っています。妻のブログ「アップママ iPhoneアプリ開発者の妻のブログ」が広報活動の面で大いに活躍してもらっています。

生活のリズムに関しては、休日はバラバラですね。休める日は週1あるかないか。毎日何かしらの作業を行っています。娘が産まれてから、一緒に遊んだりと作業中断が多いので、最近はのめり込む時間は確保できていませんが、基本的には8~9時あたりから仕事を始めます。合間に畑仕事をしたり、最近だと雪かきをしながら17時くらいまで仕事をして、娘と一緒にお風呂に入ってご飯を食べます。娘が寝る時間(21時くらい)まで2時間程度、さらに仕事をして、娘が寝たら1~2時間ほど海外ドラマを観て寝るような毎日です(笑)

—-引退宣言後、周囲からはどのようなアプローチがありましたか?
沢山の応援の言葉をいただき、より一層頑張ろうという気力が湧きました。Twitterでも励ましや協力の申し出なども貰いました。中には今回のプロモーションの話を聞いて、一部負担したいという申し出も頂きました

 

 

 

周りからは色々な形でサポートの声が掛かり、最後の最後まで応援し続けてくれる人達が大勢いて、感謝の気持ちで一杯です。

—-プロモーションの成功をお祈りしています。ありがとうございました。

妻へのインタビュー『夫への手紙』

今回取材する中で、引退を賭けた個人開発者の勝負であると同時に、家族を背負った夫・父親の勝負でもあるとの印象を受けました。リオ氏の活躍と覚悟の裏には、家族の支えが大きかったはずです。今回、裏の立役者ともいうべき、リオ氏の奥様に『夫への手紙』と題してコメントを頂きました。

当初は月に数百円という手取りで、冬は暖房器具を付けずコートを羽織って凌いでいたことが今でも鮮明に思い出されます。不思議なことに「辛かった」「苦しかった」という思い出は残っていません。苦楽を共にした日々は、今の私の自信と誇りに繋がっています。

もしも引退することになったとしても、あなたはきっと才能を生かし、自分自身で人生を切り開いていく人であると信じています。ですから私は何も心配していません。これからも自分の思うままに突き進んでいって下さい。

リオ・リーバス氏 略歴
8歳から23歳までハワイ在住。ハワイ大学中退後、来日。予備校英語講師、英語教材の作成をしつつ、念願だった絵本作家に転身。絵本の創作活動に時間を確保するため短期集中型の肉体労働に従事。個人が参入できるApp Storeに魅力を感じ、作品を公開する場を旧来の出版業界からアプリマーケットへ。国連主催のモバイルサミットで、デザイン担当した『MagicReader』がアワードを受賞。アプリ開発歴5年目。

アプリ基本情報

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メモれる電卓 FusionCalc2

配信元:Studio Loupe

iOS価格:無料

  • バージョン iOS:2.0.2

※記事内の情報はすべてレビュー時(2013年12月02日)の情報です。

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