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大手出版社・書店が設立した日本電子図書館サービス(JDLS)、その背景

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by [2013年10月23日]

KADOKAWA、紀伊國屋書店、講談社の3社は10月15日、「日本電子図書館サービス(略称:JDLS)」を設立しました。JDLSは学校・公立図書館向け電子書籍貸し出しサービス提供の準備を始めるための合弁会社です。海外ではすでに電子書籍の貸し出しサービスは展開されていますが、日本ではまだまだ遅れをとっていました。今後、さらに電子書籍が進化していく上でキーポイントとなりそうなJDLS。今回はJDLSが生まれた背景に迫ってみたいと思います。

電子書籍元年から市場は伸びてはいるものの、一方で課題も

インターネットメディア総合研究所がまとめた「電子書籍ビジネス調査報告書2013」によると、年度が進むにつれてケータイ(ガラケー)向けの市場規模が低下していくのに反して、新たなプラットフォーム(スマホ)向けは上昇しています。電子書籍元年と呼ばれる2010年から、少しずつですが市場規模は拡大されているようです。

引用:http://www.impressbm.co.jp/release/2013/06/27

少しずつ電子書籍が増えている背景で、フォーマットが日本国内で統一されておらず、煩雑気味になっているという事実があります。フォーマットの国際規格として定められているののは「EPUB 3」というものですが、この「EPUB 3」以外にも日本にはたくさんのフォーマットがあふれています。もし統一された場合、出版社側、読者側どちらにも便利でわかりやすくなり、より電子書籍が普及するきっかけなるのではないでしょうか。

アメリカとくらべて標準化が明らかに遅れている日本

フォーマットがあまり統一されていないのは日本以外の国でも同様のようで、今年の7月にアメリカでは出版社団体Association of American Publishers(AAP)がEPUB 3を正式に推奨し始めました。
参考:米出版社団体AAPがEPUB 3を公式推奨、普及促進プロジェクトを発足

それに比べて日本ではどうかと言うと、日本電子出版協会(JEPA)がEPUB 3を国際標準化させようという活動を始める際に政府から支援がすぐに得られず、募金活動をしていたほどです。その後の経過報告を読むと、目標額まで資金が集まり、着々と準備を進めているようですが、依然として大きなニュースは見られません。
参考:EPUB 3の国際標準化に向けた日本側の活動が資金難、日本電子出版協会が募金を呼びかけ

図書館向け電子書籍貸し出しではアメリカのはるか後ろにいる日本

アメリカではOverDrive社が2万2,000の公共図書館や学校を顧客とし、電子書籍の貸し出しサービスを行っています。もともとアメリカではオーディオブックの貸出が、カセットテープから音楽CDの貸し出しになり、その流れで自然に電子書籍を貸し出すようになったのだといいます。CDやDVDの貸し出しならば日本の図書館でも普通に行われており、いわゆる「紙の本」以外の貸し出しも一般化しています。

にもかかわらず、電子書籍の貸し出しが進まなかったのは、先に述べた規格統一の遅れや、ただでさえ売り上げが低迷している出版・書店業界にとって、さらなる追いうちに繋がりかねない利便性の極めて高い電子書籍の貸し出しに対して、守りの姿勢に入ってしまった業界の姿勢が見えてきます。

国の定める図書館法の趣旨では電子書籍化は大歓迎なのだが…

日本には図書館の目的、役割について定めた法律があります。図書館法です。

日本における図書館法第二条と第三条を見てみると

「図書館」とは、図書、記録その他必要な資料を収集し、整理し、保存して、一般公衆の利用に供し、その教養、調査研究、レクリエーシヨン等に資することを目的とする施設
 図書館は、図書館奉仕のため、土地の事情及び一般公衆の希望に沿い、更に学校教育を援助し、及び家庭教育の向上に資することとなるように留意し、おおむね次に掲げる事項の実施に努めなければならない
一  郷土資料、地方行政資料、美術品、レコード及びフィルムの収集にも十分留意して、図書、記録、視聴覚教育の資料その他必要な資料(電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られた記録をいう。)を含む。以下「図書館資料」という。)を収集し、一般公衆の利用に供すること。

と書いてあります。
図書館の取り扱う資料は、紙媒体に限らず、電子方式、つまり電子書籍をも含みます。また同時に図書館は「実施に努めなければならない」と非常に歯切れよく述べています。図書館の目的にとっては、電子書籍の貸し出しサービスは必然であるように思えます。

しかし日本にある約3000を超える公共図書館のうち、電子書籍貸し出しサービスを行っている図書館の数は、20にも満たない状態です。
参考:電子書籍の貸出しを行う“電子図書館”

このままではいけないと出版社・書店が集まりJDLSを設立!

電子書籍に関してインフラが満足に整備されていない国内の状況、そうしているうちにどんどん先端のサービスを展開していくアメリカ。出版不況を受けて出版社はもとより、書店はAmazonなどのオンラインストアにどんどん売り上げを奪われています。さらにはAmazonが電子出版事業をスタートし、出版社のお株まで奪いかねない状況。

引用:http://repo.lib.hosei.ac.jp/bitstream/10114/6476/1/cd05_togawa.pdf

上記のグラフは出版取り次ぎ会社大手の株式会社トーハンが発表した2007年の売上規模別書店の業績です。度の規模の書店も粗利益が20%越えなのに対して、もろもろの経費で抜かれ最終的に当期純利益はぎりぎりプラスにできている状況です。さらに大規模な書店ではプラスですが、売上高が1~3億未満以下の書店では純利益がマイナスになってしまっています。
電子書籍元年と呼ばれる2011年よりさらに前から書店の売り上げは芳しい状態ではありませんでした。この背景には2000年に開設されたAmazon.co.jpの存在が大いに考えられます。

本来図書館のような無料で書籍を貸し出している施設は、書籍を販売している出版社や書店にとっては、消費者の購入を妨げる存在として敵視されてもおかしくないものです。実際にOverDrive社は公共図書館に電子書籍を貸し出すサービスを行っていますが、これに対してアメリカの大手出版社のうちの1つであるマクミランとサイモン&シュースターは図書館での電子書籍の貸し出しを許可していません
参考:図書館のための電子書籍ビジネスモデル

出版社・書店から見れば、図書館の充実は民業圧迫として対立図式の中で議論が進みがちですが、顧客を一般市民から役所に変えることで、敵を味方に変えるという発想の転換が行われたようです。今回のJDLS設立は、AmazonやGoogleといった既存の書店市場を奪っていった新興のマーケットと、沈み続ける出版・書店市場の狭間で、もはや二進も三進も行かなくなった業界のまさに背水の陣とも言えます。

参考:角川会長「改善ではなくイノベーションを」――図書館向け電子書籍貸し出しサービス構想など明かす

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