京セラ GRATINA KYY06

ガラケーは未だ死なず ~各社新モデルに見るフィーチャーフォンの傾向と対策~

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by [2013年10月29日]

SHARP THE PREMIUM10 WATERPROOF 301SH

2013年9月から10月にかけてNTTドコモ、KDDI(au)、ソフトバンクモバイルの大手通信キャリア3社が発表した各種携帯電話通信端末群には、iPhoneの取り扱いで出揃ったこと以外に、一つの共通点がありました。

それは、3社が3社とも、まるで示し合わせたかのようにフィーチャーフォン、つまりガラケーの新製品をラインナップに含めていたことです。

今夏のNTTドコモによる「ツートップ」販売政策の結果、文字通りの惨敗を喫したNECカシオとパナソニックの2社がスマートフォン事業からの撤退を発表した際に、2社が2社ともに今後も携帯電話端末の製造販売は続ける旨のコメントを残し、少なくともこれら国内メーカー2社にとってはいわゆるガラケーの開発製造販売事業はスマートフォンの開発製造販売よりも「おいしい」、つまり一定の収益を期待できる事業であることが示唆されていました。

そこで今回は、これら新しく登場した「ガラケー」各機種とそれらの仕様から、今「ガラケー」に何が求められているのか、キャリア各社が「ガラケー」をどのように扱っているのかを探ってみたいと思います。

意外と多い新機種

まず、状況を整理する意味で今季(2013年秋)発表の大手キャリア3社向け「ガラケー」を列挙してみましょう。

●NTTドコモ
 N-01F / NECカシオモバイル
 P-01F / パナソニック モバイルコミュニケーションズ

●au
 MARVERA KYY08 / 京セラ
 GRATINA KYY06 / 京セラ

●ソフトバンクモバイル
 THE PREMIUM 10 WATERPROOF 301SH / シャープ
 COLOR LIFE 4 WATERPROOF 301P / パナソニック モバイルコミュニケーションズ

以上のとおり、3社で各2機種ずつ、ソニーを除く国内4メーカーによる新機種発表となっています。

オーソドックスな形態に収束した最新「ガラケー」

今季の最新「ガラケー」では「見やすさ」と「操作しやすさ」を強く意識・強調した機種が多く、メーカー各社がそれらの要素にスマートフォンに対する優位性を見いだしていることがわかります。

京セラ GRATINA KYY06

そこでこれら6機種の仕様を検討してみると、流石にガラケー全盛期のようなディスプレイが縦横どちらにでも開いたり表裏で180°ひっくり返ったりするような凝ったギミックを搭載した機種は皆無で、3.2インチ~3.4インチ程度の大きな画面サイズで解像度854×480ピクセル(ワイドVGA)のディスプレイパネルをメインディスプレイに採用、ワンセグチューナーを搭載したオーソドックスな二つ折りタイプに収束しています。

3.4インチクラスのワイドVGAパネル、というのは最近のスマートフォンを見慣れた目には小型かつ低解像度に見えますが、これは「ガラケー」の新機種開発競争が一つの絶頂を迎えた2009年頃の機種と同等で、「ガラケー」の発達史上で見ると実は非常に「大きく見やすい」ディスプレイであったりします。

二つ折りタイプの筐体を備えた「ガラケー」ではサイズ的にこのクラス以上の大型ディスプレイの搭載は困難で、プロセッサの負担や消費電力、それにディスプレイパネルの価格や入手性を考えると、このクラスが「ガラケー」における均衡点となるわけです。

なお、今季の6機種は全て防水に対応し、中には耐衝撃性能の高さを謳う機種も存在しています。

上下差をつけなかったNTTドコモ

スマートフォンからの撤退組であるNECカシオとパナソニックの2社が開発した端末を発表したNTTドコモですが、実はこれら2機種はスペック的に取り立ててこれが特徴だ、と言えるような要素がありません。

NECカシオモバイル N-01F

そればかりか、後述するauやソフトバンクはハイエンドとローエンドで機能的な差別化が明確なのですが、NTTドコモの場合はカタログ的な観点では2機種それぞれに欠けている機能があって、どちらがローエンドとも言えない状況になっています。

具体的に言うと、NECカシオのN-01Fは8メガピクセルのカメラと1,010mAhの大容量バッテリーを搭載し、おサイフケータイ機能をサポートしているのですがBluetoothインターフェイス非搭載、パナソニックのP-01Fは5メガピクセルのカメラと800mAhのバッテリーに加えて大容量メモリやBluetoothインターフェイスを搭載しているものの、おサイフケータイ機能は非対応で、ある意味非常に微妙な感じの機能選択となっているのです。

このあたりはメーカーを横並びで同等に扱ってきたNTTドコモの販売政策ならでは、というべきなのでしょうが、有益な機能が2機種間で排他搭載というのは要するに、両方の機能が欲しければスマートフォンを買え、ということなんだろうかと一瞬邪推したくなります。

もっとも、単純な携帯電話端末として見た場合、特にパナソニックのP-01Fには「電話」として割り切って特化したがゆえの清々しいまでの筋の通った簡潔さがあって、Bluetoothの搭載(によるハンズフリー通話の実現)やメモリの大容量化も共に純粋な「電話」としての機能を補完・強化するためのものと解すれば、「特徴らしい特徴の無い」この機種の設計陣が主張するところは明瞭です。

むしろ、より多彩な機能を搭載するNECカシオモバイルのN-01Fに色々中途半端な部分があって、多機能化した高性能なハイエンド機種を指向しながらそれに徹しきれなかったのではないか、という印象を受けます。

P-01FはともかくN-01Fのようなハイエンド寄りの機種は、「ガラケー」ユーザーのスマートフォンへの移行を強力に推進しているNTTドコモとしては本音では売れて欲しくない機種の筈で、そうした「迷い」がこのような形で表面化した可能性があります。

BREWに縛られるau

auは同一メーカー製の端末2機種を発表していますが、MARVERAでは高速なQUALCOMM Snapdragon(QSD8650 1GHz)をプロセッサとして搭載していることを強調し、GRATINAでは京セラご自慢の「スマートソニックレシーバー」、つまり液晶ディスプレイパネル表面に形成された振動素子による平面振動板スピーカー技術を採用していることを特徴として謳うことで、カタログ上では差別化しています。

実は、下位に位置づけられるGRATINAではデータ通信でWIN HIGH SPEED(※下り最高9.2Mbpsの3.5G世代技術による高速通信サービス)が対応していなかったり、またLISMO!の着うたとLISMO Book以外のサービスが使えなかったり、と下位機種らしく各種機能・サービスが景気よくばっさり削られていたりする(言い換えれば、上位のMARVERAではこれら全てに対応しています。ちなみに、GRATINAでは音楽系の機能をばっさり削ったにもかかわらず、Ver.2.1+EDR規格準拠のBluetoothインターフェイスは搭載されています)のですが、公式サイトをぱっと見る分にはその辺は割と綺麗に説明がスルーされていて、公式サイトやカタログをよほど注意深くチェックしないとわかりづらい状況となっています。

auの場合、QUALCOMMと共同で開発したKCP系(KCP・KCP+など)と呼ばれる共通ハードウェアプラットホーム規格を採用したハードウェアとその上で動作するBREWと呼ばれる共通アプリケーションプラットホームの組み合わせが長年採用されています。

上位のMARVERAでこの期に及んで(スマートフォンでは既に骨董品扱いの)Snapdragon S1が搭載されたのは、そうしたBREW上で蓄積されたソフトウェア資産の有効活用の必要性によるもので、先に述べたGRATINAでのBluetoothインターフェイス搭載も、恐らくこの共通プラットホームに対応する標準的なチップセットに搭載の機能をそのまま生かしたことによるものでしょう。

今更「ガラケー」向けのソフトウェア資産を、新規かつ大規模に開発することはまずあり得ませんから、これらは必然の選択と言えるのですが、それゆえにauの特にハイエンドに位置づけられる「ガラケー」端末は、BREW上でのアプリ開発が盛んだった2009年~2010年頃の同社ハイエンド機種(例えば東芝 REGZA Phone T004など)のスペックに近似したものとならざるを得ない状況にあります。

もっとも、今もなお「ガラケー」を愛用するユーザーにとって今auの「ガラケー」に求めるものがあるとすれば、それは正にその時期のハイエンド機種相当の動作環境の維持・確保であるわけで、それはそれで新機軸を打ち出して新機種をアッピールしたいメーカーにとっては痛しかゆしといったところでしょう。

そのためか、両機種とも8メガピクセルの裏面照射型CMOSセンサーによるカメラを搭載し、1,020mAhの大容量バッテリーを搭載しています。

これらはいずれもスマートフォンでおなじみの新技術を援用したもので、2010年のハイエンド機種にはない、「今のガラケー」だからこそ実現できたスペックであると言えますが、それらがことごとくスマートフォン由来という所に、現在の「ガラケー」の立ち位置の難しさが現れています。

明快なハイ・ローミックスを打ち出したソフトバンク

ソフトバンクの2機種の位置づけはau以上に明快です。

それは、NTTドコモ向けP-01Fに近いスペック・機能を備えたパナソニックのCOLOR LIFE 4 WATERPROOF 301P(※以下301Pと略記)をローエンドに、画素数12メガピクセルでHDサイズ動画撮影対応の手ぶれ補正付き裏面照射型CMOSセンサーによるカメラを搭載し、NewモバイルASV液晶をメインディスプレイパネルに採用するTHE PREMIUM 10 WATERPROOF 301SH(※以下301SHと略記)をハイエンドに据える、完全なハイ・ローミックスのラインナップとなっているためです。

この301SHのカメラは、そのスペックからシャープ自社製のスマートフォン用カメラモジュールであるRJ63YC100を搭載した可能性が高く、このカメラモジュールがフルHD動画撮影に対応しているにもかかわらず301SHではHD解像度の動画撮影に留まっていることから、この機種に搭載されているプロセッサの性能は今時のスマートフォン用プロセッサより低く、かつMARVERAに搭載されているSnapdragon S1よりは高速であると推定できます。

つまりこの301SHは、今時のハイエンドスマートフォンほどでないにせよ、今季発表の「ガラケー」6機種中最も高性能なカメラとプロセッサを搭載していると考えられます。

先述の通りNTTドコモはメーカー横並びのしがらみで「全部入り」の「ガラケー」を出しにくい状況にあり、またauはBREWの縛りでSnapdragon S1より新しいプロセッサが採用しにくいのと比較すると、そうした制約のほとんどないソフトバンクがこのようにスマートフォンと見まごうばかりの高性能「ガラケー」を出してきたことには、何ら不思議はありません。

一方、301Pのスペックは先にも記したとおりパナソニックのNTTドコモ向けP-01Fに近く、メモリ増量は明記されていませんが、ディスプレイやカメラなどはこれと同等でBluetoothインターフェイスも搭載されていて、いかにも基本に忠実な「ガラケー」で、iPhoneが主力のソフトバンクモバイルの現状ならばこれ1機種でも事足りそうです。

にもかかわらず、そこでミドルレンジのAndroid搭載スマートフォンに匹敵するかこれを上回るほどの高性能カメラを搭載した、他のキャリアでも見られないような高性能を実現した301SHをあえてラインナップしてきたことから、ソフトバンクユーザーにおける「ガラケー」に対する需要は、私たちが考えているよりもかなり高い可能性があります。

タッチパネルに対する無言の批判

今回取り上げた6機種を見て何より印象的だったのは、性能や機能がどうの、という以前の話として、301SHを除く5機種がキーボタンの感触の良さや押しやすさをアッピールしていることです。

これは、「ガラケー」がスマートフォンのタッチパネル操作に辟易あるいは難渋した層に支持されていることを考えれば当然の結果と言えますが、逆説的に言えば、こうした層に納得あるいは理解させられるようなユーザーインターフェイスを提案できない限り、スマートフォンが「ガラケー」を完全に駆逐できない、ということになります。

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