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連載『bitcoinに迫る!』第1回 ~これまでの電子マネーと何が違うのか?~

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by [2013年12月03日]

Facebookの発案者であるウィンクルボス兄弟が投資したことで、さらに注目と期待が高まったbitcoin

その仕組みを定義した論文では経済学や数学の難しい話が並んでいるため、その複雑さや難解さゆえに日本では一般に「マイニング」でゴールドラッシュ同然の状態になった、といういわゆる「儲け話」を中心とした、ユーザーがどのような利益を得られるのか、という文脈でしかこの新しい通貨は受け止められていないように思います。

そもそもbitcoinは、「中本哲史」(Satoshi Nakamoto)を名乗る正体不明の人物によって書かれたとされる、2009年発表の論文「ビットコイン:P2P 電子マネーシステム(Bitcoin: A Peer-to-Peer Electronic Cash System)」(※以下、「中本論文」と略記します)に端を発しています。

この中本論文が提案する新しい通貨のメカニズムには、既存の通貨の抱える問題点に対する回答や、意外なほどの原点回帰、ある意味原理主義的な発想、それにウィットに富んだ攻撃者に対する対処策など、様々な要素が含まれていて興味が尽きません。しかしながら先に述べたように、その複雑さゆえに、多くのメディアは「ゴールドラッシュ到来!」以上の情報を伝えるには至っていないようにも見受けられます

そこで今回は、この新しい通貨のメカニズムとそれがもたらすものに迫ってみたいと思います。

今までの電子マネーと何が違うのか?

このbitcoinは、上に挙げた中本智史氏による論文で示された仕組みによって実現された、インターネット上での支払いの決済に用いられる仮想通貨(電子マネー)の一種です。

株式会社セブン・カードサービス nanaco 公式サイト
日本で広く普及しているプリペイド型電子マネーサービスの一つ。「2倍ポイントキャンペーン」の文字が躍るなど、旧来のポイントカードの延長上にあることを示す様々なサービス施策が行われている。

電子マネーというと、セブン&アイ・ホールディングスが全国のセブンイレブンおよびイトーヨーカドー各店舗で展開している「nanaco」のようなプリペイド(前払い)型カードによる商品券あるいはポイントカードの延長上に位置づけられるサービスや、三菱UFJニコスの提供する「Smartplus」のようなクレジットカードの機能拡張に相当するポストペイ(後払い)型のサービスが日本では普及しています。

もっとも、これらはいずれも電子マネーといいながら一般的な通貨の機能を完全に代替するものではなく、一部の機能を代行する補助的なものでしかありません。

これに対し、bitcoinはそうした通貨の補助的な存在としての「電子マネー」とは一線を画する存在です。

なぜなら、これは紙幣や硬貨などの実体を持たないものの、「円」や「ドル」などと並立しうる、それでいて既存の通貨のようにその価値を決定する「信用」が国家権力などに一切依存しない、完全に独立した通貨として機能するものとして設計されているからです。

通貨と中央銀行は切っても切れない縁だった…

現在、世界各国で一般に流通している通貨は、後述するジンバブエ共和国のような特殊なケースを別にすれば、原則的にはその国の政府が直接的あるいは間接的にコントロールする、中央銀行と呼ばれる特別な権限を与えられた銀行が発行するシステムになっています。

それはつまり、その通貨の「価値」を裏付ける「信用」を中央銀行および政府が保証することで、通貨を通貨として流通させているということなのです。

そのためその中央銀行および政府に「信用」がなければ、例えばジンバブエ共和国の通貨であるジンバブエ・ドルが政府の失政(財政的な裏付けの全くない大量の紙幣発行)で極端な物価の高騰を引き起こし、再三にわたってデノミネーション(通貨価値の大幅な切り下げ)を繰り返したものの遂に2009年に発行を停止せざるを得なくなった(※代わりにアメリカ・ドルと南アフリカ共和国の通貨であるランドでの国内決済と流通が公認されるようになった)という最悪のケースが物語るように、通貨はその価値を完全に失うことになります。

「悪貨は良貨を駆逐する」という言葉がありますが、実のところ現在の通貨に関しては話が逆で、信用を失った中央銀行の発行した価値のない通貨=悪貨は、このジンバブエ・ドルの例が示すように信用力の高い通貨=良貨によって短期間で市場から駆逐されることになるのです。

bitcoin曰く「中央銀行よ、さらば」

以上のように、実際の通貨およびそれを用いた商取引においては、発行元となる中央銀行およびその国の政府こそがその通貨の信用を保証しているわけですが、インターネット上での商取引においても、それと同じように支払い手段の信用を保証する必要があります。

これまでのインターネット商取引では、中央集権的に支払い手段の信用を保証し、二重払いなどのトラブル発生を防ぐ役割を、第三者機関としての銀行などの金融機関に依存してきました。

具体的には、公開鍵暗号などの強度の高い暗号化手段により暗号化された通信を用いて商取引を行う2者がそれぞれ金融機関との間でSSLサーバ証明書によって暗号化された電子署名などを含む情報をやりとりし、ネット上での支払いを単なる口座振り込みなどの処理に落とし込むことで、支払いの確実性や整合性を保証してきたわけです。

しかし、この方法にも問題があります。

暗号化された通信を用いる、とはいえアカウント名とログインパスワードの組み合わせなどにより本人確認を行う以上、それらが何らかの手段で奪われた場合、そのユーザーの口座残高が詐取されてしまう危険があるためです。

また、最終的に口座振り込み処理の形に落とし込むことから、その支払い処理においては(銀行のシステムとして)手数料が発生するため、例えば少額支払いを多用したい場合などには、高額の支払いを1回行った場合と比較して無視できないほど大きな手数料支払いを強いられることにもなります。

P2Pネットワーク取引が提案する価値とは?

Winnyp
ファイル共有ソフトWinnyの派生品の一つ。日本におけるP2Pネットワークに対するパブリックイメージの形成において、Winny(および以後の同系ファイル共有ソフト)は良くも悪くも大きな影響を与えた。これらのソフトで「ノード」という概念を覚えた人は少なくないだろう。

そうした第三者機関を介する支払いシステムの問題を解決する手段として中本論文で提案されたのが、Peer to Peer(P2P)による取引のメカニズムです。

P2Pというと著作権法的にアウトのファイルの流通・共有で問題となった「Winny」をはじめとするファイル共有ソフトで有名になったため、どうしてもダーティなイメージがつきまとっているのですが、その一方でこれはある一つの情報をネットワーク上で共有・拡散させて保持する、という目的のためには非常に巧妙かつ強靱な、優れた仕組みです。

次回は、このP2Pネットワークの基本的な仕組みと、これを用いてbitcoinがどのようにして二重払いの発生を防いでいるのか、について見たいと思います。

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