Toei Bus Free Wi-Fiトップ画面SSIDを選択しWi-Fi接続を行うとまずこのトップ画面が表示される。ちなみに中央のキャラクターは東京都交通局のマスコットキャラクター「みんくる」である。

都バスでWi-Fiが使える! ~東京都交通局、都バス全車でのWi-Fi対応を発表~

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by [2013年11月29日]

無料Wi-Fiサービスの提供開始を告知する東京都交通局の公式ページ

東京都交通局自動車部の運営する都営バス、略して都バスは日本国内のバス事業車の中でも有数の規模と路線網を誇る公営バスです。

バスの総数は1,452両、系統数は132、系統総延長は1,099.4kmにもおよび、一日に60万人近い人を運ぶ、文字通り都民の日常生活を支える大切な足となっているこの都バスですが、このほど今年4月に猪瀬直樹都知事が渡米して講演を行った際に表明していた「24時間化」、つまり終夜運転の開始とセットで、12月20日より都営バス車内での無料Wi-Fiサービスが提供されることが発表されました。

 都営バス車内でどなたでも無料でWi-Fiサービスを利用できます
 渋谷駅~六本木駅間で終夜バスの試験運行を開始します
  (東京都交通局のプレスリリース)

これは、エヌ・ティ・ティ・ブロードバンドプラットフォーム株式会社によって提供されるサービスで、同社が制定されたのはWi-Fi通信サービスを提供している各社が参加したコンペティションの結果とされています。

また、無料でのWi-Fiサービス提供だけでなく、NTTドコモの「docomo Wi-Fi」サービスも同様に都バス車内で利用可能となることも発表されています。

 「docomo Wi-Fi」サービスを都営バス車内で提供開始
  (NTTドコモのプレスリリース)

ちなみに、東京都交通局は自局の情報を伝えるスマートフォン向けアプリの提供を行うなど、バス事業者としては比較的情報発信に積極的な事業者の一つです。

 スマートフォンアプリ配信について
  (東京都交通局の公式アプリ紹介ページ)

もっとも、そのアプリは「ただのPDFランチャーだ」などとあまり評判がよろしくないのですが・・・。

そんなに長時間接続できて大丈夫か?

Toei Bus Free Wi-Fiトップ画面
SSIDを選択しWi-Fi接続を行うとまずこのトップ画面が表示される。ちなみに中央のキャラクターは東京都交通局のマスコットキャラクター「みんくる」である。

この無料Wi-Fi接続時のSSIDは「Toei_Bus_Free_Wi-Fi」で、接続後に四カ国語(日本語、英語、中国語(簡体字、繁体字)、韓国語)の中から使用言語を選択し、自分が使っているメールアドレスを入力して利用者登録を行えば(※それ以外の個人情報は必要ありません)、それだけで1回何と180分、一日何回でも都バス車内でのインターネット接続が利用可能となっています。

Toei Bus Free Wi-Fiのユーザー登録画面
利用規約に同意した後、自分が使っているメールアドレスを入力して右下の確認ボタンを押す。

ユーザー登録が完了すれば、モバイル版東京都交通局ホームページ「ToKoPo」が表示される。

このあたりの手順は、昨年のちょうど今頃にJR東日本が山手線で実用試験を行っていた「トレインネット」サービスと同様ですが、あちらが試験だったとは言え、別に高速Wi-Fiで外部と接続するとかそういうのでもなかったにもかかわらず、車内向けに提供されている独自コンテンツを閲覧するだけでさえ何かと言えばブチブチ接続が切れて、わずか5分使っただけで投げ出したくなるほどひどい有様だったことを覚えている身としては「本当にそれだけ長時間使って大丈夫なんだろうか」とちょっと心配になります。

もっとも、そもそも都バスで1回3時間といっても。通しで全区間乗っても3時間もかかる路線はほとんどなく、またバス1台あたりの乗車定員を考えれば、仮に満員の乗客全員がこのサービスを利用したとしてもそう大した回線負荷にはならない訳です。さらに、1日あたりの接続回数も無制限となっていることから、このサービスを利用する際の制限は事実上無いも同然(それどころか、何度も長距離の系統を乗り継ぐ場合には、むしろスマートフォン本体の内蔵バッテリーの持ちを心配すべきレベルです)と考えても良さそうです。

都01・深夜01系統ってどんな路線?

東京都交通局が提供している都バス 都01系統の運行ルート図
ご覧の通り、渋谷・六本木・新橋と都内有数の繁華街を直結しており、しかも同じ区間を直通する地下鉄路線もないため、現在でも大きな需要がある。

今回、12月20日当日にサービス利用が可能となる都01・深夜01系統は都バス渋谷営業所が担当し、渋谷駅前から南青山七丁目、西麻布、六本木、そして赤坂アークヒルズと都道412号線(六本木通り)を東へ走り、溜池からは交差する都道405号線(外堀通り)に入って南下し、虎ノ門を経て新橋駅北口に至る約5.5kmの、現在の都営バスでは看板路線とされる系統です。

この路線は元々1967年まで走っていた路面電車(東京都電)の6系統(青山線および溜池線)の代替系統(506系統)としてスタートしたもので、経由地を見ても判るように都心の繁華街を結ぶにもかかわらず地下鉄で行こうと思ったらひどく不便という、絶妙なルート設定が受けて看板路線にのし上がった系統であったりします。

そのため、この系統は1984年3月からは都市新バスシステムと呼ばれるバスの利便性を改善するためのモデル路線に選ばれ、当時最新のバスロケーションシステムや風防ガラス付きの待合室のある停留所、ほぼ全区間に渡るバスレーンの設定による定時運行性の確保、それに他系統よりもあからさまにグレードの高い車両の投入など、1983年の時点で考えつく限りの施策を行って、「グリーンシャトル」の愛称が与えられたものでした。

このように至れり尽くせりのサービス実施の伝統が、1988年の同じ区間での深夜バス系統(深夜01系統)の設定を経て今回の終夜運転開始と最初のWi-Fiサービス開始系統指定に結びついたわけです。

なお、今回のサービス開始では、Wi-Fiルーターと通信アンテナなどの搭載が必要となることから、車両に改造を施すか、さもなくば最初からそれらを搭載した新車を投入するか、のいずれかが行われるものと考えられます。

もっとも、何しろ都電が都内交通の王者だった時代からアメリカの最新設計の路面電車(PCCカー)の製作ライセンスを買って作った「足踏みペダル操作で加減速を行う電車」(5501号)を導入したり、超低床ワンステップバスやノンステップバスの導入、HIMR(日野自動車)やMBECS(三菱自動車工業)といった各メーカーが試作したハイブリッドバスの試験投入、あるいはLNGや燃料電池などの新しい燃料を用いたバスの投入など、成功も失敗もない交ぜにして常に新しいことにチャレンジしてきた東京都交通局のことですから、今回も新しいサービスに相応しい新車を入れてくれることを期待したい(※ただし、来年3月までに全車に搭載することを宣言しているため、一般の路線系統では改造でルーターとアンテナを追加搭載する車両がほとんどとなるのではないかと思います)ものです。

でも、実は日本じゃ最初じゃない

全但バスの無料Wi-Fiサービス開始告知ポスター
一時は合理化も限界であるとして、路線網の大幅縮小にふみきろうとするほどの経営危機にみまわれた会社とは思えないほどの積極性である。

ちなみにバス車内での無料Wi-Fiサービスの提供は都内のバス事業者では初とのことで、それは恐らく間違いのないことなのですが、実はこうしたサービスをバス会社が、それも路線バスで行うのは東京都交通局が最初ではありません。

筆者が確認した範囲では、何と兵庫県北部を中心とする路線網を持つ全但バスが昨年9月1日より「全但バスWi-Fiサービス」というあまりにそのままな名称で独自の無料Wi-Fiサービスの提供を開始していたのです。

 『全但バスWi-Fiサービス』を始めます!!
  (全但バスのプレスリリース)

また、無料Wi-Fiサービスでない、各通信キャリアの提供しているWi-Fiサービスまで枠を広げれば、2012年2月1日より同年4月30日までKDDIが横浜市交通局の市営バス111系統(上大岡駅前~港南台駅前)(および観光スポット周遊バス「あかいくつ」)で実証試験を行ったのが、路線バスでの日本初のWi-Fiサービス提供例となります。

 〈お知らせ〉 「横浜市営地下鉄」、「横浜市営バス」で快適インターネット 〈別紙〉
 ~公衆無線LANサービス「au Wi-Fi SPOT」を導入~

  (KDDIによるプレスリリースの別紙)

このように、「日本初」というタイトルはつかないのですが、東京都交通局が約1500両もの在籍バス全車・全路線(※ただし一部で利用不可の区間あり)で、わずか3ヶ月ほどの間に無料Wi-Fiサービスを全面展開する積極性は大いに評価されるべきでしょう。

Wi-Fiが使えるようになった。次はどうする?

2020年開催予定の東京オリンピック会場地図
ご覧の通り、ほとんどの競技の会場は江東区の臨海地区に集中している。

以上のとおり、都バス全区間での無料Wi-Fiサービスが来年3月までに整備完了することが告知された訳ですが、このサービス開始タイミングから見る限り、これは東京が2020年のオリンピック開催地に決定したことと決して無関係ではないでしょう。

電車の車内に設置された液晶ディスプレイによる案内表示をはじめ、各国語での表示・案内表記の整備が進んでいる都営地下鉄と比較すれば、現在の都バス車内での多言語案内表示は、決して十分とは言いがたい状況です。

またオリンピックの会場予定地の大半が東京ベイゾーンと名付けられた江東区を中心とする東京臨海副都心の埋め立て地に集中している状況と、そのエリアにはJR京葉線と東京臨海高速鉄道りんかい線、それに東京メトロ有楽町線といった路線しか大量輸送の可能な鉄道系の公共交通機関が存在せず、1972年に江東地区の都電が全廃されて以来、地元が再三に渡って南北方向の鉄道路線整備を要望していたのに放置してきたことが祟って都営地下鉄はかすりもしていないことから、来たるべき2020年の東京オリンピックでは、りんかい線と共に都営バスが観客輸送の主力をになうのは明らかです。

そのため、今回の無料Wi-Fiサービスはそうした都営バスを利用する、そして日本のバスに不慣れな海外からの観客に充分な案内サービスの提供を行うための下準備である、と見て良いでしょう。

今後こうした下準備を行った東京都交通局が都バスでどのような施策を展開するのか、期待が高まります。

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