bitcoin_mark

連載『bitcoinに迫る!』第4回 ~bitcoinの問題点とは?~

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

by [2013年12月16日]

前回の記事ではbitcoinの二重利用などの不正・異常に対応するための仕組みについて考えました。

今回はbitcoinの普及・流通がもたらすものについて考えてみたいと思います。

bitcoinは有限である

仮想通貨としてのbitcoinには、近代経済学では無視できない一つの特徴があります。

それは、やがて採掘されるであろうbitcoinの総数が、bitcoinのフォーマットとマイニングの仕組み(計算式)によって約2100万枚にほぼ決定(※計算により導き出されるbitcoinの最大数は20,999,999.9769 BTC。ただし、上限値到達後もトランザクションにより理論上マイニングは不可能ではありませんが、その難度は現在の比ではないほど高まるとされます)されていて、現在成立しているbitcoinネットワークの仕組みを変更しない限りそれ以上増えない、ということです。

これは、bitcoinの通貨としての固有性を示す部分のデータ形式が一定のビット長の数値による計算式に基づく演算結果で成り立っている事から考えて当然の話なのですが、これはbitcoin 1個あたりのマイニングのコストが後になればなるほど高くなる(=得られる利益が小さくなる)こととともに、貨幣流通メカニズムにおいて、非常に重要な意味を持っています。

それはつまり、現在一般に流通している各国の銀行券が金との兌換機能を持たず(不換紙幣)、その発行数が各国中央銀行および政府の意向によって自由にコントロール可能となっているのに対し、このbitcoinが有限な資源である金と同様に、数量の固定的な資源となっているということなのです。

金本位制の時代に回帰するネットワーク経済

これは、かつてミルトン・フリードマンらが提唱した貨幣数量説、すなわち物価が発行される貨幣の量で決まる、とする主張に基づいて1980年代まで西側世界の各国で積極的に行われてきた(そして現在も少なからず影響を及ぼしている)各国中央銀行による貨幣供給量(マネーサプライ)の制御政策(マネタリズム)が根本的に行えず、「マクロ経済の父」ジョン・メイナード・ケインズが「雇用・利子および貨幣の一般理論」を発表してマクロ経済学を確立させる以前、つまり1930年代以前の金兌換制度が行われていた時代のレベルにまで(良いか悪いかの議論は別にして)市場メカニズムを逆戻りさせるものであると言えます。

それは要するに、現金通貨(銀行券と補助硬貨の合計値)と民間金融機関による各国中央銀行に対する預金の合計値(マネタリーベース)の増減(≒現金通貨発行量のコントロール)によって、つまり信用創造のメカニズムを用いて物価を間接的にコントロールする、という近代における政府金融政策の重要な手段を使えなくするということで、少なくともbitcoinを取引に用いる金融市場においては、各国政府の政策的な関与が著しく難しくなることを意味します。

初回でジンバブエ共和国の通貨であったジンバブエ・ドルが同国政府の失政でその価値を著しく減じ、壮絶なインフレを引き起こした末に通貨として機能しなくなったことに触れましたが、その原因となったのは中央銀行による信用の裏付けが全くない紙幣の過剰供給と、それによる壮絶なハイパーインフレーション抑止策として中央銀行が繰り出した、預金封鎖と通貨切り下げ(デノミネーション)という2つの悪手のコンボ技の連発でした。

bitcoinの場合、これまで何度も繰り返してきたように政府が無分別に貨幣の供給を増やすことはできませんから、こうしたジンバブエや第一次世界大戦直後のドイツのように極端なインフレに陥る心配だけは無いわけです。

bitcoinの効用

さて、インフレの件はともかくとして、各国政府(および各国中央銀行)の政策に左右され、また銀行などの金融機関を介さねば難しい各国通貨による取引と比較した場合、bitcoinには幾つか重要な利点があります。

一つは、P2P取引により低コストで送金できること。

一つは、政府などによる口座凍結の不安がないこと。

一つは、取引が完全に暗号化されていて部外者には追跡困難で、第三者にその内容を知られる危険性が低いこと。

1番目は銀行が介在する余地のない送金メカニズムを考えれば当然の話です。ただし、取引を行う両者がそれぞれの国の通貨と換金を行う際には交換レートの問題がついて回ることになります。

2番目も、そもそも銀行口座を利用しないメカニズムなのですから自明のことでしょう。一般に政府による口座凍結は、戦争時やデノミネーションの準備、さらには金融危機などの際に発動される訳ですが、それはつまり政情不安定な国の国民や企業・組織ほど、bitcoinを利用するメリットが大きいことを意味します。

学費支払いを含めbitcoinの学内利用を認めたキプロス・ニコシア大学のホームページより

実際にも先日、キプロスのニコシア大学でbitcoinによる学費支払いを認める、というニュースがありましたが、同国がギリシアの金融危機の巻き添えで金融危機に陥った際に政府が銀行閉鎖に踏み切り、さらにEUなどの圧力で問題解決のために国内主要銀行2行の破綻処理によるペイオフ(預金保護)や預金課税、あるいは規定上限を超える預金額の(紙くず同然の価値しかない)株式への転換強制などおよそ考えつく限り最悪の手段に訴えざるを得なかった(※これにはキプロスが低い税率設定でこれまでロシアなどのタックス・ヘイブン(租税回避地)として機能し、またマネーロンダリングの温床となってきたことに対するEU側からの懲罰的な意味合いもあったようですが)ことが、政府発行通貨と違いデノミネーションなどで紙くずになる危険性が低く(※後述するようにbitcoinにもリスクはあります)比較的「安全な」bitcoinの普及に拍車をかけたことを考えれば、こうした政府による預金封鎖の影響を受けないbitcoinのような仮想通貨を求める動きは、今後金融危機の囁かれる(あるいは共産党の一党独裁体制の下で外国為替に極端かつ理不尽な規制のある中華人民共和国のような)国で次々に表面化する可能性があります。

3番目はファイル共有ソフトWinnyで有名になった特徴ですが、暗号化されたP2Pネットワークはその設計の段階でなにか不手際を起こさない限り、その2者間の通信の匿名性を暴くのは著しく困難です。bitcoinの場合、そのコイン一つ一つにこれまでの取引履歴情報が含まれているわけですが、その情報そのものの匿名性は厳しく保護される設計になっており、この特性は保たれています。

もっとも、そうであるがゆえに「足がつかない」bitcoinは国際的なマネー・ロンダリングや違法薬物の取引などのブラックマーケットで(警察当局の追跡をかわす手段として)多用される傾向があり、問題となっています。

ただ、これは強調しておかねばならないのですが、こうしたブラックマーケットに関わる問題はbitcoinそのものの瑕疵や欠陥ではありません。単に、完成度の高い暗号化メカニズムを持つからこそ、犯罪者に利用されているに過ぎないのです。

bitcoinの問題点

一方、bitcoinにもそれそのものに弱点あるいは問題点が存在します。

一つは、通貨としての価値が乱高下することがあり、しかもその場合の影響が世界全体に波及すること。

一つは、ラストワンマイル問題、つまり現時点ではこの新しい通貨を日常的な生活における買い物などに利用できる店舗が限られていて、普遍的な通貨として利用するのが難しいこと。

一つは、銀行が介在せず信用創造のメカニズムが使用できないため、経済規模の拡大が難しいこと。

一つは、メカニズムの基礎となっている暗号学的ハッシュ関数(SHA-256)が将来的に解読される可能性があること。

1番目は、bitcoinの価値が急騰した、あるいは暴落した、という昨今のニュースでも明らかなように、金相場と同様にbitcoinにも価値が乱高下する危険性がつきまといます。

この問題こそは、1920年代の世界恐慌を経験した各国(※アメリカ合衆国を除く。アメリカは1971年のいわゆる「ニクソン・ショック」まで金本位制度を維持し、金本位制を廃止した主要国通貨も戦後アメリカ・ドルとの間で固定相場制を採用していたため、間接的に金本位制度の下にあったことになります)が通貨と金との兌換を保証する金本位制度の廃止に踏み切った最大の原因だったのですが、金と同様の性質(希少性および有限性)を備えるbitcoinにおいても、これは避けて通れない問題となっています。

先に触れた世界恐慌の際にも、日本で金解禁、つまり金の兌換再開と金の輸出制限の解除に踏み切った途端、円が凄まじい勢いで買われて当時の大日本帝国政府が保有していた金が大量に海外に流出する、という事態となったことがありましたが、コインの上限数の定まったbitcoinでもそうした問題が起こる可能性は、常について回ります。

また、同じ理由でbitcoinではこれまでにも述べたようにその市場でインフレーションが発生する可能性はほぼ排除できますが、通貨の価値が高すぎるために物価が低く経済が萎縮した状態が続くデフレーションの問題は、メカニズム的に避けて通れません。

2番目の問題は、電子通貨一般に共通する問題ですが、日常生活で、例えば近所の八百屋でbitcoinを使えるようにするには相応のネットワークインフラが整備される必要があります。

単にオンラインショップの支払いなどで利用するだけならこの問題は概ね無視できますが、オフラインでの利用に踏み出した際には必ず立ちはだかることになります。

3番目の問題もまた、bitcoinが金ならぬ「実体を持たない実体」の価値に依拠した、そして信用を特定の国の権力に依存しない通貨である以上、不可避です。そもそも信用創造が政府あるいは中央銀行の信用を背景にして成り立っているのですから、こればかりはどうにもなりません。

あるいは今後、また違った形での信用創造メカニズムが確立される可能性がありますが、現状ではbitcoin市場での信用創造は事実上不可能と考えて良いでしょう。

4番目の問題は、純粋に技術的な話です。極めて強固な暗号化手段として現在各国で多用されているSHA-256ですが、プロセッサパワーが充分大きくなれば、これが実用的な時間内に解読される可能性があります。

実際、その問題を見越してSHA-256(SHA-2)を採用したアメリカ政府はその後継となるSHA-3の採用を決定しており、将来的にbitcoinが使用され続けるためには、未来のいずれかの時点で、ハッシュ関数の演算アルゴリズムをSHA-256からより強固な別のアルゴリズムに切り替える必要が生じるでしょう。

次回はbitcoinがどこで使えるのか、について考えてみたいと思います。

コメントは受け付けていません。

PageTopへ